国際経済学 (2) 機会費用を見る 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2014年10月27日 生産可能性フロンティア 企業,個人,社会は様々な制約に直面 生産面のトレードオフを示すのが生産可能性曲線 あるいは生産可能性フロンティア 分かり易くする一種のモデル ある財を沢山作れば,他の財を諦める必要 海で魚を捕れば山で猟をする時間が少なくなる 工場で自動車を作ればお米を作る農地が減る 基本的な考えを例示するため2種類の財で考える 2014/10/27 国際経済学 2 2 生産可能性フロンティア/2 世の中には様々なトレードオフが存在 トレードオフとはあるものを選択するには他のものを 諦めなければならないこと 生産可能性フロンティアとは生産要素を効率的に使 ったときの生産物の組み合わせを図に表したもの 生産可能性フロンティアとは,生産要素とそれを用 いて生産物を作るための生産技術を前提にしている 海でサンマを捕るかあるいは山でマツタケを捕るか 利用可能な選択肢の集まりを機会集合という 2014/10/27 国際経済学 2 3 数学のけいこ x座標(横座標)=ブラックサンダーの個数 0 1 y座標(縦座標)=うまい棒の個数 4 3 2 1 0 ブラックサン ダーが3個,う まい棒が4本は どこ? -3 2014/10/27 3 2 (1,2)= (ブラックサンダーの個数が1, うまい棒の個数が2) 4 3 2 1 -2 -1 国際経済学 2 0 1 2 3 4 生産可能性フロンティアの例 マツタケ の数量 10 A A 効率的な生産 9 生産可能性フロンティアと その内部が機会集合 D D 実現不可能な生産 B 5 B 他の効率的な生産 C C 非効率的な生産 3 0 2014/10/27 3 5 7 国際経済学 2 10 サンマ の数量 5 サンマとマツタケの例 効率的な生産パターンは複数ある.A点B点 サンマとマツタケを両方増やす事は不可 サンマを増やすにはマツタケを減らす必要 マツタケを増やすにはサンマを減らす必要 非効率的な生産パターンではサンマもマツ タケも増やすことができる.C点 左上に位置するD点は実現できない(不可能) 理由は資源の希少性と生産技術が不存在 2014/10/27 国際経済学 2 6 生産可能性フロンティアと機会費用 外側は生産不可,内側は生産可能,境界は効率的 生産可能性フロンティアは人々のトレードオフを表現 生産可能性フロンティアから人々の機会費用を読み取 ることが可能 ある選択の機会費用とはそれをすることによって 諦めなければならないもの A(5,9)点からB(7,5)点に移るとき,サンマを2匹増やすに はマツタケを4個諦めなければならない 7-5=2, 5-9=-4 サンマを増やすことの機会費用はマツタケを減らすこと 2014/10/27 国際経済学 2 7 生産可能性フロンティアと機会集合 マツタケ の数量 10 A 9 -4 5 サンマを増やす ためにはマツタ ケを諦めなけれ ばならない B +2 0 2014/10/27 5 点Aから点Bに引いた直線 の傾きが機会費用を表す 7 国際経済学 2 10 サンマ の数量 8 生産可能性フロンティアと機会費用 A(5,9)点からB(7,5)点に移るときの傾きを求める タテの変化 傾き= 5-9 = ヨコの変化 -4 = -2 = 7-5 2 傾きは-2 サンマを1匹増やすにはマツタケを2個諦めなければな らないことを意味する マイナスはトレードオフの関係があることを意味する あるものを増やす(+)には他方を諦める(-) 傾きの大きさ(絶対値)は機会費用を測る マツタケを2個犠牲にしている 2014/10/27 国際経済学 2 9 米と自動車 国全体の生産を生産可能性フロンティアで表現 日本の自動車と米の生産 すべての資源をクルマに費やせば2000万台のクルマ が生産可能とする 反対に資源をすべてお米に費やせば1500万トンの米 様々な可能性の中で,現在日本はお米を900万トン, 自動車を1000万台生産(A) 自動車を増産すれば米を減らす必要(B) 内側の点は非効率な生産(C) 2014/10/27 国際経済学 2 10 お米の 数量 (万トン) 一国のトレードオフ:米と自動車 現実の生産パターン A 1500 自動車を増やすにはお米 を減らさなければならない 900 B 500 生産可能性フロンティア C 0 2014/10/27 1000 1800 国際経済学 2 2000 自動車 の数量 (万台) 11 生産可能性フロンティアは右下がり 生産可能性フロンティアの特徴 1. 右下がりである 2. 