会社の仕組み

『会社の仕組み』
(2013年度秋学期)
第ニ回 会社法の意義と制度について
担当: 樋口徹 ([email protected])
※ 配布資料は「 http://www.thiguch.net/ 」に掲載
代金
協力者
資源調達
(取引先/
家計/市 (人材・材料等)
場)
代金
会社
顧客
販売網を整備)
(消費者や
利用者)
財やサー
(加工し、流通 ビス提供
会社に必要な資源
人:
モノ:
金:
情報:
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会社とは:営利を目的とする社団法人
営利とは「財産上(経済的)の 利 益 を求めて活動すること」
(=金儲け=私益)『広辞苑』
対義語: 公 益 ( ↔私益)、非営利
社団とは「一定の目的のもとに結合した 人 の集合体で、団体
としての単一の組織をとしての存在を有するものである」
対義語: 財 団 (一定の目的のために結合された
財 産 の結合体)
法人とは「人ないし財産から成る組織体に 法 人 格 (権利
能力)が与えられたもの」『広辞苑』
対義語: 自 然 人(出生時点で権利能力が与えられる)
※法律の要件を満たした組織が所定の手続きを行った場合に、
権利能力を与えられ、法人となる。
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組織の分類
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組織の分類基準1:公式組織/非公式組織
公式組織とは「意図的に調整された複数の人間の活動や諸
力のシステム」( バーナード )。そこでは、組織の目的達
成のために、構成員の役割が定められており、組織内の各
構成員の活動を 調整 する仕組み(コミュニケーションや
制度等)が整備されている。
非公式組織は 自 然 発生的なものが多く、友人関係な
どのように共通の目的や役割分担が無くても構わない。非
公式組織は社会の至る所で発生し、公 式 組 織 の内
部でも発生する。非公式組織は社会生活や公式組織の業
績に影響を与える存在である。
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組織の分類基準2:法人格の有無
• 日本国内では、 民 法 によって、全ての法人は 民 法 あ
るいは他の法律の規定によって成立するとされている。
• 日本国内には様々な形態の法人が存在するが、その全てが特
定の法律に基づいて設立されていることになる。
• 全ての会社は 会 社 法 の規定に基づいて設立されている。
※法人の種類は、社会や世界的な流れを受けた規制緩和や特
定活動の推進などによって、流動的かつ多様になっている。
• 法人格を取得した方が経済・社会的に得かどうかは状況によっ
て異なる。しかし、本格的に活動する場合は、法人形態を採るの
が 一般的 である。
• その理由は、法人として活動した方が、個人で活動するより社会
的な高い 信 用 が得られ、そして法人として銀行口座開設や
不動産登記などの各種 契 約 を結べ、さらに 責 任 の
範囲を制限できるなどのメリットがあるからである。
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法人の種類と根拠法
主体
営利性
公益性
分類
種類(根拠法)
一般財団法人と一般社団法人(一般社団法
人及び一般財団法人に関する法律)
営利
非公益
会社
公益
公共
企業
民間
電気会社(会社法と電気事業法)/鉄道会社
(会社法と鉄道事業法) など
相互会社(保険業法)
非営利
公的
株式会社(会社法)/合名会社(会社法)/
合資会社(会社法)/合同会社(会社法)
非営利
非公益 中間的 労働組合(労働組合法)/信用金庫(信用金
庫法)/協同組合(各種の共同組合法)
な団体
/共済組合(各種の共済組合法) など
公益
広義の 学校法人(私立学校法)/特別民間法人(個
公益法 別法)/宗教法人(宗教法人法)/特定非営
人
利活動法人(特定非営利活動促進法) など
公益
独立行政法人(独立行政法人通則法と個別
公法人 法)/国立大学法人(国立大学法人法)/
特殊法人(総務省設置法と個別法) など
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会社(営利目的の法人)と出資者(株主)の関係
• 会社を設立し、運営するには 資金(お金) が必要。
※会社の設立に際して必要な経費や物は?
• その資金を提供するのが出資者あるいは株主となる。
※会社が倒産した場合、出資者あるいは株主はどこまで責任を負うべき?
