PowerPoint プレゼンテーション

第27回日本プライマリ・ケア学会一般演題
ICPC分類を用いた一次応急診療
所受診者の能動喫煙・受動喫煙
と受診理由・診断病名の分析
兵庫県淡路島・洲本市休日等応急診療所
日本プライマリ・ケア学会国際疾病分類研究会委員
山岡
雅顕
平成16年6月5日(土)6日(日) パシフィコ横浜
目的
能動喫煙および受動喫煙は種々の疾病リスクとなっているが、
一次応急診療所受診者の受診理由と診断病名が、能動喫煙
および受動喫煙と関連があるかどうかをICPC-2分類に基づ
いて分析した。
洲本市健康福祉館
(1階に診療所がある)
洲本市休日等応急診療所診察室
洲本市休日等応急診療所は平日の準夜間と休日に診療を行う年中無休の一次応急診療所
1年間の受診者数は、3,500~4,000人
対象・方法
研究デザインは症例対照研究。対象は2002年4月~2004年1
月の22か月間に一次応急診療所である洲本市休日等応急
診療所を受診した全6,684例のうち、初診患者でかつ喫煙歴
が判明している5,732例。ICPC-2分類による受診理由・診断
病名別に分析を行い、対照群は粗分析結果からバイアスが
想定される症例を除いた1,338例とした。能動喫煙の分析に
ついては成人のみとした。受動喫煙の分析については全年
齢を対象とした。喫煙者の比較対象とする非喫煙者からは受
動喫煙を受けている者は除いた。受動喫煙の有無は問診票
で「家庭や職場で、他人のタバコの煙を吸うことがあります
か?」という設問で確認した。
能動喫煙率と受動喫煙率
能動喫煙率
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
59.9%
59.1%
47.3%
21.9%
0.1%
0.0%
4.9%
3.2%
0-9
10-19
20-29
n=5,732
20.8%
30-39
48.0%
41.5%
25.4%
14.7%
40-49
26.1%
21.7%
14.3%
13.8%
50-59
年齢
3.8%
3.4%
60-69
70-80
受動喫煙率
7.7%
男
女
14.6%
0.0%
>80
全年齢
>20
n=4,704
(非喫煙者のみ)
70%
61.6%
57.0% 58.7%
47.7%
47.2%
60%
50%
40%
50.9%
40.5%
38.7%
38.1%
35.35.
7% 6% 36.5%
40.8%
37.6%
30.6%
21.4%
30%
20%
24.8%
17.8%
23.8%
男
女
11.5%
10%
0%
0-9
10-19
20-29
30-39
40-49
50-59
60-69
70-80
>80
全年齢
年齢
能動喫煙率(成人)は男性48.0%、女性14.6%、非喫煙者におけ
る受動喫煙率(全年齢)は男性37.6%、女性40.8%だった。
受診理由と診断病名
L03腰痛
N01排尿痛
17めまい
U
R
50投薬希望
S14熱傷・
火傷
R 96気管支喘息
0%0%
0%
S04腫脹(
限局性)
0%
S17擦過傷
1%0%
S02掻痒
1%
R
03喘鳴
1%
S16挫傷・
打撲傷
1%
S98蕁麻疹
1%
S06発疹(
1%
限局)
T03食欲不振
1%
H1%
01耳痛
1%
L20関節痛
1%
S12虫刺傷
1%
S18切創
1%
A 04全身倦怠感
1%
1%
D 02胃痛
S07発疹(
全身)
1%
1%
D 09嘔気
2%
R 74風邪
3%
その他
11%
受診理由
総受診理由数=10,980
A 03発熱
24%
R 05咳
12%
N 01頭痛
3%
D 06腹痛(
胃痛以
外)
4%
D 11下痢
5%
D 10嘔吐
5%
その他
15%
R 21咽頭痛
7%
R 07鼻汁
9%
診断病名
総診断病名数=6,118
L77足関節捻挫
H 82回転性めまい
N 01頭痛
17めまい
SN02掻痒感
0%0% 0%
D 71流行性耳下腺炎
0%
S 07発疹(
全身)
0%
D 82歯疾患
S 88接触性皮膚炎
0%
0%
F70感染性結膜炎
1% 0%
S 13動物咬傷
1%
D 83口腔疾患
1%
A 1%
03発熱
S 14熱傷・火傷
1%
D1%
12便秘
H 71急性中耳炎
