病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 部門別感染対策: 内視鏡検査室 1.内視鏡洗浄・消毒の基本 1)内 視 鏡 室 での感 染 対 策 内 視 鏡 検 査 室 では、内 視 鏡 器 具 を介 した交 差 感 染 と、医 療 従 事 者 の職 業 感 染 を 防 止 する対 策 を講 じる必 要 がある。 2)内 視 鏡 室 における感 染 経 路 ・ 消 毒 、滅 菌 が不 十 分 な内 視 鏡 ・処 置 具 を介 しての患 者 間 の感 染 ・ 結 核 や血 液 曝 露 などによる職 業 感 染 3)内 視 鏡 の洗 浄 ・消 毒 の基 本 的 な考え方 ・ 内 視 鏡 の洗 浄 ・消 毒 は、日 本 消 化 器 内 視 鏡 技 師 会 「内 視 鏡 の洗 浄 ・消 毒 に関 するガ イドライン」第 2 版 および、日 本 環 境 感 染 学 会 ,日 本 消 化 器 内 視 鏡 学 会 ,日 本 消 化 器 内 視 鏡 技 師 会 「消 化 器 内 視 鏡 の感 染 制 御 に関 するマルチソサエティ実 践 ガイド」 に 基 づいて行 う。 ・ 内 視 鏡 、処 置 具 の使 用 後 の処 理 は【表 1】に基 づき実 施 する。 【表 1:内 視 鏡 器 材 のスポルディング分 類 】 分類 クリティカル セミクリティカル ノンクリティカル 定義 滅菌粘膜を傷つ け る( 無 菌 の 領 域 に入る) 粘膜や傷のある 皮膚に接触 消毒の水準 滅菌 感染のリスク 高い 高水準消毒 低い 創のない皮膚に 接触 低水準消毒/ 洗浄 ほとんどない 器具 生検鉗子 処置具 胆道鏡 内視鏡 検査台 光源装置 (1)消 毒 剤 について 内 視 鏡 室 では、フタ ラール製 剤 、過 酢 酸 製 剤 を使 用 する。なお過 酢 酸 製 剤 は専 用 の自 動 洗 浄 機 でのみ使 用 する。【表 2】 20- 1 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 【表2:高水準消毒薬の特徴】 フタラール製 剤 (ディスオーパー 消 毒 液 0.5 5% ) 消 毒 に要 する時 間 揮発性 刺激性 におい タンパク凝 固 安定性 その他 10 分 間 低 い 弱 い 少 ない あ り 高 い 洋 服 や皮 膚 への着 色 過酢酸製剤 (アセサイド 6%消 毒 液 ) 専 用 の自 動 洗 浄 装 置 使 用 時 5 分間 ほとんど問 題 なし ほとんど問 題 なし ほとんど問 題 なし な し やや低 い な し 2.内視鏡の洗浄・消毒 1)ベッドサイドでの洗 浄 ・ ・ ・ 検 査 終 了 直 後 に、酵 素 洗 浄 剤 によるスコープ外 表 面 の清 拭 と吸 引 ・鉗 子 チャンネル の吸 引 洗 浄 を行 う。 送 気 ・送 水 チャンネルへの送 水 は、送 気 ・送 水 チャンネル洗 浄 アダプターを装 着 して 洗 浄 する。 防 水 キャップ装 着 後 、抜 去 した吸 引 チューブ先 端 を 専 用 容 器 へ収 納 する。スコープ を光 源 装 置 から外 して使 用 後 専 用 容 器 に入 れ、周 囲 に触 れないよう洗 浄 室 へ運 ぶ。 2)洗 浄 室 での用 手 洗 浄 ・ 送 気 、送 水 ボタン、吸 引 ボタン、鉗 子 栓 、先 端 キャップなどを取 り外 し、流 水 (温 水 )下 でスコープ外 表 面 を洗 浄 する。 ・ 適 切 なチャンネル洗 浄 ブラシを用 い、吸 引 、鉗 子 管 路 をブラッシング(3 方 向 、ブラシ に汚 れの付 着 がなくなるまで)する。 ・ 送 気 、送 水 ボタン、吸 引 ボタン、鉗 子 栓 などブラシを用 いて穴 の部 分 まで洗 浄 する。 3)漏 水 検 知 ・ 内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 を用 い、漏 水 テスターを取 り付 け表 面 や先 端 から連 続 して 気 泡 が発 生 しないことを確 認 する。 