2015年度 医 療 福 祉 論 (3) 人間福祉学部 准教授 宮 嶋 淳 (みやじま じゅん) 博 士 (ソーシャルワーク) MSWの業務指針と専門性 • 1947年、GHQから「保健諸機能の拡充強化に関す る件」12項目示される。 • 1947年、保健所法第2条第6号、保健所事業 「公 共医療事業の向上及び増進に関する事項」が明記 • 1958年、厚生省「保健所における医療社会事業の 業務指針」 • 1987年、「新たな医療関係職種の資格制度のあり 方に関する検討会」 • 1988年、厚生省健康政策局「医療ソーシャルワー カー業務指針検討会」 • 1989年、厚生省「医療ソーシャルワーカー業務指 針」策定 MSWの業務指針の意義 ①「医療ソーシャルワーク」の用語の意味が「保健医療の場に おけるソーシャルワーク」と定義づけられた。 ②平成元年版の業務指針の通知において「社会福祉の立場」 が明記され、医療ソーシャルワーカーは社会福祉専門職で あることの認識が全国に周知された。 ③専門職としての中核的要素である「自律性」と「医師の指示」 の範囲が整理され、「受診・受領援助業務」に限定された。 ④この指針は、国が策定し、関係団体が承認したことに大きな 意義があり、保健医療機関において社会福祉専門職として 医療ソーシャルワーカーが存在する根拠ともなった。 業務指針と6つの柱 ①療養中の心理的・社会的問題の解決・調整 援助 ②退院援助 ③社会復帰援助 ④受診・受領援助 ⑤調整援助-経済的問題の解決 ⑥地域活動 業務指針の中味(1) 1.療養中の心理的・社会的問題の解決・調整 援助 2.退院援助 3.社会復帰援助 業務指針の中味(2) 4.受診・受領援助 5.調整援助-経済的問題の解決 6.地域活動 医療福祉の今後の課題 経済環境の変化・不安定 ホームレス、サラ金、過労死、ワーキン グ・プア、 高齢社会 老老介護、認知症介護、孤独死 医療制度改革 退院・転院問題、医療費・介護費負担 グローバリゼーション 外国人、医療スタンダード IT環境の変化 ひきこもり、いじめ、格差 家族機能の変化 家庭内暴力、虐待 先端医療 生命倫理、医療の選択、医療費、臓器移 植、遺伝子治療、出生前診断、生殖補助 医療 母子保健 • 「衛生」から「保健」へ • 目的 ① 保健水準の指標 ○ QOLを含む住民の保健水準を示すもの ○ 取り組みの結果、最終的に得られるもの ○ 保健水準を達成するための、住民一人ひ • 対象 ② 住民自らの行動指標 ③ 行政・関係団体など の取り組み指標 とりが取り組むべき事項を示すもの ○ 行政や関係団体などが取り組みの成果を モニタリングするもの ○ 事業の実施、サービスの提供、施設・設備 の整備など資源・環境の整備に対して行政 や関係機関・団体が寄与しうる取り組み ○ 住民の行動を支援するもの 母子保健領域における医療福祉問題 • 2001年「健やか親子21」が示した4つの課題 • 追加された5つの指標 – – 思春期保健対策に取組んでいる地方公共団体の割合 乳幼児健診未受診児など生後4ヶ月までに全乳児の状 況把握に取り組んでいる市町村の割合 – 児童・生徒における肥満児の割合 – 食育の取り組みを推進している地方自治体の割合 – う歯のない3歳児の割合 施設・在宅サービス 患者・家族 = 疾病・障害を抱えた生活設計 (新たな生活改善計画) 相談援助 (要望等の明確 化) MSW = 生活ニーズ・アセスメント 生活マネジメント 統合化=退院計画 連携 = チームの確 立 医師 = 治療計画 看護師 = 看護計画 P T = リハビリ計画 地域ケアマネジメント システム (地域連携の確立) 健康転換と保健医療サービス 相 健康転換 対応システム 提供体制 社会福祉職の役割 第1相 感染症 公衆衛生施策 開業医中心 周辺サポーター 医療保険制度 