1%
S 17擦過傷
1%
U 71尿路感染症
1%
A 72水痘
1%
1%
S 98蕁麻疹
2%
R 76急性扁桃炎
R 74急性上気道炎
38%
2% 打撲傷
S 16挫傷・
2%
R 78急性気管支炎
2% S 18切創
2%
S 12虫刺傷
2%D 87胃炎
2%
R 96気管支喘息
3% R 80インフルエンザ
5%
D 73急性胃腸炎
12%
※アルファベットと2桁の数字はICPC-2コードを示す
受診理由・診断病名ともに上位30についての分析をおこなった。
それぞれ全受診理由・診断病名の89%、85%を占める。
(各分析では分析対象の上位30について分析したため順位・内容が若干異なる場合がありま
す)
結果 能動喫煙と受診理由
受診理由
A03発熱
R21咽頭痛
R05咳
R07鼻汁
D11下痢
R74急性上気道炎
N01頭痛
D10嘔吐
D06腹痛
D09嘔気
D02胃痛
A04全身倦怠感
L20関節痛
S12虫刺傷
S18切創
N17めまい
P
オッズ比
0 .0 0 0 5
1 .5 1
0 .0 0 6 2
1 .4 5
0 .0 0 5 0
1 .4 9
0.2846
1.20
0 .0 0 0 6
1 .8 2
0 .0 1 1 9
1 .5 7
0.0549
1.43
0.7398
1.07
0 .0 0 3 4
1 .8 2
0.9963
1.00
0.2643
1.31
0.4897
1.20
0 .0 2 7 2
1 .7 9
0.3385
0.76
0.6283
1.15
0.3604
0.69
95%CI
χ2乗値
1.20
1.91 12.24
1.11
1.89
7.50
1.13
1.97
7.88
1.29
1.10
2.56
2.22
11.81
6.33
1.22
2.73
8.57
1.07
3.01
4.88
受診理由
U01排尿痛
T03食欲不振
L03腰痛
S13動物咬傷
R50投薬希望
S06発疹(限局)
S02掻痒
D19歯の症状
S07発疹(全身)
S98蕁麻疹
S16挫傷・打撲傷
S04腫脹(限局)
S17擦過傷
F76耳内異物
D12便秘
P
オッズ比
0.0971
0.49
0.2214
0.48
0.0611
0.36
0.6236
1.25
0.1588
1.84
0.4575
1.39
0.6236
1.25
0.2517
1.70
0.0661
2.40
0.5552
0.64
0.9560
0.97
0.8915
1.07
0.8218
1.11
0.8018
1.15
0.9710
1.02
※対象は成人の初
診患者2,651名、
5,131受診理由。
※対照群との間で
2×2表を作成し、
χ2乗分析を行った。
※赤字は有意差が
認められたもので、
95%信頼区間も示
した。
能動喫煙と受診理由で有意な関係が認められたのは、ICPCコード
別に、A03発熱(1.51。数値はオッズ比。以下同じ。)、R21咽頭痛
(1.45)、R05咳(1.49)、D11下痢(1.82)、D06腹痛(1.82)等だった。
能動喫煙と診断病名
診断病名
R74急性上気道炎
D73急性胃腸炎
R80インフルエンザ
D87胃炎
S12虫刺傷
S18切創
R76急性扁桃炎
R96気管支喘息
R78急性気管支炎
U71尿路感染症
S16挫傷・打撲傷
S98蕁麻疹
S13動物咬傷
S17擦過傷
H82回転性めまい
N17めまい
P
オッズ比
0 .0 0 1 0
1 .4 8
0.0583
1.36
0.1399
1.45
0 .0 3 6 5
1 .6 5
0.1932
0.70
0.5254
1.19
0 .0 0 0 0
4 .4 5
0.2030
1.53
0.6169
1.18
0 .0 3 8 5
0 .4 4
0.5597
1.22
0.9004
1.05
0.6236
1.25
0.6834
0.82
0.9667
1.02
0.4469
0.59
95%CI
χ2乗値
1.17
1.87 10.78
1.03
2.64
4.37
2.31
8.57
19.94
0.20
0.96
4.28
診断病名
P
オッズ比
D82歯疾患
0.0371
2.80
N01頭痛
0.8018
1.15
D83口腔疾患
0.4596