外側に向かって突き出ている これを上に凸と表現します 1はトレードオフの関係を表す 2は直線のケースもある 直線はトレードオフが変化しない 上に凸はトレードオフが変化する 単純な直線の生産可能性フロンティアを見る 真央はアイスショーとかき氷を生産している 2014/10/27 国際経済学 2 12 真央の生産可能性フロンティア 真央はアイススケートショーで演技できる また甘味処でかき氷も作ることができる スケートショー出場はかき氷が作られなくなる スケートショーは最大限9回できる かき氷は最大1800杯作れる スケートとかき氷のトレードオフは一定とする 真央の生産可能性フロンティアを描いてみよう 2014/10/27 国際経済学 2 13 かき氷 の数量 1800 真央の生産可能性フロンティア 傾き-200は 変化しない 1200 アイスショーの変化=3-6=-3 かき氷の変化=1200-600=600 600 傾き-200 -3 アイスショーの変化=6-9=-3 かき氷の変化=600-0=600 600 傾き-200 0 2014/10/27 600 -3 アイスショー の数量 3 6 9 国際経済学 2 14 生産の機会費用 アイスショーを増やすための機会費用は減らさな ければならないかき氷の生産量だ 傾き-200はアイスショー1回増やすにはかき氷の 生産を200杯諦める事を意味 傾き一定は機会費用が変化しないことを示す 生産可能性フロンティアは直線で図示できる アイスショーの機会費用はかき氷200杯の諦めた 生産だ 2014/10/27 国際経済学 2 15 生産の機会費用をもう一度 機会費用とはあるものを選択するときに諦めなけれ ばならないもの サンマを増やすための機会費用は減らさなければ ならないマツタケの数量 傾き-2はサンマを1匹増やすにはマツタケ2個諦め る事を意味する 上に凸な生産可能性フロンティアの機会費用はどう なっているのだろうか? 2014/10/27 国際経済学 2 16 収益逓減 上に凸な米と自動車の生産可能性フロンティア 生産によって機会費用が変化する 自動車台数が増えれば増えるほど減らさなけれ ばならないお米の量は増えていきます 自動車生産のさらなる増加は,お米の生産をさ らに減らさなければならない 収益逓減(しゅうえきていげん)とは,ある投入物 の量を一単位増加させる結果として生産量は増 加するが,その増加分は次第に小さくなっていく ことを表す 2014/10/27 国際経済学 2 17 収益逓減/2 もっと自動車を造りたい 最初は自動車生産に長けた人がお米生産か ら自動車生産へ移る 段々,自動車作りが得意な人がいなくなって, 自動車作りが不得意でお米作りが上手い人も 移動する そうすると減らさなければならないお米の量 は増えます 土地も同様.最初は自動車工場に向いた土 地を自動車産業へ振り向けていく 2014/10/27 国際経済学 2 18 生産可能性フロンティアと機会集合 マツタケ の数量 10 9 B -1 8 C点からD点への移動は同じ サンマを1匹増やしているが, 減らさなければならないマツ タケは5個になっている.傾き は-5になる A点からB点の移動ではマツタ ケを1個減らしている.傾き-1 A C サンマが増えるほど,減 らさなければならないマ ツタケの量は増えている 5 -5 +1 +1 D 0 2014/10/27 5 7 国際経済学 2 10 サンマ の数量 19 豊かさは経済成長があるから 生産可能性フロンティアはある一時点の2種類の 財の生産のトレードオフを示していた 技術革新により新しい生産方法が開発された どんな米の量でも自動車の生産台数が増える 生産可能性フロンティアは外側にシフトする シフト(shift)は変化を意味.曲線の動きに対応 技術革新が豊かさをもたらす 生産可能性フロンティアで表現が可能.外へシフト 2014/10/27 国際経済学 2 20 お米の 数量 (万トン) 生産可能性フロンティアと技術革新 生産可能性フロンティアが外側にシ フトした.生産が点Cになった 1500 C 800 B 500 0 2014/10/27 1000 1800 国際経済学 2 2000 B(1800,500)から C(2000,800)に移 り,自動車もお 米も増えた 自動車 の数量 (万台) 21 クールヘッドとウォームハート 冷静な頭脳と温かい心 経済学者は温かい心を持っている アルフレッド・マーシャル 私たちの周りの社会的な苦難を打開するために、 (中略)私 たちに出来ますことをなし終えるまでは安んずることをしない と決意して、冷静な頭脳をもって、しかし暖かい心情をもって 学窓を出て行きますように、私の才能は貧しく、力も限られて はおりますが、私にできるかぎりのことをしたいという願いに 外なりません。 一橋大学附属図書館企画展示 マーシャルとシュンペーターの遺産 出品資料とその解説 http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/tenji/amjas/kaisetsu.html 2014/10/27 国際経済学 2 22
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