これまでの研究成果

安政東海地震における
余震の特徴と推移
総合科学専攻2年
30516008
葛馬 拓
発表の流れ
研究目的・意義
東海・南海地震とは
これまでの研究成果
研究対象とする史料について
研究方法
これまでの作業結果とまとめ
2つの史料を比較して
今後の課題
研究目的
①東海地震を題材とする意義
今後予想される東海地震は、南海地震とともにM8
クラスの巨大地震である可能性が高い。本震がM8と
もなれば余震はM7クラスのものが起きることもあり、
そのおき方を知ることは重要である。
②安政東海地震を題材とする意義
今回、その中でも安政東海地震を取り上げた理由は、
過去9シリーズおきている東海・南海地震の中で最も
史料が豊富で、史料から津波被害や液状化の様子、
またその後の影響について地図に書けるほどである。
よって、精密な調査をすることで現代の防災に生かす
ことが出来るからである。
東海・南海地震とは
フィリピン海プレートとユーラシア
プレートの摩擦によっておきるプ
レート境界地震である。
地震の周期は100~150年とされ
ている。
一般的に巨大地震とされるM7.8
以上の地震であり、東海・南海地
震が同時に発生した場合、その規
模はM8.5前後と予想される。
プレートが海と接しているため東
海・南海地震ではほぼ間違いなく
津波が発生することも予想される。
図2東海・南海地震の震源域と地震発生年表 小山(2006)
上段の日本地図の数値はフィリピン海プレートの移動速度
これまでの研究成果
○谷田さんの研究成果
‐9シリーズ全体としての余震の特徴分析‐
・東海・南海地震は有史以来9シリーズ起きているが、全
てが同じパターンではなく安政型(東海が先)と宝永型(ほ
ぼ同時)に分けられること。
・基本的に本震は前震活動なしに起こる(1361年の康和
地震では、前駆的地震が多く例外もある)こと。
・1498年の明応地震での異説の本震についてはその後
の余震活動等から本震とは考えにくいこと。
・月別余震回数では、本震後1ヶ月が多くその後減少に転
ずること。
・研究対象とする史料
・袖日記(7番)‐駿州大宮町横関本家
嘉永七年(1854)8月~安政四年(1857)11月の
3年5ヶ月余に渡って、枡弥の当主並びにその家族及びそ
の友人知己の間に生じた問題等、また大宮町をはじめと
した関係する村々の社会的動向について記した日記。
(富士宮市教育委員会発行)
・日記・見聞雑記‐原宿植松家
駿河国駿東郡原宿(現沼津市原町)の富豪植松家の当主
によって書かれた6冊の見聞雑記と6冊の日記をまとめた
もの。今回は安政地震が対象なのでこの内の安政二年
『見聞雑記・弐』、嘉永七年分の日記2冊、安政元年分の
日記1冊を対象としている。(沼津市教育委員会発行)
研究方法
①今回は先に示した2つの史料についてその関係
する部分を読み、地震についての記述を抜き出す。
②地震の年月日・時間・規模等についてまとめた地震カタ
ログを作成する。さらに、カタログを作成する上で地震以
外の天変地異(洪水・風災・日食・月食等)に関しても記録
する。
このような方法をとる理由
②を行うことで、著者の天変地異に対する感度を得られ、
日食・月食からはその史料の正確性がわかる。また、複
数の史料を調べることで欠落した地震を掘り起こしたり、
逆に偽の地震等を見つけることが出来る。
作業結果‐地震カタログの作成‐
袖日記、日記・見聞雑記とも地震カタログを作成した。
図3 袖日記地震カタログ(冒頭部分)
年号
記述の場所
P12・ru7
天気
月日
嘉永甲寅七年 11・4
時間
晴天 朝静也
P13・lu12
P13・ld6
11・5
11・6
晴天
晴天
P14・lu5
11・7
晴天
P14・ld5
11・8
P15・ru10
11・9
薄曇り
朝雨降 八ツ
過 晴曇
11・1
0
11・1
1
P15・lu8
P15・lu1
晴天
地震の
記述
地震の
回数
大地震
夜明方
地震ゆる
昨夜
昼夜
地しん大小 10程度
地しん
七八度
少しツヽ、
地しん
数度ゆる
地震
折々ゆる
地しん大1
ツ、小三度
今夜
自然現
象
地響雷の如く 初メ二ツ
小ニして三ツめ地割
ル・・・
大ニ枕ニ響く
今夕日輪の色朱の如く赤
シ
五ツ時
今夜
地震の具体的な記述
その他
七つ時地震やむ 本震(M8.4)
万の村・・・(村々の被害
の程度)
大阪ハ五日の津浪のよし
地しんなし
寒気 晴天 昼
夕七ツ時 小地しん
風立
一ツ
図4 日記・見聞雑記地震カタログ(冒頭部分)
記述の場所 年号
日記第一巻
P137/lu2 嘉永7年
P137/ld6
月日
天気
時間
地震の記述 地震の回数 地震の具体的な記述
4・28 朝 大雨
朝大雨 東風 ・・・
5・1
終日之大雨濠〃
自然現象
冨士川開・・・大雨ニて出水相増
日帯そく明六時・・・・
大川出水
P143/lu7
朝曇天細雨降来西南
6・14
夜八ツ時
風在、昼頃より雨降
P144/ru9
6・29 朝曇天南風浪声
日記第二巻
大地震有
当十四日之夜の大地震ハ桑
名宿より先〃ハ・・・
矛盾点・関
係箇所
その他
作業結果からわかった事
袖日記からわかった事
 安政東海地震によって、富士川の西岸が隆
起し流れが変わり東岸地方で以後洪水がた
びたび起こっている。
 現富士宮市付近では、地震後1年近くたって
も非常に大きな余震がある。
(安政2年9月28日)
 袖日記には日食・月食の記述が二つある。
 安政江戸地震についての記述がある。
日記・見聞雑記からわかった事
11月11日~11月25日までの記述がなく、そ
の点を考慮し扱わなければならないこと。
6月14日に大地震という記述があること。
袖日記と本震の日時が同じであること。
2つの史料を比較して
11月4日の本震以降毎日余震の記録があった。
11月9日に強い余震を感じている。
11月10日の地震の捉え方に若干の差異がある。
12月1~6日は互い違いに地震を感じ、7日以
降両方とも同じように感じている。
今後の課題




史料の分析を進める。調べた2つの資料につ
いて、取りこぼしがないか確認する。
他に対象と出来る史料がないか調べ、あれば対
象史料として加え地震カタログを作成する。
現在、安政大地震関係古文書第二集、安政大
地震静岡市附近関係記録を調査中。
地震と他の災害との比率等を調べ、史料の特性
について分析する。
安政東海地震の被害状況を分析し、今後どのよ
うな防災計画が必要か考える。
読んだ文献
6月20日の地学談話会の資料
フィリピン海スラブ沈み込みの境界条件とし
ての東海・南海巨大地震
京都大学防災研究所研究集会13k‐7
石橋克彦
東海地震はどんな地震か 里村幹夫編
南海トラフの巨大地震を考える
自然災害科学、21、2002
谷田さんの卒論発表