イノベーションによる地域活性化: フィンランドの地域イノベーションシステム 静岡県立大学 経営情報学部 森 勇治 1 1.フィンランドのRIS ・フィンランドは深刻な経済危機から短期間 に脱却し、ハイテク国家へ転換した。この 原動力の一つとして地域イノベーション・シ ステムが各方面より注目を集めている。 →これは一体どのようなシステムか? →そこから何を学ぶことができるのか? 2 NISとRIS ・クラスター論:地域の競争力を高めることで、国の競争優 位を獲得しよう!(Porter(1990)) →これを踏まえて、NIS(Nelson(1993))をRegional Innovation Systemと読み替え、政策として推進したのが、 1990年代のフィンランドであった(Mitteinenn(2002)) ・NISは政府(中央)レベル、地域レベル、個別組織レベルの インタラクティブなイノベーション創出システムである。 →国の競争力向上には、NISの「構造」デザインとマネジメ ント・コントロール・システムを検討する必要がある。 3 2.フィンランドについて ・1990年代の深刻な経済危機から脱出するために、科学技術振興と 地域競争力強化を図った。 →1990年に世界に先駆けて政策にイノベーション概念を導入 →1994年から2006年まで実施される予定のCoEプログラム(Center of Expertise) ・スイスの世界経済フォーラム(WEF)の2006年持続的な経済成長の ポテンシャルについてのランキングで第2位を占める(日本は第7 位) ・OECDのイノベーションに関連する各種報告書では代表的なケー スとして頻繁に取り上げられている。 ・人口520万人(日本1億2000万人)、GDP1620億ドル(日本4兆3000 億ドル)とそれぞれ日本の4%に過ぎない。小国でありながら、「世 界の研究所」とも言われる高い技術力 4 3.フィンランドの地域イノベーション・システム :CoEプログラム ①目的: 地域経済活性化 ②歴史: 1994年~2006年 ③フィンランド共和国全土22箇所で実施 ④コンセプト: 競争・政策の統合 ⑤評議会: 地域主体で、多くの省庁等が関与 ⑥地域実施主体: 複数組織協力体制 ⑦地域実施主体の所有者: 複数が資金を拠出 ⑧各COEごとの活動:リニアモデル? ⑨目標と成果: 充分な成果か? 5 Period ③Centres of Expertise 1994-2006 Lapland CoE for the Experience Industry •Experience Industry 2003 -2006 Jyväskylä Region CoE •IT, Control of Papermaking, Energy and Environmental Technology Oulu Region CoE •IT, Medical-, Bio- and Environmental Technology Kuopio Region CoE •Pharmaceutical Development, Health Care- and Agrobiotechnology Raahe –Nivala –Tornio CoE •Metal and Maintenance Services North Carelia CoE •Wood Technology and Forestry, Polymer Technology and Tooling Kokkola Region CoE •Chemistry 1999 -2002 CoE for Western Finland •Energytechnology Lahti Region CoE •Design, Quality and Ecology South-West Finland CoE •Biomaterilas, Diagnostics, Pharmaceutical Development, Surface Tech. of Materials, ICT and Cultural Content Production Network CoE for Turism Network CoE for Wood Products South-East Finland CoE •High Tech Metal Structures, Prosess and Systems for Forest Industry, Logistics and Expertise on Russia Tampere Region CoE •Engineering and automation, ICT, Media Services and Health Care Tech Satakunta CoE •Materials and Distance Technology Network CoE for Food Development Mikkeli Region CoE •Composite and coatings Seinäjoki Region CoE •Foodindustry and Embedded Syst. 1994 -1998 Kainuu CoE •Measuring Technique and •Chamber Music Helsinki Region CoE •Active Materials and Microsystems, Gene Technology, Software Product Business, Digital Media, e-Learning and Cultural Industry, Health Care Technology and Logistics Regional Häme CoE •Vocational Expertise and eLearning Hyvinkää Region CoE •Lifting and Transfer Machines Network 6 ④コンセプト ・雇用政策、産業政策、イノベーション政策、教育政策、地 域政策を統合 →この政策によって1994年にはじめて諸省庁が連携するこ とができた。