5 化学平衡 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 5.7 あらまし 平衡 化学平衡 溶液と凝縮相 平衡定数の変化 アミノ酸の平衡 まとめ 化学平衡 (chemical equilibrium) ・化学の重要な研究テーマの一つ ・化学反応の過程で,系を構成する化学的な成分の間に目に みえる変化がなくなった状態 ・熱力学の大きな貢献の一つ 化学平衡を理解するのに役立つ ・実際に化学平衡にあるといえる過程 わずかしかない 人間の細胞で起こる化学反応 もし平衡にあれば,人間は生きていられない 工業スケールで利用される多くの化学反応 もし平衡にあれば次つぎと新しい化学物質をつくり, 商品化することもできない なぜ平衡に関心をもつのか ・化学平衡にある系は熱力学的に理解が可能 ・興味ある化学的な系が平衡になくても,平衡についての 考え方が研究の第一歩として有用 ・化学平衡の概念は,平衡にない系を理解するための 大切な基礎 → 化学平衡を理解することが,化学全体を理解するために重要 5.1 あらまし ・本章 化学平衡を定義 ・温度一定,圧力一定の過程 dGが自発的条件を与える → ギブズエネルギーGが最も便利なエネルギー 化学平衡についても,ギブズエネルギーに結びつけて考える ・これまで考えてきた範囲の化学反応 反応物から生成物が生じる方向にのみ進行 → 純粋な反応物から生成物へ向かって,反応の過程が どのくらい進んだかを表すために反応進行度を定義 化学平衡を定義するのにも,反応進行度を使用 ギブズエネルギーG 化学ポテンシャルμに関係した量 ・化学ポテンシャルがどのように化学平衡と関係しているか ・平衡定数がどのようにして,化学的な過程の特徴を表す ものになるのか ・なぜ固体や液体が平衡定数の値の決定に寄与しないか ・なぜ溶液中の溶質濃度は寄与するのか ・平衡定数の値が条件とともに変化していくことについて考察 圧力や温度の変化と平衡定数の関係 平衡点における反応進行度にどのような影響を与えるか を理解するための簡単な考え方を学ぶことになる 5.2 平 衡 物理的な系での例 岩石の移動 (a) 自発的 (b) 自発的でない → 仕事を与える必要あり 化学的な系での例 (1) ○ 体積1cm3の立方体の金属ナトリウムが, 100mLの水の入ったビーカー中にある状態 系は非平衡 ↓ 自発的な化学反応 水酸化ナトリウム水溶液 水素ガス 平衡状態 化学的な系での例 (2 ) ○ 密閉した容器に入った水H2Oと重水D2O 系は非平衡 平衡状態 化学的な系での例 (3 ) ○水溶液から不溶性の塩が沈殿するような過程 平衡状態 課題 1 P. 158 静的平衡と動的平衡 静的平衡 (static equilibrium) これ以上何も起こらないような平衡関係 (例) 谷間の岩石 動的平衡 (dynamic equilibrium) ある方向に進行する現象と逆向きの現象とが 全く同じ速度で起こるような平衡関係 → 系の性質に変化が起こらない (例) 化学平衡 (すべての化学平衡は動的平衡) 課題 2 P. 158 なぜ系は平衡になるのか? ○ 山の中腹に岩石がある場合 ・物理的(力学的)考察 重力が岩石を下に引っ張り,山の斜面がこの力に 抗して落下を防ぐことができない → 岩石は山肌を転がり落ちてふもとの谷間で止まる 岩石はこの位置で地面から重力を打ち消すカを受け, 静的平衡 ・エネルギーの観点から考察 山の中腹 大きな重力による位置エネルギー → 山を降りるに従って位置エネルギーが減少 自発的に重力による位置エネルギーを減少させる場所へ移動 → 力の釣りあいがとれて停止 → 平衡の実現 なぜ系は平衡になるのか? ○ 化学的な系 岩石の場合と類似 系のなかの化学種にも“力”の釣りあいが存在 これらの力も現実にはエネルギー,すなわち 平衡にある系に含まれている異なった化学種の 化学ポテンシャル 次節 化学平衡をこうした立場から考える おまけ 三省堂 「新明解 漢和辞典」 度 量 衡 ものさし → 長さ ます → 容積 はかり → 重さ 秦 始皇帝 5.3 化学平衡 ○ 閉じた系で起こる化学反応 始めに存在する化学物質(反応物)が違った物質(生成物)に変化 ○ ギブズエネルギー G ・ 物質量 n に依存 ・ 化学ポテンシャル μ(ミュー) 物質量 n についての G の変化として次のように定義 (前章) ○ G はそれぞれの ni に応じて変化 → 化学的な過程を通して系全体の全ギブズエネルギーが変化
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