ゲームの理論とは No.1 ゼミナールⅢ・クラスE05 参考資料 同時ゲームと基礎的概念 ゲームとは対決状況を表して,「対立した目的を 追求する二人あるいはそれ以上のプレーヤー (player)と呼ばれる参加者が,互いに矛盾した 目的を達成するために対決状況にある事態。」 ゲームの参加者であるプレーヤーが選択する戦 略が明らかになったとき,その選択された戦略の 組み合わせをゲームの解という。 戦略と利得 ゲームをする主体とか意思決定をするプレー ヤーがいて,目的は相互に矛盾しており,同時 に達成することはあり得ない。 プレーヤーが選択する行動を戦略という。 目的達成により,プレーヤーの誰かが勝ち,誰 かは負ける。勝利プレーヤーは,勝利の対価とし て正の利得を得る。負けたプレーヤーは負の利 得となる。これを,利得あるいはペイオフという。 利得・サッカーのペイオフ サッカーのゲーム目的は,キッカーは得点 確率を上げる,キーパーはゴール阻止率 を上げる(キッカーの得点確率を下げる)こ とで,相反した目的を持っている。 相反した目的について,結果はシュートが 入ったか入らなかったかのいずれだから, 得点確率と阻止率の合計は1となる。 (キッカーAのシュート確率, キーパーBのセーブ確率) (AX,BX):プレーヤーAが戦略X,プレーヤーBが戦略Xを選んだ時の利得 キッカーは右に蹴り込み,ゴールキーパーは右に跳ぶ (AX,BY):プレーヤーAが戦略X,プレーヤーBが戦略Yを選んだ時の利得 キッカーは右に蹴り込み,ゴールキーパーは左に跳ぶ (AY,BX):プレーヤーAが戦略Y,プレーヤーBが戦略Xを選んだ時の利得 キッカーは左に蹴り込み,ゴールキーパーが右に跳ぶ (AY,BY):プレーヤーAが戦略Y,プレーヤーBが戦略Yを選んだ時の利得 キッカーが左に蹴り込み,ゴールキーパーが左に跳ぶ じゃんけんの場合 AとBは,500円相当の入場券を目当てにゲーム をしている。勝てば500円のチケット代金が相手 から手に入る。負ければ、500円分、相手に買わ ねばならない。 Aの側からみて,Aがグーを出した場合,Bの戦略 にはグー,チョキ,パーがある。 グーとグーでは双方がゼロで,AがグーでBが チョキであればAの勝利で利得は500,Bの利得 は-500となる。AがグーでBがパーであれば,逆 にAの利得は-500となり,Bの利得は500となる。 じゃんけんペイオフ グーを出した場合,利得のすべての組み合わせは次の ようになる。 ( 0 , 0 ),(500 , -500),(-500 , 500) 同じように,AのチョキとパーにBのグー,チョキ,パーを 対応させると, (-500 , 500),( 0 , 0 ),(500 , -500) ( 500 , -500),(-500 , 500),( 0 , 0 ) じゃんけんに勝つための必勝法 は存在しない。 相手に自分の手の内を読まれないように, すべての手を1/3の配分ででたらめに出 すことが最適な戦略となる。 相手の手の内に対して,何かの変更をす ることによって,より良い状態の余地が発 生するような状況では,ゲームの解は存 在しない。 牛丼価格競争ゲーム 競争最前線として,集客競争をしている駅前の 代表的な二店を考える。戦略はプレーヤー(店 舗)が提示する価格で,牛丼「価格の据え置き」も しくは「値下げ」を選ぶことができる。 利得は,価格の据え置きか競争によって実現す る結果として,「増加もしくは減少した売り上げま たは利益」を考えることができる。 牛丼戦争のペイオフ (a)両店価格据え置きであれば,両店の売上げ は8,000万円のままである。 (b)両店値下げをすると,共倒れとなって,収入 は半減(4,000万円)する。 (c)どちらか1店のみ値下げをした場合。 c-1・値下げした店はシェアを奪って,1億円 (10,000万円)の売上げ。 c-2・値下げしなかった他店はシェアを奪われ, 2,000万円の売上げ。 戦略の考え方1 はじめに,松屋の戦略として,吉野屋の価 格の据え置きに対してCase-1,吉野屋の 価格の値下げに対してCase-2がある。 競争相手がその戦略のままであるとして, 自分の戦略(ここでは松屋)を変更したら何 が最適かを考える。Case1では吉野屋Sの 価格据え置きに対する,松屋の二つの対 応の利得が示されている。 考え方2 吉野屋の据え置きと同じように松屋も据え置くと, (a)の場合として8,000万円の利得がある。吉野 屋の据え置きに対して松屋が値下げをすれば, (c-1)の利得が得られるから10,0000万円を得る ことができる。 吉野屋の据え置き・・・(8,000 < 10,000)→ 松 屋は値下げを選ぶ この結果,吉野屋の据え置きに対しては,松屋 は価格を下げる戦略を選んだ方が利得は大きい。 考え方3 Case1では吉野屋の価格値下げに対する,松 屋の二つの対応と利得が示されている。 吉野屋と反対に松屋が据え置くと,相手にシェア を奪われてc-2の場合として,利得は2,000万円 となる。 一方,吉野屋の値下げに対して松屋も値下げに 応ずれば,共倒れの(b)のケースとして,利得は 2,0000万円となる。 吉野屋の値下げ ・・・(2,000 < 4,000) → 松屋 は値下げを選ぶ 考え方4 この結果,吉野屋の値下げに対しては,松屋も値下げで 応じる戦略を選んだ方が利得は大きい。 利得の大きな松屋の戦略は,相手が据え置き・値下げの どちらの場合でも値下げで応じた方が利得が大きい。つ まり,自分たちの合理性のみを追求していけば,共倒れ の恐れがあるにもかかわらず,値下げ競争に向かうこと が最適行動となってる。 同じように,松屋の据え置きと値下げに対する吉野屋の 戦略と利得が比較できる。これは数値例が縦の比較とな るから,表-1のCase3とCase4を見て,第2要素の大小関 係を比較すればよい。 ゲームの解 松屋の据え置き・・・(8,000 < 10,000)→ 吉野屋は値下げを選ぶ 松屋の値下げ ・・・・(2,000 < 4,000) → 吉野屋は値下げを選ぶ お互いの戦略について,相手の戦略に 対する最適な反応となっている組み合わ せを表せば,両方とも値下げ戦略となる。 非協力ゲームの一つの解 この例の利得行列と最適な戦略からは,お互い 疲弊してどちらかが牛丼市場から退出するまで 競争は続くことを示唆している。 ゲームの理論は,このような,個のレベルでは合 理的としても社会全体では不合理である例を明 らかにできる。 個の行動においては最適な選択であったにもか かわらず,全体もしくは双方の合計で評価する 限り最悪の状態になることを囚人のジレンマとい う。
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