2.3 線遷移 束縛状態にある離散的なエネルギー準位間の遷移 • • • • • 放射励起 自発放射脱励起 誘導放射脱励起 衝突励起 衝突脱励起 u 𝐸𝑢𝑙 = ℎ𝜈0 l それぞれの遷移確率を表す係数=アインシュタイン係数 2.3.1 アインシュタイン係数 u [自発脱励起] 高準位から自発的に低準位に遷移 放射 l [アインシュタイン係数] 𝐴𝑢𝑙 𝐴𝑢𝑙 :自発脱励起により単位時間内に u → l 遷移 する確率 u状態の寿命 : Δ𝑡~1/𝐴𝑢𝑙 h𝜈0 u 自然幅 𝝍 𝝂 − 𝝂𝟎 [ハイゼンベルグの不確定性関係] エネルギーの不確定幅∆𝐸 = ℎ 振動数の不確定幅 ∆𝜈 = 𝛾𝑟𝑎𝑑 l 2𝜋∆𝑡 2𝜋 (𝛾 𝑟𝑎𝑑 = 1 Δ𝑡 ) 遷移に伴う放射にも不確定性(自然幅)が存在 自然幅による振動数の確率分布 𝛾𝑟𝑎𝑑 𝜓 𝜈 − 𝜈0 = (𝜈−𝜈0 4𝜋2 𝛾𝑟𝑎𝑑 )2 +( 2 4𝜋) (Lorentz 分布) 単位振動数あたりの遷移確率は𝐴𝑢𝑙 𝜓 𝜈 − 𝜈0 単位体積あたりの遷移確率は𝐴𝑢𝑙 𝑛𝑢 h𝜈0 静的な大気中で脱励起過程が励起過程と独立の場合 𝐻(𝑎, 𝑣) 𝜓 𝜈 − 𝜈0 = 𝜋Δ𝜈𝐷 𝜈0 2𝑘𝑇 Δ𝜈𝐷 ≡ …熱運動によるドップラー幅 𝑐 𝑚 𝜈−𝜈0 𝛾 𝑣= , 𝑎= Δ𝜈𝐷 4𝜋Δ𝜈𝐷 H(a,v)は線中心でガウス分布 (熱運動)、線翼でローレンツ分布 (衝突)の性質をもつヴォイト関数 ※脱励起過程が励起過程による 場合分布はより複雑化 u [放射励起] 外部からの放射によって高準位に遷移 𝝋 𝝂 − 𝝂𝟎 h𝜈0 l [アインシュタイン係数] 𝐵𝑙𝑢 𝜑 𝐵𝑙𝑢 𝐽𝜈0 : 放射励起により単位時間内にl → u 遷移をする確率 ここで 𝜑 𝐽𝜈0 ≡ 1 ∞ 1 𝐼 𝜑 2 0 −1 𝜈 𝜈 − 𝜈0 𝑑𝜇𝑑𝜈 𝜑は遷移に対応する減衰分布 静的な大気中では自発脱励起の場合と同様 𝜑 𝜈 − 𝜈0 𝑣= 𝜈−𝜈0 Δ𝜈𝐷 𝐻(𝑎, 𝑣) = 𝜋Δ𝜈𝐷 , 𝑎= 𝜈0 2𝑘𝑇 Δ𝜈𝐷 ≡ 𝑐 𝑚 𝛾 4𝜋Δ𝜈𝐷 減衰が小さいとき(a<1) 𝜑 𝜈 = 𝜈0 a=0で純粋なガウス分布 1−𝑎 = 𝜋Δ𝜈𝐷 [誘導脱励起] 外部放射からの刺激による 高準位から低準位への遷移 u 𝝌(𝝂 − 𝝂𝟎 ) h𝜈0 l [アインシュタイン係数] 𝐵𝑢𝑙 𝜒 𝐵𝑢𝑙 𝐽𝜈0 : 放射励起により単位時間内にl → u 遷移をする確率 ここで 𝜒 𝐽𝜈0 ≡ 1 ∞ 1 𝐼 𝜒 2 0 −1 𝜈 𝜈 − 𝜈0 𝑑𝜇𝑑𝜈 𝜒(𝜈 − 𝜈0 )は遷移に対応する誘導放射分布 衝突励起と衝突脱励起 𝐶𝑙𝑢 :衝突励起により単位時間内に l → u 遷移をする確率 𝐶𝑢𝑙 :衝突脱励起により単位時間内に u→ l 遷移をする確率 u l 電子衝突によりi→j の遷移が起こる確率 ∞ 𝑛𝑖 𝐶𝑖𝑗 ≡ 𝑛𝑖 𝑁𝑒 𝑣 𝜎𝑖𝑗 (𝑣)𝑣𝑓 𝑣 𝑑𝑣 0 𝑁𝑒 は電子密度、𝜎𝑖𝑗 (𝑣)は電子の衝突断面積、f(v)は規格化された速度分布 𝑣0 は励起に必要な速度の閾値(1 2 𝑚𝑣02 = ℎ𝜈0 ) 𝜎𝑖𝑗 (𝑣)はそれぞれの遷移の物質特性のみに依存、 