電磁気学C Electromagnetics C 5/20講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁 自由空間でのMaxwell方程式 Maxwell方程式 B( x, t ) t D( x, t ) rot H ( x, t ) ie ( x, t ) t rot E ( x, t ) div D( x, t ) e ( x, t ) div B( x, t ) 0 ファラデーの電磁誘導則 アンペール・マクスウェルの法則 電場に関するガウスの法則 変位電流 磁場に関するガウスの法則 自由空間でのMaxwell方程式 (自由空間では、真電荷 ρe および伝導電流 ie がゼロ) B( x, t ) t D( x, t ) rot H ( x, t ) t rot E ( x, t ) 等方性、かつ線形、かつ非分散性の媒質中 D( x, t ) E ( x, t ) B( x , t ) H ( x , t ) div D( x, t ) 0 真空中 D( x, t ) 0 E ( x, t ) div B( x, t ) 0 B( x, t ) 0 H ( x, t ) 波動方程式の導出 第1式 E ( x, t ) B( x, t ) t ここで媒質は、等方性かつ線形かつ非分散性と仮定している D( x, t ) E ( x, t ) B( x , t ) H ( x , t ) 両辺の rotation をとる 2 2 D ( x , t ) E ( x, t ) E ( x, t ) B( x, t ) H ( x , t ) t t t 2 t 2 ベクトル恒等式 ( E ) ( E ) E H ( x, t ) D( x, t ) t 第2式 ( E ( x, t )) E ( x, t ) 0 従って、 D( x, t ) E ( x, t ) 0 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 0 2 t 第3式 波動方程式 練習のため、第2式の rotation をとり、磁場に対する式を求めてみよう 2 B( x, t ) B( x, t ) 0 2 t 波動方程式導出においての変位電流の役割 変位電流は、MaxwellがAmpereの式に理論的考察を行って付加したものであるが、 仮に、この変位電流の項が無かったとしたら、どんな方程式が導かれるだろうか? 変位電流が無い場合の、自由空間でのMaxwell方程式は、以下のようになる。 rot E ( x, t ) B( x, t ) t 第1式の rotation をとると、 E ( x, t ) rot H ( x, t ) 0 B( x, t ) H ( x , t ) t t 0 div D( x, t ) 0 div B( x, t ) 0 第2式 H ( x, t ) 0 ( E ( x, t )) E ( x, t ) 0 D( x, t ) E ( x, t ) 0 従って、 E ( x, t ) 0 となり、 静電場の場合のラプラスの方程式となってしまう。 波動方程式の意味 2 2 E ( x, t ) 0 t 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 0 2 t 2 2 2 2 E ( x, t ) 0 2 2 2 E ( x, t ) 2 x y z t ここで簡単のため、E(x, t)は x と y には依存せず、z と t のみの関数であると仮定 つまり、 E(x, t) → E(z, t) 2 E ( z, t ) 2 E ( z, t ) 0 z 2 t 2 1 v 今ここで、 と置くと、 2 E ( z, t ) 1 2 E ( z, t ) 2 0 2 2 z v t 後で分かるように、v は電磁波が物質中を伝わる速度、真空中の場合には、v は 光速度 c で与えられ、 c 1 0 0 2.998108 m/s 波動方程式の解 波動方程式 (教科書 p.200 参照) E ( z, t ) 1 E ( z, t ) 2 0 の解は、 E ( z, t ) X1 ( z vt) X 2 ( z vt) で与えられる。 2 2 z v t 2 2 x + z 方向に速度 v で進む波 (進行波) - z 方向に速度 v で進む波 (後退波) z y より一般的には、波動方程式 1 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 2 0 の解は、 v t 2 E ( x, t ) X1 (k x t ) X 2 (k x t ) で与えられる。 + k 方向に進む波 - k 方向に進む波 kは波の伝搬方向を示す波数ベクトル は波の角周波数 平面電磁波 波面が平面からなる波が、波面に垂直方向に伝搬していく k x t 波面 (等位相面) z x3 x2 x1 k 0 x k・x – t を波の位相と呼ぶ。 これがある一定値 を保持し たまま(等位相)、時間発展して いく様子は、等位相面(波面) が平面からなる波が波面に垂 直方向に伝搬する様子を表す k x3 t3 k x2 t 2 k x1 t1 y k: 波数ベクトル(波の進行方向を向いている) 平面電磁波 自由空間を伝搬する電磁波(進行波)の中で、特別な場合として正弦波で表される 電磁波を取り上げる。 角周波数 で振動しながら、+ z方向に伝搬する電磁波 Ex Ex0 cos(kz t ) H x H x0 cos(kz t ) Ey Ey 0 cos(kz t ) H y H y 0 cos(kz t ) Ez Ez 0 cos(kz t ) H z H z 0 cos(kz t ) kは波数で、 k 2 v x E z y 平面電磁波 今、自由空間を伝搬する電磁波(進行波)の中で、特別な場合として正弦波で表さ れる電磁波を取り上げる。 