進化経済学の到達点と展望 進化経済学会オータムコンフェランス 「進化経済学の次なる挑戦課題」 2006.9.30 京都大学 進化経済学の競争力 塩沢由典 進化経済学の二つのモデル 加上モデル 伝統的経済理論の前提の上に 進化経済学の有利に展開できる領域で 自律モデル 進化経済学は独立した理論をもつ統一的 な学問 進化経済学ハンドブック「概説」の立場 進化経済学とはなにか 進化の視点で経済をみる。 ここまでは合意できる? 進化とはなにか。 なにが進化するか。 進化する諸カテゴリー 商品・技術・行動・制度・組織・システム・知識 「進化」視点の重要性 経済の主要カテゴリーが「進化するも の」として捉えられる。 分析領域・分析視角の拡大 既成の経済学>>与件として なぜ進化は重要なのか なぜ進化は普遍的か 複雑さ、限定合理性 発見・創造・革新・戦略 競争の場 進化経済学の優位な議題・領域 経済学として競合する領域 政策思想としての独自性 社会に対するアピール&メッセー 教育の素材・題材 学問としての豊饒性 進化経済学の優位な議題・領域 1 進化の事例:進化の圧倒的事実 「進化」のブーム 約10年前から 『ハンドブック』事例編 63項目 個人では集められない。学会の事業。 教育上も必要。 「変化」vs.「進化」 商品開発の場 マーケティングへのヒント 進化経済学の優位な議題・領域 2 「制度」よりも主体的な「行為」 企業の戦略行動 木村誠志 徳丸宜穂 「どこを突いていくか」 自由度 環境設定(制度・状況) 行為は唯一には決まらない。(最適化) 非常に多数の可能性の中から選択される。 優劣は簡単には判定できない。 進化論的な「飛躍」の意味 イノベーション 戦略的行動 俳句を例に取ると 鑑賞 柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 春風や、堤長ごうして家遠し 牡丹散って打ち重なりぬ二三片 創造 作れるか 50^(17)の中から選出 意思決定論 「意思決定入門」2005・2006 梅田大学院コンソーシアム 中島義裕氏と共同、企業の中堅社員相手 7回 WEBページ www.shiozawa.net 決断・とっさ・合意形成・思考習慣・RO 選択肢の集合から選ぶ? 解決策・戦略を発見する・作り出す。 経済学が解を計算する必要はない。 そういうことを必要としない経済学を作る。 経済学として競合する領域 1 7.新古典派のドグマとアノマリー 均衡・価格関数・売りたい・最適化・ab ovoの構成・数学崇拝・方法論的個人主義 収穫逓減・収穫逓増 収穫逓減 批判 4.7 収穫逓増 どう扱うか 4.7 収穫逓増 補論 新古典派内の多くの収穫逓増理論 7.5 経済学として競合する領域 2 『ハンドブック』 概説 4.市場経済の諸原理 相対取引・交換の原理・取引過程 システム論 切り離し・重層的決定 5.分析の枠組み 過程分析・関連理論・シミュレーション・歴史研究/ 実証研究 6.現代経済の分析例 企業の生産量決定・経済全体 経済学として競合する領域 3 収穫逓増をどう扱っているか。 マーシャル 内部経済・外部経済>収穫逓 増を取り入れるため スラッファ 論理を徹底、 価格の引き下げか販売費用の増加 1940-50年代の限界生産性論争 収穫逓増:Normativeな条件 Alchian:進化論で考えると Friedman: 経済学として競合する領域 4 収穫逓増への回帰 Kowledge & theWealth ofNations 2006 ウォーシュ ボストン・クローブ誌コラムニスト ピン工場と見えざる手 D. 内生的成長理論 Romer 国家単位の技術知識=外部経済 企業内の収穫逓増問題は扱えていない。 