H:等級とカラー 2008年12月22日 単位名 大学院:恒星物理学特論IV 教官名 中田 好一 授業の内容は下のHPに掲載される。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 成績は出席とレポートの双方により決めます。 授業タイトル A: 赤色巨星をめぐって 2008年10月 6日 B: 赤色巨星構造の追究 2008年10月20日 C: ハヤシライン 2008年10月27日 D: スペクトル分類 2008年11月10日 E: ダスト光学 2008年11月 17日 F: 天体ダスト 2008年12月 1日 G: 赤外スペクトル 2008年12月15日 H: 等級とカラー 2008年12月22日 I: 2008年 1月19日 銀河系の赤色巨星 J: 系外銀河の赤色巨星 2008年 1月26日 G.2.分子層 G.2.1.準静的分子層(CO) Hinkle,K.H., Hall,D., Ridgway,S.T. 1982、ApJ 252, 697-714 χCyg 1.6μ Δv=3 視線速度 (km/s) 脈動と大気ショック面の動きに伴う視線速度変化 CO 1.6 (Δv=3) 、2.3 (Δv=2) 、4.6μ(Δv=1)ラインの 視線速度変化の観察 KPNO 4m + フーリエ分光 1.5ー5μスペクトル(分解能=5万) 1976-1979 3周期 10 0 -10 -20 +5 V等級 +10 +15 λ=2.3μ Δv=2 (1st overtone) 下の順位の高さで、 高励起線 J“=79-87 中励起線 J“=30-40 低励起線 J“= 0-24 と分けると、 励起温度 視線速度 高励起線 4000-2200 30km/s変動 低励起線 800 星の速度 λ=4.6μ Δv=1 (Fundamental) 励起温度 視線速度 300 7.8km/s =シェルの膨張速度 χCyg COライン 10 5 Vr 0 Δv=3 Δv=3 -5 Δv=3 Δv=3 Δv=2 HIGH -10 Δv=2 HIGH Δv=2 HIGH Δv=2 HIGH Δv=2 LOW -15 星 -20 -25 2500 3000 3500 JD(2440000+) 4000 COΔv=3 ラインの視線速度(左) 点は前原(1970)によるλ=8000A CNライン 速度積分による半径(右) 周期運動になっていない。 結論として、 (A)前回の脈動が終わり落ちてくるガスと現在の脈動で広がるガス の衝突でショックが生まれる。ショック面背後(4000-2000K) から CO Δv=3 (2nd overtone λ=1.6μm)、 Δv=2 (1st overtone λ=2.3μm High) が生ずる。 (B)星半径の10倍くらいの高さに、定常的な層が存在する。 温度はT=800Kで COΔv=2 (1st overtone λ=2.3μm Low)が存在する。 ライン幅はかなりの強さの乱流を予想させる。 (C)星の静的な大気モデルでは(B)のようなガスの存在はあり得な い。 非常にダイナミカルな現象が原因となっているのではな いか。その寿命は数周期と思われる。 (D) この層はマスロスの基盤となり、同時にSiOメーザーの舞台でも あるだろう。 G.2.2.準静的分子層(ISO) 辻、大仲、青木、山村. 1997 AA 320, L1-L4 ISO SWSスペクトルのモデルフィット β Peg M2III 辻らはISO SWSスペクトルをモデルでフィットした。1-30μmで5%以内に収 まったが、2.4-3.5μmが前ページの図で見るようによく合わない。 彼らは、(a)-(b)がH2Oの放射で良く説明できることに注目した。 H2O層のパラメターを単純な1層モデルで決めた結果、 H 2O βPeg g Her SW Vir Texc(K) 1250 1250 1250 N(H2O)(cm-2) 7・1018 2・1019 3・1019 R/Rs 2 2 3 4-4.5μm波長帯にも同様の考察を行い、さらに以下の結果を得た。 CO2 SW Vir RT Vir Texc(K) 750 1000 N(CO2)(cm-2) 1.2・1017 1.5・1018 R/Rs 3 2 辻は1988年にSW Virに対して、T=2000K、N(CO)=1020/cm2のCO層を 示唆している。以上の分子が同じ領域に異なる励起温度で共存しているのか、星 からの距離で住み分けているのかは今後の課題である。 青木、辻、大仲. 1998 AA 340, 222-231 SWS炭素星スペクトル モデルとの比較で注意す べきは、 CS 1s overtone4μm fundamental 7.3μm CO fundamental bandhead 4.6μm が異常に浅い点である。 これは、M型星と同じく 星から離れた分子層の放 射が吸収線を埋めたと考 えると自然に説明される。 この様に分子層の存在は最近強く示唆されているがその成因、構造など多くが 今後の課題として残されている。 H:等級とカラー H.1.等級とカラー m=ー2.5 log10( F / Fo ) F=対象天体のフラックス Fo=基準天体のフラックス m(λ) F(λ) log Fo(λ) =見かけ等級 0 のフラックス = αLyrae(ベガ)のフラックス(に近い) 0等フラックス(1) ベガ等級 logF(λ) λ F(mag=0,ν) バ ンド U B V Rc Ic J H K L M N Q λ(μ) 0.366 0.438 0.545 0.641 0.798 1.22 1.63 2.19 3.45 4.8 10.6 21 Fo(Jy) 1790 4063 3636 3064 2416 1590 1020 640 285 170 36 9.4 Bessell, Castelli,Plez 1998 Rieke,Lebofski,Low 1985 上の表は、波長λに対してFo(ν)が示されているので注意。