速度v以外の外部パラメータから独立 アインシュタインの関係式 平衡を仮定 𝜒 𝜑 𝑛𝑢 𝐵𝑢𝑙 𝐽𝜈0 + 𝑛𝑢 𝐴𝑢𝑙 = 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 𝐽𝜈0 𝑛𝑢 𝐶𝑢𝑙 = 𝑛𝑙 𝐶𝑙𝑢 𝜒 𝐽𝜈0 = 𝜑 𝐽𝜈0 = (放射遷移) (衝突遷移) 𝑛 𝐵𝜈0 (プランク関数),ボルツマン分布 𝑢 𝑛𝑙 = 𝑔𝑢 −𝐸𝑢𝑙 𝑘𝑇 𝑒 𝑔𝑙 [アインシュタインの関係式] 𝐵𝑙𝑢 𝐵𝑢𝑙 = 𝑔𝑢 𝑔𝑙 , 𝐴𝑢𝑙 𝐵𝑢𝑙 = 2ℎ𝜈 3 , 𝑐2 𝐶𝑢𝑙 𝐶𝑙𝑢 = 𝑔𝑙 𝐸𝑢𝑙 𝑒 𝑘𝑇 𝑔𝑢 𝐸𝑢𝑙 は遷移エネルギー、𝑔𝑖 (i=u,l) は各準位の縮退度, 物質の種類に無関係 2.3.2 体積係数 振動数𝜈の放射の単位長さあたりの吸収係数は ℎ𝜈 𝑙 𝛼𝜈 = 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 𝜑 𝜈 − 𝜈0 − 𝑛𝑢 𝐵𝑢𝑙 𝜒 𝜈 − 𝜈0 4𝜋 ℎ𝜈 𝑛𝑢 𝑔𝑙 𝜒 𝜈−𝜈0 = 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 𝜑 𝜈 − 𝜈0 [1 − ] 4𝜋 𝑛𝑙 𝑔𝑢 𝜑 𝜈−𝜈0 となり、十分𝜈0 のまわりに局在した分布 ( ℎ𝜈𝜑 𝜈 − 𝜈0 𝑑𝜈 = ℎ𝜈𝜒 𝜈 − 𝜈0 𝑑𝜈 = ℎ𝜈0 ) を仮定すると全吸収係数は ℎ𝜈0 𝑙 𝛼𝜈0 = 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 − 𝑛𝑢 𝐵𝑢𝑙 4𝜋 誘導脱励起を無視すると粒子一個当たりの吸 収断面積は ℎ𝜈0 𝜎𝜈0 = 𝐵𝑙𝑢 = 0.02654𝑓𝑙𝑢 𝑐𝑚2 𝐻𝑧 4𝜋 𝑓𝑙𝑢 は古典的な振動子強度 アインシュタインの関係を用いると 𝑔 𝑓 13 𝑙 𝑙𝑢 −1 𝐴𝑢𝑙 = 6.67 × 10 𝑠 2 𝑔𝑢 𝜆 放射係数 放射係数は誘導放射を無視すると ℎ𝜈 𝑙 𝑗𝜈 = 𝑛𝑢 𝐴𝑢𝑙 𝜓(𝜈 − 𝜈0 ) 4𝜋 となり全振動数にわたる放射係数は 𝑗𝜈𝑙 0 = ∞ 𝑙 𝑗 0 𝜈 𝑑𝜈 = ℎ𝜈0 𝑛𝑢 𝐴𝑢𝑙 4𝜋 ここで𝜓 𝜈 − 𝜈0 の𝜈0 に対する対称性を用いた ( ℎ𝜈𝜓 𝜈 − 𝜈0 𝑑𝜈 = ℎ𝜈0 ) 源泉関数 波長νに関する源泉関数は 𝑛𝑢 𝐴𝑢 𝜓(𝜈 − 𝜈0 ) 𝑗𝜈𝑙 𝑙 𝑆𝜈 ≡ 𝑙 = 𝛼𝜈 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 𝜑 𝜈 − 𝜈0 − 𝑛𝑢 𝐵𝑢𝑙 𝜒(𝜈 − 𝜈0 ) アインシュタインの関係より 𝜓 3 2ℎ𝜈 𝜑 𝑙 𝑆𝜈 = 2 𝑔 𝑛 𝜒 𝑢 𝑙 𝑐 − 𝑔𝑙 𝑛𝑢 𝜑 𝜓 = 𝜙 = 𝜒のとき源泉関数は 3 𝑛 𝐴 2ℎ𝜈 1 𝑢 𝑢𝑙 0 𝑙 𝑆𝜈0 = = 𝑛𝑙 𝐵𝑙𝑢 − 𝑛𝑢 𝐵𝑢𝑙 𝑐 2 𝑔𝑢 𝑛𝑙 − 1 𝑔𝑙 𝑛𝑢 (ボルツマン分布が満たされていればプランク関数)
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