国際経済学 (4) 生産可能性曲線と比較優位 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2014年11月17日 比較優位の復習 何を輸入して何を輸出するかを説明 ある財は他の財に比べてどのくらい費用がか かるかを示す相対費用 日本と中国における今川焼きと杏仁豆腐の貿 易 2014/11/17 国際経済学 4 2 比較優位の復習/2 ある財が他国と比べ相対的費用が低い場合に その国はその財に比較優位があると言います 日本は今川焼き,中国は杏仁豆腐に比較優位 がある ある国が特定の財のみを作ることを特化 比較優位のある財に特化してそれを輸出すると 両国で貿易の利益が発生する 2014/11/17 国際経済学 4 3 比較優位の復習/3 その代り比較劣位にある財を輸入する 日本は今川焼きに特化し,中国は杏仁豆腐に 特化する. 半分ずつ作るよりも世界全体の生産増 2014/11/17 国際経済学 4 4 比較優位をもう一度 アメリカと日本 小麦とコンピュータのみを作っている 各財を1単位生産するための労働費用 アメリカ コンピュータ 100 小麦 5 2014/11/17 国際経済学 4 日本 120 8 5 比較優位をもう一度/2 小麦もコンピュータもアメリカの方が安く生産可 つまりアメリカは絶対優位にあります 効率的なコンピュータ産業を持っているアメリカは 日本からコンピュータを輸入しています. 一方,日本はアメリカから小麦を輸入している 2014/11/17 国際経済学 4 6 比較優位をもう一度/3 この貿易を説明するのが比較優位です 日本の小麦の費用に対するコンピュータの相対的 な費用 120/8=15 アメリカの小麦の費用に対するコンピュータの相 対的な費用 100/5=20 2014/11/17 国際経済学 4 7 比較優位をもう一度/4 日本での小麦1トン当たりの生産費と比較したコン ピュータの1台当たりの相対的な生産費はアメリカ でのコンピュータ1台当たりの生産費よりも低くな っている. このとき日本はコンピュータの生産に比較優位を 持っていると言います. 特化だけではなく様々な生産パターンを見たい 相対費用が変化するケースはどのように扱うのだ ろうか? 2014/11/17 国際経済学 4 8 生産可能性曲線 企業,個人,社会は様々な制約に直面 生産面のトレードオフを示すのが生産可能性曲 線(生産可能性フロンティア) ある財を沢山作れば,他の財を諦める必要 海で魚を捕れば山で猟をする時間が少なくなる 工場で自動車を作ればお米を作る農地が減る 2014/11/17 国際経済学 4 9 生産可能性曲線/2 世の中には様々なトレードオフが存在 トレードオフとはあるものを選択するには他のも のを諦めなければならないこと. 生産可能曲線とは生産要素を効率的に使った ときの生産物の組み合わせを図に表したもの 生産可能性曲線とはトレードオフを図解的に示 した曲線 海でサンマを捕るか,あるいは山でマツタケを 捕るかの選択 2014/11/17 国際経済学 4 10 生産可能性曲線の例 マツタケ の数量 実行可能で効率的 な生産パターン 10 9 実現不可能 非効率的 な生産パ ターン 0 2014/11/17 生産可能性フロンティア 5 7 国際経済学 4 10 サンマ の数量 11 米と自動車 一国の生産も生産可能性曲線で表現可能 日本の自動車と米の生産 すべての資源をクルマに費やせば2000万台のクルマ が生産可能とする 反対に資源をすべてお米に費やせば1500万トンの米 そうした可能性の中で日本はお米を900万トン,自動 車を1000万台生産(A) 自動車を増産すれば米を減らす(B) 内側の点は非効率な生産(C) 2014/11/17 国際経済学 4 12 お米の 数量 (万トン) 一国のトレードオフ:米と自動車 現実の生産パターン A 1500 自動車を増やすにはお米 を減らさなければならない 900 B 500 生産可能性フロンティア C 0 2014/11/17 1000 1800 国際経済学 4 2000 自動車 の数量 (万台) 13 生産可能性曲線/3 生産可能性曲線はどうやって作ることができる のか,なぜ2財しか考えないのかの疑問が浮か ぶかもしれません. その作り方は経済学を深く学ぶと出て来る ここでは比較優位のアイディアを印象的に伝え るために2財のような簡単化を行ったのです. 2014/11/17 国際経済学 4 14 生産可能性曲線/4 現実は複雑ですがそれを簡単化して経済のエ ッセンスだけを取り出したモデルを考える 経済を動かす重要な要因だけに焦点を絞った 模範 2014/11/17 国際経済学 4 15 生産可能性フロンティアは右下がり 生産可能性フロンティアの特徴 1. 右下がりである 2. 