メッシュ付きμ-PICの メッシュ構造の最適化のシミュレーション

メッシュ付きμ-PICの
メッシュ構造の最適化のシミュレーション
Maxwell3DとGarfield
神戸大学大学院 理学研究科
M1 田辺晃
発表概要
μ-PIC (Micro Pixel Chamber)
シミュレーション内容
実験結果
まとめと今後の課題
μ-PIC (Micro Pixel Chamber)
ガス増幅を用いた粒子線検出器
荷電粒子やX線・γ線などの電磁波を検出
金属Meshをピクセル上方に配置しマイナスの電圧を印加
増幅領域の増加による高増幅率化
マイクロメッシュによる増幅過程で生じた陽イオンの吸収と
その速やかな回収による入射許容量の増加
Polyimide
M3-PIC(Micro Mesh Micro Pixel
Chamber)
– 位置分解能( - 100μm)
– 時間分解能( < 100ns)
– 入射粒子許容量( > 107Hz/mm2)
e- 入射粒子
ガス増幅・Ion Back Flow
Ar+ +
e- Ar
+
e- Ar
一次電子
e-
一部の陽イオンはメッシュに吸収されず
ドリフト領域へと流れ出る
(Ion Back Flow)
ドリフト電場を乱す要因となり、
一次電子群の正常なドリフトを阻害
+
Ar+ -Ar+
Ar
e
e
+
+
Ar - e
Ar
e
e-
増幅率
一次電子の個数
に対する
アノードに到達し
た電子の個数
実験的にどのくらいのイオンバックフローが
流れ出ているのかを実測するのは困難
シミュレーションにより動作パラメータを変化させ
イオンバックフローを減少させるような
メッシュ構造の最適条件を探索
Maxwell3D 3次元電場計算ソフト(Ansoft社)
CADを用いて3次元のジオメトリを作成
ジオメトリ最小単位
横方向へ無限に
拡張
金属メッシュの構造・・・アノードからの高さ・厚みを変更
Pixel-Mesh間の距離 50、100、200、500[μm]
Meshの厚さ10、20[μm]
物質の素材(ex.アノード・・銅、絶縁層・・ポリイミド、な
ど)
印加電圧(アノード・ドリフト・メッシュ電圧)を指定
アノード電圧 Va=450[V](固定)
Mesh-Drift間の電位差 Vm-d=100[V]に固定した状態で
メッシュ電圧 Vm=0~-600[V]まで100[V]幅で変更
(ex. Mesh電圧 Vm=-200[V]、Drift電圧 Vd=-300[V])
 解析メッシュを作成し有限要素法により電場解析を行う
-ジオメトリ最小単位での解析メッシュサイズ≒60,000
-電子の正確なドリフトのため、増幅領域では特に細かく
-CPU:Core2duo、メモリ:1GBのノートPC 計算に5~10分
Maxwell3Dでの計算結果のファイルをGarfieldへ受け渡す
Garfield CERN製
ワイヤーチェンバー用シミュレーションプログラム
Maxwell3Dでのジオメトリ・電場計算結果を取り込む
検出器内でのガスを指定・・今回はP10ガス(Ar:CH4=9:1)
電子や陽イオンをドリフトさせ計算を実行
•イオン収集率(ドリフトエリアへのイオンバックフローの割合)
アノードピクセル上(左図の青斜線部)
に陽イオンを配置しドリフト
ドリフトエリアへのイオン収集率
青斜線部に配置した陽イオンのうち
メッシュ-ドリフト間で止まった陽イオンの割合
電気力線に沿った陽イオンのドリフトをルンゲクッタ法を用いて計算
•電子収集率
Z軸
アノードから十分離れた左図の赤斜線部に
電子を配置しドリフト
電子収集率
赤斜線部に配置した電子のうち
いずれかのアノードへ到達した電子の割合
電子の拡散をモンテカルロ法で計算
•ガス増幅率
上図の赤斜線部に配置した電子の個数に対する
いずれかのアノードに到達した総電子の和
同様に、電子のドリフトをモンテカルロ法で計算
以上の過程を経て計算を実行
イオン収集率(ドリフトエリアへのイオンバックフローの割合)
Vm=-600[V]
傾向としてメッシュが厚くメッシュの位置が低いほうが