意義深い政策。 ・競争的政策 →各地域からの計画を評議会が評価し、資金を配分 →予算も参加省庁から:多面的評価になる ・4大都市に加えて、中小都市も参加 →2006年以降(次のプログラム)は大都市に集中か? 7 ⑤評議会 ・議長であるノキアCTO(Mr.Neuvo)がコンセプト作りから積極的関 与 ・合計51名の正副委員、専門家グループ、事務局がいる中で、大 学(含むポリテクニック)関係は計5名のみ。 ・主幹は内務省であるが、貿易産業省、教育省、労働省、TEKES、 SITRA等の幅広い省庁が参加 ・その他に大学、地域代表、民間企業からも参加。 →地域から出されたプロジェクトを評価し、採否の決定、 事後評価を行う。つまり地域主体である。 8 ⑥Expertise Areas of Helsinki Region Centre of Expertise Medical and Welfare Technologies Culminatum Ltd Digital Media, Content Production and Learning Services Arabianranta / Culminatum Ltd Gene Technology and Molecular Biology Helsinki Business and Science Park Ltd Helsinki Region Centre of Expertise Software Product Business Otaniemi Science Park. Culminatum Ltd Logistics Technopolis Plc. Active Materials and Micro Systems Otaniemi Science Park. 9 ⑦ Shareholders of Culminatum Ltd County and Cities 33.9 % Uusimaa Regional Council City of Helsinki City of Espoo City of Vantaa Financial Institutions (3) 11.3 % Universities (6) Polytechs (7) Research Institutions (4) 31.6 % Chambers of Commerce (2) Science Parks (4) Companies (3) 23.2 % 10 ⑧ Innovation Support Chain in Otaniemi Region © Otaniemi Science Park FIRM BIRTH FIRM STABILISATION RESEARCH INSTITUTES OLARTEK OTECH evaluation consulting COMMERCIAL SUCCESS BUSINESS GENERATORS INCUBATORS HELSINKI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY (HUT), RESEARCH CENTRE OF FINLAND (VTT) ETC. FIRM EXPANSION Further growth in Uusimaa region ESPOO, HELSINKI ETC. INNOPOLI networks growth support area infrastructures DEVELOPMENT PROGRAMS and support measures InnoTULI services SPINNO program Mentor program Venture Capital as Spinno-seed Centres of expertise Culminatum Ltd. 11 ⑨目標と実績(成果) (内務省提供資料より作成) 実績 1999-04 高技能職の新規創出 通常の職の新規創出 ハイテクビジネスの新規創出 イノベーション(製品とコンセプト) 総支出額(M eur) 国家支出額(M eur) 目標 1999-06 10600 18200 850 2850 18700 18100 1500 3400 410 38 730 55 12 4.オウルモデル ・CoEプログラムはオウルモデルの全国展開版 →ではオウルモデルとは何か? →テクノポリス社の経営行動そのもの (1)明快な目的(ICTで地域経済活性化) (2)焦点を絞る(ICT→その後拡大) (3)ネットワークの重視(専門化には不可欠、お互いを良く知って いる。地元志向が強い) (4)大学研究を重視(教育だけでなく) (5)活動は商業ベースで(コスト負担はシビアに、補助は厚く) 13 5.まとめ:日本への示唆 <フィンランド調査のまとめ> ・国家・中央レベル、地域レベルのそれぞれにおいて、多数の専 門家が協力せざるをえない仕組みを作り上げている。 →1つの政策は多方面の協力が必要であることと、多方面への影 響があることを認識している。 →そのために資金を拠出し、積極的に関与させる。 <日本への示唆> →日本では各省庁がそれぞれの政策を立案し、調整している。 1つの政策を各省庁の協力で作ると重複・調整が不要。 →成功例(体験)をどのように扱っているのか。 →実施主体が株式会社であることによる責任の明確化。 14
© Copyright 2024 ExpyDoc