1Jy=10-26W/m2/Hz 4 log F(ν) B V αLyr(Vega)と黒体輻射と比べる J と、 Fo(Vega U H )F(IRAS K ) L 青い波長帯で (Jy) 3 R I 黒体輻射から ずれ 2 遠赤外超 過 1 0 -0.5 0 0.5 1 1.5 log λ(μ) 0等フラックス(2) IRAS等級 αLyr(Vega) のスペクトルは10000Kの黒体輻射に近い。 IRAS(InfraRed Astronomical Satellite 1983)では、 温度T=10,000K, 立体角Ω=1.57・10-16の黒体円盤からの フラックスを0等として採用する。 3 x Fo( ) 1.57 1016 B (T 10,000K) 2.09 103 (Jy) exp x 1 1.4388 1.4388 x T (104 K ) m m λ(μ) F(IRAS ) Vega 12 25 60 28.3 41.5 6.73 11.0 1.19 9.5 100 0.43 7.7 H.2.HRダイアグラム -2 -1 最初に提案されたHR図。 0 Nature 93, 252 (1914) Russell, H. 1 縦軸=絶対等級 2 (10pcに置いた星の等級) 横軸=スペクトル型。 3 左から、B,A,F,G,K,M,N. 4 当初は進化図と考えられていた。 5 6 B A F G K M N 年周視差測定衛星 Hipparcos(1993年)に よる太陽近傍星。 縦軸は、絶対等級に 直されている。 横軸はカラー。(Iバン ドの波長は0.8μ)。 (A) LMC可視色等級図 LMPC 15.0 MS AGB 0.1GyrMS 16.0 V 17.0 SG 1GyrマスロスAGB先端 18.0 10GyrRGB先端 RGB 19.0 1GyrRGB先端 20.0 RC 21.0 22.0 -0.5 0 0.5 1 V-I 1.5 2 2.5 3 (C) Z=0.004 ( [Fe/H]=-0.7 ) 0.1Gyr(5.3Mo) 1Gyr (2.1Mo) 10Gyr (0.96Mo) -6 -5 -4 -3 -2 -1 V 0 AGB先端 1 赤色巨星枝先端 2 3 4 レッドクランプ 5 6 7 8 -0.5 0 0.5 1 1.5 V-I 2 2.5 3 3.5 (B) LMC赤外色等級図 10.0 1GyrAGB先端 AGB 11.0 K 12.0 JK O.1GyrMS 13.0 1GyrマスロスAGB先端 14.0 1GyrRGB先端 15.0 10GyrRGB先端 RGB 16.0 SG 17.0 RC M S 18.0 19.0 -0.5 0 0.5 1 J-K 1.5 2 (D) Z=0.004 ( [Fe/H]=-0.7 ) 0.1Gyr(5.3Mo) 1Gyr (2.1Mo) 10Gyr (0.96Mo) -10 -9 -8 -7 -6 AGB先端 -5 K -4 -3 赤色巨星枝先端 -2 -1 0 1 レッドクランプ 2 3 4 5 6 -0.5 0 0.5 J-K 1 1.5 2 (E) 銀極(左)と銀河中心(右)の2方向での赤外色等級図 銀極J-K=0.4で垂直に立ち上がるのはTHICK DISKに属する 色々な距離のレッドクランプ星。 銀河中心方向の色等級図は解釈が難しい。 (0, 0) 10' 16965 4 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 5 6 7 8 9 K K b=90 60' 3664 stars 10 11 12 13 14 15 16 -1 -0.5 0 0.5 J-K 1 1.5 2 2.5 3 -2 -1 0 1 2 3 J-K 4 5 6 7 8 9 H.3. 2色図 二つのカラーを縦軸、横軸にしたグラフを二色図と呼ぶ。その大きな特徴は、減 光が無いとき、2色図は距離に依らないことである。 左図ではU-Bの上がマ イナスになっている。 B-Vは黒体輻射と似 て、温度が下がると大 きくなる。 U-Bは1000Kから70 00Kの間は温度が下 がるとマイナス方向に 小さくなる。 モデル t=107 yr Z=0.02 (Bertelli 1994) AQ 2002 主系列星 K-M型主系列 星 K-M型赤色 巨星 巨星と矮星 Bessell、Brett 1988 PASP 100, 1134 左:巨星(P=105dyn/cm2)、右:矮星(P=10 dyn/cm2)での水蒸気量の比較 解離平衡 Po(H)=10、Po(O)=0.01, Po(C)=0.005 (dyn/cm2) 2 解離平衡 Po(H)=105、Po(O)=1, Po(C)=0.5 (dyn/cm2) 5 1 4 0 H2 O2 2 C2 OH 1 CH 0 CO H2O -1 CH4 H -2 O C -3 3 log P(dyn/cm2) log P(dyn/cm2) -1 -2 -3 -4 -5 -6 H2O -7 -4 -8 1000 -5 1000 2000 3000 温度(K) 4000 H2 O2 C2 OH CH CO H2O CH4 H O C H2O 2000 3000 温度(K) 4000 赤色矮星と赤色巨星のスペクトルの違い:主に水蒸気吸収が矮星で強いため M型星 (Te=3500K C/O=0.5) 1 CO吸収 0.5 log λFλ 0 水蒸気 CO -0.5 log g =0.0:赤色巨星 -1 log g =3.5:赤色矮星 -1.5 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 logλ(μ) 0.6 0.8 1 M5III 赤色矮星 M0 M5V G0 A0 赤色巨星 BB H.4.IRAS IRASは米・英・蘭3国により1983年に打ち上げられ た赤外天文衛星である。