マネジメント・オブ・テクノロジー概論

オープニング・リマークス;イノ
ベーション・IT による地域活性化
2006年10月6日 11時ー11時10分
主催;日本ベンチャー学会、イノベーション研究
部会、CEATEC JAPAN 運営事務局
早稲田大学大学院 教授
日本ベンチャー学会理事、イノベーション研究部会会長、
吉川智教
1
目次
オープニングリマークス
1、イノベーションの地域偏在性
2、イノベーションのホワイト・ボックス化;イノ
ベーションとインターアクション
3、IT と産業クラスター
付録、1)イノベーションとは
2)新製品開発、プロダクト・イノベーションの視点と
は、
2
目次
付録、3)モノ作りの産業クラスターとプロダクト・イノ
ベーションの産業クラスターの論理の違い(吉川
(2001;ベンチャーレビュー)
4)フィンランド政府のイノベーション政策;シリコンバ
レーとの違い
集積の論理は同一、自然発生的なクラスターと政策
的に作ったクラスター
3
1、イノベーションの地域偏在性
イノベーションは全世界で起きていない。特定に
地域にしか起きていない。
イノベーションは極めて環境依存の経済活動
この地域偏在性をどう理解するか。
4
米国の社会学の調査
米国でイノベーションが成功した地域とその地
域の男性愛、ホモの人口比率の高さと一致
している。
イノベーションの成功している地域とホモの比
率とが一致している。
イノベーションを成功させるのはみんなホモに
なれば良いか?
5
米国の社会学の調査
イノベーションを成功させるのはみんなホモに
なれば良いか?
そんな単純な話ではないが、大変に示唆に富
んだ調査結果。(フロリダ、HBR)
自分たちとは異なった異質の人々、ホモ、外国
人、芸術家、等の人々を受け入れるよな自
由な社会構造がその地域にあるか否か。
6
米国の社会学の調査
日本は比較的、同質性を好む世界、異質な
人々を受け入れることが、海外と比較すると、
少ない。最近は変化しつつあるが。
日本の企業は?。
日本の企業文化は?
日本の企業の中で、この問題をどう解決する
か。
7
2、イノベーションのプロセスがブ
ラック・ボックス
ブラック・ボックスをホワイト・ボックス化する必要
がある。
イノベーションのプロセスの解明。
8
Successful Innovation
Interactions
Among
Players
Innovation
9
Interactions among key player and
users
First Prototype
Second Prototype
Claim or Comments
From users
Third Prototype
Fourth Prototype
10
INNOVATIONとINTERACTION
イノベーションはノンリニアーモデル。
どんなスペックの製品が売れるか分からない。
1、開発者と顧客とが試作品を通じて理解し合
う。
2、開発者間でもインターアクテッブ
部品Aと部品Bとが独立では開発されない。
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INNOVATIONとINTERACTION
1、イノベーションはノンリニアーモデル。
どんなスペックの製品が売れるか分からない。
開発者と顧客とが試作品を通じて理解し合う。
(スペックに関して、顧客と開発者とのイン
ターアクション)
12
INNOVATIONとINTERACTION
2、製品に関するスペックが特定できたとしても、
開発者間でのインターアクションが必要。
開発者間でもインターアクテッブ
部品Aと部品Bとが独立では開発されない。
13
INTERACTIONの原理
1)特定の時間内に出来るだけ多くのインター
アクションを起こす。
2)特定の時間内に深いインターアクションを起
こす。
1)と2)を可能にするために環境は何か?
これが、産業クラスターと関連する。
14
なぜ、INTERACTIONが必要か?
Herbert A Simon(1970)のBounded
Rationality(限定合理性);人間というのは経
済学が前提とするような、完全情報の下で、
分析計算して、合理的な意思決定が可能で
はない。限定された情報のもとで、限られた
計算能力の下で、意思決定している。
一人の開発者が全ての部品情報、設計変更
の情報を得るのは不可能。
15
なぜ、INTERACTIONが必要か?
開発者間でのインターアクションをすることで、
その都度必要な情報が入ってくる
人間には限定合理性の下での決定があるの
で、インターアクションを起こせば起こす程、
必要な情報が手に入れることが可能。
16
インターアクションを起こしやすい環境
とは;
上下関係があっても、あたかもないか
のような環境。異質な人、異質な意見を
受け入れて議論出来る環境
17
ワイガヤ、
接触の便益
集積による情報交換
18
3、ITと産業クラスターの論理
ITは人と人の距離をなくした。集積とは逆の方向
に進める力がある。
しかし、一方で、暗黙知の情報交換は、face to
face の場合が多い。
ITの発達は、産業クラスターに関して補完的であ
る。
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付録1)イノベーションとは
技術進歩がイノベーションをもた
らすのか?
