JISA第5回サイバー法セミナー サイバー犯罪条約と日本の刑事法制 明治大学法学部教授・弁護士 夏 井 高 人 Table of Contents はじめに サイバー犯罪条約の構成 サイバー犯罪条約における刑事実体法 日本のサイバー刑事法制 比較法的な検討 – – – – 違法アクセス 違法傍受 機器の濫用 プロバイダ責任の免責 サイバー犯罪条約に対する反応 検討課題 まとめ 2 サイバー犯罪条約の構成 前文 第1章 用語の定義 第2章 国内において採られるべき措置 – 刑事実体法 – 手続法規 -データの応急保全,捜索,差押,開示など – 管轄権 第3章 国際協力 – 一般原則 -犯罪者の引渡,相互援助など – 特別規定 -保全措置など 第4章 最終規定 -条約の発効,留保,改正など 3 サイバー犯罪条約における刑事実体法 コンピュータ・データ及びシステムの機密性,完全性及び可用性に対 する犯罪 – – – – – 違法アクセス データ妨害 システム妨害 機器の濫用 違法傍受 コンピュータ関連犯罪 – コンピュータ関連偽造 – コンピュータ関連詐欺 コンテント関連犯罪-児童ポルノグラフィ 著作権及び関連諸権利の侵害に関連する犯罪 付随的責任及び制裁 – 未遂・幇助・教唆 – 企業責任 4 日本のサイバー刑事法制 一般法 – 刑法典 • 昭和62年(1987年)改正 – データの保護(毀損,改変),コンピュータ詐欺,システム妨害など • 有価証券に相当する電磁的証票についての対応 特別法 – 違法アクセス関係 • 不正アクセス禁止法 – ポルノグラフィ関係 • 児童買春・児童ポルノ禁止法 • 風俗営業法 – 知的財産権関係 • 著作権法(WIPO著作権条約に対応した改正後のもの) • (不正競争防止法) – その他 5 比較法的な検討 違法アクセス – 「不正アクセス」と「違法アクセス」の相違点 • • 「不正」,「違法」の判断基準 個人のシステムやデータの保護 → P to P の時代に対応できるか? 違法傍受 – 通信傍受法の評価 • 一般的禁止を裏側から法定しているが罰則がない 機器の濫用 – 不正アクセスを助長する行為は何を包含するか? • 法文の不明確性=罪刑法定主義違反 サービス・プロバイダ責任の免責 – 責任と免責の根拠 • • 犯罪行為に積極的に荷担した責任=過失犯への対応は? サイバー犯罪条約のアプローチ,DMCAなどにおけるアプローチ ハイパーリンクに対する法的評価 – – 条約の児童ポルノ規制における「意図」の要件 FLマスク事件判決の功罪 電磁波(電磁的放射)の規制 – – 業法(電気通信事業法,電波法,放送法など)による対応は無意味 保護のための技術的対応は無力 6 サイバー犯罪条約に対する反応 欧州 – 各国政府 • イギリスの法制整備が先行 – サービス・プロバイダ • 関連団体の反応 – 関連する判決例 アメリカ合衆国 – 議会におけるプロバイダ責任免責の議論 プライバシー保護団体 – 通信傍受(保全)に対する強い抵抗 7 検討課題 サイバー犯罪条約への対応 – 情報提供 • 政府が保有する関連情報の提供 – 立法政策 • 統一的な立法ポリシーの確立 • 横断的な刑事立法システムの確立 • 民間企業・団体の意見の尊重 一般的な検討事項 – 調査・研究の支援 • 調査・研究方法の見直し • 公的利益と私的利益の公私混同・予算の無駄遣いをやめる • 研究者の育成・支援と成果の社会還元 – 再評価システムの構築 • 法の有効性等の再評価 • 再評価結果の公開と立法政策への反映 8 参考サイト(サイバー犯罪条約関係) Council of Europe : Draft treaties http://conventions.coe.int/treaty/EN/cadreprojets.htm Draft Convention on Cyber-crime (Version No. 25) http://conventions.coe.int/treaty/EN/projets/cybercrime25.htm Draft Explanatory Memorandum to the Draft Convention on Cyber-crime http://conventions.coe.int/treaty/EN/projets/CyberRapex7.htm Creating a Safer Information Society by Improving the Security of Information Infrastructures and Combating Computer-related Crime http://europa.eu.int/ISPO/eif/InternetPoliciesSite/Crime/CrimeCommEN.html Resolution on Criminal Liability of ISP submitted by Mr. Deier (U.S. House of Representatives) http://dreier.house.gov/ISP_bill.pdf Cyber-Rights & Cyber-Liberties (UK) Palermo Statement : Cyber-Rights vs CyberCrimes http://www.cyber-rights.org/reports/palermo.htm International Conventions on Cybercrime at CyberCrime & Network Security http://www.cybertelecom.org/crime.htm 9 参考サイト(日本のサイト) 夏井高人:コンピュータ法・サイバー法に関連する資料 http://www.isc.meiji.ac.jp/~sumwel_h/lib/index.html 夏井高人:不正アクセス禁止法FAQ http://www.nttdata-sec.co.jp/it/index.html 岡村久道:コンピュータ犯罪、ハイテク犯罪、ネットワーク犯罪、そしてサイバー犯罪 http://www.law.co.jp/okamura/jyouhou/cybercrime.htm 岡村久道:法律とサイバースペース関係リソース集(LINK) http://www.law.co.jp/link.htm 園田 寿:<注釈>児童買春・児童ポルノ禁止法 http://w3.scan.or.jp/sonoda/law/kaishun/kaishun.html 指宿 信:これが国際通信盗聴網「エシュロン」だ!-EU報告書を読む http://law.leh.kagoshima-u.ac.jp/STAFF/IBUSUKI/hosemi9911.htm 藤田康幸:コンピュータと法 http://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/comp/index.html 警察庁:ハイテク犯罪対策 http://www.npa.go.jp/police_j.htm IPA:ウイルス対策室 http://www.ipa.go.jp/security/virus/top-j.html IPA:不正アクセス対策室 http://www.ipa.go.jp/security/ciadr/top-j.html 著作権情報センター:外国著作権法令集 http://www.cric.or.jp/gaikoku/gaikoku.html 10
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