新生児医療からの最近の話題

2012年佐賀県周産期医療協議会資料
NHO佐賀病院総合周産期母子医療センター小児科
高柳俊光
2012/11/27
1
最近の周産期医療の動向
○出生数の低下;やや下げ止まりの傾向
○低出生体重児(LBWI)の出生割合の増加
1990年:全体の6.2%
2008年:全体の9.6% 約20年で1.5倍
佐賀県内では概ね750~800人/年
○Late Preterm Baby(在胎34~36週児)の増加
佐賀県内では概ね300~350人/年
2
在胎週数別出生率の変化
-財団法人母子衛生研究会2008-
1990年
(%)
<24週
24-27週
28-31週
32-36週
37-41週
42週以上
0.0
0.2
0.4
3.9
93.8
1.7
0.0
0.2
0.5
5.0
93.8
0.5
251
254
512
6070
-121,152
-14,921
1,221,585
2006年
(%)
1,092,674
増加
数
3
早産児の在胎週数別分布
-2006年日産婦周産期データベース-
256, 2%
3432, 28%
935, 7%
2111, 17%
~在胎23週
24-27週
28-30週
1955, 16%
2221, 18%
31-33週
34週
1436, 12%
35週
36週
早産児全体に占めるLate Preterm児の割合は56%
4
早産児の分布
-NHO佐賀病院-
2%
21%
10%
15%
~在胎23週
16%
24-27週
23%
13%
28-30週
31-33週
34週
35週
36週
早産児全体に占めるLate Preterm児の割合は50%
5
問題点
○LBWIもLPBも基本的にはハイリスク児。しかしその割合(実数)
が増えることで、新生児病床数の増加がなければ、一次医療施設
(産科開業医)で管理される症例が増加する。
○しかし実数が増えたからと言って、児のリスクの度合いが減じるわ
けではない。
⇒産科医療施設でのより適切な新生児管理が求められる。
⇒もし産科施設での管理が困難であれば、速やかな新生児搬送が必要
○出生体重1800(2000)g以上の軽度の低体重児や、在胎週数
34週以上のLate Preterm 児は、何処でどのように管理され
ているのだろうか?
6
検討項目
(1)佐賀県の一次産科医療施設での新生児収容状況
⇒2011年度アンケート調査を踏まえて
(2)佐賀県の二次医療施設の新生児収容状況
⇒2012年度アンケート調査を踏まえて
7
佐賀県の産婦人科一次施設へのアンケート調査
目的;県内の産科開業施設の早産/低出生体重児の管理状況の実
態を明らかにするとともに、このような児の施設内での
取り扱いの現状を明らかにすること。
アンケート項目;
①過去2年間の自施設における早産/低出生体重児の取り扱いの
実数把握
②仮に新生児施設が24時間365日対応可能であれば、どれくら
いの体重/週数を満たさなければ、無条件に新生児治療施設
へ搬送するか?
③自施設の早産/低出生体重児の管理の実情は?
⇒モニタリング体制、保育器内収容状況、血糖・Hctの
チェックなど
8
過去2年間に自施設で管理した低出生体重児
(含む早産児)の内訳-22施設/23施設-
2000~
2099g
2100~
2199g
2200~
2299g
2300~
2399g
2400~
2499g
合計
35週
5
7
7
3
2
24
36週
3
12
16
20
31
82
37週
8
13
28
48
65
162
38週以上
13
13
49
95
223
393
合計
29
45
100
166
321
661
661名/2年は佐賀県出生数の約4%
230人/2年は当院の入院適応(122人/2年は絶対適応)
9
どれ位の低体重であったら無条件に新生
児医療施設に搬送されますか?
1, 5%
2, 9%
1, 5%
2, 9%
1, 5%
5, 24%
6, 29%
1800g未満
2000g未満
2100g未満
2200g未満
2250g未満
2300g未満
2500g未満
無回答
3, 14%
10
どれ位の早産児であったら無条件に新生児医療
施設に搬送されますか?
1.2,
5%
2, 9%
10, 45%
35週未満
36週未満
37週未満
回答なし
9, 41%
11
このような児に対する管理体制は?
