分光観測によるM1の膨張速度について 兵庫県立大学附属高等学校 自然科学部天文班 2年:宗光健太・柴田耕平 1年:青木・定本・春名・松原・津田・山上 研究・研究動機について 私たちは、以前より、超新星残骸や銀河、宇宙が 膨張していくことに興味がありました。 そこで、(M1)かに星雲の膨張速度を求めるた め、星雲の筋構造を分光観測しました。 考察について 今回の結果は、星雲が球状に広がっているとすると、 その動きを説明する事が出来ません。 そこで私たちは、膨張の仕方について2つの仮説を立 てました。 モデル①:ガスが大きな塊を作って、塊ごとに異なっ た方向に移動している。 (なおこのモデルでは、視線と垂直方向の動きは考慮 していない。) モデル②:星雲全体が反時計回りに回転しながら膨張 している 結果について (図1)M1の写真{撮影:坂田裕之氏} (図2)スペクトル画像 図中の囲いは今回解析を行った領域 観測・解析について 観測は2011年01月21日に岡山県の美星天文台 101cm望遠鏡で行いました。 画像解析ソフトBespec・Makariを用いて、水素の 輝線(Hα)や、窒素の輝線(NⅡ)のドップラーシ フト量を求め、筋構造の移動速度を求めました。 (図3)は、(図2)のスペクトルをx軸方向に波長、 y軸方向に輝度を取るグラフです。 グラフ中の幾つかの頂点は、各スペクトルの波長を 示しています。 観測された移動速度をM1の写真と重ねると、 (図4)のようになりました。 青くなっている部分は青方偏移つまり、我々に近 づいています。また、赤い部分は赤方偏移してい て、私たちから遠ざかっています。 筋構造の中には、私達に近づく物と、遠ざかる物 の両方が観測されています。 (図6)モデル②の説明図 反時計回りに膨張しているとすると、 左図のように説明すると、全体とし て左側が遠ざかり、右側が近づくモ デル②の動きを説明できる。 ま と め (図3) (図4) (図3)横軸に波長・縦軸にスペクトル の輝度を表したグラフ (図4)移動速度を写真を重ねたもの スペクトルをグラフ化したもの (図5)各輝線別の移動速度マップ (上段) ←Hα-左シフト・ Hα-右シフト・NⅡ-左側 -左シフト・NⅡ-左側-右シフト→ (下段) ←SⅡ-左側-左シフト・SⅡ-左側-右側シ フト・SⅡ-右側-左側シフト・SⅡ-右側-右 側シフト・・→ 今回対象の天体が非常に淡いこともあり、分光器の分 解能を上げると天体のスペクトルを得ることが出来ま せんでした。そこで、分解能低く設定したため、スペ クトル画像上で、1pix輝線の値を取り違えると、約 100km/sの速度差が出てしまいます。 分解能を上げ、より正確に観測するためには、口径の さらに大きい望遠鏡が必要だということが分かりまし た。 現在の観測技術では、視線垂直方向の速度しか測るこ とが出来ず、立体的な動きを観測することが出来ませ ん。技術の進歩により、立体的な動きが観測できるよ うになることが待たれます。 謝 意 分光観測をするにあたって、大変お世話になりました、 美星天文台の綾仁天文台長様、村上研究員様、また今 回の研究をご指導下さいました、西はりま天文台の時 政研究員様に厚く御礼申し上げます。 (図5)
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