b - 東京大学

NROレガシープロジェクト
銀河面COサーベイ
久野成夫
筑波大学
NROレガシープロジェクト:銀河面COサーベイ
・45m鏡+新マルチビーム
受信機FORST
・12CO(1-0), 13CO(1-0),
C18O(1-0)同時観測
観測領域:
inner disk: l = 10°~50°
渦状腕, 腕間, 棒状構造
outer disk: l = 198°~236°
|b|≦1°
NASA/R. Hurt
共同研究者
• 国立天文台: 梅本智文、南谷哲宏、西村 淳、諸隈佳菜、
廣田晶彦、水野範和、本間希樹、松本尚子、
Chibueze J.、井上剛志
• 筑波大:
久野成夫、藤田真司
• 鹿児島大:
半田利弘、中西裕之、面高俊宏、新永浩子、
松尾光洋、小澤武揚、河野樹人
• 上越教育大: 濤崎智佳、小林大樹
• 大阪府立大: 大西利和、徳田一起、高橋 諒
• 東京大:
大橋聡史、桑原 翔、祖父江義明
• 名古屋大:
立原研悟、鳥居和史、服部有祐、佐野栄俊、
吉池智史
• 明星大:
小野寺幸子、津田裕也
• 宇宙研:
坪井昌人
• 茨城大:
樋口あや
• 東京理科大: 亀谷和久
1. 研究の背景
2. NRO CO銀河面サーベイ
3. これまでの結果
1. 研究の背景
• 巨大分子雲(GMC):星形成の母体(大質量星)
– 銀河系内:質量、サイズ、速度幅
• 近傍銀河におけるGMCの観測
– LMC: Kawamura et al. 2009, Hughes et al. 2010…
– M33: Rosolowsky et al. 2007, Tosaki et al. 2011, Gratier et al.
2012…
– M51: Koda et al. 2011, Egusa et al. 2011, Colombo et al. 2014…
– IC10: Leroy et al. 2006
– M31: Rosolowsky et al. 2007
– IC342: Hirota et al. 2011
• GMCの性質
– 環境による違い(銀河の構造との関係)
– GMCの進化段階による違い
M51におけるGMCの性質の環境依存性
(Colombo et al. 2014)
• GMCの質量関数
GMCの質量関数
– 渦状腕より腕間のほう
が急勾配
• 渦状腕(星形成活発)で
大質量GMCが形成
渦状腕
– 中心の棒状構造では
大質量GMCが少ない
• 棒状ポテンシャルによる
非円運動 ⇒ シェア
PAWS (beam size ~40pc)
(星形成不活発)
CO (Scinnerer et al. 2013)
棒状構造
腕間
IC342の渦状腕におけるGMC進化
(Hirota et al. 2011)
NMA+NRO45m (beam size ~50pc)
CO
Gas flow
HII領域あり
HII領域なし
HII領域あり
HII領域なし
HII領域あり
•
渦状腕を横切る際にGMCの質量が増加しより重力的に
束縛され星形成が始まる
M33におけるGMCの進化
(Onodera et al. 2012)
CO(3-2)/CO(1-0)
 高温高密度ガスの割合
• 星形成率の高いGMCは
CO(3-2)/CO(1-0)比が高い
⇒星形成の活動性とともに比が
上がっていく
• 質量の大きいGMCほど
CO(3-2)/CO(1-0)比が大き
い (特に星形成率が低い
GMC)
 大質量のGMCほど高密度ガ
スの割合が高い
NRO-MAGiC (~80pc)
CO (Tosaki et al. 2011)
Circle size: SFR
• 大質量星形成においてGMCスケールでの進化が重要
(星形成自身はもっと小さなスケール)
GMCの進化に伴ってどのように高密度ガスが形成されるか?
