NT-proBNP

2008.●.●
NT-proBNP
臨床検査事業商品企画部門
マーケティング部 総合プロモーションチーム
●●病院
内容
 心不全とNT-proBNPの概要
 NT-proBNP基礎データ
 NT-proBNP臨床的有用性
 心不全の診断、病態把握
 New or potential clinical indication
ナトリウム利尿ペプチドの分泌刺激と作用
心不全の病態に対して心保護作用としての働きをもつナトリウム利尿ペプチドが分泌
心筋伸展刺激
心臓への負荷軽減
Natriuretic Peptide Receptor type A/B (NPRA/B)
ANP
BNP
血管拡張
交感神経抑制
利尿作用
Neutral endopeptidases (NEP)
Natriuretic Peptide Receptor type C (NPR-C)
心筋傷害
分解、代謝
ナトリウム利尿ペプチドの臨床応用
ナトリウム利尿ペプチドは心不全の診断・治療へ臨床応用されている
1950s
O.H.Gauerにより、右心房への拡張刺激による利尿作用
Naイオン排泄作用の発見
1982
心房性Na利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide:ANP) 発見
1988
脳性Na利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP) 発見
1990 ANP 臨床診断薬への応用
1995 ANP 急性心不全治療薬への応用
1996 BNP 臨床診断薬への応用
2007 NT-proBNP 臨床診断薬への応用
心不全におけるNT-proBNP産生機序
循環血液量の増加や心室壁へのストレスなどが原因でproBNPが産生
Pre-proBNP1-134
26-aa signal
sequence
心筋ストレスマーカー
proBNP1-108
心筋細胞
Furin
循環血中
 心負荷
N-terminal
proBNP1-76
BNP77-108
active
Inactive
MW: 3,470
MW: 8,460
BNP/NT-proBNP共に、心負荷において上昇するproBNPを反映したマーカーである
構造
NT-proBNP / BNP
proBNPよりNT-proBNPとBNPが1:1の割合で生成、血中に放出される。NT-proBNPは生理活性はなく、蛋白
分解酵素による分解や受容体への結合、代謝・分解を受けず、血中では極めて安定である。
90
P
L
G
S
P
G
S
A
10
S
70
T
80
L
R
A
*「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意
義」 2004年19巻6号 BIO Clinica より引用
P
76
R
S
P
K
M
V
Q
G
F
S
C
S
S
P
G
K
G
100
V
L
R
Cleavage
S
A
70
S
Y
血中半減期:約120分
L
R
A
P
H —COOH
D
M
R
I
S
S
R
H2N— S
P
K
M
V
Q
G
S
S
C
F
76
T
108
active MW: 3,470
K
10
R
BNP
MW: 8,460
1
G
S
R
Inactive
L
L
C
C
G
NT-proBNP
P
S
S
C
proBNP
Y
H2N— H
I
R
1
H2N— H
K
R
D
M
S
C
G
C
C
K
L
V
血中半減期:約20分
G
L
R
R
H —COOH
NT-proBNP / BNP比較
BNPとNT-proBNPの物質的な違いは以下の通りで、その性質は異なる。
項目
BNP
NT-proBNP
形状
BNP分子(77-108)
N端フラグメント (1-76)
分子量
約3,500
約8,500
ホルモン活性
あり
なし
血中半減期
20分
120分
代謝過程
NEP(蛋白分解酵素)
BNP受容体
腎クリアランス
腎クリアランス
NT-proBNPはBNPに比べ検体の安定性が高い。BNP/NT-proBNP共に腎機能の影響を受けるが、
NT-proBNPはBNPに比べその影響を受けやすいと考えられている。
→心血管イベントと腎機能は密接な関係があり、「心腎連関」として近年注目を浴びている
NT-proBNP健常者血中濃度
健常者におけるNT-proBNPの血中濃度には性差、年齢差が認められる。
女性は男性より、高齢者は若年者より高値。
NT-proBNP年齢別基準範囲
年齢
35.1±12.5
男性
女性
55pg/ml(n=67)
40-59
77pg/ml(n=84)
121pg/ml(n=188)
60-88
131pg/ml(n=75)
165pg/ml(n=127)
※SRLの基準値は、心不全除外のカットオフ値125pg/mlを掲載
