SiCキャリア寿命評価法標準化 に向けての課題 加藤 正史 名古屋工業大学大学院工学研究科 http://ik-lab.web.nitech.ac.jp/ @m34kato キャリア寿命評価の困難さ Mater. Sci. Forum 740-742 (2013) 637.のFig.3 比較できてる? キャリア寿命は ・エピ膜の欠陥 ・表面および基板/エピ界面欠陥 ・エピ膜厚・ドーピング ・励起光・温度(評価法) に依存する 見かけの値だけでエピ膜の欠陥(品質)は議論できない 標準化の重要性 キャリア寿命 – 欠陥密度を反映 – 非接触評価法が存在 – デバイス(バイポーラ・光)性能に直結 ウェハの品質評価に適す しかし標準がない場合 ユーザー側:採用すべきベンダーがわからない デバイス性能が予測できない ベンダー側:開発目標が立てづらい アンフェアな値を採用する動機に SEMIでは Document Origin MF-28 ~1961 IEEE/ASTM/SEMI MF-1535 ~1994 ASTM/SEMI AUX-017 2010 SEMI PV-9 2010 SEMI PV-13 2011 SEMI Topic contacted photoconductance decay on rectangular bars m-pcd (microwave reflectance), wafers General lifetime-test framework common to all sensors m-pcd (microwave reflectance) wafers, bricks eddy current, PCD and QSSPC, wafers, bricks http://www.semi.org/en/sites/semi.org/files/docs/2.3-SintonIntersolar.pdf SiCキャリア寿命評価法 励起光を使う手法(ウェハのまま評価可能) マイクロ波光導電減衰法(m-PCD) マイクロ波でプロープ 時間分解フォトルミネッセンス (TR-PL) バンド端発光でプローブ 時間分解自由キャリア吸収 (TR-FCA) サブバンドギャップ光でプローブ 電流注入を使う手法(pn接合で評価) Open circuit voltage decay (OCVD) ウェハで測定できないため、今回の議論からは除外 m-PCD 導電率変化をマイクロ波の反射により検出 導波管 試料 マイクロ波 励起光 反射 マイクロ波 R q(mp+mn)p R:反射率変化、q:素電荷 mn,p:移動度、p:過剰キャリア密度 TR-PL バンド端ルミネッセンスの時間変化を検出 試料 励起光 ルミネッセンス BPF フォトマルorPD g:輻射再結合係数 理論上、高水準注入では補正が必要 TR-FCA プローブ光強度の変化を検出 プローブ光 試料 PD 励起光 オシロ [1] J. Linnros, J. Appl. Phys. 84 (1998). 2 光吸収断面積を通じた信号 𝑁𝑞 2 λ = ∗ 𝑚 8𝜋𝑛𝑐 3 𝜏 N:キャリア密度、:光の波長 m*:キャリア有効質量 n:屈折率、c:光速、:緩和時間 J. I. Pankove, “Optical processes in semiconductors,” Dover Publications (1971). 評価法間の比較 キャリア寿命 のマッピング P. B. Klein, J. Appl. Phys. 103, 033702 (2008)のFig.2 は評価法間で異なる(若干の高水準注入条件) 課題1 正確かつ、使いやすい評価法は? 測定条件による違い:注入・温度 T. Hayashi et al., J. Appl. Phys. 109, 014505 (2011)のFig.2 注入水準による違い T. Hayashi et al., J. Appl. Phys. 109, 014505 (2011)のFig.3 温度による違い 測定条件による違い:波長・伝導型 T. Miyazawa et al., Appl. Phys. Lett. 97, 202106 (2010)のFig.1 励起波長による違い T. Hayashi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 53, 111301 (2014)のFig.3 様々な条件で は変わる 伝導型による違い 試料条件による違い:膜厚、表面 T. Kimoto et al., J. Appl. Phys. 108, 083721 (2010)のFig.4 膜厚依存性 T. Kimoto et al., J. Appl. Phys. 108, 083721 (2010)のFig.3 表面依存性 膜厚が厚いほど、 表面・界面の品質が良い(SRVが低い)ほど、 が長い SiCにおいて注意すべき点 温度に関して 高温でのτも重要 注入水準に関して オン状態では高水準注入 ターンオフでは低・高水準注入どちらも重要 ただし水準はドーピング依存(注入キャリア>or<ドーピング) 励起光に関して 侵入長によるキャリア分布の影響 伝導型に関して n型とp型では異なる 膜厚、表面・界面に関して 膜厚で表面・界面の影響が変わる。