角周波数 で振動しながら、+ z方向に伝搬する電磁波 Ex Ex0 sin(kz t ) H x H x0 sin(kz t ) Ey Ey 0 sin(kz t ) H y H y 0 sin(kz t ) Ez Ez 0 sin(kz t ) H z H z 0 sin(kz t ) kは波数で、 x k 2 v E Ex0 z Ey0 Ez0 y 平面電磁波 x, y 方向には一様 + z方向に伝搬する電磁波 Ex Ex0 sin(kz t ) H x H x0 sin(kz t ) Ey Ey 0 sin(kz t ) H y H y 0 sin(kz t ) Ez Ez 0 sin(kz t ) H z H z 0 sin(kz t ) rot E ( x, t ) 電場の波と磁場の波 の間には位相差φが あると仮定している B( x, t ) に代入、 t B Ez E y E E B B E E e x x z e y y x e z x e x y e y z e z z x y t t t z y x 0 E y 0 0 0 φはゼロでなければならない B x z t kEy 0 cos(kz t ) H x0 cos(kz t ) kEy 0 H x0 By Ex z t kEx0 cos(kz t ) H y 0 cos(kz t ) kEx0 H y 0 Bz 0 t H z 0 cos(kz t ) 0 H z 0 0 平面電磁波 同様に、 rot H ( x, t ) D( x, t ) t に代入、 Dy H z H y H y H x Dx Dz H x H z e e e e e ez y x y x x z y z z x y t t t 0 0 H y z Dx t H x Dy z t 0 0 φ=0 kH y 0 cos(kz t ) Ex0 cos(kz t ) kH y 0 Ex0 kHx0 cos(kz t ) Ey 0 cos(kz t ) kHx0 Ey 0 Dz 0 t Ez 0 cos(kz t ) 0 以上の関係より、 Ey Ex Hy Hx Ez 0 0 ここで、 Ez H z 0 となる k v の関係を用いた 平面電磁波 Ey Ex Hy Hx Ez H z 0 E と H (ベクトル)は、波の進行方向に垂直な平面 内に存在し、互いに直交する。また、 E と H の大 きさの比は一定 x Ex E 媒質中での電場と磁場の大きさの比を、媒質の インピーダンスという Z H E 真空中のインピーダンス Z0は、 0 1.2566371 10 6 Z0 377 [] 0 8.854185 10 12 z Ey Hy H y 平面電磁波 インピーダンス Z の媒質中を伝搬する電磁波に関して、E と H との間 には以下の関係が成り立つ x k E Z H , k 1 k H E Z k k E z y H 電場の波と磁場の波は同相(同じ時刻に共に節や腹となる) 電磁気学C Electromagnetics C 5/27講義分 波動方程式から導かれる電磁波の性質 山田 博仁 自由空間でのMaxwell方程式 自由空間でのMaxwell方程式 (自由空間では、真電荷および伝導電流がゼロ) B( x, t ) t D( x, t ) rot H ( x, t ) t rot E ( x, t ) 等方性、かつ線形、かつ非分散性の媒質中 D( x, t ) E ( x, t ) B( x , t ) H ( x , t ) div D( x, t ) 0 真空中 D( x, t ) 0 E ( x, t ) div B( x, t ) 0 B( x, t ) 0 H ( x, t ) ε, μ は、異方性媒質ならテンソルになる 非線形媒質なら電場や磁場の強さの関数( ε(E), μ(H) )になる (非線形光学で扱う) 分散性媒質なら電磁波の周波数の関数( ε(ω), μ(ω) )になる 等方性かつ線形かつ非分散性の媒質中として上の方程式を解くと、以下の波動方程式 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 0 2 t 2 B( x, t ) B( x, t ) 0 2 t が得られる 波動方程式とその解 波動方程式 2 2 2 2 E ( x, t ) 0 2 2 2 E ( x, t ) 2 x y z t 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 0 t 2 ここで、 v 1 と置くと、 1 2 E ( x, t ) E ( x, t ) 2 0 2 v t 1 2 2 2 E ( x, t ) 0 v t □ E ( x, t ) 0 v は電磁波が物質中を伝わる速度 v 1 1 2 □ 2 2 v t 真空中の場合に v は通常 c で表記され、 c ダランベルシアン 1 2.998108 m/s 0 0 (真空中の光速度) 波動方程式の解は、 E ( x, t ) X1 (k x t ) X 2 (k x t ) で与えられる。 + k 方向に進む波 X1, X2は任意のベクトル関数 - k 方向に進む波 kは波の伝搬方向を示す波数ベクトル は波の角周波数 平面電磁波 電場が e(1) 方向に偏り(直線偏波)、正弦関数的に振動する平面電磁波を考える E( x, t ) e (1) E0 sin(k x t ) 1 2 E ( x, t ) 波動方程式 E ( x, t ) 2 0 に上式を代入すると、 2 v t 2 2 2 2 (k x k y k z ) 2 E ( x, t ) 0 v 0 上式が、任意の場所 x、任意の時刻 t で成立するためには、 つまり、 k 2 2 v2 k k k x2 k y2 k z2 角周波数 を、正の値と定義すると、 v k これを分散 (dispersion) 関係という。 