L1641-N 領域における cloud-cloud collision とパーセクスケールの stellar feedback の証拠 中村文隆 1、三浦智也 2、北村良実 3、島尻芳人 1、川辺良平 1、明石俊哉 4、池田紀夫 3、塚越 崇 5 百瀬宗武 6、西 亮一 2、LI, Zhi-Yun7 1: 国立天文台 , 2: 新潟大学 , 3: JAXA, 4: 東京工業大学 , 5: 東京大学 , 6: 茨城大学 , 7: University of Virginia 星の大半は巨大分子雲で形成される。巨大分子雲には、 されたことが予想された。さらにcloud-cloud collisionによっ large-sacle flow、超新星爆発、若い星からのフィードバック て L1641-N 星団形成領域の星形成が誘発され、クラスター 等の様々な環境効果が働き、複雑な内部構造、力学構造が メンバーからのアウトフローや星風がパーセクスケールの 生まれ、内部の星形成過程も支配している。これらの要因 膨張シェルを形成した。我々は、このような星団形成領域 によってできたと思われる構造は、幾つかの星形成領域で 全体からのフィードバックを「原始星団風」と名づけた 発見されている。しかしながら、それらの環境効果が実際 に巨大分子雲で起こる星形成にどんな影響を及ぼすかは観 測的に分かっていない。 本研究では、環境効果が巨大分子雲中で起こる星形成過 程にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、野 辺山 45 m 電波望遠鏡を用いて、最も近傍の巨大分子雲であ るオリオン A 分子雲の CO(1–0) 輝線マッピング観測を行っ た。特に、 大質量星形成が盛んなオリオン KL の南部に位置 する L1641-N 領域の観測を行った。この領域には、活発な 星団形成領域であるL1641-N領域が含まれるが、 強いUV放 射を出す大質量星が形成されていないので、初期条件を凌 駕する UV 放射の影響とその他の影響を区別することが容 易である。さらに、AzTEC/ASTE 観測によって取得された 1.1 mm ダスト連続波マップと比較し、ダスト連続波によっ て検出される高密度ガスの空間分布と 12CO で検出される 低密度ガスの分布を比較し、この領域のガスの空間分布や 速度構造を調べた。 主な結果は以下の通りにまとめられる。 12CO の channel map から、この領域には視線速度が 6 km/s 以下の青方変移した成分と 7 km/s よりも大きい視線速度を 図 1.オリオン A 分子雲南部にある L1641N 領域の CO(1–0) ピーク強度図. 観測は野辺山宇宙電波観測所の 45 m 電波望遠鏡により行った.本観 測から,複数のシェル状構造が存在することが明らかとなった.詳 しくは [1] を参照. 持つ成分の 2 成分が存在していることがわかった。2 成分 はしばしば視線方向にオーバーラップしており、オーバー ラップしている部分にダスト連続波で検出されたダスト 参考文献 フィラメントが存在する。これは、ダストフィラメントが [1] Nakamura, F., Miura, T., Shimajiri, Y., et al.: 2012, ApJ, 746, 25. 異なる速度を持つ 2 つの雲の衝突によって形成された可能 性があることが示唆される。 さらに、12CO データを詳細に解析したところ、パーセク スケールのシェル構造がいくつか見つかった。シェルの中 心にはL1641-N星団形成領域やV 380 Ori星団形成領域が位 置する。これらの事実より、検出されたシェル構造は星団 形成領域の星形成活動によって誘発されたと予想された。 これらの観測事実から、この領域で過去に起こった力学 過程として、以下のようなシナリオが推測された。この領 域では、過去に少なくとも 1–10 pc スケールの分子雲の衝突 が起こり、そのような衝突からダストフィラメントが形成 010 I Scientific Highlights
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