大型バイオマス発電の事例(つづき) チップ燃料代の3分の2は発電事業者に。 グリーン発電会津燃料代内訳 (円) チップ加工 工場内運搬 諸経費 会津発電(チップ乾燥経費?) 林 業 計 3,000 1,500 500 5,000 5,000 15,000 (出所)林経協季報2013.12より 発電所調達コスト12000円(水分40%)=15000円(水分50%) Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 0 家具工場に見る残材バイオマス利用 乾燥した「高級残材」を大型の蒸気ボイラーで燃焼。 手動での燃料投入+灰の処理。人件費負担・労働衛生上の負担。 そもそも、家具工場での蒸気利用はわずか。多くは、低温熱利用。 ボイラーでは低質燃料を使用、家具工場残材はペレットなどの付加価値に高 い使い方を。 国産ボイラーの限界。(バイオマスボイラーとは似て非なるもの)。 乾燥した木片を燃料として人力で投入 家具工場に山積みされた残材(木片) 残材の徹底利用こそバイオマスの原点 工場残材、林地残材等、残材はすでに大量に発生。 丸太の5割以上は工場残材。工場残材の付加価値をいかに高め るかは、林業・木材産業の国際競争力強化のためにも不可欠。 工場残材のうち、もっとも付加価値の高いのは製材端材からつく る製紙用チップ。しかし、国際的に低い価格で取引。 それ以外の部分はゴミ同然。バークはカネをかけて処理。 残材をエネルギー利用することによって、ゴミが宝に。 より大量の燃料調達も可能。 大型のボイラーであれば、何ら問題ないはず。 しかし、日本のボイラー技術では、残材利用が困難。 発電用の欧州製ボイラーの輸入は事実上ムリ。 2 「ごみを宝に」することができない日本の技術 林地残材 工場残材 バーク 剪定枝 日本の燃料 3 バイオマス熱利用も模範事例なし 大きすぎる。 稼働を止めてしまった。 苦労して稼働させている。 コストが下がらない(バイオマス燃料価格は、石油の半分だが・・)。 建設費が、ドイツの数倍。 ボイラーの要求する品質基準(主に水分)を満たすチップを調達で きない。 サイロが小さすぎて、頻繁に燃料供給しなければならない。 日本のバイオマスボイラーの実態 体育館の床暖房用。 燃料がつまるように設計し 熱需要が小さく、変動も激しいため、 たとしか思えない燃料供 バイオマス利用には不向き。 給装置。 燃料貯蔵とボイラーの距離が50m! 園芸用で微妙な温度制御が必要なの に、貯湯槽なし。 5 その背景 バイオマスは連続運転が基本。オフピーク時に貯湯槽に蓄熱⇒熱需要に合わせ たボイラー規模の決定が重要。 ボイラーによって対応できる水分が異なる。小型の場合、一定以下の水分管理 されたチップ。 しかし、ボイラーメーカーは、熱需要にかかわりなく大きいものを売りつける、「生 チップ用ボイラー」と称して販売するなど。 バイオマスの特性を十分に理解したうえでの設計が不可欠。欧州にはそのため のマニュアルが存在。 ボイラーメーカーも、適切な施工・メンテナンスのため、施工会社に研修を行うの が一般的。 欧州製ボイラーメーカーの日本代理店には、そうした訓練を受けた人材はいない のでは? 日独木材価格の推移 21世紀に入り、ドイツは丸太価格、チップ価格の大幅なhき上げに成功。 日本はむしろ下落。林業疲弊の要因に。 日独丸太価格の比較 200 日独チップ価格の比較 2002=100 200 1万4,000円 180 160 160 140 140 120 120 9,000円 80 2006 日本 80 60 2004 7,000円 100 日本 2002 ドイツ 180 ドイツ 100 2002=100 2008 2010 2012 (出所)農林水産省木材価格統計調査、ドイツ農業消費者保護省木材市場報告 (Holzmarktbericht) (注)2002年の値を100として指数化。日本はスギ中丸太(径24~28㎝)、ドイツ はトウヒ製材用材クラスB。価格は、林道引き渡し価格。 60 2002 2004 3,000円 2006 2008 2010 2012 (出所)農林水産省木材価格統計調査、ドイツ農業消費者保護省木材市場 報告(Holzmarktbericht) (注)2003年の値を100として指数化。