20
イノベーションとは、社会に対する
新しい価値創造
◆社会に対する新しい価値創造
具体的には
◆顧客に対する新しい価値創造(企業のイノ
ベーションに関して)
◆市民に対する新しい価値創造(行政のイノ
ベーションに関して)
21
イノベーションの目的とイノベーションの種類
新しい技術の進歩
新しい製品
新しい経営システム
イノベーション
(新しい価値創造が目的)
新しい販売方法
新しい社会的制度
22
イノベーションは、社会に対する
新しい価値創造、
顧客に対する新しい価値創造
23
付録、2)新製品開発、プロダクト・イノ
ベーションの視点とは
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顧客と開発者は同一人物ではない。
プロダクト・イノベーション
新製品開発
開発者 ≠ 利用者
25
• 1990年代に九州工業大学、日米の理工系大学
院生を対象とした、コンペが開催。テーマ;視覚
障害者用のハイケックの杖の開発。
• 視覚障害者にとって、杖とは何かということを、
大学院生は聞き取り調査。日米の大学院生は、
健常者だから、視覚障害者の問題点が分からな
い。目隠しして、杖を使って歩く。
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• ハイケックの杖の利用者である視覚障害者の視
点の如何に理解。これが、第一。
• 何に不安を感じるのか?
• どのような杖であれば使ってくれるのか?
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• 利用者、顧客に視点を如何に持つかという、イノ
ベーションの永遠の課題。
• ハイテックの杖の開発は語っている。
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付録3)モノ作りの産業クラスターと
プロダクト・イノベーションの産業ク
ラスターの論理の違い、
吉川(2001、ベンチャー・レビューp
41ー56)
29
なぜ、特定地域にイノベーションが偏在して、起
きるのか?
◆世界最適調達という言葉があるように、
モノ作りの世界では、地域集積ではない方
向に向いている。
◆しかし、シリコンバレー等の地域では、
集積が集積および特定地域でイノベーション
が起きている。・・・・・・・・なぜか?
30
1.マーシャル(1920)地域産業集積論
◆マーシャル(1920)は、英国の産業革命の18世
紀末から19世紀にかけて繊維産業発展を研究
した。
◆リバプールには綿花市場が発達し、ランカ
シャーには、織物工業が集積しているというよう
に、同一の繊維産業のなかでも、綿花、織物と
いうように、細分化した形で、特定地域に特定の
産業の集積が見られることに注目。
◆「なぜか? 特定産業が特定地域に集積する
か?」を問うた。
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マーシャルは、その地域に行くと、
◆その産業固有の労働者がいる、
◆その産業固有の補助産業がある、
◆その産業固有の知識が伝場している、
と答えている。
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2.マーシャル(1920)とポーター(1998)の地域集
積論の限界
1)IT技術と物流の発達により、最近では、「世界最適調
達」という言葉があるように、地域分散化しつつある。
2)ポーターとマーシャルは、「モノ作りに関する地域集積」
と「新製品開発に関する地域集積」とを明確に分離して、
分析してこなかった。
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2.マーシャル(1920)とポーター(1998)の地域集
積論の限界
ここでは、IT技術と物流の発達によって、「モ
ノ作りに関する地域集積」の要因がどの様
に変化してきたのか?
「新製品開発に関する地域集積」の要因
がどの様に変化したのか?
を分析す
る。
34
NHK-SPRING,日本発条のケー
1、ニッパツ;
ス;
自動車やトラックのコイル・スプリング、板バネの生産
新事業部、精密スプリング、バネHDD 用のバネの開発に
成功、シンガポール、台湾のHDDのメーカーに売り込む
も失敗。
1990年代、HDDのメーカーであるが、設計・開発メーカー
ではない。
設計・開発メーカーの採用決定がないと無理。
新たに、自社製品のバネが採用されるには、シリコンバ
レーの開発メーカーとの交渉が必要。
35
シリコンバレーにおけるNHK-SPRING
1.複数の顧客メーカーから、1、2年先の新製品の
予測リストが提供される。
精密バネ部品に対する将来の新製品のスペックの
予測が可能
2.HDDの新製品としての寿命は、3~4ケ月と言われて
いる。したがって、新製品開発期間も5~6ケ月。
かなりのスピードが必要。
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3.新製品開発の段階は、顧客のHDDのメーカーと
(1) 数回の設計開発
(2) 数回の試作品開発
(3) 量産試作
設計図、何回かの試作、様々な情報交換
4.次の順序で共同作業を行う
(1) 設計コンセプトの検討;
(2)開発試作
(3)量産試作
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◆各段階で、
(1)設計段階で考えた仕様、スペックが
試作の段階で成立するかどうか?
