(2)証券業の再編と新規参入 ①大手証券会社の再編 • 戦後~1997年まで大手4社体制 • 97.11:山一証券経営破綻 • 98.6:日興・トラベラーズ(後のシティグループ)提携 – リテール:日興コーディアル証券、ホールセール:日興シティグループ 証券 • 98.7:大和証券・住友銀行提携 – リテール:大和証券、ホールセール:大和証券SMBC • 金融危機に伴う同様の業界再編が今アメリカで生じている • 日興も大和も財務基盤強化と • 野村: • 08.1:シティによる日興の完全子会社に伴い、日興コーディアルと日興 シティは統合の予定(リテールとホールセールとの再統合) 1 • ホールセール業務: • リテール業務: • ホールセールとリテールとの分離 – アメリカではホールセール専門の証券会社(インベストメン ト・バンク)とリテール専門の証券会社に分かれているの が普通 • ホールセールとリテールとが分かれている理由 – 業務・報酬体系・組織構造の違い→文化の違う組織を1 つに統合することのデメリット – ホールセール:専門性が強く商品(業務)別縦割り組織、フ ラットで機動性の高い組織、実績主義の報酬体系 • cf.加野忠『金融再編』文芸新書 第6章ウォール街文化をどう迎 えるか 2 ②ネット証券 • ネット取引による格安手数料の提供 – ネット証券の登場による手数料率の急低下 • 売買代金の 0.03~0.1% • 野村での取引:売買代金100万円で1.16%(野村ホームトレー ド:0.81%) • 個人の株式売買:ネット取引比率の急上昇 • ネット証券以外の証券会社の対応策 – 資産管理型営業:顧客の資産状況・投資目的に合わ せた資産運用アドバイスの提供 – ラップ口座:証券会社が顧客の大まかな指示(要求利 回り、リスク許容度)に基づき預けられた資金を運用、 手数料は取引金額とは関係なく残高の一定比率 3 日経夕07.05.22 4 福光・高橋編『ベーシック証券市場論』04年版p.136 日経06.11.18. 5 – 信用取引:投資家が証券会社から株式の買付資金(売 付株券)を借りて、売買すること。 – 5社に集中、アメリカでも同様 – 寡占化の理由 • 一旦知名度の高いネット証券会社ができると、 • 06年:2社(ジョインベストメント証券、GMOインターネット証券) が新規参入→手数料引き下げ競争激化 • 株式売買サービスの差別化: – 定額手数料、無期限信用取引、夜間取引 • サービスの多様化 – 投信販売、為替証拠金取引 6 ・証券会社の収益構造 ・ネット証券会社の 信用取引依存度 (=金融収支比率) 2007年度 40% 松井 29% 楽天 SBIイー 28% トレード ・証券会社全体 2007年度 委託手数料 24% 引受手数料 募集手数料 その他手数料 3% 10% 38% トレーディング損益 16% 金融収支 7% 金融収益 金融費用 31% 24% 7 ・日本のPTS 日本証券 経済研究所 『現代日本の 証券市場』 2008年版 大和証 券 2008.8.8 マーケット メーク方式 18:00~ 23:59 個人投 資家 上場銘 柄 8 ③外資系証券会社 • グローバルな組織を生かしたトレーディング・資産運用 →投信運用業務の拡大 • デリバティブ・証券化等での金融技術の強み • 近年は日本でも投資銀行業務を強化 – M&A、不良債権・企業再生ビジネス • 株式市場での外国人投資家の取引増大 →外資系証券会社による委託売買の増大 – – – – メリルリンチ:山一買収による本格進出→縮小 GSの個人向け夜間株式取引市場→撤退 シュワブ東京海上証券:会社清算 富裕層向けプライベートバンキング業務は強化 9 ○日本企業関連M&Aアドバイザリーランキング ・公表案件、取引額ベース トムソンファイナンシャル調べ 10 ○株式売買状況2007年:部門別 • • • • • • • • 個人: 23.8% (32.4%) 銀行: 0.2 (0.2) 事業法人: 1.5 (2.0) 保険: 0.2 (0.2) 投資信託: 1.7 (2.3) 外国人: 39.8 (54.2) 証券会社の自己売買:26.6 ( )内は証券会社自己売買を除く割合 11 日経05.07.01. 日経07.11.04. 12 ④銀行系証券会社 • 戦後~93.3.:銀行・証券の分離 • 自由化で銀行の証券子会社による新規参入 – 93.4.金融制度改革法施行:当面の業務範囲を制限 →99.10.