米国への機械輸出 - トリプルエーマシン株式会社

海外市場情報
−22−「米国への機械輸出」
Global Powder Technology Market−USA and More −22−
トリプルエーマシン㈱ 代表取締役
米国向けに機械を輸出するとき、貿易に不慣れ
なメーカーの場合、商社などに依頼するケースが
あるが、ルールに基づき輸出を行えば、メーカー
自ら輸出することが可能である。通関については、
免許を持った通関士や乙仲などに依頼する必要は
あるが、その他は、輸出者として自ら手配可能で
あるので、今回は、米国に機械を輸出する際の注
意点について述べてみたい。
1.PL(Product Liability)製造物責任
米国は、弁護士の数が120万人以上と日本の40
倍いるとされる訴訟社会である。機械は製造者を
特定しやすいので、事故が起こった際、訴訟を受
けやすい。したがって、米国向けに機械を輸出す
る際は、基本的な対策を必ず取っておく必要があ
る。たとえば、高速回転部分のカバーに安全装置
を付けてカバーを開けたら回転しないようにして
おくことなどである。出荷時に、カバー、安全装
置、安全表示(英語、できればスペイン語も)が
取りついた状態の写真を撮っておくことで、将来
訴えられた時の証拠とすることは基本的な対処と
なる。後で使用者が改造して事故が起こった場合、
メーカーを守る証拠となる。
また、海外向けに機械の輸出を初めて行ったら、
メーカーとして PL 保険をかけておくことも重要
である。1年に一度、販売台数に基づき、掛け金
は少しずつ上がるが、訴訟を受けた時の賠償金額、
弁護士費用、渡航費用などが莫大となり、保険は
それを突出させないための経費と考えて、会社と
して入っておく必要がある。
2.取引条件、Incoterms 2010
(3)CIF
(Cost, Insurance & Freight)
−相手国港渡
(4)DAP(Delivered at Place)
−客先渡だが、輸
入費用は税金も含め買い主が支払う
(5)DDP(Delivered Duty Paid)
−客先渡(すべ
ての輸送費を、関税・相手国税金まで含み輸
出者が支払う)
注意すべきは、保険をどちらでかけるのかを事
前に相談して決めておき、保険なしで輸送するこ
とを防ぐ必要がある。輸送費を売主で見積もる場
合は、保険を入れて見積もっておけば、買主がか
けるとなれば外せばよい。EXW の場合、最終出
荷状態を知らない買主が機械の梱包を手配するの
は無理があり、通常売主(輸出側)が行ったほう
が自然で、見積もり時に梱包費用まで入れておく
と、EXW を買主に認めてもらいやすい。
3.支払い条件
大きな機械装置になると、数百万円以上するも
のもあり、売主・買主ともにリスクを減らしたい。
どちらにも平等な条件から交渉をスタートすると
早期に決着しやすいが、注文時50%、出荷時50%
を電子送金で、というあたりが割合納得を得やす
い条件といえる。出荷時も、細かい話では、出荷
前に入金を確認してから出荷したいと考えるメー
カーが多いと思うが、買主にしてみれば、少なく
とも、船荷証券がそろった段階で残額を支払いた
いと考える買主も多い。また、工場で受け取って
から支払いたい、10%を最後まで残したいと要求
する買主もあるので、契約時に納得するまで両者
よく話し合うことが重要である。
4.キャッチオール規制
Incotermsとは、International Commercial Terms
を略したもので、国際商業会議所(ICC, International
Chamber of Commerce)が制定している貿易条
件の解釈に関する取引条件の国際規則である。
2000年に制定されたものは、4基本類型に分類
されて、アルファベット3文字で表記された13の
貿易条件(EXW, FCA, FAS, FOB, CFR, CIF, CPT,
CIP, DAF, DES, DEQ, DDU, DDP)に分けられて
い た。2011年 に 発 効 と な っ た Incoterms2010で
は、「いかなる輸送手段にも適した規則」で、7つ
の貿易条件(EXW, FCA, CPT, CIP, DAT, DAP,
DDP)が含まれる。「海上および内陸水路輸送の
規則」では、FAS, FOB, CFR, CIF の4つに分け
られ、合計11の貿易条件に減った。
輸出契約の際よく使われる条件を以下にあげる。
(1)EXW(EX Works)−工場車上渡
(2)FOB(Free On Board)−船上引渡
Vol.
7,No.
5(2015)
石戸 克典
米国向け輸出はホワイト国向けであり、比較的
制 限 は 少 な い が、輸 出 許 可 申 請 の 必 要 な 機 械
(ジェットミルなど)もある。直接の輸出者でな
く、商社への国内取引であっても、輸出の際の責
任はメーカーにもあるので、法律にのっとった対
処と、書類として明文化しておくことが重要であ
る。特に、社内で輸出の際のルールを日ごろから
決めて、いつもルール通りに処理することが大事
である。
おわりに
合理的なシステムで社会が成り立つ米国向け機
械輸出には、リスクを合理的に制御する方法があ
るので、これらの手法を駆使すれば、メーカーが
輸出者となった時の不安やリスクを軽減し、自信
を持って輸出を増やしていけるはずである。
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