(2)設計上の問題点があるか、 ないか?判断するた
めに、試作を作り、試作段階のHHDの中に入れてテ
ストをする。
◆これらのプロセスが大変に interactive であり、
一方を変えると全体を変えなくてはいけなくなり、全
体を変えると、一方を変えなくてはならなくなる。
38
HDDの新製品開発と製造企業の関係
1.製品開発自体が、企業間分業している。
2.部品の製品開発と部品の製造は企業間で、
分業しているし、且つ地域間分業化している。
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HDDの開発メーカーと
製造メーカーの関係と地理的な関係
HDD開発メーカー
ニッパツ部品開発部
門
(シリコン・バレー)
(シリコン・バレー)
C部品開発メーカー
B部品開発メーカー
(シリコン・バレー)
(シリコン・バレー)
B部品製造メー
カー
ニッパツ部品開発部門
ニッパツ製造部門
(日本)
C部品製造メー
カー
HDD組立メー
カー(アジア)
40
カノープス社の例
1.カノープス社は、PCのビデオ・ボードとグラフィク・
ボード(映像処理部品)の設計・開発メーカー。基本
的には、製品開発に 特化した、研究開発ベン
チャー企業。
ボードの設計が主であるので、新製品開発は、かなり、
チップの新製品に依存している。 チップの販売が始
まってからボードの設計を開始したのでは、遅い。
むしろ、新製品のチップの設計、試作段階から情報
をいれて、ボードの開発をする必要がある。
1995年から、カノープスは、研究部門の一部をシリコン
バレーに移して、チップの新製品の情報を入手して
いる。
41
カノープスの例
1.ボードの設計段階から、新しいチップの情報が入り、
その
ような情報を設計段階で考慮して、設計開発を行う。
2.チップメーカーは逆に、現在設計中のボードの内容を
参考にしながら、開発を行う。
3. 1)試作品としてのチップの採用
シリコンバレーで開発した、チップの試作品の提示
がある。
2)チップをボードの試作品に乗せてテスト
そのスペック通りの試作品は少ない。ボードに試作
品を のせながら問題点を指摘する。
42
3)量産
新製品開発はなぜ地域集積するの
か?
1.新製品開発の期間が短い
2.新製品開発が企業間の分業している
3.新製品開発のプロセスが、企業間で
interactive
43
図;新製品開発拠点の特定地域への集積
条件
a)新製品開発のスピード
b)新製品開発の
Interactive
研究開発型
研究開発
企業の集積
の分業化
44
1.新製品開発の期間が短い
2.新製品開発が企業間の分業している
3.新製品開発のプロセスが、企業間で
interactive
上の条件が成立しないと、集積する必要はない。
1)開発期間は長くともよければ、日本で開発して、シリ
コンバレーにその都度持っていく。Interactive に対
応は可能。
2)開発プロセスが、 interactive でない。
何を設計開発するかが詳しく分かっている。
日本で短期に、設計開発可能。
45
表;モノ作りの企業集積と
製品開発の企業集積の違い
リード・タ
イム
効率
地域集積の
要因
分業形態
情報
モノ作り
の集積
部品製造
の分業
一方向
生産のリー ロジスティック
ド・タイム
(物流費用)
製品開
発の集
積
部品開
発の分
業
双方向に
よる情報
交換
開発の 開発のコミュ 人材、技術、製品
と部品の開発を
リード・タ ニケーション 行っている企業
の効率化
イム
の存在
人材、技術
46
付録4)フィンランド政府のイノベー
ション政策
47
なぜフィンランドか?
1990年代のソ連の崩壊で(輸出の約40%はソ
連向け)深刻な経済危機から脱出するため
に、科学技術振興と地域競争力強化をは
かった。
フィンランドでも1990年代は日本と同じ失わ
れた10年と言われた。
1990年に世界に先駆けて政策にイノベーショ
ン概念を導入
48
なぜフィンランドか?
