公共経済学

公共経済学
21. 労働所得税
21. 1 税が存在しないときの労働供給
21. 2 比例労働所得税と超過負担
21.3 補償労働供給曲線と超過負担
21.4 累進労働所得税と比例労働所得税
21.5 補論 1:労働供給曲線と超過負担
21.6 補論 2:補償労働供給曲線で囲まれる図形の面積
L =労働時間
m =非労働所得(利子所得など)
w =賃金率(=時給)
c =消費財の量(その価格は1に標準化)
21. 1 税が存在しないときの労働供給
w1 =税が存在しないときの賃金率
労働所得= w1 L
所得= w1 L  m
したがって、予算制約式は
c  w1 L  m
(21-1)
であり、それを L c 平面に図示した直線を「
( w1 のもとでの)予算線」と呼ぶことにする。
賃金率 w1 が与えられたもとでの最適な労働時間と消費財の量の組合せ、すなわち労働供給


(量)と消費財需要(量)の組合せを L1 , c1 と表すことにする。




そのとき、 L1 , c1 は予算線とそれに接する無差別曲線との接点として求められる。
すなわち、 L1 ,c1 を通る無差別曲線を c  I 1 ( L) と置き、その微分を I 1´( L) と表すとき、
L , c は、
1
1
I 1´( L1 )  w1
c1  w1 L1  m
(21-2)
(21-3)
より求めることができる。
I 1´( L1 ) =「 c  I 1 ( L) の L  L1 における微分係数」
1
1
1
=無差別曲線 c  I ( L) 上の点 L , c における接線の傾き


また以下では、無差別曲線 c  I ( L) を単に I と表すこともある。
1
1
(問題 21-1)税が存在しないときの予算線を L c 平面に描きなさい。また、その予算線に接


する無差別曲線 c  I 1 ( L) 、接点 L1 , c1 、接線の傾き I 1´( L1 ) を図示しなさい。
c
L
c  I 1 ( L)
c
c  w1 L  m
I 1´( L1 )
c1
I 1´( L1 )  w1
m
w1
L1
L
21. 2 比例労働所得税と超過負担
<比例労働所得税の効果と税収>
労働供給が弾力的なケースに関して、比例労働所得税(proportional labor income tax)が
導入されたときの効果について検討する。なお、簡単化のために労働需要曲線は水平である
とする( w  w1 )。そのとき、税引き前賃金率(wage before tax)は(税率がゼロの場合
1
も含めて)税率には依存せず、常に労働所得税が課される前の賃金率 w である。すなわち、
比例労働(賃金)所得税率を t 、労働所得税が課された後の税引き後賃金率(wage after tax)
を w 2 とすると、 w2  (1  t )w1 と表される。したがって、税率 t の労働所得税が課されたと
きの予算制約式は
c  w2 L  m
(21-4)
となる。そして、この予算制約式が与えられたもとでの労働供給量と消費財需要量をそれぞ
れ L 、c とする。また、( L , c ) を通る無差別曲線を c  I ( L) と表すとともに、単に I と
2
2
2
2
2
2
表すこともある。
税率 t の比例労働所得税のもとでの租税負担額 TP は、税引き前賃金所得が w1 L2 なので、
TP  tw1 L2
と求めることができる。
(21-5)
(問題 21-2) 税率 t の比例労働所得税のもとでの労働供給量 L 、消費財需要量 c 2 、租税負担
2
額 TP を問題 21-1 で描いた図に描き加えなさい。
c  I 2 ( L)
c
c  w1L  m
c  w2 L  m
(w1  w2 ) L2
=
TP
w1 L2  m
w2  (1  t )w1
w2 L2  m  c 2
tw1 L2
=
m
TP
w  (1  t )w
2
1
L2
L
<比例所得税の超過負担>
税額 TL の一括固定税のもとでの予算制約式は、
c  w1L  m  TL
(21-6)
である。
そして、20-1 節の議論より、一括固定税のもとでの超過負担(excess burden)はゼロであ
る。
また、比例労働所得税により生じる超過負担 EB は、「比例労働所得税のもとで実現する効
用水準と同じ効用水準を実現する一括固定税の税額 TL 」と「租税負担額 TP 」との差として
求めることができる。すなわち、
EBP  TL  TP
である。
(21-7)
(問題 21-3) 問題 21-2 で描いた図に、比例労働所得税のときと効用水準の低下が同じになる
ように一括固定税の税額 TL を定めたときの予算制約式(21-6)と超過負担 EBP を描
き加えなさい。
I2
c
c  w1L  m
c  w L  m  TL
1
TL
c  w2 L  m
w1 L2  m
Tp
w2 L2  m  c 2
EBP  TL  TP
m
TL
m  TL
L2
L
21.3 補償労働供給曲線と超過負担
<支出最小化問題>
c  w1L  m
(21-1)
c  w2 L  m
(21-4)
(利用)可能時間を L とすれば、余暇(時間) l は l  L  L と表される。そのとき、賃金率 w j の
もとでの予算制約式 c  w j L  m ((21-1)と(21-4)参照)は、
c  w jl  w j L  m
(21-8)
と書き換えることができる( j  1, 2 )
。なお、 w j L  m は最大可能所得である。
また、余暇時間 l を消費することは労働所得を犠牲にしているので、賃金率 w j は余暇(消費)
の機会費用を捉えていることになる。したがって、w j l は機会費用で測った余暇支出と解釈
することができる。そして、(21-8)の左辺を支出額と呼び E と表すことにする。すなわち、
E  c  w j l [ c  w j ( L  L)]
である。
(21-9)
c  w jl  w j L  m


