10章 労使関係管理 土橋・宮崎・服部・清水・内田 1.労使関係の制度的枠組み *労働組合とは・・・「労働者が自らの仕事や暮らしの質 や条件を維持・改良することを目的として自主的に組織し た民主的な団体」 *労働者はなぜ労働組合を結成するのか 個人で交渉するよりも多くの成果を引き出すため。 *使用者が組織活動を妨害したり、労働組合との交渉を 拒否することはできない。 不当労働行為であり、労働組合法で禁じられている。 労働組合の組織形態 *産業別労働組合:同一産業に属する労働者を組織 *職種別労働組合:同一職種の労働者を組織 *合同労組:特定地域の労働者を組織 *企業別労働組合:企業を単位に組織 ・「組合財政の独立」→カンパニー・ユニオンとの区別 ・チェックオフ→法律に抵触しない範囲での便宜供与 *アメリカの産業別組合とローカル・ユニオンの関係と 日本の産業別組合と企業別組合の違い ①日本→労働者は企業別組合に加入。 産業別組合は企業別組合の連合体。 アメリカ→労働者は産業別組合に直接加入。 ②日本→労働者は企業別組合に組合費を収める。 アメリカ→労働者は産業別組合に組合費を収める。 ショップ制と組合員の範囲 *ショップ制・・・「ある企業や工場の従業員たる地位の獲 得・維持と、特定の労働組合員資格の有無との関係」 *オープン・ショップ・・・組合員資格の有無が無関係 *ユニオン・ショップ・・・組合員でなくてはならない *クローズド・ショップ・・・労働組合員であることを 雇い入れの条件とする *労働組合員の範囲・・・「使用者の利益を代表する者」の 組合への加入を禁止する。(第二条)最終的な組合員の 範囲の妥当性は労働委員会が行う資格審査によって判 定される。 ユニオン・リーダー 企業別労働組合の役員には、専従者 と 非専従者 にわかれる! 専従者 企業籍を有したまま、組合活動に専念し、社業からは離脱する役員 ※給料は組合が全額支給する 非専従 社業と組合活動とを掛け持ちする・・・昼休みや終業時間後に活動す る 彼らは任期満了とともに職場に復帰する。 労働組合組織率の低下 • Q.なぜ労働組合組織率の低下 →A. 企業内未組織層の増加 ・・・「非正規従業員の増大」(パートタイマー・アルバイト…) ・・・「正規従業員に占める非組合の拡大」 →A.企業グループ内人員異動 ・・・1,関連企業への出向者が非組合員扱いになる ・・・2,出向先に組合がない場合 企業別組合の対応 • 正規従業員に占める非組合の拡大 →使用者の利益を代表しない管理職・専門職を組織化 • 企業内グループ内人員異動 →企業内労働市場が企業グループに拡大しているのに対応して、企 業別組合を企業グループに拡大 ◆企業別組合が組織拡大の対象としている労働者 • • • • 新卒・中途採用の正規労働者(54.4%) 在籍する組合未加入の正規労働者(50.5%) パートタイム労働者(31.8%) 契約労働者(27.6%) 2 集団的労使関係における交渉形態 団体交渉と労働協約 団体交渉…労働者の雇用・労働条件を決定する労使交渉の最も重要な制度 ⇨憲法第28条で労働者の団体交渉権が保障されている 労働組合 交渉事項をできるだけ拡 大しようとする 使用者 経営権や人事権に固執、 それをできるだけ限定しようとす る 労働協約…団体交渉を文書化したもの *就業規定で定める労働者の労働条件その他労働者の待遇に関する部分が 労働協約を下回る場合 ⇨従業規定の当該規定は無効、労働協約の規定が優先される(規範的効力) *労働協約の適用範囲であるが、労働協約が適用される労働者が事業所 労働者総数の4分の3を超える場合 ⇨その協約は非組合員にも適用される(一般的拘束力) 労使協議制とは ・労働者の代表と使用者が企業経営上の諸問題、とり わけ労働者の雇用・労働条件や生活上の利害関係に 直接・間接に影響する諸問題について、情報や意見を 交換する常設的機関 労使協議制の決定方式 ①説明・報告 ②説明・報告・意見開陳 ③説明・報告・意見を徴す ④協議 ⑤協議決定 労使関係の変化 戦前 経営者の恩恵によって与 えられる一方的なもの 戦後 使用者と労働組合の交 渉による双方的なもの 従業員組織の2つのタイプ ○親睦型従業員組織 文化・レクリエーションや共済などを主活動にしている ○発言型従業員組織 労働条件ついて会社側と話し合っている 3.個別的労使関係 集団的労使 関係 人事部門と労働組合との間で 交渉・決定 【集団】 労働組合 「従業員」という仲 間 個別的労使関 係 上司と部下との間で交 渉・決定 【個人】 上司と部下 「私」という一人の労働 者 個別的労使紛争 【個別的労使 紛争】 賃金、労働時間、休日、配置転換、出向、解雇、上 司のいじめ等、労働者の職場における一切の待遇 *紛争 (労働条件)に関する紛争のこと 一方の主張に対し、他方が同意せず、双方の主張が 対立したままの状態 【個別労働関係紛争の解決の促進に 関する法律】 <法律に基づく 制度> • 総合労働相談コーナーにおける情 報提供・相談 • 都道府県労働局長による助言・指 導 *あっせん 紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、 • 紛争調整委員会によるあっせん 法律のポイント(参考) 1.趣旨(第1条) 人事労務管理の個別化や雇用形態の変化などに伴い、労働関係についての個々の労働者と事業主との間の紛争 (以下「個別労働紛争」という)が増加して いる。これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整 委員会のあっせん制度の創設などにより 2.概要 総合的な個別労働紛争解決システムの整備を図る。 (1) 紛争の自主的解決(第2条) 個別労働紛争が生じたときは、紛争の当事者は、自主的な解決を図るように努めなければならない。 (2) 都道府県労働局長による情報提供、相談等(第3条) 都道府県労働局長は、個別労働紛争の未然防止および自主的な解決の促進のため、労働者または事業主に対し、 情報の提供、相談その他の援助を行う ものとする。 (3) 都道府県労働局長による助言および指導(第4条) 都道府県労働局長は、個別労働紛争に関し、当事者の双方または一方からその解決につき援助を求められた場 合には、当事者に対し、必要な助言また は指導をすることができる。 (4) 紛争調整委員会によるあっせん イ 都道府県労働局長は、個別労働紛争について、当事者の双方または一方からあっせんの申請があった場合 において、その紛争の解決のために必要 があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。(第5条) ロ 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置く。(第6条) ハ あっせん委員は、当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように 努めなければならない。(第12条) ニ あっせん委員は、当事者などから意見を聴取し、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提
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