4)内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 による洗 浄 ・消 毒 ・ ・ ・ フタラール製 剤 、過 酢 酸 製 剤 を使 用 した専 用 の内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 を用 いて 行 う。 内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 に使 用 している高 水 準 消 毒 薬 は定 期 的 に濃 度 測 定 を行 い記 録 する。 内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 は、メーカによる定 期 的 な点 検 を行 う。 20-2 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 5)乾 燥 ・ スコープを連 続 使 用 しない場 合 は、内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 にてアルコールフラッ シュを行 う。 6)保 管 ・ スコープは送 気 、送 水 ボタン、吸 引 ボタン、鉗 子 栓 などを外 して、 専 用 保 管 庫 に垂 直 にかけ保 管 する。 3.内視鏡の質の保証 1)洗 浄 消 毒 の履 歴 管 理 ・ 内 視 鏡 室 、及 び内 視 鏡 室 にて洗 浄 ・消 毒 を行 なっている部 署 のスコープ について、全 例 消 毒 履 歴 管 理 を行 なう。 ・ 履 歴 内 容 は、洗 浄 消 毒 日 時 ・患 者 ID・スコープ番 号 ・内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 番 号 ・内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 使 用 回 数 と運 転 状 況 ・洗 浄 消 毒 実 施 者 ・スコープ使 用 部 署 名 ・消 毒 薬 濃 度 を内 視 鏡 履 歴 システムおよび専 用 の履 歴 シートに記 載 する。 2)洗 浄 消 毒 作 業 の質 の保 証 ・ スコープの洗 浄 ・消 毒 手 順 、手 技 の安 全 管 理 監 査 は、1 回 /週 作 業 安 全 チェック表 を 使 用 して行 う。 ・ 監 査 は、日 本 消 化 器 内 視 鏡 技 師 の資 格 を有 する看 護 師 が行 なう。 4.内視鏡付属品の洗浄・消毒・滅菌 ・ 使 用 したリユーザブル処 置 具 は、中 央 材 料 室 に運 搬 し洗 浄 ・滅 菌 を行 う。 ・ ディスポーザブル処 置 具 は、再 生 使 用 しない。 ・ 送 水 ボトルは、1 日 使 用 後 に滅 菌 する。 5.環境整備 1)内 視 鏡 周 辺 機 器 ・ 清 潔 なもの、汚 染 されたものの設 置 場 所 を明 確 に区 切 り、混 在 させない。 ・ 光源装置が吐物などで汚染された場合、すみやかに環境用清拭クロス でふき 取る。 2)洗 浄 シンク ・ シンクは、内 視 鏡 、処 置 具 の洗 浄 などを行 う汚 染 用 と、手 洗 いなどの清 潔 用 を区 分 し て使 用 する。 20-3 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 ・ シンクは、緑 膿 菌 が多 く存 在 するので、シンク内 、排 水 溝 を十 分 に最 低 1日 1回 以 上 洗 浄 する。 (3)その他 ・ 内 視 鏡 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 の蓋 、パネル等 表 面 はすべて汚 染 区 域 である。 ・ 消 毒 済 みスコープを取 り出 す際 は、フットスイッチがあるものは、それを利 用 し、周 辺 に 触 れずにスコープを取 り出 す。