(21-8)
ところで、 Li , c i は予算制約式(21-8)が与えられたもとでの労働供給(量)と消費財需要(量)


の組合せであり、 c  I i (L) (すなわち I )は Li , c i を通る無差別曲線である( i  1, 2 )。
i
i
そして、支出最小化問題とは、 w j が与えられたもとで、無差別曲線 I 上の労働時間と消費
量の組み合わせ ( L, c ) のなかで、支出 E を最小化する労働時間と消費量の組み合わせ
( L ji , c ji ) を求める問題である( i, j  1, 2 )。
ji
ji
なお、 L と c は、それぞれ補償労働供給量、補償消費財需要量と呼ぶことにする。
(問題 21-4) L c 平面に無差別曲線 c  I i (L)(すなわち I )を描きなさい。また、賃金率 w j
i
i
ji
と I の もと での 補償労 働供 給量 L と 補償 消費財 需要 量 c ji を図 示し なさ い
( j  1, 2 )
。
c  I i (L) or I i
c
E ji  c  w j ( L  L)
or c  E ji  w j (L  L)
c ji
E w L
ji
j
E ji  c ji  w j (L  Lji )
w
j
Lji
L
無差別曲線 I i が与えられたもとで、賃金率 w に対して I i と w が与えられたもとでの補償労
働供給量 L を対応させる関数を
L  LCS (w, I i )
(21-10)
と置いて、補償労働供給関数と呼ぶことにする。
L  LCS (w, I i ) を L w 平面に図示した曲線を「補償労働供給曲線」と呼ぶことにする。
L  LCS (w, I i ) を用いれば、 Lji  LCS (w j , I i ) である。
(問題 21-5) 問題 21-4 で描いた L c 平面の図の下に描いた L w 平面に、補償労働供給曲線
L  LCS (w, I i ) と ( Li , w ) を図示しなさい( j  1, 2 )。
j
j
c  E1i  w1 (L  L)
c
c  I i (L)
or I i
c  E 2i  w2 ( L  L)
I i ( L1i )  c1i
I i ( L2i )  c 2i
E w L
2i
2
E w L
1i
1
E ji  c ji  w j (L  Lji )
w
2
L
1
w
w
L  LCS (w, I i )
w1
w2
L2i L1i
L
<補償労働供給曲線と超過負担>
比例労働所得税により(税引き後の)賃金率が w1 から w 2 に低下することで生じる超過負
担 EBP を、補償労働供給曲線で囲まれる図形の面積を用いて捉える方法について検討しよ
う。
(問題 21-6) 無差別曲線 I 2 (すなわち c  I 2 ( L) )が与えられたもとでの補償労働供給曲線
L  LCS (w, I 2 ) が図示されている L w 平面に、労働供給量 L2 と補償労働供給量 L12 、
L22 を図示しなさい。また、 L c 平面に I 2 ( L12 ) と I 2 ( L22 ) を図示しなさい。
c  w1 L  m
c
c  I 2 ( L)
c  w2 L  m
I 2 ( L12 )
I 2 (L22 )
L
L  LCS (w, I 2 ) or w  I 2´( L)
w
w1
Ⅱ
Ⅰ
Ⅲ
w2
Ⅳ
L22  L2
L12
L
ここで、 I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 ) が「3 つの直線( w  0 、 L  L 、 L  L )と補償労働供給
曲線 L  LCS (w, I 2 ) で囲まれる図形の面積」に一致する。つまり
(21-11)
I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 )  Ⅲ+Ⅳ
である
(8.3 または 21.6 補論 2 を参照)
。したがって、
超過負担 EBP が「2 つの直線
( w  w1 、
L  L2 )と補償労働供給曲線 L  LCS (w, I 2 ) で囲まれる図形の面積」に一致する、つまり
(21-12)
EBP =Ⅱ
であることを示すことができる。
22
(問題 21-7) (21-11)を用いて(21-12)が成り立つことを説明しなさい。
12
c  w1L  m
c
c  I 2 ( L)
c  w2 L  m
w1L12  m
w1L12  w2 L22
=
Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ
TL ⅠⅡ
TL
Ⅰ+Ⅱ
I 2 ( L12 )
Ⅲ+Ⅳ
w2 L22  m  I 2 (L22 )
m
L
L  LCS (w, I 2 )
w
w1
or
w  I 2´( L)
I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 )  Ⅲ+Ⅳ
Ⅱ
(21-11)
Ⅰ
Ⅲ
w2
EBP  TL  TP (ⅠⅡ) Ⅰ Ⅱ
Ⅳ
L22  L2
TP  (w1  w2 ) L2 Ⅰ
L12
L
補償労働供給曲線が直線である( LCS (w, I 2 )     w )のときは、w1 における補償労働供
給の賃金率弾力性  (  w1 / L12 )を用いて、超過負担 EBP が次のように求められる
EB P 
1 2 1 12
t wL
2
(21-13)
w  (1  t )w
2
1
EBP  ( L12  L22 )( w1  w 2 )
2
EB P 
1 12
( L  L22 )t w1
2
1
 L12  L22 


