スライド 1

ウエストナイル熱
1.蚊が吸血する際に運ばれる。
2.自然界では鳥類との間でウイルスが維持されている。
3.ヒトや馬は感染し、発病しても、ウイルス血症を起さない終末宿主である。
蚊
ヒト
鳥類
ウマ
その他の動物
東京都神経科学総合研究所
Vero細胞感染電顕像
(国立感染症研究所)
フラビウイルス属
デング(DEN)
ウエストナイル(WN)
クンジン(KUN)
マレー渓谷(MVE)
日本脳炎(JE)
セントルイス脳炎(SLE)
黄熱(YF)
ダニ媒介性脳炎(TBE)
キャサヌル森林病
オムスク出血熱
国立感染症研究所
ウエストナイルウイルス(赤)と
日本脳炎ウイルス(緑) の分布地域
密輸された野鳥?
20XX年
★
ヒトでの主な流行
1950-54年 イスラエル
1950年代 エジプト
1963年 フランス
1974年 南アフリカ
1996-97年 ルーマニア
ウエストナイルウイルスは、1937年にウガンダのウエストナイル州で分離された
1999年8月、ニューヨークにウエストナイル熱が突然流行
1999年のニューヨークにおける患者発生の推移
(WNV抗体陽性例)
当初、IgM抗体が検出さ
れたセントルイス脳炎ウイ
ルスを疑ったが、フラビウ
イルス属の交差反応に基
づく間違いであった。
MMWR, 1999;48(41)
鳥の陽性割合
WNV 陽性の蚊
ヒト症例
ニューアーク国際空港
ケネディー国際空港
1999年のニューヨークにおける WNV の動き
患者数
10000
8000
初期の致命率が高いのは
野鳥と蚊の間でWNVが
増幅するのに3年を要し
た? 日本に侵入した場
合は?
6000
1. 診断・治療体制が整って
いなかった。
2. 広域調査が進行すると、
それまで見つからなかった患
者数が多くなる。
3. 免疫の獲得
4000
2000
62
0
21
66
人体用ワクチンは、現時点で未開発
致命率(%)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
米国におけるウエストナイル熱の推移(1)
死者数
300
250
患者がピークだった2003年よりも2002年の死亡
数が多いのは? 治療法の改善?
発生州数
2002年にはほぼ全国で発生し
ており、前年の不顕性感染で
免疫を得た?
60
50
200
40
150
30
100
20
50
10
0
0
米国におけるウエストナイル熱の推移(2)
2001年
2000年
2004年
2007年
2006年
2005年
2008年
1999年
2003年
2002年
米国におけるWNV流行の推移
CDC: Maps of West Nile Virus Activity
Negative or Unknown
Positive
Travel-related
2001年に野鳥でWNVが確認され、
2002年からヒト症例が出始めた。
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2002年
2003年
New Brunswick (NB)
Nova Scotia (NS)
Quebec (QC)
Ontario (ON)
Manitoba (MB)
Saskatchewan (SK)
Alberta (AB)
British Columbia (BC)
West Nile Virus MONITOR
カナダにおけるWNV感染者の推移
神経
症候群
非神経
症候群
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
259
217
13
49
38
217
5
18
1248
12
172
113
1991
29
137
16
0
4
6
7
2
414
1481
25
225
157
2215
36
計
%
798
17.5
3583
78.7
172
3.8
4547
100
その他/
非定型
計*
不顕性
感染 **
0
14
1
13
3
186
2
• 計は、 WNV神経症候群 + WNV非神経症候群 + その他/非定型 の和である。
** 不顕性感染の大半は、供血者の検査において確認されたものであり、計には含めない。
病型
WHO
ウエストナイル熱: WNV感染者の大半は不顕性であり、約20%が
発熱、頭痛、体幹痛、筋肉痛、食欲不振に陥る。 WN熱患者の約半
数に斑点状丘疹がみられる。眼痛、咽頭炎、嘔気、嘔吐、下痢、およ
び腹痛も起こることがある。
髄膜炎・脳炎型: 1%以下の割合で、髄膜炎や脳炎を伴う神経侵襲
型が発生し、麻痺、昏睡の後死亡する。死亡の多くは高齢者である。
神経侵襲型の致命率は約10%であり、生存者には認知障害や神経
障害が残ることがある。神経病理学的には日本脳炎と類似し、中枢
神経系のびまん性炎症とニューロンの変性がみられる。ウイルスは、
脾臓、肝臓、リンパ節および肺に観察される。
麻痺型: WNV感染は、急性の弛緩性麻痺症候群も引起すことがあ
り、それは灰白髄炎(ポリオ)を思わせる脊髄前角細胞障害に起因す
る。長期経過は様々であるが、完全回復は稀である。
Circulation of WNV in
Latin America and the Caribbean
(2000-2003)
2002 (A)
2001 (H)
2003 (E)
E = Equine
2002 (E)
A = Avian
2003 (A)*
2003 (E)
*Virus isolated.
H = Human
?