参考カットオフ値:125pg/mL
健常者(n=2264)および心不全患者(n=721)を用いた際の測定値分布を示す。
度数
心不全の除外診断値:125pg/mL(陰性的中率:97%)
1000
900
800
700
600
健常者(n=2264)
心不全患者(n=721)
500
400
300
200
100
0
感度
特異度
PPV
NPV
125pg/mL
0
100
200
300
NT-proBNP(pg/ml)
400
88.0%
92.0%
80.6%
96.7%
500
600
BNPとの比較
 相関性( vs CLIA法)
 血清-EDTA血漿 相関性
BNPとの相関性
以下にMIO2(CLIA法)とNT-proBNP(ECLIA法)の相関を示す。
BNPとの相関においては、分子量並びに代謝プロセスの違いなどによる測定値の乖離が
散見されるが、統計的にも極めて高い相関性が確認された。
ロシュ社提供データ
(1)測定値で表示
(2)測定値を対数変換して表示
7,000
5
n = 100
6,000
r = 0.741
4
5,000
Log NT-proBNP (pg/mL)
NT-proBNP (pg/mL)
(pg/mL)
NT-proBNP
n = 100
r = 0.900
p <0.0001
Log NT-proBNP (pg/mL)
y = 6.05x + 253.8
4,000
3,000
2,000
3
2
1
1,000
-
0
-
200
400
600
BNPBNP
(pg/mL)
(pg/mL)
800
1,000
0
1
2
LogBNP
(pg/mL)
Log BNP
(pg/mL)
3
4
NT-proBNP
血清-EDTA血漿検体
pg/mL
相関
y=0.98x+2.58
r=0.996
n=67
pg/mL
血清検体測定が可能
以下にBNPとの比較を示す。実際に日常診療において、血清NT-proBNPの測定は血清検体での
使用が可能なため、通常の一般採血検体を用いることにより、専用採血管が不要となり患者
に対する身体的・経済的負担の軽減に寄与することができる。
検体種別
採血量・採取回数*
*心不全診断ガイドライン項目実
施時
検体の安定性
NT-proBNP
BNP
血清・血漿共に使用可
血清 ○
血漿 ○
血漿のみ可
血清 ×
血漿 ○
血清採血管(生化学検査及びNTproBNP測定用)の1本
(必要
検体量20μL)で運用可
血清採血管(生化学検査用)及び
EDTA血漿採血管(BNP測定用)
の2本必要
採血後、室温24時間及び2~8℃
で72時間まで安定
凍結保存(-20℃以下)で12ヶ月安
定
採血後直ちに測定若しくは凍結
保存必要
BNP、NT-proBNP測定値と心不全の診断
基準範囲
BNP
心疾患の疑いなし
心疾患の疑い
心不全の疑い
測定値(pg/mL)
18.4
NT-proBNP
測定値(pg/mL)
40
100
心不全の疑いなし
心疾患の疑い
心疾患の疑いなし
心負荷あり
55
125
心不全の疑い
300
監修 京都大学循環器内科准教授 松森 昭
NT-proBNP保険適用の内容
2007年6月1日付で「NT-proBNP測定用試薬エクルーシスproBNP」が保険適用されました。
保険適用の内容および算定における留意事項は以下のとおりです。
<保険適用の内容>
• 測定項目
: ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)精密測定
• 区分
: E3(新規保険項目)
• 主な対象
: 心不全の診断または病態把握のために実施
• 主な測定目的
: 血清または血漿中のNT-proBNPの測定
• 保険点数
: 140点
• 測定方法
: 電気化学発光免疫測定法
• 製品名
: NT-proBNP測定用 エクルーシス proBNP
算定における留意事項
ア ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)精密測定及びヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NTproBNP)精密測定は、心不全の診断又は病態把握のために実施した場合に月1回に限り算定する。
イ 1週間以内にヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)精密測定、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメン
ト(NT-proBNP)精密測定と本区分「22」のヒト心房利尿ペプチド(hANP)精密測定を併せて実施した場合は主たる
もののみ算定する。
ウ 本検査を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に本検査の実施日(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド
(hANP)精密測定を併せて実施した場合は、併せて当該検査の実施日を記載する。
NT-proBNP臨床的有用性
心不全の診断、病態把握
NT-proBNP測定値分布
NT-proBNPの健常者、NYHA分類別心不全患者、透析患者における測定値分布は
以下のとおりで、重度心不全患者、透析患者では10,000pg/mL以上の高値となること
が確認された。(国内検討データ)
NT-proBNP
pg/mL
100000
0
100000
10000
10,000
1000
125
100
10
1
健常者
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
(n=850)
(82) (88) (34) (14)
透析前 透析後
(306)
(306)
心不全の重症度把握 - NYHA心機能分類
BNP、NT-proBNP共に、NYHA分類における重症度をよく反映した。
NT-proBNPはBNPに比べ、5~10倍高い値を示した。
BNP
NT-proBNP
*清野ら、「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica より
心不全の重症度把握 - NYHA心機能分類
BNPと比較し心不全の重症度に伴いIndexがより大きくなり、明確な判断が期待できる。
*清野ら、「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica 一部改変
NYHA分類別-カットオフ値に対するIndex比較*
180
*Index値=各群平均値(pg/mL)/カットオフ値(pg/mL)
160
140
BNP
NT-proBNP
Cut off Index
120
100
80
60
40
20
0
NYHA-I
NYHA-IIs
NYHA-IIm
NYHA-III
NYHA-IV
左室収縮機能障害とNT-proBNP
<0.001
心不全患者645例についてLVEFとNT-
<0.001
proBNP測定値の関係をみたところ、LVEF低
<0.001
下に伴いNT-proBNPが高値となり、収縮機能
<0.001
<0.001
NT-proBNP
pg/mL
0.036
障害の程度を良く反映していることが確認され
<0.001
<0.001
<0.001
<0.001
た。
10000
5000
1000
500
125
100
50
EF: 40以上
EF: 30-40
EF: 20-30
EF: 10-20
EF: 10未満
10
LVEF(%)
N
Median
<10
18
4,534
10-20
159
1,883
20-30
182
1,090
30-40
209
526
40<
77
180
※有意差検定: Mann-Whitney 検定
ロシュ社提供データ
軽度収縮不全における診断
診断特性曲線(ROC曲線)
曲線下面積(AUC)
LVEF<40%を検出時
BNP:0.770, NT-proBNP:0.754
●
●NT-proBNP
とほぼ同等であった。
LVEF<50%検出時
BNP:0.794、NT-proBNP:0.820 (左図)
NT-proBNPの方がより軽度の心機能障害
(拡張機能障害を含む)から血中濃度の上
昇を示す傾向が認められた。
心不全患者(n=105)
健常者(n=67)
*清野ら「慢性心不全症例におけるN末端proBNP測定の意義」 2004年19巻6号 BIO Clinica より
左室拡張機能障害とNT-proBNP
収縮機能が正常(EF>50%)で拡張機能に障害のある患者68例のNT-proBNP測定値分布を
確認したところ、心エコーにより重症心不全パターン(拘束型)において高値となり、拡張機能障害
の程度を良く反映していることが確認された。
2307pg/mL
308pg/mL
52pg/mL
152pg/mL
E/A<1
E/A1-2
E/A>2
DcT>220ms
DcT>150-220ms
DcT<150
(Eur Heart J. 2005 (26) 2277-2284より引用)
非収縮不全における診断
心不全の疑いがある患者153人のNT-proBNPとBNP測定値で、駆出率(EF)が50%以下の場合を
収縮不全として、収縮不全と非収縮不全と確定された患者に分けて表した。非収縮不全患者の場
合はBNPは偽陰性が20%であったのに対し、NT-poBNPは偽陰性が10%となり、非収縮不全におけ
るNT-proBNPの有用性が示唆された。
NT-proBNP
非収縮不全
BNP
収縮不全
収縮不全
非収縮不全
非収縮不全
収縮不全
(J. Card. Fail. 2005 (11) S9-S14より引用)
慢性心不全におけるNT-proBNPの適用
