大腸菌酸性膜リン脂質欠損株の 低浸透圧感受性に対する 機械刺激受容チャンネルの影響 細胞生化学研究室 奥田 芳子 pgsA 欠損株 wild (Kikuchi et al. 2000) Glycerol 3-phosphate type Δp gsA Phosphatidic acid CDP-diacylglycerol 0% PE PG PGP synthase (pgsA) Phosphatidylserine Phosphatidylglycerol phosphate Phosphatidylethanolamine Phosphatidylglycerol (PG) (PE) Cardiolipin (CL) 50% CL 100% others pgsA 欠損株は低浸透圧培地中で 生育が悪い。 Null pgsA mutant 400 400 350 350 300 250 300 klett unit klett unit wild type 200 150 250 200 150 100 50 100 0 0 50 0 100 200 300 minutes 400 0 100 200 300 minutes LB medium (565 mosM) LB medium minus NaCl (267.5 mosM) 400 低浸透圧ショック後にpgsA欠損株の細胞質体 積は縮小した。 (250 mosM → 125 mosM) (有山修士論文 2003) (%) Wild type Null pgsA mutant 1 min 5 min 大腸菌の低浸透圧応答 外膜 H2O Mechanosensitive channel(s) (MSC) の速やかな開口 細胞質膜 (内膜) イオン 細胞質 MscL (large conductance) MscS (small conductance) MscM (mini conductance) MscK (interaction with K+) 目的 予想: pgsA欠損株ではMSCの開閉調節が異常である • 大腸菌の3つのMSC遺伝子mscL, mscS, mscKをあらゆる組み合わせで破壊した株 を作成する。 • MSC破壊による低浸透圧耐性への影響 を調べる。 実験に使用した大腸菌 すべての株でrcsA,lacY遺伝子を破壊した pgsA+ pgsA- Wild type ΔmscL S301R S301RL S330R S330RL ΔmscS ΔmscK ΔmscL, ΔmscS S301RS S301RK S301RLS S330RS S330RK S330RLS ΔmscL, ΔmscK S301RLK S330RLK ΔmscS, ΔmscK ΔmscL, ΔmscS, ΔmscK S301RSK S301RLSK S330RSK S330RLSK 低浸透圧ショック後の生存率測定 LB培地でKlett40まで培養 ↓ 培養液を等量の830 mM NaClを含むLB培地と混合して 500 mM NaCl環境にする ↓ Klett120まで培養 ↓ NaClを含まないLB培地で500倍に希釈して低浸透圧ショック ↓ 適宜希釈 ↓ LB寒天培地にスポット ↓ 37℃で一晩培養 ↓ コロニーを計測して生存率を求めた 強い低浸透圧ショック後の生存率 survival (%) (1142.5 mosM → 270 mosM) L: mscL + pgsA S: mscS pgsAK: mscK 100 80 60 40 20 0 0% 0% 0% -LSK -SK -LK -LS -K -S -L wild type ショック前の生存率を100%とする pgsA-株はMSCを破壊すると生存率が回復した pgsA-株でMscLのみが存在するとき、低浸透圧 ショック後の生存に非常に有利 pgsA-株では一つのMSCから放出されるイオンが多い pgsA-株の低浸透圧ショック後の細胞質体積の減少は MSCの破壊により防げるか シリコンオイル濾過遠心法 D.W. (3 H2Oと14C-ラクトースの混合液) 大腸菌懸濁液 遠心 大腸菌がシリコン オイル層を通過し、 過塩素酸層で固定 される シリコンオイル 過塩素酸 細胞に取り込まれた 3Hと14Cの放射能 を測定 細胞質体積の算出方法 実験に使用したすべての株のlacY を破壊した。 外膜 細胞質膜 細胞質 H2O 透過スペース ラクトース透過スペース 細胞質体積 = (3H2O透過体積) – (14Cラクトース透過体積) 細胞質体積の算出方法 実験に使用したすべての株のlacY を破壊した。 外膜 条件 細胞質膜 1.ショック前後で細胞数が変化しない 細胞質 2.ラクトースが細胞質内に取りこまれない H2O 透過スペース ラクトース透過スペース 細胞質体積 = (3H2O透過体積) – (14Cラクトース透過体積) 条件1 細胞数が低浸透圧ショック前後で変化しない survival (%) 細胞質体積測定時の生存率 120 100 80 60 40 20 0 ショック前の生存率を100%とする wild type -L pgsA+ -S -K -LS pgsA- 生存率が90%以下の変異株は細胞質体積測定実験には不適当 であると考え、用いなかった。 条件2 ラクトースが細胞質内に取りこまれない 放射線ラベル添加タイミングの検討 3H volume (ul) 2.5 3 pgsA+ pgsA- 2.5 volume (ul) 3 14Cラクトース透過可能体積 2O透過可能体積 2 1.5 1 2 1.5 1 0.5 0.5 0 0 0 min 3 min 4 min ショック後のラベル添加タイミング 0 min 1 min 2 min 3 min 4 min ショック後のラベル添加タイミング pgsA-株は低浸透圧ショックと同時に放射線ラベルを添加すると、ラ クトースが細胞質内に取りこまれ、透過可能体積が大きく測定された pgsA‐株ではMscS, MscKの欠損により 細胞質体積の減少がわずかに緩和された relative volume of cytoplasm (%) (250 mosM → 125 mosM) ショック前の細胞質体積を100%とする 120 pgsA+ pgsA- 100 80 60 40 20 0 wild type -L -K wild type -L -S -K まとめ pgsA欠損株では • 強い低浸透圧ショック後の生存率の大幅な減少は MSCの欠損により回復した • 弱い低浸透圧ショック後の細胞質体積の減少は MSCの欠損によりわずかに緩和された MSCからのイオンや溶質の過剰排出がpgsA 酸性リン脂質欠損株の低浸透圧耐性異常の 一因である
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