いわき地区のコンクリート構造物のこれからを共に考え

社会インフラの
マネジメント
コンクリート工学研究室
岩城 一郎
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道路構造物の今後の管理・更新等のあり方に関する
検討委員会による7つの提言
国土交通省において,道路構造物の今後の管理・更新
等のあり方を幅広く検討するため平成14年6月に設置
(委員長:岡村甫高知工科大学学長)
1.アセットマネジメント導入による総合的な
マネジメントシステムの構築
2.ライフサイクルコストを考慮する設計・施工法の確立
3.構造物の総合的なマネジメントに寄与する
点検システムの構築
4.新たな管理体制の構築
5.技術開発と専門技術者の養成
6.支援策と制度の整備
7.情報提供と住民参加
2
大きく変化する社会情勢
膨大な社会資本ストック(2004年現在)
・土木構造物
■道路総延長 1,247,880km
■橋梁 146,082橋(橋長15m以上)
■トンネル 8,623カ所
■下水道普及率67% 管渠延長36万km
・建築物
■民間建築
■公共建築総延べ床面積51,000千m2
建設から
維持管理へ
高度経済成
長期から少
子高齢化社
会への移行
建設投資額(億円)
我が国の社会資本の現状と将来
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
土木
建築
0
1960
税収の伸び
悩み,財政
状況の悪化
1970
1980
1990
2000
年
我が国の建設投資額の推移(国土交通省 資料)
建設投資額
の削減
集中的
コスト意識を持った社会資本管理と
経営手法の導入
・維持更新コストの最小化,平準化
・事後保全から予防保全への転換
・アカウンタビリティの向上 等
社会資本
の老朽化
厳しい財政下でのメンテナンス
(国土交通白書より)
30000
橋の数
25000
その他
PC橋
RC橋
鋼橋
20000
15000
10000
5000
日本の道路橋建設数の推移
3
1996~2000
1991~95
1986~90
1981~85
1976~80
1971~75
1966~70
1961~65
1956~60
1951~55
1946~50
1941~45
1936~40
1931~35
アセットマネジメントの導入
1926~30
0
建設年次
アセットマネジメントとは?
• 「道路を資産としてとらえ、道路構造物の状態を
客観的に把握・評価し、中長期的な資産の状態
を予測するとともに、予算的制約の中でいつど
のような対策をどこに行うのが最適であるかを
考慮して、道路構造物を計画的かつ効率的に
管理すること」という考え方
• キーワード:点検,健全度評価,劣化予測,
性能評価,LCC(ライフサイクルコスト)評価,
コストの最小化・更新時期の平準化,
データベース,アカウンタビリティ
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アセットマネジメントの流れ
マネジメント
アセットマネジメント
予算計画・措置
投資計画
LCC評価
性能(機能)
評価・照査
対
策
劣化(機能低下)
予測
不確実性の評価
リスク管理
リスク評価
適切な安全余裕
信頼性解析
信頼性
点検
維持管理計画
メンテナンス
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アセットマネジメントの体系
アセットマネジメント
新設構造物の
計画・設計・施工へ
点検・対策の実施
Input
点検データ
Output
維持管理計画
劣化曲線
蓄積
精緻化
高度な
レベル
戦略的
収集
修正
詳細なレベル
具体的
なし
仮定
簡易なレベル
基本的
最初はラフでも
徐々に精緻化
できれば良い
マネジメント
アカウンタビリティの向上
管理者(またはコンクリート
技術者)
市民の合意形成
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アセットマネジメントにおける技術者の役割
点検の質:簡易な点検から詳細な
点検へ,高度な技術,定量評価
点検の質:簡易→詳細,
点検の量:頻度,継続性,データ数
高度な技術,定量評価
性能
ばらつき
簡易な点検
(データ収集)
詳細な点検
(データ蓄積)
供用
点検
の継
点検の量:頻度,継続性,
(N数)
続
要求性能
当初 簡易な
設計 点検後
設計耐用期間
実際
継続的かつ
詳細な点検後
供用期間
の延長
時間
現状分析と目標の設定
Inputとして
何があるか?
Outputとして
何を求めるか?
コンクリート技術者の
判断
身の丈にあった
アセットマネジメントの実現
アセットマネジメントは,
●コンクリート技術者により支えられている
●点検データと劣化予測に左右される
(点検データが無くても可能→点検データの質,
量が高いほどレベルが向上)
●市民との合意形成に活かされる
●計画・設計・施工へのフィードバックにも活か
される
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アセットマネジメントの目的
制度
予算
獲得
国
米国
社会的側面
マクロな視点
日本
技術的側面
ミクロな視点
マネジ
メント
市民
技術(力)
メンテ
ナンス 構造物
意識
説明
責任
みんなが得をするアセットマネジメント
市民(ユーザー)
少ない負担で安全
にして快適な利用
市民(ユーザー)への期待
◆主体的な参画
丈夫で美しく長持ちする
コンクリート構造物の実現
コンクリート技術者
シナリオに基づく合理的・
効率的なメンテナンス
(最適な手法選定,無理のない
作業,リスクの回避)
コンクリート技術者への期待
◆点検手法の合理化,効率化
◆劣化予測精度の向上,支援システムの構築
◆補修・補強に関わる新工法,新技術の開発
◆新たなマネジメント手法の提案
管理者※
LCC最小,支出の平準化,
市民の合意(事業の透明
性,適正な予算確保)
※コンクリート技術者が兼ねる場合あり
管理者への期待
◆マニュアルの整備,情報の公開
◆エンジニアの育成
◆共同研究(産官学)の推進,実験
フィールドの提供
◆PDCAサイクル実施
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アセットマネジメントの課題と対策
• ソフト>>人(技術者)
• コスト>>安全性
• 点検データの活用方
法?
• 劣化予測(劣化曲線)
の精度?初期値?
• やるべきもの(安全性
)とやらなくてよいもの
(コスト)の見極め
→画一的な維持管理か
青森県HPより
らメリハリの効いた維持
事後保全と予防保全の比較で 管理へ
は通用しない時期に来ている.
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我が国のアセットマネジメントを諺に例えると
• 溺れる者はわらをもつかむ:わら→小枝
• どんぶり勘定:ないよりまし→どんぶり→
枡→定量評価
• 三つ子の魂百まで(成熟するまで20年)
• コストと安全性,どちらが大事ですか?
• ファイナルアンサーを下すのはコンピュー
タではなく技術者です.
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まとめ
• アセットマネジメントは(コンクリート)技術者
に支えられている.
• 技術者一人一人がアセットマネジメントの概
念を理解し,これに基づきコンクリート構造物
の維持管理にあたる.
• アセットマネジメントは単なる金合わせのた
めのシミュレーションであってはならない.
• 場当たり的な対策を避け,根拠に基づく最適
な対策を講じる必要がある.
• 最後の判断は技術者に委ねられる.
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