6章 仮説検定の基礎 6.4成功率の検定 ■二項確率関数による検定 [例4] 横断歩道の自動式信号 時間の 2 割 青信号 しかしタイミング良く渡れることが多い 10 回の記録 6 回は待たずに渡れた 検定問題: [単なる偶然変動] 渡れる確率 0.2(= p0) か? (H0 : p = p0) [センサー付き信号] それとも 0.2 を超え ているか?(H1 : p0 < p) 使用する性質 待たずに渡れる回数 = X 仮説 Ho の下で X ~ 二項分布(試行回数 n = 10, 成功の確率 p = 0.2) 観測値 x = 6 のような(対立仮説 H1 の方 向への)乖離が起きる確率を計算可能。 二項分布(n = 10, po = 0.2 ) p(x) 30% 0.3 27% 20% 0.2 確率合計 = 有意水準(P値) 11% 0.00% 0.00% 0.01% 0.08% 3% 0.55% 9% 0.1 x 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 求める確率(有意水準、P値) 二項分布(テキスト p.276 表) P 6 ≦ X | n 10, p 0.2 1 P X ≦ 5 | n 10, p 0.2 ≒ 1 0 .994 1 0.006≒ 167 (統計的)結論 仮説(Ho : p = po)が正しいとすれば、 標本のように大きな値が出現する確率は 0.6 %(167回に1回)。 (偶然変動として)稀な事象 ⇒ この結果は有意(偶然変動ではない)。 よってその信号には「横断者を検知する機 能がある」と考えた方が良いだろう。 ■標準正規近似による検定 [例5] NO 40% YES 60% ある法律の制定 ある政治家の主張 『有権者の 60% の支持がある』 n = 400 人の有権者の無作為標本 有意水準 5% で、この政治家の主張を 「否定」するには、支持者の標本割合 pˆ が どのくらい小さいことが必要か? 仮説 H0: p = 0.6 (= p0) 対立仮説 H1: p < 0.6 二項分布(n = 400, p = 0.6) の正規近似 pˆ ~ 正規分布 平均 p, 分散 2pˆ pq / n を用いて 有意水準 5% の 左片側検定を行う。 ← 左 5% 0.02 二項分布(n = 400, po= 0.6 ) と その正規近似 0.04 0.03 0.01 ^ p 0 0.7 0.69 0.68 0.67 0.66 0.65 0.64 0.63 0.62 0.61 0.6 0.59 0.58 0.57 0.56 0.55 0.54 0.53 0.52 0.51 0.5 1) 標準正規分布表より 左片側 5 % 点は z0 ≒ –1.65 (1.645) 2) よって、仮説 p = p0 (= 0.6) の下で pˆ po P Z ≦ 1.65 pˆ pˆ 0.6 P ≦ 1.65 0.61 0.6 / 400 ≒ 0.05 3) 有意水準(P値) 5% となる標本割合 pˆ の範囲(棄却域) ˆ ≦ 0.6 1.65 0.61 0.6 / 400≒0.56 p 結論 400人の調査における支持者の割合が 0.56(56%)以下であれば、 「仮説: p = 0.6」は有意水準 5% で棄却さ れ、政治家の主張は否定される。 6.5 成功率の差の検定 0 [例6] GROUP 1 GROUP 2 50 100 150 152 132 200 48 68 船酔い薬 銘柄 A 銘柄 B 200人×2グループの船員 船酔いしなかった人数 GROUP 1 : 152人、GROUP 2: 132人 検定問題: 船酔いしない確率 p1 = p2 ? 使用する性質 2つの正規変量の差 ˆp1 ~ 正規分布 平均 p1 , 分散 2pˆ 1 p1q1 / n1 pˆ 2 ~ 正規分布平均 p , 分散 かつ独立なら 2 2 pˆ 2 p2 q 2 /n 2 ˆp1 pˆ 2 ~ 正規分布 平均 p1 p2 , 分散 2pˆ 1 2pˆ 2 仮説 H0: p1 – p2 = 0 対立仮説 H1: p1 – p2 ≠ 0 仮説の下で ˆp1 p ˆ 2 ~ 正規分布 平均 0, 分散 2pˆ 1 2pˆ 2 分散 2 pˆ 1 2 pˆ 2 p1q1 p2 q2 n1 n2 仮説 p1 p2 p の下で 分散 標本値 2 pˆ 1 2 pˆ 2 1 1 pq n1 n2 x1 152 x 2 132 pˆ 1 , pˆ 2 n1 200 n2 200 20 pˆ 1 pˆ 2 0.1 200 x1 x 2 284 pˆ 0.71 n1 n2 400 大標本法を使って p pˆ とすると pˆ pˆ 1 2 1 1 0.711 0.71 ≒ 0.045 200 200 よって標本のような乖離が起きる確率は、 標準正規分布を用いて pˆ 1 pˆ 2 0 .1 P Z ≧z 2.22 pˆ 1 pˆ 2 0.045 1 ≒ 0.0132 2 0.0264≒ 38 ←2.5% 2.5%→ 5%→ 1%→ n(0, 1) ←1% ←5% Z -4 -3 -2 -1 0 1 2 2.33 2.22 1.96 1.64 -1.64 -1.96 -2.33 =z 3 4 (統計的)結論 仮説(Ho : p1 = p2)が正しいとすれば、 標本のように大きな値が出現する確率は 2.6 %(38回に1回)。 (偶然変動として)やや稀な事象 よって船酔薬銘柄 A, B が「同じ効き目を持 つ」という仮説は、疑わしくなる。(より 明確に差があることを示したければ、さら に実験を行ってデータを集める)
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