• いろいろな環境、進化段階でのGMCの性質
– 質量, ビリアル比, 高密度ガスの割合, 星形成活動
• GMCの内部構造 (高密度クランプ、 フィラメント)
– クランプ・フィラメントの質量・分布, ガス密度頻度分布, 密度・温度
– GMC内の速度構造
• 分子雲衝突、乱流
• 十分な数のGMCサンプル
• 高い空間的なダイナミックレンジ
– GMCの巨視的な性質から内部構造まで
• 高密度ガスのトレーサー
銀河系内GMCの観測
• ガス密度頻度分布関数
– AMANOGAWA-2SB 銀河面サーベイ(60㎝鏡)
– Log-normal分布 => random process? (Yoda 2011 PhD
thesis)
GMCスケール以下でもLog-normal?
銀河の構造やGMCの進化との関係?
我々の銀河における環境依存性
•
12CO(1-0), 12CO(3-2), 13CO(1-0)
(0.8 deg x 0.8 deg) (NRO45m&ASTE data) (Sawada et al. 2012a)
• 13CO(1-0) (Galactic Ring Survey FCRAO data)
(Sawada et al. 2012b)
• 渦状腕・腕間における分子ガスの性質の比較
– 渦状腕の分子ガスはよりコンパクトな構造
– 腕間の弱くて広がったガスが渦状腕でコンパクトで明るい構造
に進化
銀河系内GMCの内部構造
• Dust continuum, 12CO
(e.g., Shimajiri et al. 2011, Rivera-Ingraham et al. 2013)
– 高密度クランプ/フィラメント構造
Orion A in CO(1-0)
Shimajiri et al. 2011
W3 (70, 160, 250um)
Rivera-Ingraham et al. 2013
• 大質量星形成においてGMCスケールでの進化が重要
(星形成自身はもっと小さなスケール)
GMCの進化に伴ってどのように高密度ガスが形成されるか?
• いろいろな環境、進化段階でのGMCの性質
– 質量, ビリアル比, 高密度ガスの割合, 星形成活動
• GMCの内部構造 (クランプ、 コア、フィラメント)
– クランプ・フィラメントの質量・分布, ガス密度頻度分布, 密度・温度
– GMC内の速度構造
• 分子雲衝突、乱流
• 十分な数のGMCサンプル
• 高い空間的なダイナミックレンジ
– GMCの巨視的な性質から内部構造まで
• 高密度ガスのトレーサー
2. NRO CO銀河面サーベイ
• NRO-45mによる銀河面のOTFマッピング
• 新マルチビーム受信機 FOREST
– 4 ビーム x 2 偏波 x 2 サイドバンド
– IF: 8 GHz
– 観測周波数 : 80-120 GHz
多輝線マッピング観測に威力を発揮!
• HPBW ~15” (最高の角分解能)
• 12CO(1-0), 13CO(1-0), C18O(1-0) (同時観測)
観測領域:
inner disk: l = 10°~50°
|b|≦1°
渦状腕, 腕間, 棒状構造
outer disk: l = 198°~236°
|b|≦1°
目標ノイズレベル(Ta*):
13CO: 0.1K (dV =1.3km/s)
12CO: 0.2K (dV =1.3km/s)
観測時間:1200時間(3年)
NASA/R. Hurt
10 221 GMCs cataloged by Solomon et al. (1987)
5
- 渦状腕、腕間、棒状構造
- D < 15kpc (15” ~ 1pc) ~ 高密度クランプのサイズ
(e.g., Higuchi et al. 2009, 2013, Parsons et al. 2012)
VERAのターゲット探し
0
266 HII領域
(18◦< l < 55◦ |b| < 1)
(Anderson&Bania2009)
15kpc
科学的目的
• GMCの形成(HI⇒H2)
• GMCの進化(高密度ガスの形成)
• ガス量 vs. 星形成率
• Spitzer Bubbleとの関係(分子雲衝突)
• 超新星残骸に付随するガス
• 高密度クランプのH2Oメーザーサーベイ
…
3.現在までの結果
• M17領域 (Tosaki et al.)
•
•
•
•
M17のフィラメント構造 (Nishimura et al.)
W51領域 (Fujita et al.)
シェル構造 (Tsuda et al.)
銀河系外縁部 (Matsuo et al.)
M17領域 (Tosaki et al.)
M 1 7 = S E Q U E N T I A L S TA R F O R M AT I O N ?