2 f f は周波数(振動数) k 2 と置けば、 v f T T は周期 1 f 平面電磁波 電場が e(1) 方向に偏り、正弦関数的に振動する平面電磁波 E( x, t ) e (1) E0 sin(k x t ) を、 電場に関するガウスの法則 div E ( x, t ) 0 に代入する div E ( x, t ) ex(1) e(y1) ez(1) E0 sin(k x x k y y k z z t ) y z x (k x ex(1) k y e(y1) k z ez(1) ) E0 cos(k x x k y y k z z t ) (k e (1) ) E0 cos(k x x k y y k z z t ) 0 上式が常に成り立つためには、 k e (1) 0 でなければならない 即ち、電場の偏りの方向 e(1) は、その波の進行方向を表すベクトル k に直交する つまり、電場の波は横波である e(1) E( x, t ) e (1) E0 sin(k x t ) k 平面電磁波 磁場に対しても e(2) 方向に偏り、正弦関数的に振動する平面電磁波 B( x, t ) e (2) B0 sin(k x t ) を考え、 磁場に関するガウスの法則 div B( x, t ) 0 に代入する div B( x, t ) ex( 2) e(y2) ez( 2) B0 sin(k x x k y y k z z t ) y z x (k x ex( 2) k y e(y2) k z ez( 2) ) B0 cos(k x x k y y k z z t ) (k e ( 2) ) B0 cos(k x x k y y k z z t ) 0 上式が常に成り立つためには、 k e ( 2) 0 でなければならない 即ち、磁場の偏りの方向 e(2) は、その波の進行方向を表すベクトル k に直交する つまり、磁場の波も横波である B( x, t ) e (2) B0 sin(k x t ) 従って、 k 電磁波は横波 !! e(2) 平面電磁波の性質 媒質中での電場と磁場の大きさの比を、媒質の電磁インピーダンスという Z H 0 1.2566371 10 6 真空中では、 Z 0 377 [] 0 8.854185 10 12 E インピーダンス Z の媒質中を伝搬する平面電磁波に関して、E と H との間には 以下の関係が成り立つ k 1 k E Z H , H E k Z k つまり、電場および磁場の偏りの方向(偏波方向)は、波の進行方向に対して垂 直。(電場および磁場ベクトル E, B は、波の進行方向に対して垂直面内に存在 する。) また、電場および磁場の偏波方向( E, B の向き)は互いに直交する。 x k E z y H 進行する正弦波 +x 方向に伝搬する正弦波 1 2 2 x t sin(kx t ) sin x 2 f t sin x 2 t sin 2 T T 波数 角周波数 位相角 x1 従って、波数と角周波数の比は、 波の伝搬速度 v 0 t=T x=λ t=0 k ある時刻(t = t1)について見てみると、 -x x=0 t1 ある場所(x = x1)について見てみると、 +x -t 0 +t 参) 伝送線路と電信方程式 送電端 受電端 E ZL x R: 線路単位長当りの抵抗 (/m) L: 線路単位長当りのインダクタンス (H/m) C: 線路単位長当りの容量 (F/m) G: 線路単位長当りのコンダクタンス (S/m) x=0 上記の伝送線路に対して、以下の線路方程式が得られる 2v v 2v RGv ( RC GL) LC 2 2 x t t 電信方程式あるいは伝送方程式 2i i 2i RGi ( RC GL) LC 2 x 2 t t 右辺の最後の項に着目すると、この波(線路上での電圧と電流)の伝搬速度 v は、 v 1 ← 無損失線路(R = G = 0)の場合はこれで良い LC であることが分かる 参) 伝送線路上の電圧波の伝搬 x E 入射波 Vxe j t V0e xe j ( t x) V0e xe j ( t x) 反射波 ZL 線路上の位置 x での電圧 -x方向に位相速度ω/βで進む電圧波。 α > 0なら、伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰 +x方向に位相速度ω/βで進む電圧波。 α > 0なら、伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰 ej(ωt±βx) = cos(ωt±βx)+j sin(ωt±βx)は、∓x方向に進む角周波数ω, 位相定数β の正弦波 ここで、 ( v p ) x vp: 位相速度 V0e x は波の振幅を表し、α > 0 (α < 0)なら、xが増大する方向に振幅が増大(減少)する x 因みに、波の包絡線の 形状が伝わる速度を群 速度: vgという d vg d ベクトル解析の復習 重要なベクトル恒等式 ラプラシアン 2 2 2 2 2 2 x y z rot grad ( ) 0 div rot E ( E ) 0 div grad ( ) 2 ( ) E E (スカラー場) (ベクトル場) rot rot E ( E ) ( E ) E ガウスの定理 2 2 2 1 2 □ 2 2 2 2 2 x y z c t 1 2 2 2 c t ストークスの定理 F ndS FdV S V n ダランベルシアン F dr ( F ) ndS C S F dS S V n F S dS C dr
© Copyright 2024 ExpyDoc