除外診断(ルールアウト)のカットオフ値:125 pg/mL
Chronic heart failure: A single cut-off for diagnosis
カットオフ値を125pg/mLとした場合
陰性的中率(NPV):96.7%
陽性的中率(PPV):80.6%
721例の慢性心不全患者と2264例の健常者のROC解析から125 pg/mLを
ルールアウトのカットオフ値としたとき、感度88%、特異度92%の結果が得られた。
(M. Al-Barjas, et al. Eur J Heart Fail Suppl 2004; 51)より引用
急性心不全におけるNT-proBNPの適用
除外診断(ルールアウト)のカットオフ値:300 pg/mL
Acute heart failure: Stratified cut-offs for optimum diagnosis
カットオフ値を300pg/mLとした場合
陰性的中率(NPV):98%
陽性的中率(PPV):77%
720例の急性心不全患者を含む、呼吸不全を訴えている患者1256例を対象とした検
討から、急性心不全のルールアウトのカットオフ値を300 pg/mLとしたとき、98%の確率で
急性心不全を除外診断することが可能。
(Januzzi, J. L., et al. Eur J Heart Fail Suppl 2006 27(3)P330-7より引用
NT-proBNP/BNP測定値経時変化①
心不全患者のNT-proBNP、BNPを経時的に測定し得た症例について測定値変動を示す。
NT-proBNPはBNPと同様に、心不全の治療効果、増悪期の状態を反映していることが確認された。
治療経過変動①:実測値
4,500
治療経過変動①:変動率
350
エパデールS600 3P/day
エパデール S600 3P/day
4,000
300
BNP
NT-proBNP
死亡
250
3,000
死亡
200
2,500
%
BNP/NT-proBNP (pg/mL)
3,500
2,000
150
1,500
100
1,000
50
500
BNP (%)
NT-proBNP (%)
-
0
50
100
150
200
250
300
350
Days
エパデール:EPA製剤
400
0
0
50
100
150
200
Days
高脂血症、閉塞性動脈硬化症
250
300
350
400
( ロシュ社提供資料)
NT-proBNP/BNP測定値経時変化②
心不全患者のNT-proBNP、BNPを経時的に測定し得た症例について測定値変動を示す。
NT-proBNPはBNPと同様に、心不全の治療効果、増悪期の状態を反映していることが確認された。
治療経過変動②:実測値
12,000
治療経過変動②:変動率
350
ミリステープ 1S/day,ラシックス20mg 2T→3T/day
BNP
NT-proBNP
250
8,000
BNP (%)
NT-proBNP (%)
200
6,000
%
BNP/NT-proBNP (pg/mL)
ミリステープ 1S/day,ラシックス20mg 2T→3T/day
300
10,000
150
4,000
100
2,000
50
0
100
200
Days
300
400
0
ミリステープ:貼付剤ニトログリセリン
0
100
200
Days
ラシックス:利尿降圧剤
300
400
( ロシュ社提供資料)
カルシウムセンシタイザー投与による血行動態
カルシウムセンシタイザー静脈内投与後の血行動態の改善とNT-proBNPおよびBNPの測定値変動
の関係を検討した結果、BNPは投与開始後10分の時点ですでに投与前に比べて測定値が低下し
ていたが、NT-proBNPは投与開始後6時間まで低下しなかった。
この結果とNT-proBNPの半減期がBNPより長いことから、BNPは心不全の病態の短時間における病
態変化を表す指標( early marker)であり、NT-proBNPはより長時間の変化を表す指標(late maeker)であ
る可能性が示唆された。
しかし、本邦における保険診療では、NT-proBNPとBNPの測定が1ヶ月に1回に制限されている状況で
は、late markerであるNT-proBNPの方がearly markerであるBNPより、心不全病態の把握に適しているかもし
れない。
(藤田保健衛生大学 石井潤一教授;NT-proBNP測定の有用性,第56回日本医学検査学会)
欧州心臓病学会(ESC)、米国心臓学会/協会(ACC/AHA)
心不全の診断と治療ガイドライン2005
(Guidelines on the diagnosis and treatment of acute heart failure)
欧州心臓病学会ESC:心不全の診断と治療ガイドライン