D I F F E R E N T E V O L U T I O N A R Y S TA G E S A L O N G S TA R F O R M AT I O N
比較的古い星の存
在する領域
活発に大質量星を
形成している領域
大質量星が少なく、星形成の
進化段階が若い?
星形成の進行の段階が異なる領域が存在
大きなスケールでの星形成進化とclumpの分布・進化を調
B 3.6 μm, G 8 μm, R 24 μm
べるのに適している
距離 = 1.29 (- 2.1?) kpc のHⅡ領域
空間分解能 ~ 0.1pc (=16”@ 1
大局的分布
8 pc
12CO
13CO
M17
M17SWex
C18O
C 1 8 O / 1 3 C O R AT I O
~0.1
~0. 2
0.4
0.2
M17
M17SWex
C18O/13COはM17近傍よりSWexの方が~2倍高い?
CLUMP DISTRIBUTIONS
clumps数少ない
clumps数多い
C18O
C18O cube →CLOUD identification = CLUMPFIND
→ 224 clumps
typical size & velocity width ~ 0.3 pc & 1.7 km/s
Different Evolutionary stages along star formation
⇄ C18O/13CO ratio, clumps 密度/数?, 複数速度成分?
星形成の進行でclumpが減少し、C18O/13CO(=clump fraction?) が低くなる?
13CO
分子雲フィラメント (Nishimura et al.)
13CO(1-0)
12CO(1-0)
M17
10pc
C18O(1-0)
SW
• 質量
– Cloud A : ~ 3.7×104 Mo
– SW
: ~ 7.2×104 Mo
☆:O
・:B
• Cloud A, SW 共に M17 からのフィード
バックの影響が顕著
• Cloud A, SW とは別に、それらと反相関
する clump が HII 領域内に存在
27
フィラメント構造
• Cloud A
– 向き:揃っている
• HII 領域から遠ざかる方
向
– 周期的な構造
• 5pc 程度で交差している
ように見える
• 個々のフィラメントの感
覚は 2pc 程度
– 交差している
• SW
速度の情報が使える
– あまり検出できなかった
– 光学的に薄く、かつ、高密
度領域をトレースする輝線
での観測が必要
28
星形成との関係
Povich+13
☆:O
・:B
simbad から
• Cloud A では YSO の分布がフィラメントと一致が
良い
• OB 型星はほとんどフィラメント上に無い
29
•
•
–
30
W51領域(Fujita et al.)
12CO(J = 1 – 0)
 低速度側でComplexの構
造、高速度側でHVSを確
認
 他観測と同様にHVSの
breakを確認
• 黒い円はKoo (1997)で同
定されたcompact radio
continuum source(8点)
13CO(J = 1 – 0)
Complex
~50.5 km/s
Complex
~56.5 km/s
Complex
~60.5 km/s
Complex
~64.5 km/s
break 1
~68.5 km/s
break 2
HVS
High Velocity Stream :
break 2にshellのような構造を発見
12CO(J=1 – 0) channel map
コントア :61.5 km/s
カラー
:68.5 km/s (HVS)
break 2
break 2の位置の低速度側に
丸みを帯びた構造がある
12CO(J=1 – 0) channel map
channelを追って見てみると
shell-likeな構造のよう
~8 pc
(break 1の方では、このような構造は発
見できなかった)
High Velocity Stream :
break 2の起源
膨張するHII region
HVS (High Velocity Stream)
(~100 pc × ~10 pc, ~68 km/s)
HVSの内側or後ろ側に
形成されたHII region
Observer
HII regionが膨張
break 2
~61 km/s
break 2は、分子雲衝突というよりも、
HII regionの膨張によってできた可能性
HII regionの膨張によって手前に押しのけられたHVSの一部
シェル構造 (Tsuda et al.)
• 銀河面サーベイによる広範囲高分解能の電波観
測は, これまで赤外観測では得られないような遠方
の分子ガス構造を見ることができる.
• Shell の系統的研究に有効.
• 奥行方向(速度方向).
