企業の仕組み 第11回 経営分析について 1 マネジメントのための財務の基礎知識 経営分析とは • 経営分析とは、企業のおかれているさまざまな環境条件とそ れに対応した企業の行動の結果、どのような企業の成果が 生まれたかを 財務諸表 を中心に分析しようとするもの である。 • 経営分析とは、『情報化時代の経営分析』によれば、「経営 者・投資家・与信者・その他の 利害関係者 が、計数的 に把握された企業の経済活動の諸相を分析し、企業経営の 良否を 分析・評価 することである」と定義されている。 ※直接経営にかかわる経営者、間接的に経営に影響力を もつステークホルダーが、企業の採用した戦略などの行 動が財務データにどのような結果をもたらしたのかを分析 ・評価するということである。 2 ●企業内部の管理と経営分析の位置づけ 企業内部の効率性や生産性向上に不可欠な内部情報の分析 • 経営分析は、株主等の利害関係者( ステークホルダー )に とって企業業績の良否を判断できる手段となる一方で、内部管理 の手段となる。 • 企業の活動は、トップ・ マネジメント(戦略立案・ビジョン提示)、 ミドル・マネジメント(中間管理職による現場管理)、ロワー・マネ ジメント(現場での オペレーション )に大別できる。 • 企業内部の各種活動は、その目標と実績を比較し、問題が発生 した場合あるいは発生しそうな場合には対処すること(状況のコ ントロール)が必要になる。 階層別の仕事の割合 目標 (計画) を策定 プランニン グ プランニン グ コントロー ル コントロール プランニング コントロー ル トップ→ →ミドル→ →ロワー 目標(計画) を下回った時 に対処する 3 事業コントロールのサイクル 一年単位が基本(重要な予算は年度単位で決定される) 戦略 プログラミング 予算 (資源配分) 外部情報 外部情報 外部情報 報告と分析 現業と会計 4 企業の予算 • 企業にとって、予算策定は企業のコントロール(実績管 理)の基礎となる。 • 企業の予算は、 販売予測 に基づいて、販売予算が 立てられ、生産予算は販売予算に基づいて作成され、そ の他の関連する予算が積み上げられ、最終的に企業予 算が作成される。 • 販売予測から始まる理由は売れないものを作っても意味 がないからである。 • 予算が確定したあとは、目標達成に向け、事業を計画通 り遂行することとなる。 ※したがって、業績( 結果 )を正確に把握することが 不可欠となる。 5 財務諸表の見方と分析 企業の内外の関係者にとって企業業績を判断する貴重な情報 損益計算書( Profit and Loss Sheet: P/L) • 損益計算書では、売上高(営業収入)から様々な費用を差し 引き、各種 利益 を算定している。 • 収益や費用の フロー (一定期間内の金額)が示されて いる(例.今日一日の売り上げ)。 ※ストックはある時点での数値(本日の12時の通帳残高など) • 売上高(収入)の動きは、市場の状況や自社製品の競争力に よって決まる。 • 営業利益などの利益の動きを説明するには、売上高に加え て、 売上原価 (製造原価や一般管理費・販売費など)の 分析が不可欠となる。 6 損益計算書(P/L)の例 売上高 売上原価 売上総利益 販売費及び一般管理費 営業利益 営業外収益 営業外費用 経常利益 1,000,000 600,000 400,000 100,000 300,000 50,000 20,000 330,000 A B C =A-B D E =C-D F G H =E+F-G ※営業外収益や費用には、利子の受け取りや支払いなど、営 業活動と関係ないものが含まれる。 7 主な損益計算書(P/L)を活用した分析 売上高対総利益率= 売上総利益(C) 売上高(A) ×100 ※基本的にビジネスが成立するかどうかを判断する最初の指標 売上高対営業利益率= 営業利益(E) 売上高(A) ×100 ※本業でどの程度効率的に利益を判断する指標 販売・管理費(D) 売上高対販売・管理費比率= ×100 売上高(A) ※販売効率を判断する指標 8 貸借対照表( Balance Sheet; B/S) 企業の資産・負債の ストック (ある時点の財産状態)を表す • 左側が 資産 の部(借方)、右側が 負債・純資産 の部(貸方)と呼ばれる。 • 資産の部は、現金・預金・製品・設備・土地などへの資金 運用の結果が記載されている。 • 負債・純資産の部の負債に関しては、借入金や社債など による資金調達状況が記載。 • 純資産に関しては、株主から調達した 株主資本 とそ の他の株主資本以外に区分けされている。 ※資産の部の合計と負債・純資産の部の合計は等しい 。 9 貸借対照表の例 貸借対照表 資産 負債・資本 流動資産(I) 流動負債(L) 固定資産(J) 固定負債(M) 有形固定資産 純資産(N) 無形固定資産 株主資本 投資ほか 株主資本以外 繰延資産(K) (I)+(J)+(K)=(L)+(M)+(N) 例えば、流動資産1000万円、固定資産5000万円、繰延資産500万 円を持つ企業の資産合計は6500万円となる。流動負債が2000万円 、固定負債3000万円を負う企業の純資産額は1500万円となる。 10 主な貸借対照表上の分析 流動比率= 流動資産(I) 流動負債(L) ×100 ※1年以内に返済義務が生じる負債の支払い能力 (150~200%が理想的) 自己資本比率= 純資産(N) 資産総額(I+J+K) ×100 ※自前のお金で経営しているかを示す指標 (低いと借金経営体質) 11 会社の純資産(資本金、準備金、剰余金) 会社(事業年度終了時点) ※出資や投資 は贈与でない 払込み(現金)・ 給付(現物) 負債 資本金 資産 + 資本準備金 準 備 自己保 利益準備金 金 有株式 その他 株 主 配当 (日々) 12 剰余金 (配当可能) 損 益 ※株主総会の決議に より、法律や定款の 範囲内で、資本金や 準備金の額を増減さ せることができる。 会社の 損益 日々の営 業活動の 良し悪し 利益を出し続ければ、配当が有り、資本金や準備金が増え、株価上昇。 損失を出し続ければ、配当は無く、資本金や準備金が減り、株価下落。 平成24年度の日本マクドナルド単独の損益計算書 単位:百万円 内訳 合計 売上高 直営店売上原価 214,968 フランチャイズ収入 79,149 294,117 売上原価 直営店売上原価 187,854 フランチャイズ収入原価 49,206 237,060 売上総利益 57,057 販売・一般管理費 33,308 営業利益 23,748 営業外収益 1,259 営業外費用 2,027 経常利益 22,979 ※差異は四捨五入の結果生じる A B C D E F G H 13 平成24年度の日本マクドナルド単独の損益計算書 売上高対総利益率 57,057 = = 19.4% 294,117 22,979 売上高対経常利益率 = = 7.8% 294,117 売上高対販売・一般管 33,308 = = 11.3% 294,117 理費比率 ※売上高の80.6%が売上原価(100円マックの原価は80円かそれ以上?)。 ※売上原価に販売・一般管理費(店舗や電気代・人件費)11.3%を加えると 残りは8.1%(100円マックで8円かそれ以下の利益?) ※マックは薄利多売(販売量で挽回=規模) 14 日本マクドナルド(単独)の貸借対照表(平成24 年12月31日時点) (単位:百万円) 金額 金額 資産の部 負債の部 流動資産(I) 32,307 流動負債(L) 固定資産(J) 56,296 固定負債(M) 負債合計 純資産の部 繰延資産などは投資その 資本金 他の資産として固定資産 資本剰余金 に計上している。 利益剰余金 純資産合計(N) 資産合計 88,604 負債・純資産合計 流動比率 = 自己資本比率 = 32,307 = 65,354 14,897 = 88,604 49.4% 16.8% 65,354 8,352 73,707 ※差異は四 捨五入の 100 結果生じる 619 14,177 14,897 88,604 ※流動比率が低い理由は、販売 代金を投資に回しているから。 ※自己資本比率が低い理由は、 資金を有効に活用しているか ら。無利子なら借りていた方 が得。 15 連結ベースの経常利益推移(時系列) 平成23年度までは売上は落ちていたが、経常利益は上昇(= 合理化推進)していた。平成25年度は巻き返しができるか? 16
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