外側に向かって突き出ている これを上に凸と表現します 1はトレードオフの関係を表す 2は直線のケースもある 直線はトレードオフが変化しない 上に凸はトレードオフが変化する 単純な直線の生産可能性フロンティアを見る 真央はアイスショーとかき氷を生産している 2014/11/17 国際経済学 4 16 真央の生産可能性フロンティア 真央はアイススケートショーで演技できる また甘味処でかき氷も作ることができる スケートショー出場はかき氷が作られなくなる スケートショーは最大限9回できる かき氷は最大1800杯作れる スケートとかき氷のトレードオフは一定とする 真央の生産可能性フロンティアを描いてみよう 2014/11/17 国際経済学 4 17 かき氷 の数量 1800 真央の生産可能性フロンティア 傾き-200は 変化しない 1200 アイスショーの変化=3-6=-3 かき氷の変化=1200-600=600 600 傾き-200 -3 アイスショーの変化=6-9=-3 かき氷の変化=600-0=600 600 傾き-200 0 2014/11/17 600 -3 アイスショー の数量 3 6 9 国際経済学 4 18 生産の機会費用 アイスショーを増やすための機会費用は減らさな ければならないかき氷の生産量だ 傾き-200はアイスショー1回増やすにはかき氷の 生産を200杯諦める事を意味 傾き一定は機会費用が変化しないことを示す 生産可能性フロンティアは直線で図示できる アイスショーの機会費用はかき氷200杯の諦めた 生産だ 2014/11/17 国際経済学 4 19 生産の機会費用 機会費用とはあるものを選択するときに諦めなけれ ばならないもの 今川焼きを増やすための機会費用は減らさなけれ ばならないかき氷の数量 傾き-2は今川焼き1個増やすにはかき氷2杯諦める 事を意味する 生産可能曲線の傾きの絶対値を限界変形率 限界変形率 marginal rate of transformation 限界変形率は MRT と省略 2014/11/17 国際経済学 4 20 収益逓減 上に凸な米と自動車の生産可能性曲線 生産によって機会費用が変化する 自動車台数が増えれば増えるほど減らさなけれ ばならないお米の量は増えていきます つまり,自動車を生産するほどお米の生産を減 らさなければなりません 収益逓減とは,ある投入物の量を一単位増加さ せる結果として生産量は増加するが,その増加 分は次第に小さくなっていくことを表す. 2014/11/17 国際経済学 4 21 収益逓減/2 最初はお米作りに長けた人が自動車生産か らお米生産へ移るでしょう そのうちそのような人々がいなくなって,お米 作りが不得意で自動車作りが上手い人も移 動する そうすると減らさなければならない自動車は 増えます 2014/11/17 国際経済学 4 22 生産可能性曲線を用いた比較優位の説明 アメリカと中国が航空機と衣服を生産 もちろん,中国は衣服に比較優位を持っている 二カ国の生産可能曲線を同じ図に描いてみる 2014/11/17 国際経済学 4 23 衣類 (着) 比較優位の説明/2 中国の生産可能性曲線 20000 10000 E’ E E’’ 9000 0 2014/11/17 米国の生産可能性曲線 航空機 (機) 100 200 300 国際経済学 4 24 比較優位の説明/3 まずE点から始めましょう 両国はE点で生産:航空機200機、衣類10000着 中国は航空機を100機減らすことにより衣服を1 万着分増加させることができます E→E’ それとは逆にアメリカが航空機を100機増産し た場合に減らさなければならない衣服は1千着 分です E→E’’ 2014/11/17 国際経済学 4 25 比較優位の説明/4 つまり,両国で航空機を減らすことなく 100-100=0 両国で衣服を9千着増加させることができました 9000=10000-1000 つまり両国の生産のトレードオフが異なる限り 中国が衣服にアメリカが航空機に特化するとこ によって得をすることが分かります 2014/11/17 国際経済学 4 26 比較優位の説明/5 限界変形率(MRT)は航空機を1機増やすにはど れだけ衣服を減らさなければならないことを示 します 限界変形率は生産可能性曲線の傾きの絶対値 に等しいことが分かります 中国のMRT > 米国のMRT 1単位の航空機生産による諦めなければならな い衣服の量は,中国の方が大きい 2014/11/17 国際経済学 4 27 比較優位の説明/6 つまりアメリカは航空機に比較優位をもつ 反対に中国は衣服に比較優位を持つ 限界変形率を知ることによって比較優位を知る ことができる 2014/11/17 国際経済学 4 28 比較優位と特化 なぜ特化は生産性を向上させるのか 移動の時間の節約 同じ事を繰り返すことによる熟練 発明の基盤 分業 Division of labor 2014/11/17 国際経済学 4 29 分業 習熟から発明へ 特化の限界 規格化された財 大量生産 繰り返しによる退屈 生産性の低下 2014/11/17 国際経済学 4 30 何が比較優位を決めるのか 1. 2. 3. 4. 4つの比較優位の要因 天然資源 取得した資源 優れた知識 特化 2014/11/17 国際経済学 4 31
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