(1)保育器内に収容しモニター*をつけている
*;呼吸心拍モニター、SpO2モニター、ベビーセンス等
(2)血糖は少なくとも生後4日間は一日複数回(少なくとも3回以
上)モニタリングしている
(3)低血糖(全血で40mg/dl未満)の時はブドウ糖の点滴を行っ
ている
(4)Hctを測定し、65%以上の時は多血症を念頭に置いて対応し
ている
12
結 果
100%
90%
0
4
80%
1
0
10
9
70%
60%
0
18
50%
40%
30%
18
12
12
20%
10%
無回答
いいえ
はい
4
0%
13
低出生体重児もしくは早産児
出生体重2199g(2099
g)以下もしくは在胎35
週6日までに出生
原則として周産期医療施設*
へ新生児搬送(できれば母体搬送)
が望ましいです。
*;昨年度の調査ではこれに該当する症例
は佐賀県内で約35-40例あります。県内の
周産期医療体制が整備されるまでは、
新生児搬送はNHO佐賀病院で対応します。
出生体重2200g(2100g)以上
かつ在胎36週0日以降で出生
**以下のモニタリング(管理体制)
を取ってください。但し、全身状態
や自施設での管理に不安があるとき
は遠慮無くご相談下さい
**;基本的にモニター装着(特に早産児では必須)
①血糖は生後4時間目をめどに初回の測定を行ってくだ
さい。
②多血症や早発黄疸も考え、日齢1に必ずHct値とT.bilを
測定してください(出来るだけ絞らずに採血)。毛細管
血でHct70%以上の時は、末梢静脈血で再検してくださ
い。
③SpO2は基本的に下肢で測定して下さい。そして日齢
1を超えてもSpO2≧92%を維持するのに酸素が必要なと
きや、生後の時間経過に伴い、SpO2の値がどんどん下
がってくるとき(酸素の必要量が増す)時はご相談下さ
い。
14
血糖の管理法
全身状態が良好であっても生後4時間目、8時間目、それ以降も生後72時間
までは8時間毎に血糖を測定してください。
(1)BS≦30mg/dl(この時はブドウ糖の経静脈投与が必要です)
自施設で可能なときは10%ブドウ糖を3ml/kg(2.5kgだったら7.5ml)
をゆっくり静脈内投与し、その後2.4ml/kg/hr(4mg/kg/分)で持続点滴を
行う。これが出来ないときは搬送が必要。
(2)30mg/dl<BS≦40mg
ブドウ糖もしくはミルクを5-10ml経口で授乳。1時間後に血糖を再検。40mg/dl未満ならば搬送
が必要。
(3)BS≧40mg/dl;BS測定を継続
Hctの管理法
採血は足底血で結構ですが、スムーズな採血が望ましいです。
Hct≧70%の時は、末梢静脈血で再検し、70%以上の時はご相談下さい
15
検討項目
(1)佐賀県の一次産科医療施設での新生児収容状況
⇒2011年度アンケート調査を踏まえて
(2)佐賀県の二次医療施設の新生児収容状況
⇒2012年度アンケート調査を踏まえて
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アンケート項目
(1)2011年の貴施設での新生児患者数の受け入れ数
(2)対応可能な医療行為
(3)院外出生成熟児の受け入れ可能な時間帯
(4)院外出生の病的新生児(成熟児)への対応可能な医療行為
(5)新生児病棟の位置付け
17
在胎週数別新生児入院数
唐津日赤
嬉野医療
社会保険
好生館
佐賀大
国立佐賀
32週以下
1
0
0
0
7
58
33週
0
0
0
0
4
34週
2
2
0
1
4
35週
6
5
1
1
11
36週
6
12
4
3
17
5
(5)
52
5
(5)
38
43
(28)
99
小計
37週以上
15
19
(12) (17)
46
58
109
167
(-)
193
18
出生体重別入院数
唐津日赤
嬉野医療
社会保険
好生館
佐賀大
国立佐賀
1500g
未満
0
0
0
0
7
50
1500~
1799g
1
0
0
0
4
1800~
2199g
7
7
0
-
12
2200~
2499g
12
24
12
-
30
小計
19
31
12
-
42
-
2500g
以上
41
46
45
-
89
153
160
19
院外出生児の受け入れ対応時間
24時間
265日可能
平日の時間
内であれば
可能
唐津日赤
嬉野医療
○
△
社会保険
好生館
佐賀大
○
○
小児外科中心
○
○
基本的に
困難
20
対応可能な病的新生児(成熟児を原則)
唐津日赤
低体重
早発黄疸
○
(部分)
交換輸血
嬉野医療
社会保険
好生館
佐賀大
○
○
○
○
△
○
△
○
酸素投与
○
○
○
○
○
微量点滴
○
○
○
○
○
抗生剤投与
○
○
○
○
○
○
○
短期人工換気
△
長期CPAP
○△
長期人工換気
○
○
21
新生児病棟の位置付け
唐津日赤
嬉野医療
社会保険
好生館
独立病棟
(看護単位
も独立)
佐賀大
○
独立病棟
(小児病棟
に併設)
独立病棟
(産科病棟
に併設)
産婦人科・
小児科の混
合病棟
○
○
○
○
22
まとめ
◎仮に100%の新生児搬送体制であったとしても現時点では-
○県内の産科施設の76%は2200g以上、90%は2300g以上あればまず自施設で経過観察の方針でスター
トする。
○県内の産科施設の45%は35週以上、86%は36週以上あればまず自施設で経過観察の方針でスタートす
る。
○多くの施設で保育器内でモニターをつけて経過観察するが、血糖やHctをモニターする施設は約半数
にとどまる。
◎新生児搬送の受け皿である新生児医療二次医療4施設の現状は-
○24時間365日対応が可能であるのは唐津日赤と好生館(小児外科)、条件付きで可能であるのは嬉野医
療センター、佐賀社会保険
○点滴と抗生剤投与は全施設で可能、酸素投与のみで呼吸管理できれば全施設で収容可能。
○(部分)交換輸血と短期人工換気は嬉野医療センターで可能
○長期の人工換気は現時点では困難、この事は看護体制の影響が大きいと思われる。
23