政策へのゆがみ 経済学として競合する領域 5 他の収穫逓増経済学 Buchanan & Yoong The Return to Increasing Returns 1995 Lucas Krugman New Trade Th. Yang “Inframarginal approach” 基本的に外部経済による収穫逓増の取り 込み Brian Arthur 経済学として競合する領域 6 マクロ経済学のミクロ的基礎付け 1970 ケインズ派も反ケインズ派も Non-Walrassian、新しいミクロ理論を作るという 動きはあった。流産? 新古典派による反ケインズ・マクロ理論 一般均衡理論自体の展開 適用領域の拡大 例:貨幣経済学 理論:Sonnenschein, Mantel.Debreu 模索の安定的収束はいえない。 経済学として競合する領域 7 ミクロ的基礎付けの成果/結果 合理的期待形成 リアル・ビジネスサイクル理論 内生的成長理論 大統領の経済学 信念派:マネタリズム、サプライサイド 理論派:ミクロ的基礎付け ケインズ経済学とはなんであったのか 経済学として競合する領域 8 進化経済学のメッセージ? 政策思想としての独自性 1 マクロ経済政策として? これはかならずしもなくてもよい。 システム・コントロールの放棄 構造改革・市場経済化 規制緩和と民営化 反対・抵抗でよいか? 進化の視点、検討の蓄積 新しい視点は? 政策思想としての独自性 2 独自の視野・視点から問題提起 例:産業構造の変化 就業者構成比(日本1920-2000) 100% 80% 60% その他 40% 第3次産業 第2次産業 20% 0% 第1次産業 1920年 1930年 1940年 1950年 1960年 1970年 1980年 1990年 2000年 出所:総務省統計局「国勢調査結果の時系列データ」第9表産業(大分類), 男女別15歳以上就業者数-全国(大正9年~平成12年)より作成。 ものつくりの就業人口 Petty-Clarkの法則 経済発展につれて人 口構成が第1次産業 から第2次産業、第3 次産業へと移動 Colin G. Clark, 1905-1989 2つの軌道 新産業が経済成長を牽引する循環 需要創造(お金を使いたいもの・こと) 新製品・新サービス イノベーション 良循環が経済成長と産業転換を刺激 転換が遅れ、構造的に停滞する循環 買いたいものなし。 新製品・新サービスなし 生産、投資、賃金支払いが停滞 悪循環が悪循環を作りだす。 政策思想としての独自性 3 新産業・新需要の開拓 なにが必要か クラスター、エコシステム J.Jacobs「都市の経済学」 景気政策 需要刺激政策から需要創造政策へ 再チャレンジ あまりにもお粗末? 社会に対するアピール&メッセージ 経済進歩の驚異 イノベーション、新商品開発のヒント 新しいライフスタイルの提案 倫理学・当為としてでなく 戦略行動・意思決定 教育の素材・題材 経済学教育の内容をどうするか 新古典派経済学 非現実性については学生も直感している。 「教科書」「検定」>>経済学の制度化 社会・企業にとって、いまの経済学教育 でよいか。 『ハンドブック』事例・諸学説 学問としての豊饒性 1 一番の勝負どころ 新しい知見をいかに生み出せるか。 政府に役に立つ「政策」だけでなく 社会認識 何が豊饒性を担保するか 均衡理論:>理論の構造的閉塞 問題意識の正当さ 方法/Tool 『ハンドブック』関連理論 学問としての豊饒性 2 経済学の3世代 古典派 文学的 新古典派 数学的 数学で解ける範囲の限定性 閉塞状況 最適化・均衡という道具に範囲を限ら れている。 21世紀の経済学 新しい研究用具・分析用具 ABS もっと議論を まとめ 21世紀後半の経済学者・関心のあるも のは、われわれの経済学をどう評価す るか。 そのなかで、進化経済学はどういう存在 でありうるのか 学問における競争>外部環境 学問構築・発展の努力>内部環境をどう 整備していくか。戦略的行動が必要?
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