GPS CO Shells Catalog
20′
17′
15′
23′
12′
18′
8′
15′
7′
28′
21′
18′
20′
17′
8′
18′
20′
5′
20′
24′
16′
25′
18′
9′
18′
35′
25′
16′
26′
15′
9′
13′
9′
12′
13′
15′
14′
20′
10′
10′
GPS CO Shells Catalog
20′
18′
8′
15′
18′
16′
25′
26′
16′
15′
45個のShell 状構造の分子雲を同定
17′
8′
7′
18′
20′
5′
18′
9′
13′
9′
視直径 最大 35′
最小 5′
<10′ 9個
10 – 20′ 27個
20′< 9個
15′
23′
12′
28′
21′
20′
17′
20′
24′
9′
18′
35′
25′
12′
13′
15′
14′
20′
10′
10′
vs Bubbles
Spitzer Bubble と対応するShell
⇛ Type: A
Spitzer
Type B Shell
Spitzer Bubble と対応しないShell
⇛ Type: B
Spitzer map
Bubbleとしてはカタログに載って
いない
SpitzerCO
BubbleShells
と対応するShell
GPS
Catalog
20′
17′
⇛ Type: A
Spitzer15′
Bubble
26′
16′
8′ と対応しないShell
18′
25′ 16′
18′
⇛ Type: B
Type:
12COでしかemission
10′
20′
7′ Bの中でも,
12′
5′
18′
18′
13′
が見えないもの
⇛ Type: B’
15′
9′
Type: A 20個 /45個
⇛SBと同じような形成メカニズム
Type: B 25個 /45個
⇛近傍のHⅡ region
15′
23′
28′
20′
20′
Type: B’
12′
21′
17′
24′
12′
18′
12′
3個 /45個
⇛? 25′
13′
35′
15′
14′
20′
10′
10′
銀河系外縁部(Matsuo et al.)
Spitoni & Matteucci 2011
Rudolph+2006
星形成率: 小
金属量: 少
宇宙初期に近い環境
銀河系形成時、宇宙初期を知る
手がかり
Near-Field Cosmology
(Freeman & Bland-Hawthorn 2002)
XCO: 大
Delahaye+2011
41
銀河系はどこまで広がっているか
銀河系の半径は15kpc? 未だによくわからない
星ディスクは30kpc程度まで
存在?
(Nakanishi+2008)
分子雲を28kpcで検出
(Digel+1994)
距離測定も難しい
銀河系回転曲線(Sofue+2009)
銀河系外縁部では誤差が大きい
VERAによる年周視差測定に期待
まずは12CO (J=1-0)で分子雲探査をすることが必要 42
分子雲の動径分布
• CLUMPFIND (Williams+1994)を用いて分子雲
を同定
12CO
2天体
13CO
1天体
12CO
13CO
2天体
CfA, LV図
43
分解能, 感度の問題?
• Perseus armに付随する分子雲
12CO
13CO
距離: R = 11.9 kpc, d = 4.5 kpc
Peak: 7.2 K (r.m.s. = 1.0 K), 3.23 K (r.m.s. = 0.4 K)
サイズ: 69.9’’ (1.5 pc), 53.4’’ (1.2 pc) -> r = 20 kpcまで分解可
線幅: 2.0 km/s, 1.1 km/s
CO光度: 74.6 K km s-1 pc2
光度質量: 387.4 M0 -> r = 15 kpcまで検出可
ビリアル質量: 1306.7 M0 -> r = 30 kpcまで検出可
44
領域の問題?
• Warpの可能性
May+1997により
CfAの第3象限にある分子雲をカタログ化
l = 198° - 236°に存在する分子雲: 86
予定観測領域 (b = ±1°)に
存在する分子雲: 58
・昨シーズン観測した領域では
遠方分子雲が存在しないことが示唆
45
まとめ
• NRO45mによる銀河面COサーベイ
– CO3輝線同時観測
– これまでで最高の角分解能
– GMCの性質
• GMCの進化段階・環境(銀河の構造)との関係
– GMCの進化に伴う内部構造の変化
• 高密度クランプ・フィラメント形成