フットスイッチがないものは、蓋 を開 けた手 袋 を交 換 ・手 洗 い後 スコープを取 り出 す。 ・ 消 毒 済 みスコープと汚 染 されたスコープが交 差 しないよう規 定 の動 線 を遵 守 し行 動 す る。 6.内視鏡 検査室勤務医療従事者の安全対策 1) 防 護 具 について ・ 標 準 予 防 策 を全 ての場 面 で適 応 する。 (1)ガウン、エプロン ・ 検 査 者 、検 査 介 助 者 はプラスチックエプロンを使 用 する。ただし、血 液 、体 液 などが飛 散 する可 能 性 がある場 合 は、プラスチックガウンを着 用 する。 ・ 内 視 鏡 、処 置 具 などの洗 浄 に従 事 する者 は、プラスチックガウン着 用 とする。 (2)マスク、ゴーグル ・ 検 査 者 、検 査 介 助 者 、内 視 鏡 洗 浄 業 務 者 が装 着 をする。 ・ フタラール製 剤 の交 換 時 は、直 結 式 小 型 防 毒 マスクを使 用 する。 ・ 結 核 を疑 う患 者 の気 管 支 内 視 鏡 検 査 では、N95 マスクを使 用 する。 2)内 視 鏡 洗 浄 消 毒 室 の換 気 ・ 高 水 準 消 毒 薬 の吸 入 曝 露 の危 険 を防 止 するため、排 気 管 による強 制 排 気 を行 う。 7.内視鏡検査室以外の内視鏡洗浄・消毒管理 1)内 視 鏡 検 査 室 以 外 におけるスコープ洗 浄 ・消 毒 運 用 方 法 (1)各 部 署 で使 用 したスコープに、患 者 ID を 印 字 した「内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 依 頼 用 紙 」を 貼 付 し、未 消 毒 容 器 に入 れ内 視 鏡 検 査 室 に搬 送 する。 内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 依 頼 用 紙 患 者 ID →内 視 鏡 室 20-4 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 (2)内 視 鏡 検 査 室 では、消 毒 済 みスコープに 「内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 済 みラベル」を貼 付 して 部 署 に払 い出 す。「内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 済 み ラベル」には、消 毒 日 ・洗 浄 消 毒 実 施 者 ・使 用 自 動 洗 浄 消 毒 装 置 を記 載 する。 (3)部 署 では、「内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 ラベル」 により、洗 浄 消 毒 処 理 済 みのスコープで あることを確 認 してから使 用 する。 2014.4 内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 済 みラベル 消毒日 : 洗浄消毒実施者 年 月 日 使用自動洗浄消毒器 エンドクレンズ OER-4A OE R-4B 内視鏡室 1)平 日 の運 用 ・ 各 部 署 のスコープについては、内 視 鏡 検 査 室 で、洗 浄 ・消 毒 の訓 練 を受 けた スタッフ がブラッシング洗 浄 、漏 水 検 知 、洗 浄 ・消 毒 、乾 燥 を行 い部 署 に返 却 する。 【 図 1: 気 管 支 内 視 鏡 の 処 理 - 内 視 鏡 検 査 室 に 依 頼 す る ま で の 一 次 処 理 - 】 参 照 2)夜 間 ・休 日 の運 用 部署 夜 間 ・ 休 日 2 連 休 以 内 の セ ン タ ー 救 命 救 急 他 部 署 3 連 休 以 上 の 夜 間 ・ 休 日 セ ン タ ー 救 命 救 急 他 部 署 運用 条件 洗浄 消毒 実施者 洗浄 消毒 場所 連続使用 する 救命救急 医師 内視鏡 検査室 連続使用 しない 洗 浄 ・消 毒 方 法 自動洗浄消毒装置 (エンドクレンズ S) 