日本は針葉樹チップ用丸太。ドイツはトウ ヒ。林道引き渡し価格。 4.日本とドイツの違いの背景 再エネの種類別特徴と発電・熱利用の整理 再エネの多様な種類(太陽光、風力、バイオマス、地熱等)。 発電は大型になりがち、地域への還元をどうするかが課題。 熱利用は、地産池消の典型。熱の供給者も利用者もメリットが多い。 最終エネルギー消費構成 日本 輸送燃料 25% 熱 49% 電力 26% 9 風力・太陽光とバイオマスの違い 風力・太陽光は発電。 バイオマスは、熱+発電(熱電併給)。 バイオマスの比率は熱の9割、発電の3割。 日本も潜在的には同じ。 GWh ドイツの再生可能エネルギー構成(2013年) 160,000 140,000 地熱 120,000 太陽熱 100,000 太陽光 バ イ オ マ ス 80,000 60,000 40,000 風力 水力 廃棄物系バイオマス バイオガス 20,000 木質バイオマス 発電 熱 (出所) ドイツ再生可能エネルギー統計2013 10 エネルギー政策体系 ドイツのエネルギー政策の重点は、 気候変動問題(CO2削減) 地域貢献 個人・中小企業の積極参加 そこからおのずと導き出されるのは、 エネルギー効率2割にしかならないバイオマス発電はありえな い⇒コージェネ 小規模を優遇する措置 など 11 再生可能エネルギー普及拡大を支える組織・機関 応用科学(applied science)に特化した大学(Hochschule)の存在。 現場密着の研究+人材養成。 卒業すれば、現場で実践する知識・技術を身に着けることができる。 全国各地に存在。 エネルギー・エージェンシー(Energie Agentur) 市民への普及啓発・再エネ利用のサポート。 地域の施工会社の紹介・相場など。 Stadtwerke 地域にあるエネルギー供給会社(自治体が出資)。 再エネ投資・コージェネ・地域熱供給網整備などの担い手。 エネルギー・エージェンシーと共同で、市民出資の受け皿にも。 その他 Fraunhofer Institut(応用科学研究所) 。 FNR (バイオマスに関する助成金申請・運用等の専門アドバイス)。 C.A.R.M.E.N(農林業資源マーケティング・エネルギーネットワークセンター)。 12 再生可能エネルギーコンサルタント・運営会社 エネルギー協同組合。 コンサル会社。最近では運営も手掛ける事業会社的性格も。 バイオマス・バイオガス地域熱供給網整備。 風力・太陽光の運営等。 各地域に大小さまざまな会社が存在。 Solarcomplex、 Energiequelle等。 大手コンサル会社 juwi。 コンセプトづくりから、設計・建設・ファイナンスまでをサポート。 運営主体にはならない。 誰もが参加できるオープンなシステム。 日本のように、案件発掘から設計・施工・運営までを1社が行うクローズドモ デルでは、広がりがでない。 13 再生可能エネルギーを支えるシステム 再生可能エネルギーは新しい分野。 小規模分散型であり、その担い手は個人や中小企業。 それぞれの自助努力では限界。 再生可能エネルギー普及のための原理・原則を整理・共有化。 誰もが参加できるシステム。 どこにでも存在する資源であり、システムで支えれば、普及を加速化することが できる。 ドイツの事例を見れば明らか。 14 日本の課題 エネルギーの政策体系があいまい。 30年後をにらんだ最優先課題・目標は何か。 FITは再生可能エネルギー発電量増加だけが政策の最優先課題? システム不在で現場任せ。 再生可能エネルギーは新しい分野。地域の人々が自助努力でやるには ハードルが高い。 大手資本中心になりがち。 小規模分散型のエネルギーシステムに必ずしもなじまない。 ドイツのように専門のアドバイスをする中立的機関が存在しない。 誰に相談したらいいか? 本物と偽物の区別がつきにくい。怪しいモデルが伝播 ないしは 普及が進 まない。 林業のシステム構築もこれから。 15 どうすればいいの? 太陽光(メガソーラー)・風力の場合、地元に還元する提案・事業 会社の選別。 地元還元⇒その事例としての、林業への投資。 