TAPブロックを活用した 腹部手術の全身麻酔管理

TAPブロックを活用した
腹部手術の全身麻酔管理
電脳麻酔ブログ
神経ブロックの難易度別分類
レベル1
(basic)
レベル2
(intermediate)
レベル3
(advanced)
腕神経叢
(斜角筋間、腋窩)
大腿神経
腸骨ソケイ/腸骨
下腹
腹直筋鞘
TAP
腕神経叢
(鎖骨上、鎖骨下)
閉鎖神経
坐骨神経
(臀下部、前方、
腋窩)
腰神経叢
(後方アプロー
チ)
胸部傍脊椎
TAPブロックは簡単?
神経を描出する必要なし
• 筋層のみ分かればよい
重篤な合併症はない
• 超音波ガイド下で行えば安全
• 針の深さのみ注意すればよい
全身麻酔下に施行可能
• ゆっくり指導しながらできる
TAPブロックは難しい?
• 下は腹腔
– 腸管がみえる
– 針が進みにくい
• あくまで体表面のみのブロック
– 手術の進行をみながら他の鎮痛法(レミフェンタ
ニル)をコントロール
– 術後鎮痛も他の方法を併用
使いこなしには経験が必要
(症例、施設ごとにも異なる)
体幹ブロック
• TAPブロック(腹横筋膜面ブロック)
• Sub-costal TAPブロック
• 腸骨ソケイ、腸骨下腹神経ブロック
• 腹直筋鞘ブロック
• 傍脊椎ブロック
腹横筋膜面
腹横筋膜面ブロックの適応
• 主として下腹部手術
• 手術中の鎮痛
• オピオイドの全身投与と併用
• 術後鎮痛
– 腹腔鏡手術では単独で
– 開腹手術ではオピオイドの全身投与と併用
体動時痛↓、オピオイド量↓
• 単独でも腹壁の手術に使用可能(high riskのソケ
イヘルニアなど)
開腹創の2次縫合
我々の施設での状況
• 適応
–
–
–
–
腹腔鏡手術(胆嚢、虫垂、附属器)
ソケイヘルニア、臍ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア
小児(ソケイヘルニア、精巣固定術、虫垂切除)
硬膜外麻酔が使用できない開腹手術
• 局所麻酔薬
– 0.2 - 0.375%ロピバカイン20ml(片側)
– 小児では体重あたり0.5mlまで(片側)
• 神経ブロック針
– 22G神経ブロック針(CCR), 22GThohy針, その他
– カテーテルは留置していない
実際の穿刺
TAPブロックの超音波画像
外腹斜筋
内腹斜筋
腹横筋
開腹手術での使用
• 術中のレミフェンタニル使用量↓
– 但し、あくまで腹部体表面の鎮痛
• 術後のオピオイド全身投与の補助
– オピオイド使用量↓
– 体動時痛↓
– 効果持続は24-48時間
腹腔鏡下手術の例
55歳女性、腹腔鏡下胆嚢摘出術
体重 52kg、手術時間:1時間20分、麻酔時間:2時間10分
propofol
(μg/ml) 3
remifentanil
(μg/kg/min)
ロクロニウム (mg)
2.5
0.4
術後経過
帰室2時間後:ボルタレン坐
薬50mg
総輸液量:800 ml
帰室3時間後:トイレ歩行可能
10
その後鎮痛薬の追加なく経過
0.2
0.1
30
41
BIS
120
100
80
60
40
20
0
2
38
両側腹横筋膜面ブ
ロック(0.375%ロピ
バカイン40ml)
40
38
42
ロピオン50mg
フェンタニル100μg
気腹
LMA挿入
×▲
8:40
◎
9:10
◎▲×
9:40
10:20
10:50
SBP
DBP
HR
腹腔鏡下手術とTAPブロック
腹腔鏡ではポートの位置に注意
腹腔鏡下胆嚢摘出術では心窩部の痛みを訴
えるケースがある
下腹部にポートのある虫垂切除、ヘルニア手
術では特に有効?
小児腹腔鏡下手術の例
9歳女性、腹腔鏡下虫垂切除術
体重 30kg、手術時間:1時間3分、麻酔時間:2時間
セボフルラン
(μg/ml)
5
remifentanil
(μg/kg/min)
ロクロニウム (mg)
1.2
0.4 0.1
0.3
総輸液量:650 ml
10
30
41
BIS
38
両側腹横筋膜面ブ
ロック(0.375%ロピ
バカイン20ml)
150
術後経過
帰室3時間後:トイレ歩行可能
8時間後:アンヒバ坐薬200mg
その後鎮痛薬の追加なく経過
40
38
42
ロピオン50mg
フェンタニル100μg
気腹
100
50
×▲
◎
◎▲×
0
15:00
15:30
16:00
16:30
17:00
SBP
DBP
HR
TAPブロック
• 開腹手術
– 術中、術後の鎮痛補助法として
• 腹腔鏡手術
– 術中の鎮痛補助
– 術後鎮痛法
• 小児では特に有効
– 虫垂切除
– ソケイヘルニア
– 精巣固定術
2010年秋
TAPブロックは麻酔専門医にとっ
て必須の手技である