 L12 

 w1  w 2 


 w1 
w1  w2  t w1
1
EB P  t 2 w1 L12
2
 L12  L22 


L12 


t
超過負担EBは税率tの2乗に比例する。
21.4 累進労働所得税と比例労働所得税
累進労働所得税と比例労働所得税を効率性の観点から比較しよう。
(税引き前の)労働所得
を Y とおけば、 Y  w1 L である。そして、労働所得税を T とおいて、
T  t  (Y  Yˆ )
(21-14)
という労働所得税を考える。ここに、Yˆ は労働所得控除額であり( Yˆ  0 )、(21-14)は Yˆ  0
であれば累進労働所得税、 Yˆ  0 であれば比例労働所得税である。そして、 Lˆ  Yˆ / w と
1
おけば、(21-14)は
T  tw1 ( L  Lˆ )
(21-15)
と書き換えることができる。(21-15)は Lˆ  0 であれば労働所得税は累進的(progressive or
graduated)であり、Lˆ  0 であれば比例的である。また、(21-15)のもとでの予算制約式は、
c  w1L  m  tw1 ( L  Lˆ )
と求められる。
c  w1 L  m  T
(21-16)
(問題 21-8) L c 平面に(21-16)を図示しなさい。
c  w1L  m
c
c  w1L  m  tw1 ( L  Lˆ )
m
Lˆ
L
ある正の Lˆ が与えられたもとでの労働供給量を L 、そのときの労働所得税額を TG とおく。
G
G
G
(問題 21-9) L  Lˆ となるケースにおける L を問題 21-8 で描いた図に描き加えなさい。ま
G
た、 L に対応する労働所得税額 TG を図示しなさい。
c  w1L  m
c
c  w1L  m  tw1 ( L  Lˆ )
w1LG  m
w1LG  m  tw1 ( LG  Lˆ )
tw1 ( LG  Lˆ )  TG
m
Lˆ
LG
L
累進労働所得税( Lˆ  0 )のもとでの超過負担を EBG とおけば、 EBG はその累進労働所得
税のもとで実現する効用水準と同じ効用水準を実現する一括固定税の税額 TL と累進労働所
得税のもとで租税負担額 TG との差として求めることができる。すなわち、
EBG  TL  TG
(21-17)
である。また、その累進労働所得税のもとで実現する効用水準と同じ効用水準を実現する
比例所得税の税額を TP とおき、その比例労働所得税のもとでの超過負担を EBP とおく。そ
のとき、
EBP  TL  TP
(21-18)
である。以上の準備のもとで、累進労働所得税のもとでの超過負担の方が比例労働所得税
のもとでの超過負担より大きいことを示すことができる。すなわち、
EBG  EBP
である。
(21-19)
(問題 21-10)(21-19)が成立することを、問題 21-9 で描いた図に TP を描き加えることにより
説明しなさい。
EBG  EBP
EBG  EBP  (TL  TG )  (TL  TP )  TP  TG
(21-19)
c  w1L  m
c  w1L  m  tw1 (LG  Lˆ )
c
TP
c  w1L  m  tw1 ( L  Lˆ )
w1LG  m
TP  TG  EBG  EBP  0
w1LG  m  tw1 ( LG  Lˆ )
tw1 ( LG  Lˆ )  TG
m
Lˆ
LG
L
21.5
補論 1: 労働供給曲線と超過負担
労働供給関数から定義される労働者余剰を用いて超過負担を求める場合の注意点について
検討しよう。なお、労働供給関数とは、賃金率 w に対して労働供給量 L を対応させる関数
であり、それを L  LS (w) と表すことにする。
(問題 21-11) L c 平面の図の下に L w 平面を置き、賃金率 w j の下での労働供給量を L とお
1
2
1
2
い て ( j  1, 2 ) 、 w  w か つ L  L と な る ケ ー ス を 描 き な さ い 。 な お 、
Lj  LS (w j ) である。また、労働供給曲線 L  LS (w) を図示しなさい。
j
c
L
w
w1
w2
L
c  I 1 ( L)
c
c  w1L  m
c  I 2 ( L)
c  w2 L  m
c1
c2
2
w
w
1
m
L1 L2
L
w
w1
w2
・
・
L  LS (w)
L1 L2
L
補償労働供給曲線を労働供給曲線が近似している場合は、比例労働所得税を課した場合の超
過負担は「労働者余剰の減少分-労働所得税負担額」で近似的に捉えることができる。
なお、賃金率が w1 から w 2 に下落したときの「労働者余剰の減少分」とは「労働供給曲線、