イオンバックフローの量は減少
Vm=-500[V]
Vm=-400[V]
Vm=-300[V]
厚さ10μm
厚さ20μm
Vm=-200[V]
Vm=-100[V]
Vm=-50[V]
Vm=0[V]
ガス増幅率
厚さ20μmのほうが増幅率は減少
Meshの高さが高いほど増幅率は減少
厚さ10μm
厚さ20μm
Vm=-600[V]
Vm=-600[V]
Vm=-500[V]
Vm=-500[V]
Vm=-400[V]
Vm=-400[V]
Vm=-300[V]
Vm=-300[V]
Vm=-200[V]
Vm=-200[V]
Vm=-100[V]
Vm=-100[V]
Vm=-50[V]
Vm=-50[V]
Vm=0[V]
Vm=0[V]
電子収集率
Vm=-600[V]
厚さ20μmのほうが電子収集率は減少
Vm=-500[V]
Vm=-400[V]
Vm=-300[V]
厚さ10μm
厚さ20μm
Vm=-200[V]
Vm=-100[V]
Vm=-50[V]
Vm=0[V]
同程度のガス増幅率
現段階における最適なメッシュ構造を求めるため、同程度の
増幅率において10μm、20μmそれぞれ高さごとにドリフトエリ
アへのイオン収集率、アノードへの電子収集率の比較
Vm=-600[V]
Vm=-500[V]
Vm=-400[V]
Vm=-300[V]
厚さ10μm
厚さ20μm
Vm=-200[V]
Vm=-100[V]
Vm=-50[V]
Vm=0[V]
同程度の増幅率下での電子・イオン収集率
高さの最適条件としては、傾向としてイオンバックフローが少なく、アノードへの
電子収集率の大きい50μmである
20μm Anode電子収集率
20μm Drift-areaイオン収集率
10μm Anode電子収集率
10μm Drift-areaイオン収集率
同程度の増幅率下での電子・イオン収集率
厚さに関しては、20μmでは10μmよりもイオンバックフローは減少させる事ができ
るが、アノードへの電子収集率が大きく減少してしまう
20μm Anode電子収集率
20μm Drift-areaイオン収集率
10μm Anode電子収集率
10μm Drift-areaイオン収集率
まとめ
今回、メッシュ構造の最適化のシミュレーションとして特にイオン収集率、
電子収集率、増幅率の計算を行った。
そして同程度の増幅率からメッシュのピクセルからの高さ、厚さの最適
条件の検討を行った。
メッシュの高さの最適条件は傾向として高さ50μmである
メッシュの厚さに関しては現段階では
メッシュを厚くすることでイオンバックフローは減少できるが
アノードへの電子収集率が大きく減少してしまう
具体的な計算結果
2×105の増幅率において
高さ50μm
厚さ10μm
2×105の増幅率において
厚さ20μm
高さ100μm
厚さ10μm
厚さ20μm
イオン収集率[%] 0.75
0.75
イオン収集率
[%]
1.4
0.53
電子収集率[%]
19
電子収集率
[%]
41
12
52
μ-PICを、低イオンバックフローの読み出し素子として用いるには
イオンバックフローは0.1%以下を目標
今回メッシュを厚くすることで1%以下をシミュレーションにより達成
今後の課題
イオンバックフローを減少させたまま増幅率、電子収集率を向上させ
るため、金属メッシュのピッチ(幅)を大きくした状態での高さ方向の厚
さを変えた比較を行う
同程度の増幅率からの比較を行うため、Anode-Mesh間の電位差を
一定に保った状態でのDrift電圧の変更
実際の実験において、金属メッシュの冶具として用いられている絶縁
体(ナイロン)を、シミュレーションにおいて配置した計算
(Maxwell3Dにおいてナイロンの誘電率の追加)
TPC(Time Projection Chamber)
飛跡検出器
荷電粒子がガス中を走り抜けると、そ
の飛跡に沿って電子が電離
その電子雲を緩やかな電場をかけ、一
定の速度でドリフトさせることで飛跡が
再構成できる
Z軸情報:ドリフト時間
XY軸情報:
カソードストリップ
アノードストリップ