(Guidelines on the diagnosis and treatment of Acute Heart Failure)
血漿BNPはERにおいて呼吸困難が認められた患者のうっ血性心不全
の除外診断に用いられる。デシジョン・レベルはNT-proBNPが
300pg/mL、BNPでは100pg/mLが推奨判断値となる
急性心不全において、BNP及びNT-proBNPの上昇は、重要な予後予測
情報となりうる
(Guidelines on the diagnosis and treatment of Chronic Heart Failure)
血漿中ナトリウム利尿ペプチド若しくはその前駆体、特にBNP及びNTproBNP 濃度は、心不全の診断に有用である
BNP及びNT-proBNPは治療効果を評価する上で、重要な予知マーカー
となりうる
ESC;2005年心不全の診断と治療ガイドラインより和訳引用
米国心臓学会/協会:心不全の診断と治療ガイドライン
NT-proBNPがAHAガイドラインの心不全診断のClass I に入りました。
A. 心不全の診断でのバイオマーカー使用
Class I
:BNP或いはNT-proBNPテストは、緊急医療の場で心不全であることが疑われる兆
候・
症状を示す患者に対して、心不全診断の否定或いは確認するために
使用できる。(エビデンスレベルA)
B. 心不全患者のリスク予測(分類)でのバイオマーカー使用
Class IIa
:更なるリスク分類(予測)が必要な場合、臨床評価に加えてBNP/NT-proBNPテス
ト
は有用な情報を提供できる(エビデンスレベルA)
C. 心不全患者スクリーニングでのバイオマーカー使用
Class Iib :BNP或いはNT-proBNPテストは心筋梗塞を経験した患者さんの中で左室収縮不全
になっている患者さんを見出すに役立つ。(エビデンスレベルB)
Circulation 2007;116;e99-e109;originary published online Jul 14,2007より和訳引用
心不全診断における正診率比較
BNPとNT-proBNPの慢性心不全診断の各スタディーにおける正診率比較を示す。
NT-proBNPの正診率はBNPと同等以上の結果が得られており、優位性が示唆されている。
Chronic heart faillure:comparison of the diagnostic accuracy between BNP and NT-proBNP assays
NT-proBNP
AUC
感度
%
特異度
%
BNP
AUC
感度
%
特異度
%
Seino et al. (14)
ECLIA,Roche
0.82
85
73
IRMA、Sionogi
0.79
72
73
Hobbs et al.(21)
ECLIA,Roche
0.73
100
46
IRMA、Sionogi
0.70
57
67
Mikkelsen et al.(34)
ECLIA,Roche
0.98
100
85
IRMA、Sionogi
0.98
100
80
Pfister et al.(15)
ECLIA,Roche
0.72
94
37
IRMA、Sionogi
0.72
94
40
Clerico et al.(7)
ECLIA,Roche
0.95
90
85
IRMA、Sionogi
0.90
81
88
Mueller et al.(16)
ECLIA,Roche
0.93
87
87
ADVIA,Bayer
0.80
81
72
Bhalla et al.(22)
ECLIA,Roche
0.67
53
78
ADVIA,Bayer
0.60
69
49
Zaphiriou et al.(20)
ECLIA,Roche
0.85
98
35
TRIAGE Biosite
0.84
79
72
Vadenrheyden et al.(17)
ECLIA,Roche
0.85
TRIAGE Biosite
0.80
Costello-Boerrtger et al.(17) ECLIA,Roche
0.78
74
74
TRIAGE Biosite
0.72
69
69
Fonseca et al.(24)
ECLIA,Roche
0.99
96
99
IRMA、Sionogi
0.98
92
94
Mueller et al.(23)
ECLIA,Roche
0.76
90
32
MEIA、Abbott
0.74
90
29
Reference
NT-proBNP
BNP
(Clinical chem 53:5 813-822,2007より改編引用)
NT-proBNP臨床的有用性
New or potential clinical indications
New or potential clinical indications
心血管イベント発症のリスクファクターとしての有用性
- 高血圧