変化前と後の価格線、縦軸で囲まれた部分の面積」である。
しかし、労働供給曲線が問題 21-8 のように右下がりの部分を持つ場合には、「労働者余剰の
減少分-労働所得税負担額」と比例労働所得税の超過負担とは大きく乖離し、正負が逆にな
る可能性もある。
「労働者余剰の減少分」
=労働供給曲線、変化前と変化後の価格線、縦軸
w
で囲まれた部分の面積
労働者余剰の減少分
w1
w2
・
・
L  LS (w)
L1 L2
L
労働者余剰の減少分 労働所得税負担額(TP )  0
w
TP  労働者余剰の減少分  0
労働者余剰の減少分
TP
w1
・
・
w2
労働市場における効率性の分析を
する際には(普通の)労働供給関数
から導かれる労働者余剰の概念を
用いることには注意が必要である。
L  LS (w)
(普通の)労働供給曲線
L1 L2
TP  労働所得税負担額
L
(問題 21-12) 予算制約式が c  w L  m 、効用関数が u  c  aL2 で与えられているとする
2
( a  0 、 L は L の 2 乗)
。このとき、労働供給関数と補償労働供給関数を求めな
さい。
21.6 補論 2:補償労働供給曲線で囲まれる図形の面積 8章の議論を参照
無差別曲線 c  I 2 ( L)(あるいは I )が部分的に直線になっている特殊ケースを想定する。
すなわち、無差別曲線は下の上段の図のように、 L が Lˆ から Lˆ の範囲の限界代替率が
2
k 1
k
MRSk で一定であるとする( k  1, 2, 3 かつ Lˆ0  0 )。なお、 Lˆ k 1 < Lˆ k かつ MRS 1 < MRS2 <
MRS 3 であるとする。
等価変分が補償労働供給曲線を用いて捉えることができることを示そう。そのために、賃
金率 w が w1 から w 2 に低下したとする( MRS 3 > w1 > MRS2 > w 2 > MRS 1 )
。そして、賃金
j2
j2
率 w が w j のときの個人の補償労働供給量と補償消費財需要量の組を ( L , c ) と表すこと
にする( j  1, 2 )。
(問題 21-13) L c 平面に上述のような無差別曲線 c  I 2 ( L) を描きなさい。また、賃金率 w
j2
が w j のときの補償労働供給量 L とおく( j  1, 2 )。そのとき、 L12  Lˆ 2 かつ
L22  Lˆ1 と求められることを示しなさい( j  1, 2 )。さらに、L c 平面の下に L w 平
面を描き、そこに補償労働供給曲線を描きなさい。そして、 I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 ) の
値を L c 平面の中のどの線分の長さで捉えられるかとともに、 L w 平面の中のどの
図形の面積で捉えられるかを説明しなさい。
c
c  I 2 ( L)
MRS 3
MRS2
MRS 1
L
w
MRS 3
w1
MRS2
w2
MRS 1
L
c
I 2 or c  I 2 ( L)
MRS3
・
I 2 ( L12 )
MRS2  ( L12  L22 )
MRS2  ( L12  L22 )  I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 )
・
I 2 ( L22 )
MRS2
MRS1
w2
w1
Lˆ1
w
Lˆ2
=
=
22
L12
L
L
の面積  I 2 ( L12 )  I 2 ( L22 )
補償労働供給曲線
MRS3
w1
・
MRS2
w2
MRS2  ( L12  L22 ) =
・
MRS1
L22
L12
L
の面積
(問題 21-12) 予算制約式が c  w L  m 、効用関数が u  c  aL2 で与えられているとする
2
( a  0 、 L は L の 2 乗)
。このとき、労働供給関数と補償労働供給関数を求めな
さい。
I ( L)  aL2  u
I ( L)  2aL
2aL  w
w
 LS ( w)
L
2a
cD (w)  wLS (w)  m
w
c  w   m
 2a 
w2
c
 m  cD ( w)
2a
L
w
w
[ LS ( w)]
2a
or w  2aL
2a
L
(問題 21-12) 予算制約式が c  w L  m 、効用関数が u  c  aL2 で与えられているとする
2
( a  0 、 L は L の 2 乗)
。このとき、労働供給関数と補償労働供給関数を求めな
さい。
I ( L)  aL2  u
I ( L)  2aL
2aL  w
w
L
 LCS ( w)
2a