ウマのWNV流行の推移
2002年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
1999年
2001年
2000年
APHIS: Animal Health
Monitoring & Surveillance
WNV in Animals
Horses (*)
Black Bear
Bats
Goats (*)
Sheep (*)
Dog (*)
Wolf (*)
Alpaca (*)
Mountain Goat
Llama (*)
Cattle (*)
Seal (*)
Rabbit
Alligator (*)
Cat (*)
Chipmunk
Gray Squirrels (*)
Deer
Skunk
Crocodile (*)
アイオア州立大学
The (*) indicates
animal species that
have been reported to
show signs of WNV
infection.
鳥: 通常は、死亡後に発見(カラス等 ⇒ 歩哨動物)
灰色リス: 嗜眠、前足を噛む、発声、運動失調、回旋、脳
炎、心筋炎
コウモリ、シマリス、スカンク、家兎: 無症状
オオカミ(動物園): 中枢神経症状
イヌ、ネコ: 症状を示すことは稀だが、発熱、沈鬱、痙攣、
発作、麻痺、心筋炎(実験感染で血中にウイルスを検出し
たが無症状であり、次への感染源とはならない)
アルパカ、ヒツジ、ヤギ: 発熱、水平性眼振、斜頸、運動
失調、横臥、発声(アルパカは軽度から中度のびまん性非
化膿性髄膜脳炎)
牛: 運動失調、不全麻痺
Do chickens develop 死亡鳥の検査
WN viremia?
Species
Blue jay
アオカケス
Common
ムクドリ
grackle
House イエスズメ
sparrow
House
メキシコマシコ
finch
American
コマツグミ
robin
Red-wing.
赤羽、クロウタドリ
Blackbird
Mallard マガモ
European
欧州ムクドリ
starling
Canada
カナダガン
goose
American
アメリカオオバン
coot
Rock dove
カワラバト
Chicken 鶏
Ring-neck
首輪キジ
Pheasant
n
Mean Days
Infectious*
2
4
6
3
6
3
2
6
2
3
3
3
2
3
6
2
3
0
1
0
6 歩哨動物 0
16 として適格 0
3
0
Sentinel Live Bird
Surveillance
Mean Peak
Viremia **
ci***
12.3 媒介動物 2.4
9.4 として危険1.0
8.9
0.9
8.8
0.8
8.5
0.6
8.1
0.5
6.7
0.3
6.0
0.1
4.7
0
ウイルスの存在確認
4.6
0
4.3
0
3.2
0
2.7
0
* Infectious viremia = log 5 or greater per ml serum; (感染可能な平均日数)
** log pfu/ml serum (血中最高ウイルス量の平均)
*** ci = susceptibility X mean infectiousness X days infectious (媒介動物指数)
ウマの症状(不顕性感染が大半)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
診断
口唇、顔面筋、舌の麻痺
血清学的診断
斜頸、嚥下困難
● 抗体陽性+WNVワクチン未接種
情緒不安定
● IgM抗体
音に過敏
剖検
失明
転回困難
嗜眠状態
風邪症状、食欲不振、沈鬱
筋肉と皮膚の痙攣
予防と治療
感覚過敏
不活化ワクチン
努力歩行
● 3~6週間隔で2回接種
衰弱、運動失調、横臥
● 毎年、追加接種
発作
支持療法
ウマのWNV感染症
家畜のWNV感染に係るOIEへの通知状況
2005
2006
2007
2008
欧州におけるWNV熱再
興の理由: 気象変動?
米国
カナダ
キューバ
ハイチ
蚊の発生、鳥の渡り、
留鳥などの変化が、鳥や
終末宿主(ヒトやウマ)に
対する蚊の吸血活動に
影響している。
グアテマラ
アルゼンチン
フランス
ヨーロッパ地域事務局
(EURO)
情報なし
イタリア
過去に通知なし
ルーマニア
この期間に通知なし
ロシア
擬似例はあるが未確認
アラブ首長国連邦
イスラエル
感染はあるが発症なし
臨床例あり
感染例は限局的
既存の人畜共通感染症が新たな地域に侵入するのを防ぐ手立てはあるか?
「世界は一つ、健康は一つ(One World, One Health)」の世界戦略
1999年
●
●
●
●
アメリカへの侵入経路?