洗 浄 ・消 毒 履歴管理 洗浄 消毒 確認者 内視鏡室所定用 紙 に「内 視 鏡 洗 浄 ・消 毒 依 頼 用 紙 」を貼 付 救命救急 医師 休 日 明 けに内 視 鏡 検 査 室 へ搬 送 し洗 浄 ・消 毒 【図 2:気 管 支 内 視 鏡 の処 理 】参 照 休 日 明 けに内 視 鏡 検 査 室 へ搬 送 し洗 浄 ・消 毒 【図 2:気 管 支 内 視 鏡 の処 理 】参 照 休日の 中央材料 室稼働日 中央材料 室稼働日 以外 中央材料 室職員 内視鏡 検査室 8:45 ~12:00 自動洗浄消毒装置 (エンドクレンズ S) 平 日 と同 様 2 連 休 以 内 の夜 間 ・休 日 と同 様 2 連 休 以 内 の夜 間 ・休 日 と同 様 20-5 救命救急 医師また は臨 床 工 学士 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 7.気管支内視鏡の洗浄・消毒 平日16時45分までに使用した気 管支内 視鏡 ベッドサイド洗浄 内視鏡室 ①気管支鏡使用後、光源装置に装着し たまま インスルネット(酵素洗浄剤)水をつけた ガーゼで外表を拭く ②気管支鏡先端部を水に入れ、吸 引ボタンを 押し、水100ml、インスルネット水200ml を吸引する 防水キャップ ③気管支鏡先端部をインスルネット水から取り 出し、吸引ボタンを押し10秒間空気を吸引する ④光源装置の電源を切る。防水キャップが必 要 な気管支鏡には防水キャッ プを装着 ! ⑤光源装置から気管支鏡をはずす ⑥未消毒用搬送容器に入れる 搬送用容器 ⑦内視鏡室(内線5130)に内視鏡消毒依頼の電 話をして速やかに内視鏡室へ搬送 する (搬送時、消毒済み用容器も一緒 に持参) ⑧内視鏡室にて、洗浄・消毒・乾燥を行い各部 署へ返送連絡 ※ イン スルネ ット水 の作り 方 イ ン ス ル ネット (酵素 洗浄剤 )1に対し て水120で 希釈し て使用 ~ イン スルネ ットは 内視鏡 室でお 渡しで きます 。病棟 から容 器 を持参 してく ださい 。~ 【 図 1: 平 日 日 中 の 気 管 支 内 視 鏡 の 処 理 】 20-6 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2014.4 夜間・休日に使用し、すぐに使用予定のない気管支内視鏡 1 ) ベ ッ ドサ イド 洗浄 2 ) ブ ラ ッシ ング 洗浄 3 ) 翌 朝 内視 鏡室 へ 1)ベ ッドサイド洗 浄 ①気管支鏡使用後、光源装置に 装着したまま インスルネット(酵素洗浄剤)水をつけた ガーゼで外表を 拭く ②気管支鏡先端部 を水に入れ、 吸引ボタンを 押し水100ml 、インスルネ ット水200ml を吸引する ③気管支鏡先端部 をインスルネ ット水から取 り 出し、吸引ボタ ンを押し10秒 間空気を吸引 する ④光源装置の電源 を切る。防水 キャップが必 要 な気管支鏡には 防水キャップ を装着! ⑤光源装置から気 管支鏡をはず す 2)ブ ラッシング洗 浄 ①気管支鏡の吸引口金、鉗子栓 をはずす ②外表面をインス ルネット水ガ ーゼで洗う ③流水下でチャン ネル開口部掃 除用ブラシに て鉗子 チャンネル開口 部、吸引シリ ンダー開口部 をブラ ッシングする ④流水下で鉗子チ ャンネル開口 部、吸引シリ ンダー 開口部にチャン ネル掃除用ブ ラシを挿入し、ブラ シを先端から突 き出す ⑤ブラシをつまみ 洗いしてから 引き抜く ⑥引き抜いた後再 びブラシ部を つまみ洗いす る この工程を各チ ャンネル2回 繰り返し、目 視でブ ラシに汚れの付 着がなければ ブラッシング 終了 汚れの付着があ ればなくなる までブラッシ ングを 繰り返す ⑦流水で内視鏡外 表面を洗浄す る 【 図 2: 夜 間 ・ 休 日 に 使 用 し た 気 管 支 内 視 鏡 の 一 次 処 理 】 20-7 防水キャップ
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