病院中心 チームコーディネーター (医療と施設) 第2相 慢性疾患 医療・福祉を統合 地域中心 第3相 老人性疾患 した独立システム (福祉と在宅) 地域ネットワーカー 在宅支援システム • 地域包括支援センターの設置 • 地域包括ケアシステムの推進 (H23改正) – 5つの視点 • 医療との連携強化 • 介護サービスの充実強化 • 予防の推進 • 見守り、配食、買物など、多様な生活支援サービスの確保や権 利擁護 • 高齢期になっても住み続けることのできる高齢者住まいの整備 福祉士がチーム医療に参加する意味 チーム モデル 目標 マルチ型 専門職各自が目標 別々 役割 当事者と専門職 専門職中心で位階性が強い 目標のすり合わせ 当事者ニーズの取り入れ 役割の重なり インター型 相互作用での摩擦 専門職アプローチの混乱の 機能の重複 あり 可能性 役割の開放・交代 当事者もチームの一員 トランス型 目標の統合 同じ業務を異なる 「医行為」との関係で困難も 職種で 生ずる 多職種連携チームと専門性 組織 対象者 目標 連絡 連携 別々 別々 重複 統合 同一 同時 別々 調整・共有 提供主体 情報交換 別々 目標に対する責任 必要時 個別のサービス提供時 自主チーム 定期・常時 全体として一定の責任 業務チーム 日常 業務上の責任 リハビリテーションとは • 全米リハビリテーション評議会:1942年 • WHO:1981年 • 砂原茂一:1977年 • ラスク, H.A.:「リハビリテーションの父」 リハビリの目的 & 専門職 一般病床 急性期 療養病床 回復期 介護施設 在宅 維持期 終末期 疾患・リスク管理に重きを置き、 発症1月 廃用症候群の予防を中心とした ~2週 発症早期のリハを提供 疾患、リスク管理に留意しつつ、 ADLの改善を中心とした能動的 かつ多彩な訓練を集中的に提 発症9月 供。 (家庭復帰を目標とする) 急性期リハ・回復期リハが終了 し、 獲得された在宅もしくは施設の 上記以降 生活や社会生活の改善もしくは 維持・継続を支援するリハを提 尊厳ある終末期を支援 上田敏によるリハビリテーション医学 • 『リハビリテーションを考える-障害者の全人 間的復権』青木書店、1997年 • 障害を対象とし、障害者の自立を目指すもの である。 – 特徴 – 過程 – 具体的な機能 リハビリテーション医療における チームワークの機能 • • • • • • 認識機能 予測機能 構想機能 計画機能 実行機能 反省的確認機能 地域リハビリテーション • 日本リハビリテーション病院協会: • 維持期におけるリハビリテーションのあり方に 関する検討会: 地域リハリビリテーション活動の歩み • 大田仁史『地域リハビリテーション原論』医歯 薬出版、2001 • 第1期「個別活動期」 • 第2期「全国展開期」 • 第3期「再編・混乱期」 Q.リハビリテーションの目的は、 心身の障害を治療・軽減され残された能力 を活かし、 障害を持たれた方が地域住民の一人として、 生活を送ることにあると考えて良いのでしょ うか。 A.正しい考え方です。リハビリテーションの歩みを振 り返ってみると、個人の障害や能力に着目した時代 から、個人と環境とのかかわり、そして環境そのも のを変革することに視点が移ってきているのです。 この背景には、障害は個人に起因するものではな く、障害をもつ人を包み込む環境とのかかわりに よって生じるものであるとの考え方があります。同時 にノーマライゼーションや人権に対する考え方が深 く関与しています。 私たちは、患者をどのように支援することが出来る かを考えるだけでなく、それを支える思想についても 着目し、常に検討することが必要です。
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