スイスの世界経済フォーラム(WEF)の2004年の持
続的な経済成長のポテンシャルについてのランキ
ングで2003年に続いて、世界1位(日本第9位)
・OECDのイノベーションに関連する各種報告書で
は代表的なケースとして頻繁に取り上げられてい
る。
・人口520万人(日本1億2000万人)、GDP1620億
ドル(日本約4兆3000億ドル)と日本の4%に過
ぎない。小国でありながら、世界の研究所と言わ
れる高い技術力。
1994年から2006年まで実施される予定の
CoEプログラム(Center of Expertise)。
49
フィンランドの高等教育制度
スウエーデンやフィンランド、国の政策で、
大学、大学院修士課程、博士課程は、授業
料は全て無料。
理系、文科系に関係なく、修士、博士の学位
を持つ人が多い。文系の大学卒は殆どが修
士課程まで、出ている。
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地域のGDPと人口
国・地域
スウエーデン
ノルウエー
デンマーク
トルコ
フィンランド
横浜
ポルトガル
シンガポール
GDP
21.1兆
16.4兆
16 兆
14.8兆
12.1兆
12 兆
10.9兆
8.6兆
人口
890万
451万
536万
6,800万
519万
357万
1,000万
410万
51
Period
Centres of Expertise 1994-2006
Lapland CoE
for the Experience Industry
•Experience Industry
2003
-2006
Jyväskylä Region CoE
•IT, Control of Papermaking, Energy
and Environmental Technology
Oulu Region CoE
•IT, Medical-, Bio- and
Environmental Technology
Kuopio Region CoE
•Pharmaceutical Development,
Health Care- and Agrobiotechnology
Raahe –Nivala –Tornio CoE
•Metal and Maintenance Services
North Carelia CoE
•Wood Technology and Forestry,
Polymer Technology and Tooling
Kokkola Region CoE
•Chemistry
1999
-2002
CoE for Western Finland
•Energytechnology
Lahti Region CoE
•Design, Quality and Ecology
South-West Finland CoE
•Biomaterilas, Diagnostics,
Pharmaceutical Development, Surface
Tech. of Materials, ICT and Cultural
Content Production
Network CoE
for
Turism
Network CoE
for
Wood Products
South-East Finland CoE
•High Tech Metal Structures, Prosess
and Systems for Forest Industry,
Logistics and Expertise on Russia
Tampere Region CoE
•Engineering and automation, ICT,
Media Services and Health Care Tech
Satakunta CoE
•Materials and Distance Technology
Network CoE
for
Food
Development
Mikkeli Region CoE
•Composite and coatings
Seinäjoki Region CoE
•Foodindustry and Embedded Syst.
1994
-1998
Kainuu CoE
•Measuring Technique and
•Chamber Music
Helsinki Region CoE
•Active Materials and Microsystems,
Gene Technology, Software Product
Business, Digital Media, e-Learning
and Cultural Industry, Health Care
Technology and Logistics
Regional
Häme CoE
•Vocational Expertise and eLearning
Hyvinkää Region CoE
•Lifting and Transfer Machines
Network
52
Expertise Areas of
Helsinki Region Centre of Expertise
(ヘルシンキの例)
Medical and Welfare
Technologies
Culminatum Ltd
Digital Media,
Content Production and
Learning Services
Arabianranta /
Culminatum Ltd
Gene Technology and
Molecular Biology
Helsinki Business and
Science Park Ltd
Helsinki Region
Centre of Expertise
Software Product
Business
Otaniemi Science Park.
Culminatum Ltd
Logistics
Technopolis Plc.
Active Materials and
Micro Systems
Otaniemi Science Park.
53
Shareholders of Culminatum Ltd
County and Cities 33.9 %
Uusimaa Regional Council
City of Helsinki
City of Espoo
City of Vantaa
Financial Institutions (3)
11.3 %
Universities (6)
Polytechs (7)
Research Institutions (4)
31.6 %
Chambers of Commerce (2)
Science Parks (4)
Companies (3)
23.2 %
54
フィンランドは、18箇所のク
ラスターを作った
1994年から2006年まで実施した全国に18箇所
のCoEプログラム(Center of Expertise)
特定の場所に特定の産業集積を計る。
55
Innovation Support Chain in Otaniemi Region
© Otaniemi Science Park
FIRM BIRTH
FIRM STABILISATION
RESEARCH INSTITUTES
OLARTEK
OTECH
evaluation
consulting
COMMERCIAL
SUCCESS
BUSINESS
GENERATORS
INCUBATORS
HELSINKI UNIVERSITY OF
TECHNOLOGY (HUT),
RESEARCH CENTRE OF
FINLAND (VTT) ETC.
FIRM EXPANSION
Further
growth in
Uusimaa
region
ESPOO,
HELSINKI
ETC.
INNOPOLI
networks
growth support
area
infrastructures
DEVELOPMENT PROGRAMS and support measures
InnoTULI
services
SPINNO
program
Mentor
program
Venture Capital
as Spinno-seed
Centres of
expertise
Culminatum Ltd.
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②CoEプログラム(4):目標と
成果
・
高技能職の新規創出
通常の職の新規創出
ハイテクビジネスの新規創出
イノベーション(製品とコンセプト)
総支出額(M eur)
国家支出額(M eur)
実績1999-04
目標 1999-06
10,600
18,200
850
2,850
18,700
18,100
1500
3,400
410
38
730
55
57