-Olsen et al. J.Hypertens 2004;22:1597-1604
-Bhalla et al. Am J Hypertens 2005;18:73S-81S
- 糖尿病
-Tarnow et al. Diabetologia 2006;49:2256-2262
-Gaede et al. Diabetologia 2005;48:156-163
-Kragelund et al. New Engl J Med 2005;352:666-675
-Omland et al. J Am Coll Cardiol 2007;50:205-214
-Blankenberg et al. Circulation 2006;114:201-208
- 狭心症
- 冠動脈疾患再発
- スクリーニング
-McKie et al. Hypertension 2006; 47:874-880
-Lisa et al. J Am Coll Cardiol 2006; 47:345-353
手術適応症例における心疾患併発予測因子としての有用性
- Yeh et al. Brit J Surgery 2005;92:1041-1045
- Harm et al Am J Cardiol 2006; 98:111-115
高血圧患者における心疾患イベント予測因子
高血圧患者945例を対象として、調査開始時のNT-proBNP測定値と心血管イベント(心疾患死、MI、
脳卒中)発生率の関係を5年間調査した結果、NT-proBNP高値(≧170pg/mL)の場合イベント発生率の
上昇が認められ、予後予測因子として優れた結果が得られた。
2.5%
心血管イベントfree
6%
11%
n = 945
18%
NT-proBNP
心血管疾患**
n
<170pg/mL
-
378
<170pg/mL
+
94
≧170pg/mL
-
316
≧170pg/mL
+
157
**心血管疾患: 心不全, 狭心症,
心筋梗塞、脳血管障害の既往
J of Hypertension 2006; 24:1531-39
糖尿病患者における予後予測因子
198例の糖尿病患者を対象として、調査開始時のNT-proBNP測定値及び腎疾患の有無と死亡率の関
係を10年間調査した結果、NT-proBNP高値(>110pg/mL)の場合有意な死亡率の上昇が認められ、予後
予測因子として優れた結果が得られた。
0.5
p<0.0001
腎疾患 &
NT-proBNP>110 pg/ml
死亡率
0.4
0.3
0.2
腎疾患 &
NT-proBNP<110 pg/ml
0.1
腎疾患なし
0
0
1
2
3
4
5
6
Follow-up (years)
7
8
9
10
Diabetologia 2005; 48:149-155
狭心症患者における予後予測因子
狭心症患者1034例を対象として、調査開始時のNT-proBNP測定値と死亡率の関係を12年間調査
した結果、NT-proBNP高値(>456pg/mL)の場合死亡率の上昇が認められ、予後予測因子として優
れた結果が得られた。
Survivors (n = 737)
Median NT-proBNP
120 pg/ml (49-324)
Non-survivors (n = 285)
p
388 pg/ml (149-897)
<0.0001
5 - 63 pg/ml
64 – 169 pg/ml
170 - 455 pg/ml
456 - 13889 pg/ml
n = 1034
New Engl J Med 2005; 352:666-675
冠動脈疾患後の心血管イベント予測因子
冠動脈疾患既往患者3199例を対象として、4.5年間心血管イベント発症の有無を調査
し、調査開始時の各危険因子と心血管イベント発症の関係をみた結果、NT-proBNPは
リスク層別化因子として優れた結果が得られた。
因子
HR
95%CI
年齢
1.03
1.01-1.05
0.0005
性別
2.05
1.54-2.73
<0.0001
LDL-C/HDL-C比
1.38
1.02-1.87
0.04
血糖
1.63
1.20-2.22
0.002
喫煙
1.65
1.27-2.14
0.0002
たん白尿
1.55
1.22-1.98
0.0004
sIL-1RA
1.30
1.05-1.61
0.02
Fibrinogen
1.31
1.05-1.62
0.02
sICAM-1
1.46
1.19-1.80
0.0003
NT-proBNP
1.72
1.39-2.12
<0.0001
Circulation 2006;114:201-208
p
検診におけるNT-proBNP、BNP有用性比較
45歳以上を対象とした住民検診1869例について、血中NT-proBNP、BNPが無症候性心不全患者を