業務範囲規制撤廃 – 主としてホールセール業務:当初、社債引受で実績→ その後、株式引受・証券化等でも強化 • 銀行参入の背景: • 銀行再編に伴う系列証券会社の再編 – リテール中心の従来からの系列証券会社の再編統合 – さらに、銀行系でホールセールとリテールを統合した証 券会社を設立する動き(三菱UFJ) • 銀行・証券の共同店舗解禁(‘02)、証券仲介業解禁(‘04) 13 ・銀行系証券会社の再編 日本証券経済研究所『現代日本の証券市場: 2006年版』p.223 ・みずほグループ、三井・住友グループ:リテールとホールセールを分離 三菱グループ:リテールとホールセールを一体化 14 ⑤日本の証券業界の変貌 • 戦後~1990年代半ば – 大手4社と中堅・中小証券との安定した業界構造 • 1990年代半ば以降 • 大手3社、ネット証券、外資系証券、銀行系証券 • ホールセールとリテールとの関係 • 異質な業者間の競争 – 業界の流動化:新しい証券ビジネスモデルの模索 • 幅広い個人顧客の獲得:貯蓄から投資へ • 企業・機関投資家への質の高いサービスの提供 • 証券業界変貌の背景 – – – – – 金融ビッグバン1997~2001:金融の自由化・規制緩和 日本の金融危機:1990年代後半 金融のグローバリゼーション IT革命 長期的傾向としての銀行業務縮小・証券業務拡大 15 ⑥世界の証券業界の変貌 ○インベストメント・バンク(投資銀行) – ゴールドマン・サックス、モルガンスタンレー、リーマンブラザーズ • 伝統的に証券発行引受、M&A等の企業金融のコンサル ティングに強み(投資銀行業務) • 1980年代以降債券・株式・為替のトレーディング(自己売 買)やデリバティブ・証券化の業務も急拡大 • 近年はプリンシパル・インベストメント(自己資金投資)も 強化 ⇒ ・欧州の巨大金融機関も投資銀行化 16 米国:銀行のシェア縮小・市場型金融機関 (年金・投信・証券化)のシェア拡大 70% 預金金融機関 60% 50% 40% 年金 投資信託 30% 証券化 20% 10% 市場型金融仲介 機関 19 55 19 70 19 73 19 76 19 79 19 82 19 85 19 88 19 91 19 94 19 97 20 00 20 03 20 06 0% 17 日本の金融機関シェアの推移 19 79 19 81 19 83 19 85 19 87 19 89 19 91 19 93 19 95 19 97 19 99 20 01 20 03 20 05 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 預金金融機関 市場型金融仲介機関 18 ・米国の証券会社・銀行:規模推移 証券会社資産 規模GDP比 銀行資産規模 GDP比 2000 2006 1988 1994 1970 1976 1982 1958 1964 証券会社/銀 行 1946 1952 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 % 19 証券会社資産/GDP 20% 0% 証券会社資産/預金金融機関資産 198 0 198 2 198 4 198 6 198 8 199 0 199 2 199 4 199 6 199 8 200 0 200 2 200 4 200 6 200 4 200 6 200 0 200 2 199 6 199 8 199 2 199 4 198 8 199 0 198 4 198 6 198 0 198 2 日本の証券会社の資産規模推移 日本:預金金融機関資産/GDP 30% 350% 25% 300% 250% 15% 200% 10% 150% 5% 100% 預金金融機関資産/GDP 20 ・世界の株式発行引受ランキング ・Thomson Reuters 21 ・世界の債券発行引受ランキング ・Thomson Reuters 22 ・世界のM&Aアドバイザリーランキング ・Thomson Reuters 23 ・世界のM&A:地域毎の分布と推移 ・Thomson Reuters 24 ・アジアの債券発行引受ランキング ・Thomson Reuters 25 ・アジアのM&Aアドバイザリーランキング ・Thomson Reuters 26 ○投資銀行の収益の地域分布:2005-06 アメリカ ヨーロッパ アジア ゴールドマ ン・サックス 56% 25% 20% リーマン・ブ ラザーズ 63% 25% 11% ・ 27 ○ゴールドマン・サックスの収益構造:2004-06 部門 業務 投資銀行部門 収益構成比 部門内の 収入構成比 8% アドバイザリー 49% 株式引受け 23% 債券引受け 28% トレーディング・自己資金投資 部門 73% 株式トレーディング 34% 債券・通貨・商品トレーディング 55% 自己資金投資 11% 資産運用・証券サービス部門 19% 資産運用 65% 証券サービス 35% ・ ・ 28
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