0.56
S14熱傷・火傷
0.9313
1.27
D12便秘
0.8018
1.15
S88接触性皮膚炎
0.9904
0.85
F76眼内異物
0.8816
1.09
U95尿路結石
0.7245
0.68
A03発熱
0.1647
0.19
L03腰痛
0.1162
0.17
F70感染性結膜炎
0.2975
1.78
S09爪周囲炎
0.7755
0.66
S02掻痒
0.5772
2.04
L77足関節捻挫
0.4711
0.31
S19その他皮膚損傷 0.2605
0.34
95%CI
1.06
7.39
χ2乗値
4.35
※対象は成人の初診患者2,651名、2,840診断病名 。
※赤字は有意差、青字は逆の関係が認められたもので、95%信頼区間も示した。年齢調整はしていない。
能動喫煙と診断病名で有意な関係が認められたのは、R74急性上
気道炎(1.48)、D87胃炎(1.65)、R76急性扁桃炎(4.45)、D82歯疾患
(2.80)であった。
受動喫煙と受診理由
受診理由
A03発熱
R21咽頭痛
R05咳
R07鼻汁
D11下痢
R74急性上気道炎
N01頭痛
D10嘔吐
D06腹痛
D09嘔気
S07発疹(全身)
D02胃痛
A04全身倦怠感
S18切創
L20関節痛
S12虫刺傷
H01耳痛
T03食欲不振
P
オッズ比
0 .0 0 7 4
1 .2 3
0 .0 1 6 2
1 .2 9
0 .0 1 4 2
1 .2 4
0 .0 1 3 6
1 .2 6
0 .0 0 8 1
1 .3 7
0 .0 0 9 6
1 .4 4
0 .0 0 1 0
1 .5 4
0.0758
1.22
0.1681
1.20
0.0636
1.39
0.1210
1.33
0 .0 1 2 5
1 .6 8
0 .0 1 5 7
1 .6 5
0.4140
0.83
0.1019
1.48
0.9663
1.01
0.3011
1.29
0 .0 3 7 6
1 .6 7
95%CI
χ2乗値
1.06
1.43
7.16
1.05
1.60
5.78
1.04
1.48
6.02
1.05
1.52
6.08
1.08
1.72
7.00
1.09
1.89
6.70
1.19
2.00 10.84
1.12
1.10
2.53
2.48
6.24
5.84
1.03
2.71
4.32
受診理由
S06発疹(限局)
S98蕁麻疹
R03喘鳴
S02掻痒
S17擦過傷
R96喘息
S04腫脹(限局)
S16挫傷・打撲傷
S14熱傷・火傷
R50投薬希望
U01排尿痛
L03腰痛
N17めまい
S13動物咬傷
D19歯の症状
S01皮膚疼痛
D12便秘
D20口腔症状
95%CI
P
オッズ比
χ2乗値
0.4324
1.23
0.0551
1.65
0 .0 0 5 9
2 .1 0 1.24 3.58
7.58
0.7296
1.11
0.8678
1.05
0 .0 4 3 5
1 .7 6 1.02 3.04
4.08
0.7877
1.08
0.5076
1.22
0.8966
1.04
0.5766
1.22
0.2487
0.65
0.5491
0.80
0.7344
1.13
0.0707
1.95
0.5264
1.30
0.1824
1.61
0.0811
0.46
0.1012
0.48
※対象は全年齢の初診患者5,732名、10,980受診理由。
※対照群との間で2×2表を作成し、χ2乗分析を行った。
※赤字は有意差が認められたもので、95%信頼区間も示した。
受動喫煙と受診理由で有意な関係が認められたのは、A03発熱
(1.23)、R21咽頭痛(1.29)、R05咳(1.24)、R07鼻汁(1.26)、D11
下痢(1.37)、N01頭痛(1.54)、D02胃痛(1.68)などであった。
受動喫煙と診断病名
診断病名
R74急性上気道炎
D73急性胃腸炎
R80インフルエンザ
R96気管支喘息
S12虫刺傷
R78急性気管支炎
S18切創
D87胃炎
S98蕁麻疹
S16挫傷・打撲傷
A72水痘
R76急性扁桃炎
H71急性中耳炎
S17擦過傷
S14熱傷・火傷
P
オッズ比
0.0109
1.22
0.0068
1.32
0.0491
1.32
