アトラスシリコン半導体飛跡検出器:ATLAS Silicon

LHCPhysicsPosterV3J, http://atlas.kek.jp/sub/poster/index.html
LHC計画で期待される物理
1. ヒッグス粒子の発見
<
質量の起源を求めて
>
20世紀後半、著しい理論・実験の発展により素粒子物理学では
素粒子の「標準理論」が構築されました。標準理論は数多くの
精密実験により検証されました。その基本は、
(1)物質はクォークとレプトンの3世代粒子から構成される
(2)それらの間の3種類の力はゲージ粒子により媒介される
(3)素粒子の質量の起源はヒッグス粒子である。
の3項目です。(2)の力は全て「ゲージ理論」という美しい数学
的枠組みで記述されます。
「標準理論」の世界。ヒッグズ粒子のみ未発見
南部陽一郎が唱えた「自発的対称性の破れ」をP.W.ヒッグスが
発展させ、真空中には凝縮した「ヒッグス場」が満ちていると考
えました。このヒッグス場が素粒子の動きを妨げ、現在我々の住
む質量のある世界になったと考えられています。
ヒッグス場が存在すればヒッグス粒子が少なくとも1種類存在し
ます。しかし既存の実験ではヒッグスは未だ発見されていません。
LEP実験で除外された
ヒッグス質量の範囲
アトラス実験でヒッグス粒子を確実に捕える
ヒッグス粒子の質量はLEP実験の直接探索
から114.4 GeV 以下に存在しないことが
分かっています。理論からの制限、また
間接的な測定からもヒッグス粒子は400GeV
よりも軽いことが予想されます。アトラス
実験では運転開始3年程のデータ量で、これら
全ての質量領域において発見能力を持ちます。
つまりヒッグス粒子が存在すれば、アトラス
実験では確実に発見することが出来ます。
TEVATRONの間接測定
によるヒッグス質量への制限
ATLAS実験の
ヒッグス粒子発見能力
2. TeVエネルギースケールに展開する新しい物理パラダイム
超対称性粒子の探索
LEP実験の精密測定からTeV領域に超対称性
粒子群が存在することが強く示唆されてます。
これは超対称性理論が提唱する、通常の素粒
子に対応した新しい粒子群で(重いために未
発見)、その存在により宇宙初期相当の高エ
ネルギーで3つの「力の大統一」が実現出来
ます。
隠れた次元を探る
超弦理論が予言する10次元の世界
において我々が4次元の膜(ブレ
ーン)に貼りついていると考える
のがブレーンワールド宇宙論です。
LHCのエネルギーでは重力子の直接
生成も可能で、余剰次元に逃げ込む
重力子の効果を観測することが出来
ると期待されています。
標準理論では未解決だったエネルギーの階層
問題、宇宙の暗黒物質問題等にも解を与え、
現在最も有力視されている理論です。確認さ
れれば、素粒子の種類は現在の約2倍に増え、
素粒子・宇宙物理学にとって革命的な発見に
なります。ATLAS実験は最初の1ヶ月で1TeV
まで、1年で2TeVまでの質量領域で超対称
性粒子を発見する能力があります。
LHCPhysicsPosterV3J, http://atlas.kek.jp/sub/poster/index.html