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ミクロ経済学
(11) 様々な市場構造と独占
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2014年7月7日
不完全競争と市場構造


1.
完全競争市場は希だ
市場構造とは市場の構成
完全競争市場
2.
独占~供給者が一人.水道,電力,マイク
ロソフト,ファスナー(YKK)
3.
寡占~数社の企業が競争していてある程度
競争がある.自動車産業,ゲーム産業
4.
独占的競争~寡占よりも企業数が多いが,
完全競争よりも少ない.パソコン市場.
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ミクロ経済学 11
2
さまざまな市場構造

ブランド物のバックが典型

うまい棒に様々な味がある

比較的多くの企業が競争している

プライステイカーではない

各社の製品は少しずつ異なっている

企業によって財が少し異なっていることを
製品差別化されているという
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ミクロ経済学 11
3
市場構造を決めるもの
製品差別化されているか
(されている→)
生産者
がどれ
だけい
るか
独占
該当なし
寡占
完全競争
独占的競争
(多い↓)
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不完全情報
完全競争市場では財の品質は分かっている
 これを完全情報と言います
 全て情報がある→機会集合が分る
 自分の選好も知っている
 不完全情報(imperfect information)~売買され
る財についてすべての情報を持っている訳
ではない


不完全情報によってどれだけ経済的な帰結
が異なるか?
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情報の経済学
大卒者が高卒者よりも高い収入
 大学で生産性を高める教育を受ける

企業に学士号を持つことは有用な情報をもたらし
ている
 企業は生産性の高い人は分らない


大卒であることは平均的に生産性が高いことを企
業に伝えている
 なぜ結婚適齢期になると女性はお茶とお花を習い
始めるのか?
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情報の信頼性

情報には価値があるが,他の財と異なる

一旦情報を得るとお金を払いたくなくなる

情報の信頼性

株屋が株価が上がることを教えてくれた.これ
は信頼できるか?なぜ自分で儲けないのか?

消費者保護法:誇大広告の禁止,すぐ痩せる!

広告が曖昧なわけ
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独占
マイクロソフト社は独占(monopoly)企業と呼
ばれる
 YKK(吉田工業株式会社)はファスナー業界の
国内市場の95%,世界でも45%のシェア
 MS社はパソコン市場を独占している
 独占企業は市場価格をコントロールできる
 この市場支配力により利潤が増える
 大きなシェア(市場占有率)を持つ企業を独占
的と呼ぶ.純粋な独占は希である.

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8
独占と市場価格
独占企業は価格
をつり上げる
価
格
独占だと供給曲線
は存在しない
M
PM
E
P*
需要曲線
数量
QM
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Q*
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独占の理由
他の企業が市場に入ってこない
 参入を困難にする要因である参入障壁
 希少な生産要素の独占
 規模の経済性~巨額の固定費用が必要.

 例:水道,ガス,電気.電話も以前そうだった
自然独占
 技術的優位性~技術的に優れていて参入阻止
 法的な保護~特許、著作権、医師免許
 医師や弁護士の所得が高い理由

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10
不完全競争の場合の価格と数量

企業はプライス・メーカー(価格設定者)である

利潤を最大にする企業はどんな市場構造でも
限界収入=限界費用
となる水準で産出量を決定する

完全競争市場では市場価格が限界収入
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限界収入と限界費用

限界収入(Marginal Revenue)~産出量を一単
位増やすときに得られる追加的収入

限界費用(Marginal Cost)~産出量をもう一単
位増加させたときの追加的費用
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利潤最大化
MR>MC → 産出量を増加させた方が
利潤が高まる
(収入の上昇が費用のそれを上回る)
 MR<MC → 産出量を削減した方が良い
(費用の削減が収入の減少を上 回る)
 MR=MC → 利潤が最大になる条件

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利潤
利潤最大
MR>MC
MR<MC
産出量増
産出量減
Q*
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産出量
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非正規雇用の割合は上昇している

正規雇用から転職する人の40%は非正規に

非正規から転職する人の24%が正規に

非正規社員比率38.2%、男女とも過去最高
に 2013/7/13 2:00日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1203R_S3A
710C1EA1000/仕事を変える時に、正社員を選ぶ
のは5年前よりも難しくなったといえる。

しっかりと勉強して正規職に就こう!
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新卒者の三年以内の離職率は上昇

就職したからといって安心してはいけない

学校を卒業し就職した人が3年以内に約三割が離
職する現状にある

大卒31%が3年以内に離職 10年3月卒、厚労
省まとめ 2013/10/29 13:37日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2901Q_Z2
1C13A0CR0000/就職先の業種別では、宿泊業・飲
食サービス業が51.0%、教育・学習支援業が48.9
%、医療・福祉が37.7%など。
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色々な市場

完全競争市場:
 限界収入=価格,MR=p
 産出量を増やしても市場全体への影響は軽微

独占:
 産出量が2倍ならば産業全体の産出量も2倍,価格
は下落

R=pQ 産出量増は価格は下落 Q(↑) →p(↓)