口径0.6mで12,26,60, 100μmの4バンドで全天サーベイ観測を行い、約24 万天体の赤外測光カタログ(PSC)を公表した。その 他に8-22μmにかけての低分散分光(LRS)を約5 千天体に対して行った。 LRS分類 LRS 1n log F W/m^2/μ -9.5 19 -10 1n: 輝線、吸収線なし。連続光のみ。 13269-2301 fλ∝λ-βの時、n=2β。 17123+1426 レーリージーンズでは 17123+1426 13269-2301 fλ∝λ-4であるから LRSクラス=18である。 15 -10.5 -11 -11.5 0.9 1 1.1 1.2 log(λ) 1.3 1.4 LRS=2n:光学的にはあまり厚くない酸素リッチなダストシェル 9.7μm放射バンド LRS 2n F(W/m2/μm) -9.5 -10 07209-2540 18050-2213 19126-0708 -10.5 21419+5832 28 7209 18050 26 19126 21419 -11 24 22 -11.5 0.9 1 1.1 1.2 log λ(μm) 1.3 1.4 LRS=3n:光学的に厚い酸素リッチなダストシェル 9.7μm吸収帯 LRS 3n -10.5 log F(W/m2/μm) -11 38 18136-1859 13581-5930 -11.5 18136-1859 13581-5930 20275+4001 18136-1859 34 -12 32 -12.5 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS=4n:炭素リッチなダストシェル LRS 4n -10.5 log F(W/m2/μm) 44 -11 42 03229+4721 19594+4047 03229+4721 19594+4047 -11.5 -12 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS=5n: LRS 5n -10.5 53 log F(W/m2/μm) -11 -11.5 23185+6055 50 20255+3712 23185+6055 20255+3712 -12 -12.5 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS=6n:非常に厚い酸素リッチなダストシェル LRS 6n -10.5 log F(W/m2/μm) -11 62 04395+3601 -11.5 10028-5825 04395+3601 10028-5825 18359-0551 64 18359-0551 -12 67 -12.5 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS=7n:極端に厚い酸素リッチなダストシェル LRS 7n -10.5 71 log F(W/m2/μm) -11 76 22176+6303 10197-5750 -11.5 22176+6303 79 10197-5750 17317-3331 17317-3331 -12 -12.5 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS=8n:コンパクトHII領域と惑星状星雲 高電離輝線 LRS 8n -10.5 81 log F(W/m2/μm) -11 09002-4732 80 12063-6259 -11.5 09002-4732 85 12063-6259 06176-1036 06176-1036 -12 -12.5 0.9 1 1.1 1.2 logλ(μm) 1.3 1.4 LRS TCD 1n-4n;F25>100Jy, 5n-7n:F25>20Jy 1 0.8 log F60/F25 0.6 0.4 0.2 1n 2n 0 3n 4n 5n -0.2 6n 7n -0.4 -0.6 -0.8 -1 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 log F25/F12 0.2 0.4 0.6 0.8 1 IRAS2色図の方向による違い -20<l<20 F25>5Jy 0.4 log(F60/F25) 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.6 120<l<240 F25>5Jy -0.8 0.4 -1 -0.8 0.2 -0.6 -0.4 -0.2 log(F25/F12) log(F60/F25) 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 log(F25/F12) 0 0.2 0.4 0 0.2 0.4
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