表面・界面の品質も影響 課題2 温度・ドーピング濃度・膜厚が異なる場合は? キャリア減衰に関する式 キャリア濃度の時間変化 で近似して書くと 規格化信号(対数プロット) 知りたいのはココ 1 SRHのみ、指数関数で減衰すれば話は… 時間 実際の減衰 P. B. Klein et al., Phys. Status Solidi 208, 2790 (2011)のFig.4 指数関数であることの方が稀 ・表面/界面再結合 ・複数の再結合中心 ・表面での強い励起 T. Miyazawa et al., Appl. Phys. Lett. 97, 202106 (2010)のFig.1 T. Okuda et al., Appl. Phys. Express 7 (2014) 085501のFig.1 SRHのみでも指数関数にならない P.B. Klein et al., Phys. Status Solidi 208, 2790 (2011)のFig.3 M. Ichimura, Solid. State. Electron. 50, 1761 (2006). T. Okuda et al., Jpn. J. Appl. Phys. 52 (2013) 010202のFig.2 M. Kato et al., Jpn. J. Appl. Phys. 46, 5057 (2007). 再結合中心のみならず やっかいな欠陥準位(トラップ)がある 規格化信号(対数プロット) 複数の の見積もり方 1 1/e寿命? 1/e2寿命? 指数関数ではない減衰 1/e ある時間の微分値? 1/e2 速い指数的減衰? 遅い指数的減衰? 複数の指数関数の減衰 時間 課題3 標準化可能な を読み取る方法は? 課題のまとめ 課題1 正確かつ、使いやすい評価法は? 課題2 温度・ドーピング濃度・膜厚が異なる場合は? 課題3 標準化可能な を読み取る方法は? 課題1に対する提案 課題1 正確かつ、使いやすい評価法は? TR-FCAでは低水準注入が測れない(測りづらい) 標準の評価には向かない TR-PLは高水準注入の報告がSiでもほとんどない 若干の不安がある m-PCDは高水準注入の信号に問題がある ある程度は回避可能? m-PCDはSiにおいても標準の評価法であり、悪くはない 課題2に対する提案 課題2 温度・ドーピング濃度・膜厚が異なる場合は? 温度依存 室温を標準の基本とし、 高温バイポーラ向けのみのオプションとしては ドーピング密度 ドーピングの値を基準に、励起光強度(注入キャリア)を決めるべき 低水準のみ、低・高水準の両方、中間の水準 が候補 励起光波長は固定すべき 侵入長を考えると 355 or 349 nmが適す 伝導型はn型に限定すべき 膜厚は基準を複数用意 表面・界面は良好な品質・低い再結合速度を仮定 まずは350 nm程の励起光でn型、室温、基準膜厚で標 準化、励起強度はドーピングの値で変えるべき 課題3に対する提案 課題3 標準化可能な を読み取る方法は? 指数関数の傾きが理想 ただし指数関数減衰は常には期待できない どの傾きを使うかに恣意性がある ある時間における信号(1/e・1/e2ライフタイム or 微分値)は現実的 キャリア寿命が支配的に反映されてない懸念はある ただし恣意性はない 1/eライフタイムはSiでも採用されており、悪くはない 課題と提案のまとめ 課題1 正確かつ、使いやすい評価法は? m-PCDはSiにおいても標準の評価法であり、悪くはない 課題2 温度・ドーピング濃度・膜厚が異なる場合は? まずは350 nm程の励起光でn型、室温、基準膜厚で標準 化、励起強度はドーピングの値で変えるべき 課題3 標準化可能な を読み取る方法は? 1/eライフタイムはSiでも採用されており、悪くはない http://ik-lab.web.nitech.ac.jp/ @m34kato 継続的に助言をいただいている市村正也教授、 キャリア寿命の研究を援助いただいている科研費 等に感謝いたします 補足:我々(名工大)の成果 ・表面再結合速度の定量化 • • • "Surface recombination velocities for n-type 4H-SiC treated by various processes" Y. Mori et al. J. Phys. D: Appl. Phys. 47 (2014) 335102. ”Estimation of surface recombination velocities for n-type 4H-SiC surfaces treated by various processes” Y. Mori et al., Mater. Sci. Forum 778-780 (2014) 432-435 “Estimation of the Surface Recombination Velocity from Thickness Dependence of the Carrier Lifetime in n-type 4H-SiC Epilayers” M. Kato et al., Jpn. J. Appl. Phys. 51 (2012) 02BP12 ・高水準注入でのm-PCD測定の正確性 • • ”Correlation between Microwave Reflectivity and Excess Carrier Concentrations in 4H-SiC” M. Kato et al., Mater. Sci. Forum 778-780 (2014) 293-296. “Microwave reflectivity from 4H-SiC in the high injection condition: Impacts of the electron-hole scattering” M. Kato et al. presented at SSDM2014. ・TR-FCAとm-PCDとの比較 • “Time-Resolved Observation of Free Carrier Absorption for Carrier Lifetime Measurement of SiC” M. Kato et al. presented at IUMRS-ICA2014. 