有毒蚊が飛行機で旅行
感染動物の密輸入
病鳥が嵐で飛ばされた
テロリストの意図的持込み
ウエストナイルウイルス感染症防疫マニュアル
Ⅲ 蚊及び野鳥のサーベイランス
1 検体の採取
(1) 蚊
家畜保健衛生所は、都道府県畜産主務課が作成した調査計画に基づき、雌蚊に
ついて、調査対象地域内の 1 ヵ所から当該地域における発生時期に応じて、別紙 2
に定める方法に従い毎月 1 回定期的に 10 匹以上捕獲するものとする。
(2) 野鳥
① 家保は、県畜産主務課が作成した調査計画に基づき、また、環境部局からの
情報提供や検体の提供を活用し、調査対象地域における死亡野鳥を別紙 2 に定め
る方法に従い採取するものとする。なお、採取羽数については、異常が疑われない
場合にあっては毎月1羽程度定期的に採取するものとし、死亡野鳥の増加等異常が
疑われる場合にあっては農水省消費・安全局動物衛生課及び動物衛生研究所に連
絡して対応を協議するものとする。
② 県畜産主務課は、野鳥の死亡等の通報があった場合には、日時、種類等を記
録しておくものとする。
2 検査
(1) 家保は、採取した蚊と野鳥について速やかに検査を行う。
(2) 県畜産主務課は、当月分のサーベイランスの検査実績を取りまとめ、翌月
20日までに動物衛生課へ連絡する。
3 連絡及び検査材料の送付
(1) 家保における検査において、本ウイルスの存在を否定できない結果が得ら
れた場合には、家保は直ちに県畜産主務課を経由して動物衛生課及び動物衛生
研究所に連絡するとともに、当該検査材料(生材料、乳剤及びPCR産物)を動物
衛生研究所に送付する。
なお、この時点では、非特異反応等が検査結果が検査結果に影響を与えている
可能性も考慮し、関係機関は病性検査の結果が得られるまでの間、当該情報の
取扱いに留意する。
広域調査(サーベイランス)に用いるスクリーニング方法は、見逃
しを防ぐことを優先しており、偽陽性が多い。確定診断が終わるまで
は、陰性か陽性かは不確定であり、スクリーニング情報を外部に流し
て無用な混乱を起こしてはならない。
Ⅳ 異常馬発見時の措置等
2 臨床検査等
(1) 家保は、飼養者等からの通報があった時は、家畜防疫員による臨床検査を
行う。
(2) 当該検査の結果、異常馬と確認された場合は、飼養者等に対し、吸血昆虫
の駆除等を指導するとともに、当該異常馬及びその同居馬から、EDTA加血液及
び抗体検査用血清を採材する。また、死亡した馬又は予後不良馬を剖検する場合
は、中枢神経系組織(脳、脊髄及び脊髄液)及び各種臓器を併せて採材する。
(3) 死亡した馬又は予後不良馬の剖検及び採材に当たっては、本ウイルスの外
部への漏出を防止するため、非開放の解剖室内で行い、採材した中枢神経系組織
等を「安全キャビネット」内で取り扱うことを原則とする。
3 検査材料の送付
家保は、原則としてJRA競走馬総合研究所栃木支所と検体送付の必要性の有無
を協議した上で、家畜防疫員が採材した「馬の検査材料」を、病性検査等に供する
材料として、JRA栃木支所に送付する。
Ⅴ 病性検査
1 動物衛生研究所及びJRA栃木支所は、送付された蚊、死亡野鳥及び馬の検査
材料について直ちに病性検査を実施する。
ウイルス分離・同定、PCR法を用いた遺伝子診断、中和試験、ELIZA法により行う
い、必要に応じて病理組織学的検査を行う。
Ⅵ 本病発生時の措置等
1 患畜等の定義
別紙 5 の症状を示し、かつ、病性検査の結果が次のいずれかに該当する馬を患
畜とする。
米国においては、運動失調
(つまずき、よろめき、歩様の不
調)に加え、次の症状のうち2
7日以上の間隔で、4倍以上の中和抗体の変化 つ以上を示す場合に、本病に
かかっている疑いがあるものと
している。また発熱が一般的に
IgM 抗体検出、かつ、1:10 以上の中和抗体
認められる。
IgM 抗体検出、かつ、PCR 法陽性
旋回、後肢の虚弱、起立不能、
複数肢の麻痺、筋痙攣、
IgM 抗体検出、かつ、免疫組織化学的検査陽性 固有受容感覚不全、失明、口
唇の下垂又は麻痺、歯ぎしり、
PCR 法陽性、かつ、免疫組織化学的検査陽性
急死
a. ウイルス分離
b.
c.
d.
e.
f.
(3) 本ウイルス感染確認地域及び本ウイルス抗体等確認地域
① 馬において患畜が確認された場合、蚊若しくは野鳥において本ウイルスが分
離・同定若しくはPCR法により陽性とされた場合又は都道府県公衆衛生部局で
本ウイルスが確認された場合は、当該患畜等が存在する場所を中心として半径
20 km以内を「本ウイルス感染確認地域」とする。
② 馬において疑似患畜が確認された場合は、その確認された場所を中心として
半径 20 km以内を「本ウイルス抗体等確認地域」とする。
3 患畜及び疑似患畜確認時の措置等
(1) 患畜、疑似患畜等の措置
家畜防疫員は、患畜又は疑似患畜の飼養者に、当該馬をみだりに農場外へ移動
させないよう指示するとともに、移動の制限を開始してから14日間当該馬の経過
観察を行い、PCR法により本ウイルスが血液中に存在しないことを確認した場合
には、移動の制限を解除するものとする。
これらの監視体制でWNVの侵入を防げるか? 高病原性鳥インフルエンザについ
て環境省も調査しているが、陽性鳥が把握されてない中で、養鶏農場やウズラ農
場での発生が続いている。すなわち、広域調査によって侵入を探知するのは極め
て困難であり、発生時の迅速な対処による蔓延防止が重要である。