宇宙科学最前線 第1回

鹿児島大学/愛媛大学
宇宙電波天文学特論
第7回
LVGモデルとXCO
半田利弘
鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻
Mellinger
多輝線観測(1)
▶ LTE近似
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■
全てのレベルでTexが等しい
輝線強度の相対値:t の違いだと考える
TB=Tex (1-e-t)
t≫1の輝線と、 t ≪1の輝線で比較
TB,thick=Tex, TB,thin=Text,
▶ 強度比から光学的厚さ→柱密度
▶ 光学的に厚い輝線の強度→励起温度
Mellinger
多輝線観測(2)
▶ 多準位(Dj=±1だけの場合:2原子分子)
dnj=nj+1Aj+1,j-njBj, j+1Ij+1,j+n2Bj+1,jIj+1,j-njCj,j+1 +nj+1Cj+1,j
■
n=Snj
全分子数は一定
定常状態dnj=0として解けばよい
▶ 放射Ij+1,jの変化:2準位モデルにならって
en = (hn )/(4p) j(n) nj Aj+1,j
kn = (hn )/(4p) j(n) (nj Bj,j+1-nj+1 Bj+1,j)
▶ 放射強度の変化 dIn=(en –kn In)dx
■
輝線放射領域の巨視的構造による
Mellinger
LVGモデル(1)
▶ 仮定:速度勾配が単調で大きい
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放射光は近所で吸収される
▶ 仮定:吸収光と放射光とは熱的関係
■
光子散逸率escape probability b
▶ Ii,j = (1-bi,j ) Si,j+bi,j Bn(TCMB)
Mellinger
LVGモデル(2)
▶ 光学的厚さt→光子の脱出確率b
 幾何学構造で影響される
 「狭い範囲でしか輝線の放射吸収が起きない」
→速度勾配が大きな構造(LVG)
b =[1-exp(-t)]/t :1次元平板の場合slab
■ b =[1-exp(-t)]/(3t):球対称の場合spherical
■
▶ LVGモデル
■
■
これらを用いて、全レベルの相対分布を求める
各遷移のTexが決まる→各輝線強度が求まる
Mellinger
LVGモデル(3)
▶ 3つの入力パラメータ
■
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■
Scoville&Solomon (1974)
水素分子ガスのTk
水素分子ガス密度 n(H2)
単位長さ速度差当たりの分子数n(X)/(dv/dr)
▶ 連立方程式を数値計算で求める
■
■
Goldreich & Kwan (1974) ApJ 189, 441
Scoville & Solomon (1974) ApJ 187, L67
Mellinger
分子雲の特徴
▶ 観測で得られる輝線の特徴
▶ ガウス関数的形状
▶ 幅:熱運動への対応より広い
■
■
熱力学的な運動の他に運動がある
乱流?
▶ 強度:ガス温度よりずっと低い
■
ビーム占有率 beam filling factor
Mellinger
乱流モデル
▶ 1つのビーム(観測画素)内で運動がある
■
■
ガウス関数的速度場:ランダムな運動
熱運動幅より広い→超音速乱流
 問題点:急速に散逸してしまう
 乱流エネルギーの補填(説明に成功していない)
■
超高分解能:熱運動幅が観測されることもある
Mellinger
LVGモデルの妥当性
▶ 輝線幅が有限
■
■
速度が大きく異なると無関係
放射で結びつく範囲が狭い
▶ 幾何学構造は異なってもLVGで桁は合う
■
どうせ詳細な幾何学構造はわからない
▶ きちんとモデル計算する方法
■
例えば、モンテカルロ法で光子追跡する
Mellinger
ビーム占有率(1)
▶ 観測分解能が不十分
▶ 観測ビーム内でガスの状態が非一様
■
第1近似として考える:あるvsない
Mellinger
ガスが光っている範囲
観測ビーム範囲
ビーム占有率(2)
▶ ビーム占有率Beam filling factorの値
■
■
パラメータが増えるので不確定さが増える
輝線ごとに値が異なるかも
 さらに自由度が増えてしまう
 どこまで単純化したモデルで問題が起きないか。
■
輝線で共通すると場合は強度比には効かない
 輝線の実効的臨界密度が近いことが必要
Mellinger
分子雲の幾何学形状
▶ わからない時は球対称
■
天文学の“常識”、1次元対称としての近似
▶ 観測すると実際には全く異なる
■
■
“無限に”細かい部分を持つ構造 fractal
筋状の構造
Mellinger
体積占有率
▶ 分子雲の外形を決めたとして
▶ 分子雲内でガスの状態が非一様
■
■
第1近似として考える:あるvsない
clumpy model
Mellinger
ガスが光っている範囲=clump
分子雲の範囲
Conversion factor X (1)
▶ CO輝線強度∝分子ガス柱密度
■
本来、光学的に厚いから無関係のはず
 強度比がabundanceと大きく違う
強度比~10-1
 13CO/12CO 存在比~1/89(太陽系)、1/67(MWG)
 13CO/12CO
■
元々は経験則
 12COと13COとで輝線輪郭が相似
▶ N(H2)=X ∫ TB(CO,J=1-0) dv
■
X=2.3×1020 cm-2/(K km s-1)
Mellinger
Conversion factor X (2)
■
■
ガンマ線:宇宙線と陽子との相互作用
ガンマ線強度、HI強度、CO強度で相関をとる
Dicky&Lockman HI
CGRO, NASA
AMANOGAWA CO
Mellinger
Conversion factor X (3)
▶ なぜ、これでいいのか
■
■
銀河内で分子雲の特徴はそれほど変わらない(?)
TBはbeam filling factorの測定になっている(?)
 ←beam
filling factorが小さい
▶ 理論的裏付け(言い訳)
■
■
■
■
virial平衡→ m∝Rv2、optically thick→TB∝Tex
この場合、X=N(H2)/(∫TB dv)∝n(H2)1/2r3/2/Tex
subthermally excited→Tex∝n(H2)-1/2:LVG解析
∴ clump size一定ならば、Xは定数
Mellinger
Conversion factor X (1)
▶ CO輝線強度∝分子ガス柱密度
■
本来、光学的に厚いから無関係のはず
 強度比がabundanceと大きく違う
強度比~10-1
 13CO/12CO 存在比~1/89(太陽系)、1/67(MWG)
 13CO/12CO
■
元々は経験則
 12COと13COとで輝線輪郭が相似
▶ N(H2)=X ∫TB(CO,J=1-0) dv
■
X=2.3×1020 cm-2/(K km s-1)
Mellinger
Conversion factor X (2)
■
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ガンマ線:宇宙線と陽子との相互作用
ガンマ線強度、HI強度、CO強度で相関をとる
Dicky&Lockman HI
CGRO, NASA
AMANOGAWA CO
Mellinger
Conversion factor X (3)
▶ なぜ、これでいいのか
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銀河内で分子雲の特徴はそれほど変わらない(?)
TBはbeam filling factorの測定になっている(?)
←beam filling factorが小さい
▶ 理論的裏付け(言い訳)
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virial平衡→ m∝Rv2、optically thick→TB∝Tex
この場合、X=N(H2)/(∫TB dv)∝n(H2)1/2r3/2/Tex
subthermally excited→Tex∝n(H2)-1/2:LVG解析
∴ clump size一定ならば、Xは定数
Mellinger