• 無限責任とは、債権者に対して無限の連帯責任を負う。
※
合名会社
は社員(出資者)全員が無限責任を負う。
• 有限責任とは、出資者は出資した分以上の責任は負わない。
株式会社 ・ 合同会社 の社員(出資者や株主)は有限責任。
※ 合資会社 には無限責任と有限責任の社員(出資者)が混在。
• 株式会社では 所有 と 経営 が分離されている。
※
※株式会社に出資(所有)しても、必ずしも会社の経営に関わらなくてもよい。
しかし、出資した財産を守るために株主として
取締役の選任の際に
議 決 権
意 見
を表明したり、
を行使することができる。
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株式会社において、法人格は常に認められるか?
例外的に株主が有限責任以上の責任を負わされることがある。
A氏
千万円出資
T(株)
(設立)
1年後、1億円の負
債を抱えて倒産
原則的には、A氏の最大損失は 千万円 (※会社と株主は別の存在)
※会社法では、T(株)の債権者(取引先等)は債権を回収できない場合が発生する。
裁判所(判例)によって、株主が有限責任以上の支払いを命じられる
ことがある。
➀法人格を用いて法律の適用を回避している場合(法人格濫用)
株主が会社を実質的に支配していることを前提に、その株主が違法あるいは不
当な目的のために法人格を利用している場合。
②法人格が形骸化している場合(形骸事例)
実質的に一人の株主が会社の株式の大半を有し、会社と株主の業務や財産が
混同している状態で、株主総会などを無視している場合。
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▼会社を構成する人々
 社員 :会社法では会社の 持分 を有する出資者(株主)
 代表者: 代表取締役 や 執行役 などのように社内で大
きな 権限 を有するもの(顧客への発言などの行為に対して
会社 として責任を負う)
 支配人:使用人の中で、本店や 支店 の事業に関する権限
を有しているもの(顧客への発言などの行為に対して会社として
責任を負う)
 使用人:会社の 従業員 (物品の 販売 を除いて、顧客へ
の発言などの行為に対して会社として責任を負わない)
 表見 支配人:支配人のような 外観 を有するもの(その外
観を信じた第3者への発言などの行為に対しては会社として責
任を負うことがある)。
※会社の代表者や支配人は 商業登記簿 (公開)に登記する
必要がある。裁判上やその他において責任者として対応可能。 9
(会社法で認められた)会社の種類と特徴
外国会社や特例有限会社は除く
株式
合同
合名
合資
会社
会社
会社
会社
人的会社(社員の重視) 物的会社 人的会社(社員の個性が会社運
営に反映)
/物的会社(財産重視)
社員による業務執行
無関係
全社員が業務執行(定款変更や持
分譲渡には全員の同意が必要)
所有と経営の分離
分離
社員の責任(無限責任
有限社員(全社員)
/有限責任)
一体
無限責任 両方が
(全社員) 混在
※株式会社の場合は、機関設計や運営に規制が多い。
※合資会社や合名会社(無限責任社員存在)の場合、破たんした時には自己責
任となる一方で、社員への利益の配当が容易にできる。
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日航、きょう更生法申請(日本経済新聞2010/01/19)
政府、全面支援を表明へ
日本航空は19日、グループ中核2社とともに東京地裁に会社更生法の適用を
申請する。その直後に公的機関の企業再生支援機構が支援を決定。政府も通常
運航に支障が出ないよう全面支援を表明する方針だ(経営破たん⇒一時国有化)。
日航は機構の管理下で再建を目指す。機構は金融機関による債権放棄や資本
増強策などで日航の財務体質を改善。路線整理や人員削減などのリストラも進め
2013年までに再建を完了させる考え。日航の新会長には京セラの稲盛和夫名
誉会長の就任が内定、新社長は日航の中堅幹部から内部昇格させる方向で調
整中(一時国有化⇒100%減資・上場廃止⇒再建)。
更生法の適用申請後に機構が管財人と資金の出し手(スポンサー)になる。運
航や営業に支障が出ないよう燃料や機内食などの一般商取引や利用者特典の
マイレージは全面保護する。
日航は機構などから計6000億円のつなぎ融資を受け、機構は取引金融機関
などに総額7000億~8000億円の債権放棄を要請する。日航株について証券
取引所は更生法の適用申請時点で整理銘柄とし、その後1カ月間は売買できる
見通し。機構は株式の100%減資(=紙くず化)し、上場を廃止する方針。
大きく損した利害関係者は?
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東京電力は?減資は行われなかった。
実質国有化(国有化ではない。上場したまま再建を目指す。)
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