検出できるか検討。左室駆出率≦40%及び≦50%の無症候性心不全患者検出においてNTproBNPはBNPと比較し優れた結果が得られた。
NT-proBNP
BNP
LVEF
(%)
n
AUC
Cutoff
感度
(%)
特異
度(%)
AUC
Cutoff
感度
(%)
特異
度(%)
P
≦40
37
0.94
228
86.5
86.0
0.89
66
81.1
81.1
0.0087
≦50
115
0.78
129
73.9
73.8
0.72
40
68.7
68.7
<0.00
01
≦40
26
0.92
452
88.5
88.4
0.87
97
76.9
76.9
0.036
≦50
70
0.85
233
75.7
75.7
0.79
73
71.4
71.7
0.0011
全症例
(n=1869)
≧65歳
(n=747)
J Am Coll Cardiol 2006; 47:345-353
New or potential clinical indications
心血管イベント発症のリスクファクターとしての有用性
- 高血圧
-Olsen et al. J.Hypertens 2004;22:1597-1604
-Bhalla et al. Am J Hypertens 2005;18:73S-81S
- 糖尿病
-Tarnow et al. Diabetologia 2006;49:2256-2262
-Gaede et al. Diabetologia 2005;48:156-163
-Kragelund et al. New Engl J Med 2005;352:666-675
-Omland et al. J Am Coll Cardiol 2007;50:205-214
-Blankenberg et al. Circulation 2006;114:201-208
- 狭心症
- 冠動脈疾患再発
- スクリーニング
-McKie et al. Hypertension 2006; 47:874-880
-Lisa et al. J Am Coll Cardiol 2006; 47:345-353
手術適応症例における心疾患併発予測因子としての有用性
- Yeh et al. Brit J Surgery 2005;92:1041-1045
- Harm et al Am J Cardiol 2006; 98:111-115
手術適応症例の術前心疾患イベント予測因子
ROC of NT-proBNP to predict postoperative cardiac events
麻酔を必要とする心疾患以外の手術適
応症例170例(59±13際)に対し、術後の心
疾患併発の有無を確認したところ13例に
重篤な心疾患が認められた。
AUC = 0.91
Median NT-proBNP levels in patients:
- with events = 939 pg/ml (IQ 634-2469)
- w/o events = 101 pg/ml (IQ 42 – 304)
(p<0.0001)
n = 170
Postop. events n = 13
(cardiac death n = 4; non-fatal MI n = 9)
NT-proBNPのカットオフ値:533pg/mL
術後心疾患併発を予測するための
感度85%、特異度91%
Harm et al Am J Cardiol 2006; 98:111-115
手術適応症例の術前心疾患イベント予測因子
麻酔を必要とする心疾患以外の手術適応症例190例(57.2±17.8際)に対し、術後の心疾患併
発の有無を確認したところ15例に重篤な心疾患の併発が認められ、15例の術前NT-proBNP測定
値は全て450pg/mL以上であった。
術後心疾患併発を予測するための感度100%、特異度83%
Postoperative events n = 15
- fatal MI: n = 1
- non-fatal MI: n = 3
- CHF: n = 11
Brit J Surgery 2005;92:1041-1045
NT-proBNP
新たな臨床的有用性
心血管イベント予防、リスク管理
高血圧、糖尿病、高脂血症などの危険因子より動脈硬化、左室肥大になり、左室拡張、心筋
梗塞などの障害が発生し、最終的に心不全、心血管イベントへと繋がっていくことから、これら
ハイリスク群におけるNT-proBNP測定は心血管イベントリスク管理という観点からその有用性が
期待される。
NT-proBNP
NT-proBNP
NT-proBNP
NT-proBNP
Panel approach
necessary
高血圧
糖尿病
動脈硬化
左室拡張
左室肥大
心筋梗塞
高脂血症
• 疾患リスク
• 身体状況
• 治療薬選択
• 治療効果判定
心血管
イベント
非専門領域における検査測定の重要性