バイオマス発電は、時期尚早。 バイオマスは、むしろ熱利用。 ホテル、温浴施設、公共施設、クリーニング工場から大規模産業プロセス熱まで。 熱利用の現場は問題だらけ。そこに大きなビジネスチャンス。 バイオマス利用の適切な理論・技術。 燃料供給体制・サプライチェーンの整備と不可分。 真の「優良事例」の構築。 イニシャルコスト。 所期通りの稼働率・ラニングコスト削減効果。 現場が満足している(無意味な苦労をしないで済む)。 16 使い勝手の良い量産規格型の小型ボイラー 断続運転の量産小型ボイラー。自動点火、熱需要の変動に柔軟に対応できる。 立ち上げに15~30分、最大出力で1時間運転。その後は、15~30分かけて消 火、もしくは、熱需要の変動に合わせて、出力調整しながら運転。出力は30%ま で落とすことができる。 メンテナンスが容易(灰捨て程度)。専門業者による点検は年に1回。 規格化されており、設置も容易で価格も安い(1社で年間4000台生産)。 小型ボイラーの基本運転パターン 定格出力 300㎾ kW 300 250 200 150 100 50 0 0 15 30 45 60 75 90 105 120 分 5.再エネ地域利用の提案事例 太陽光と林業をの総合利用による地域再生の提案 太陽光の売電収益の一部を基金化し、林業に投資。 趣旨に賛同する発電事業者の選定。 林業のポテンシャルを引き出す 汚染された町営放牧場、30ha PV 林業 機械 収益の一部を 林業に投資 人材 高い森林 蓄積 緩い地形 林業 整備された 路網 大規模所有 太陽光20MW前後、投資金額50億 円程度。 19 再エネ総合利用による地域再生の提案 東北S町における太陽光事業の事例 -太陽光単独の場合20MW 太陽光 20年間 町の収入 12億円 [地代、 固定資産税] 汚染された牧草地 20 20年後 ? 再エネ総合利用による地域再生の提案 東北S町における太陽光事業の事例 PV+林業・バイオマス事業 20年間 20MW 太陽光 発電事業者1億円 町 1億円 11億円 [地代、 固定資産税] 林業 基金 投資 林業を町の 基幹産業に 育成 3~6億円産業/年 5~10年後 汚染された牧草地 21 今後の予定 「成熟型先進国における地方とは? -その転換のあり方を探る-」 10月6日(月) 地元の自然資源や成熟した生活文化資源などの未活用資源 を生かした新産業の創出 主催:富士通総研 コンファレンス 会場:経団連会館(大手町) 「日本、再エネ大国への道 地域から日本経済を再生する」 10月27日(月) ドイツの再エネの実際と日本の現状を比較しながら、地域レベ:ルで の再エネを真に普及拡大するための具体的な方策を探る 主催:原発ゼロを実現する会 東京 第1回勉強会 会場:日本教育会館(千代田区一ツ橋) 日独共同シンポジウム 「日独バイオガスデー」 11月7日(金) バイオガスに関する政策、地域再生、バイオエネルギー村などにつ いて、日独の政策担当者、研究者、企業がディスカッション 主催:富士通総研、エコス 日独政府後援 会場:東京大学弥生講堂 22 中小を優遇する政策は? 企業は信用できる? or 信頼できる企業は? 研究者の役割は? 信頼できる研究者は? 再生可能エネルギーは日本では新しい分野。専門家がどれだけ いるか? コンサルは信用できる? 本物と偽物をどうやって見分ける? ペレットを作るには? ・・・ ・・・ 参考文献 『国民のためのエネルギー原論』 共編著・日本経済新聞出版社、2011年12月 『日本林業はよみがえる』 日本経済新聞出版社、2011年1月 『再生可能エネルギー拡大の課題』 富士通総研研究レポートNo.396、2012年9月 『木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題』 富士通総研研究レポートNo.409、2013年10月 『グリーン成長戦略とは何か』 岩波書店「世界」2013年2月号 『残材と熱を使い尽くせ 技術革新促す制度改定を』 日経エコロジー2014年4月号 エネルギー論壇 24
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