産出量が増加したときにどのくらい価格が
下落するかは市場構造による
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支払意欲から限界収入を計算
独占企業は価格を自由に設定できる
 しかし,買うかどうか消費者の意志による

消費者余剰を計算したアイスショーの例で限界収
入を計算しよう
 イチローの支払い意欲は10000円だった

イチロー以外にも石川遼,ダルビッシュ,北島康
介,亀梨がアイスショーを見ようと考えている
 ダルビッシュの支払意欲は8000円,石川遼は5000
円,北島は4000円,亀梨3000円.
 価格7000円ならばイチロー、ダルビッシュ購入

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買い手
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支払意欲(円)
イチロー
10000
ダルビッシュ
8000
石川遼
5000
北島康介
4000
亀梨和也
3000
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支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
イチローの支払い意欲
ダルビッシュの支払い意欲
10000
石川遼の支払い意欲
北島康介の支払い意欲
8000
5000
亀梨和也の支払い意欲
4000
3000
枚数
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3
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アイスショーのチケットは何枚売れる

価格が低ければ沢山売れる

価格<支払い意欲 → 購入

価格>支払い意欲 → 購入しない

実際に売れる枚数 → 価格=支払い意欲
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生産量1枚のときの限界収入
支払い意欲(円)
価格は10000円
10000
1枚まで売れる
販売量を0枚から1枚に
増やしたときに収入は
10000円増える
8000
5000
4000
3000
限界収入は10000円
枚数
1
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生産量2枚のときの限界収入
支払い意欲(円)
10000
価格は8000円
イチローからの売上げ
は8000円に落ちる.しか
し,ダルビッシュからの
売上げ8000円が発生
8000
販売量を1枚から2枚に
増やしたときに収入は
6000円増える
5000
4000
3000
2枚まで売れる
限界収入は6000円
枚数
1
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3
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生産量2枚のときの限界収入
支払い意欲(円)
10000
8000
5000
4000
3000
生産量を増やしたときに
限界収入に2つの効果
限界収入は6000円
・価格下落によって既存
の消費者からの売上げ
が落ちる(オレンジ)
・新規の顧客の収入が
入る(紫)
限界収入
=新規顧客効果
ー既存顧客効果
1
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枚数
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HW:他の生産量での限界収入を求めよ

生産量が0から1の時の限界収入は10000円

生産量が1から2の時の限界収入は6000円

生産量が2から3の時の限界収入は

生産量が3から4の時の限界収入は

生産量が4から5の時の限界収入は
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需要曲線=支払い意欲曲線

最後の一個の支払い意欲と費用(価格)が同じときは
それを購入すると考えていく

支払い意欲を大きいほうから並べて価格と支払い意
欲が一致している支払い意欲の個数が需要量

価格=支払い意欲⇒購入量

これは需要曲線と同じ

価格に対して購入しようとする数量

支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支
払っても良い金額
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支払い意欲曲線と需要曲線
価格(円)
各棒グラフは個人の支払い意欲
10000
8000
需要曲線
5000
4000
3000
枚数
1
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需要曲線から限界収入を求める

支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支
払っても良い金額であり需要曲線と同等の役割

限界収入を需要曲線から求めることができる

需要曲線と同様に曲線として数量ー価格平面に図
示する

限界収入曲線とは生産量を増加させたときの収入
の増額を曲線に表したもの
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限界収入曲線
支払い意欲(円)
限界収入は6000円
10000
生産量1枚の限界収入
は10000円
生産量2枚の限界収入
は6000円
8000
5000
4000
3000
1
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2
3
4
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枚数
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需要曲線と限界収入曲線
縦軸との切片は需要曲線と限
界収入曲線で共通である.
しかし,生産量が増えると需要
曲線の高さよりも限界収入曲線
の高さは低くなる.
価格下落によって既存の消費
者からの売上げが落ちる.
価格
A
需要曲線
E
価格 P
限界収入 P
限界収入曲線
数量
Q
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競争政策
価格が高すぎると非効率性が高まる
市場支配力の濫用






1.
2.
3.
大規模製造業者が下請け企業いじめ
大型小売店が納入企業に特別なサービスを要求
政府は積極的に競争の促進を実施している
独占禁止法(日本),反トラスト法(米国)
価格カルテル・談合の阻止
大きな合併の制限
優越的地位の濫用の防止
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自然独占

上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる.
独占に任せておいた方が良い

自然独占

政府の規制の必要性,自治体が運営

以前は電力,電話,CATVも自然独占だった.

しかし,技術進歩により今は違う!
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復習

独占は供給者が一人.

寡占は数社の企業が競争していてある程度
競争がある.

独占的競争は寡占よりも企業数が多いが,
完全競争よりも少ない.

限界収入は産出量を一単位増やすときに得
られる追加的収入

限界費用は産出量をもう一単位増加させた
ときの追加的費用
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