L

w
w
[  LCS ( w)]
2a
or w  2aL

2
c  a LCS ( w)  u
2
w
c  a   u
 2a 
w2
c
 u  cDC ( w)
4a

2a

L
21. 1 税が存在しないときの労働供給
21. 2 比例労働所得税と超過負担
21.3 補償労働供給曲線と超過負担
21.4 累進労働所得税と比例労働所得税
21.5 補論 1:労働供給曲線と超過負担
21.6 補論 2:補償労働供給曲線で囲まれる図形の面積
<個人所得課税の計算例>
個人所得課税=所得税(国税)+個人住民税(地方税)
給与収入=500(万円)、社会保険料支払額=50(万円)で、夫婦のうち 1 人のみに収入があり、
2 人の子供(うち 1 人は特定扶養親族)がいるケースについて計算する。
所得税=所得税の課税所得より計算
個人住民税=個人住民税の課税所得より計算
① 所得税の課税所得=給与所得-所得税の所得控除
② 個人住民税の課税所得=給与所得-個人住民税の所得控除
給与所得=給与収入-給与所得控除
① 所得税の所得控除=社会保険料控除+所得税の人的控除
② 個人住民税の所得控除=社会保険料控除+個人住民税の人的控除
(1) 給与所得控除と給与所得
給与所得控除≒給与所得者にとっての必要経費
給与等の収入金額
(万円)
給与所得控除額
(65万円以上の場合)
180以下
40%
180~360
30%
360~660
20%
660~1000
10%
1000超
5%
給与収入が 500 万円のときは、給与所得控除は次のように求められる。
給与所得控除=0.4×180+0.3×(360-180)+0.2×(500-360)=72+54+28=154
給与所得=給与収入-給与所得控除=500-154=346(万円)
(2) 社会保険料控除=社会保険料支払額(=50 万円)
(3) 人的控除
夫婦のうち 1 人のみに給与収入があり、2 人の子供うち 1 人は特定扶養親族なので、人的控除
は次のようになる。
所得税
個人住民税
人的控除額の差
基礎控除
38
33
5
配偶者控除
38
33
5
(一般)扶養控除
38
33
5
特定扶養控除(16 歳から 22 歳まで)
63
45
18
合計
177
144
33
(単位=万円)
(4) 課税所得
給与収入 Y=500 かつ社会保険料控除=50 なので、所得税と個人住民税の課税所得は
次のように定まる。
所得税の課税所得=給与所得-社会保険料控除-所得税の人的控除
=346-50-177=119
個人住民税の課税所得=給与所得-社会保険料控除-個人住民税の人的控除
=346-50-144=152
(5) 個人所得課税
○所得税
所得税=0.05×119=5.95
課税所得(万円)
税率(%)
195
330
695
900
1800
∞
5
10
20
23
33
40
(←課税所得が 195 万円までは(限界)税率が 5%)
○個人住民税
個人住民税=0.1×個人住民税の課税所得-(個人住民税の)調整控除
調整控除=国から地方への税源移譲にともなう調整措置
このケースの調整控除=1.65(注)
個人住民税=0.1×152-調整控除=15.2-1.65=13.55
○個人所得課税
年収に対する個人所得課税の割合
=19.5/500=3.9%
個人所得税=所得税+個人住民税=5.95+13.55=19.5
(注)「人的控除額の差の合計(33)≦個人住民税の課税所得(144)≦200」が成り立つときは、
調整控除=0.05×人的控除額の差の合計=0.05×33=1.65 と計算される。