「自然」のスクリプト分析 総合政策学部2年:桝田晶子 環境情報学部3年:菅沼久美子 研究の目的 訳語としての自然 「自然」は本来「じねん(おのずから)」という状態を示すコト バだったが、近代以降「nature」の訳語としても使用されるよ うになった 日本人の自然観 近代以降、日本人が漠然とした形で抱いてきた自然観を、 スクリプト分析によって描き出す 「自然」について ■データソース 朝日新聞:1984年から 毎日新聞:1987年から 産経新聞:1992年から 読売新聞:1986年から 投書欄より「自然」を含む 記事を取得 データ総件数495件 ■参考文献 ・渡辺正雄:「近代における日本人の自然観-西洋との比較におい て」(「日本人の自然観」伊東俊太郎編 河出書房新社 1995年) より ・寺田寅彦:「日本人の自然観」(「寺田寅彦随筆集 第五巻」岩波 文庫 1948年 )より ・「広辞苑 第五版」(岩波書店 2002年) ・「ジーニアス大英和辞典」(大修館書店 2001年) 先行研究 ■渡辺正雄「近代における日本人の自然観―西洋との比較において」 西洋では人間が自然と対峙するものであるのに対し、日本では自然の 中にある人間であるという意識がある(本文より引用) ■寺田寅彦「日本人の自然観」 穏やかで変化に富む日本の自然は、住民に無限の恩恵を授けると同時 また不可抗な威力をもって彼らを支配する、その結果として彼らはこの自 然に服従することによってその恩恵を充分に享楽することを学んで来た。 日本人は、人と自然は合わせて一つの有機体だという意識を持っている (本文より引用) ■「広辞苑 第五版」 「ジーニアス英和大辞典」より 「nature」:太陽・空・海・動植物など人口物を除く全てを含む外的世界 「じねん」:おのずからそうであること。ひとりでに。 「自然は・が」のスクリプト(495件中45件) 守られる 3 自然は守られるべき ある 3 豊かな自然がある 残る 3 まだ自然が残っている 広がる 2 自然が広がる道を歩く 壊される 2 どのくらいの自然が壊されるのだろう 汚れる 2 自然が汚れてしまう •自動詞や、受動態の他動詞が多いことから、「自然」が何か に 働きかける主体となることが少ない •存在を示す用言が多い →「自然」は強い主張をせずにおのずとそこに存在している 「自然を」のスクリプト(495件中81件) 守る 7 自然を守りましょう 残す 4 自然を残すべきです 壊す 4 自然を壊してはならない 破壊する 3 自然を破壊すべきではない 親しむ 5 山に登り自然に親しむ 感じる 5 都会でありながら自然を感じる 満喫する 3 親子連れが自然を満喫していた 愛する 2 自然を愛し、責任をもつべきだ •環境保護系の用言(守る、残すなど)は、支配・管理するというニュアンスはな く、単に残すという意味で使われている場合が多い •親しむ系の用言(親しむ、感じるなど)は、ただ自然に触れる意味で使用され ており、花を採取するなど自然の形を変形させる意味では使用されていない →「自然」を動作対象とするとき、あくまでも自然は自律的存在だと いう前提がある 「自然に」のスクリプト(495件中151件) じねん nature 恵まれる 5 できる 6 対する 7 受け入れる 3 親しむ 4 流れる 3 目を向ける 3 覚える 3 戻す 2 出る 3 囲まれる 2 優しい 2 <nature> ・動作対象としての「自然」→ただ眺めるといった動作が多い ・場所としての「自然」→身近にあり、人を取り囲む <じねん> ・穏やかな変化を示す用言が多い ・肯定的な意味でしか使われない その他のスクリプトと補足 <「自然」を含む連語> ・自然環境(12) 例)青山墓地は自然環境に恵まれている ・自然農法(3) 例)酪農家が作る堆肥は自然農法に欠かせない ・自然体(3) 例)法令に照らして自然体で対応する →人工と自然の区別が曖昧、小規模な自然 <「自然」を修飾するコトバ> ・豊かな自然(6) ・美しい自然(4) ・大切な自然(4) ・素晴らしい自然(2) →肯定的なコトバでしか修飾していない *補足;動作が行われる場所を示す意味での助詞「で」は一件もなかった 「自然」とは・・・・ ・「自然」は自律的存在である ・「自然」=「動植物」という意味で使う場合も多く、 人工と自然(nature)の区別は曖昧 ・人に脅威をもたらすような恐ろしい存在ではなく、 身近で親しみのある肯定的存在 →「自然(nature)」はおのずから存在 するから「自然」 ありがとうございました
© Copyright 2024 ExpyDoc