表面再結合速度 のエピ膜厚み依存性により見積もり可能 (b) Epi./sub. interface Polished with CMP (C-face) CMP-finish surface (Si-face) Epilayer Substrate 自立エピを作製し評価 得られた を計算値と比較 定量した値 の実験と計算の比較 また、温度依存はほとんどない p型および他の面方位も測定中 高水準注入でのm-PCD測定の正確性 m-PCD signal (arb. unit) 10 1 0.1 Hayashi et al. (by 349 nm) Okuda et al. (by 349 nm) C-face excited by 355 nm Si-face excited by 355 nm C-face excited by 266 nm Si-face excited by 266 nm Linear correlation 0.01 0.001 0.0001 1012 1014 Injected photon density (cm-2) 比例、つまり実線に乗るなら正確 よって低水準注入ならば正確な評価 なぜ高水準注入では不正確か 1016 原因i:マイクロ波の非線形性 K. Lauer et al. J. Appl. Phys. 104 (2008) 104503.のFig. 5 マイクロ波の反射率はそもそも導電率に比例しない 導電率変化を小さくし線形近似していた 原因ii:電子正孔対散乱 Mobility (cm2/Vs) 10000 1000 100 10 Calculation by a model in L. W. Davies, Nature 194 (1962) p.7621 Calculation with mn of 1000 cm2/Vs Calculation with mp of 100 cm2/Vs 1019 1015 1017 Excess carrier concentration (cm-3) キャリア同士で散乱し移動度が低下 導電率は q(mp+mn)p なので、Δpに比例しなくなる 原因iへの対策:ピンホールを利用 ガンダイオード 導波管 試料 マイクロ波 反射 マイクロ波 励起光 ピンホール 検出器 ピンホールにより試料の一部のみ励起 観測範囲の導電率変化を抑えて、原因iを抑制 ピンホールを用いた結果(355 nm) m-PCD signal (arb.units) 10 w/o pinhole 1 100 mmf 500 mmf 200 mmf 25 mmf 0.1 50 mmf 1000 mmf 0.01 1014 1016 Injected photon density (cm-2) 1018 高い注入でも比例に近くなる 25 mmfのピンホールでは1016 cm-2程度でも比例 しかし、完全に傾き1にはならない 10000 Corresponding injected photon density (cm-2) 1015 1017 1011 1013 Linear correlation 1000 Conductivity (S/cm) 3 100 355 nm 10 2 1 1 0.1 266 nm 0.01 0.001 1013 1015 1017 1019 0 Normalized apparent lifetime (arb. unit) 原因ii:電子正孔対散乱の影響 Excess carrier concentration (cm-3) 計算と実験の信号の傾き・キャリア寿命は同傾向 原因iiの影響も大きい SiCにおいて電子正孔対散乱は無視できない 高水準注入でのm-PCD測定 キャリア寿命を過大評価する傾向 原因i :マイクロ波反射率の導電率依存 ピンホールにより対策可能 原因ii:移動度のキャリア濃度依存 計算により予測可能? これらを理解することで 高水準注入での正確なキャリア寿命測定へ TR-FCAによるキャリア減衰信号 FCA signal (arb.units) 1 83 mm 43 mm 63 mm 0.1 0 0.2 Time (ms) 0.4 Excited with 1.4×1015 cm-2 TR-FCAは測定位置分解に優れる 応用展開のため基礎検討を行い、信号を得た 10 1 1 0.1 m-PCD 0.1 FCA 0.01 0.01 0.001 0.001 0.0001 0.0001 1E+11 1E+13 1E+15 Injected photon density (cm-2) m-PCDでは >1014 cm-2で線形性を失うが TR-FCAでは逆に >1014 cm-2で線形 高水準注入では正確? FCA peak signal (arb.units) m-PCD peak signal (arb.units) 信号の線形性 0.00001 TR-FCAとm-PCDとの比較 Normalized signal (arb. unit) 1 m-PCD 1.7x1015cm-2 14 m-PCD 1.1x10 cm-2 FCA 1.7x1015cm-2 14 -2 FCA 1.1x10 cm 自由キャリア吸収係数 𝑁𝑞 2 λ2 𝛼= ∗ 𝑚 8𝜋𝑛𝑐 3 𝜏 0.1 N:キャリア密度、:光の波長 m*:キャリア有効質量 n:屈折率、c:光速、:緩和時間 0.01 0 1 2 Time (ms) 3 4 J. I. Pankove, “Optical processes in semiconductors,” Dover Publications (1971). m-PCDの減衰はTR-FCAよりも緩やか 電子正孔対散乱が影響か? それでもTR-FCAでのキャリア寿命は短すぎ。今後の確認が課題
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