0.0014
1.73
0.6716
0.91
0.6302
0.90
0.3414
0.80
0.0186
1.65
0.1586
1.39
0.8156
1.06
0.0436
1.63
0.2109
1.38
0.9735
0.99
0.8389
0.94
0.8297
1.07
95%CI
χ2乗値
1.05
1.43
6.48
1.08
1.62
7.33
1.00
1.75
3.87
1.24
2.43 10.16
1.09
2.49
5.53
1.01
2.63
4.07
95%CI
P
オッズ比
χ2乗値
A03発熱
0.3203
0.72
U71尿路感染症
0.3699
0.74
D12便秘
0.2289
0.66
D83口腔疾患
0.6255
0.85
S88接触性皮膚炎
0.5766
1.22
F70感染性結膜炎
0.3955
0.71
S13動物咬傷
0.0436
2.08 1.02 4.26
4.07
S07発疹(多発)
0.2296
1.58
D71流行性耳下腺炎
0.0528
2.13
S02掻痒
0.2187
1.67
N17めまい
0.8440
0.91
A76その他のウイルス性発疹 0.0256
0.19 0.05 0.82
4.98
N01頭痛
0.1772
1.82
L77足関節捻挫
0.1772
1.82
S84伝染性膿痂疹
0.1252
0.34
診断病名
※対象は全年齢の初診患者5,732名、6,118診断病名。
※対照群との間で2×2表を作成し、χ2乗分析を行った。
※赤字は有意差、青字は逆の関係が認められたもので、95%信頼区間も示した。年齢調整はしていない。
受動喫煙と診断病名で有意な関係が認められたのは、R74急性上
気道炎(1.22)、D73急性胃腸炎(1.32)、R80インフルエンザ(1.32)、
R96気管支喘息(1.73)、D87胃炎(1.65)などであった。10歳未満の
年齢層では、R74急性上気道炎(1.28)、A72水痘(1.78)、S06発疹
(限局)(5.63)が受動喫煙と有意な関係があった。
想定されるバイアス
喫煙のリスクを過大に評価するバイアス
・喫煙者は救急外来を受診しやすい and/or 非喫煙者はあまり救急外来を受診しない
・喫煙者はどんな症状でも訴えやすい and/or 非喫煙者は症状を我慢する・あまり訴えない
・(扁桃炎の場合)喫煙者の咽頭・扁桃が常時発赤しているので扁桃炎でなくてもそういう診断名をつけてしまう
・対照群に喫煙がリスクを低下させる因子となる症例が混入している
・受診理由・診断病名が多発する年齢層が対象群に少ない(年齢調整をしない場合)
喫煙のリスクを過小に評価するバイアス
・喫煙している あるいは 受動喫煙を受けているのにしていないと言うこと
・問診の喫煙欄について意図的にまたは気づかずに回答しない(特に小児の受動喫煙欄に親が記入しない)
・時々の受動喫煙を受動喫煙なしと記入すること
・急性疾患のため一時的に禁煙しているので普段喫煙しているにも関わらず喫煙していないと記入すること
・非喫煙者に禁煙から間もない喫煙のリスクが高いレベルの者が含まれること
・対照群に喫煙がリスクとなる症例が混入していること
・受診理由・診断病名が多発する年齢層が対象群に多い(年齢調整をしない場合)
・症例数が少ないこと(症例数が少ない受診理由・診断病名は、有意差が検出され難い)
その他留意事項
・受診理由はあくまで受診理由であってすべての愁訴についての有無を聞いたものではない(愁訴があっても本
人が言わなければ受診理由として記録されていない)
結論




一次救急患者において、能動喫煙および受動喫煙と関連して
いる受診理由・診断病名が多数ある可能性がわかった。特に
受動喫煙と受診理由(愁訴)の関連性は重要である。
今後、症例を積み重ねてバイアスを処理して再検討したい。
一次予防としては禁煙支援や受動喫煙対策が重要である。
能動喫煙・受動喫煙の有無は電子カルテにおける診断支援に
も利用できる可能性がある。
洲本市禁煙専門外来&禁煙支援センターホームページ
http://www1.sumoto.gr.jp/shinryou/kituen/
(詳細なデータを掲載しています)
※ 今週は禁煙週間です。禁煙に挑戦してみましょう!