禁煙指導外来への誘導 - ようこそ禁煙医師

第17回 禁煙医師歯科医師連盟総会
O3-4
人間ドックから
禁煙指導外来への誘導
特定医療法人敬愛会
ちばなクリニック・中頭病院
清水隆裕1) 大宜見辰雄1) 伊志嶺朝彦2)
新垣紀子2) 照屋 諭2) 下地 勉2) 兼城邦昭1)
1) 健康管理センター 2) 呼吸器内科
はじめに

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
人間ドックは「予防医療」の場であり、受診者
を「健康」へ誘導する義務を負っている。
喫煙は健康に最悪の影響を与える因子の一
つである。すなわち、禁煙指導は最も重要な
保健指導の一つである。
したがって、人間ドックは禁煙指導を重視しな
ければならない。しかし、年に一度の指導だ
けで禁煙を維持させることは難しい。
当院の概略
 病床数
326床(中頭病院)
 平均外来受診者 1,000~1,200人/日
 常勤医師 約120人
 ドック受診者数
約13,000人/年
喫煙率(18年度)
全体 20.7%
男性 33.3%
女性 7.1%
当院の禁煙外来概略
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ニコチンパッチの処方は以前より行われてい
た。(自由診療)
平成18年度より健康保険適応をうけた「禁煙
外来」が発足した。
禁煙指導外来は毎週 月・土 午後(予約制)だ
が、別枠の呼吸器内科・生活習慣病外来など
でも禁煙指導を行っている。
門前薬局が「禁煙サポート薬局」で、ニコチン
ガムの購入が可能である。
沖縄の禁煙事情(不利な点)
ほとんどの人が通勤に電車を使わない。
→日常生活で肩身が狭い思いをしない。
 大企業がほとんどない。→社則がゆるい。
 冬は暖かく、夏も日陰は涼しい。
→野外喫煙があまり苦にならない。
 飲酒機会が多い。「模合」など、欠席しにくい
集会がある。
 “沖縄県民は健康である”という意識が強い。

沖縄の禁煙事情(有利な点)

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
学校(小中高)は全面禁煙化が進んでいる。
観光立県のため「きれいな空気」「吸い殻のな
い道路」など環境美化は死活問題である。
那覇市は路上喫煙禁止条例を採択した。
沖縄県庁舎は財政難で喫煙室が作れず全面
禁煙となる予定(2008年度~)。
タクシー全面禁煙化予定(2008年4月~)
“健康寿命”は男女とも日本最下位と報道さ
れた。(2007年7月12日 沖縄タイムス朝刊)
ニコチネルTTS 年間処方(金額)
順位
施設
区市町村
1
A
豊田市
2
敬愛会
沖縄市
3
B
山形市
4
C
文京区
5
D
和泉市
(2007年3月末現在、ノバルティスファーマ株式会社調べ)
問診票の工夫

タバコについて相談がありますか?
ある→「タバコについての相談」
ない→「禁煙指導」

タバコをやめたいですか?
1ヶ月以内・半年以内・いつかやめたい
「やめたくない」という選択肢はな
い!
本当はタバコを止めたい?
誤解はあるが実行期
数を減らしている
ある意味準備期
 軽い銘柄に変えた
 喫煙に条件がある(家の外でしか吸わないetc)
 禁煙に条件がある(1箱○○円になったら…etc)
 禁煙治療・喫煙関連法規・麻薬や違法薬物に
関する知識が豊富(喫煙を肯定するための理
論武装をしている)

素直ではないが関心期
喫煙だけが特別か?
病気・薬
飲酒
運動
摂食
喫煙だけが特別か?
病気・薬
糖尿病ではありません
飲酒
お酒は飲みません
運動
毎日運動しています
摂食
甘いものは食べません
喫煙だけが特別か?
病気・薬
糖尿病ではありません
(予防のために薬を飲ま
されてるけど)
飲酒
お酒は飲みません
(ワインは毎日1本…
だって体にいいんで
しょ?)
運動
摂食
毎日運動しています
甘いものは食べません
(腹筋20回とストレッチを (ヨーグルトは毎日3個
…お煎餅は甘くないよ
5分くらいかな)
ね)
素直に答えられない質問例

「あなたはいつか自分がHIVに感染する
(またはAIDSになる)と思いますか?」
素直に答えられる質問例

「あなたはいつか自分がHIVに感染する
(またはAIDSになる)と思いますか?」
↓
「HIV(またはAIDS)の予防接種があったら
受けますか?」
質問の本質は同じです!
ですです(DES DES)質問
病気・薬
Disease / Drug
 運動
Exercise
 性・性病
Sex / STD

飲酒
Drinking
 摂食
Eating
 喫煙
Smoking

・問診票法では自己抑制がかかりやすく誤解が
修正できないため、調査不十分になりやすい。
・「わかっちゃいるけど・・・」 「ハイハイ・・・」
喫煙は生活習慣病

基本的には他の生活習慣病と同じ。
頭がうごく
心がうごく
Knowing
Feeling
?
知識だけでは
行動は変わらない
Doing
体がうごく
“小さな感動”
が
心を動かす
“価値”の発見・確認
 “本人にとって”の・・・
喫煙の価値 < 禁煙の価値
→ 禁煙したい!
“禁煙”の価値の強調
A.海底30mに宝箱が沈んでいます。
頑張って取ってきてください。
↓
頑張っても取れない(Uncomfortable!)
↓
あの宝箱はカラに違いない!!(合理化)
“禁煙”の価値の強調
A.海底30mに宝箱が沈んでいます。
頑張って取ってきてください。
↓
頑張っても取れない(Uncomfortable!)
↓
あの宝箱はカラに違いない!!(合理化)
(目標の“価値”を強調されても聞き入れない)
認知的不協和
“価値”の発見・確認

“本人にとって”の価値
喫煙の価値 < 禁煙の価値 → 禁煙した
い!
 「外来」を受診する価値
“三つのE”が揃っている
→ 成功しやすい!
(Equipment, Education, Experience)
“禁煙外来受診”の価値
B.海底30mに宝箱が沈んでいます。まずは
潜水機材(Equipment)を手に入れて、機
自動車の免許を取るのに
材の使い方を教わって(Education)、浅い
教習所に行きますよね?
ところで経験を積んで(Experience)から取
Equipment :教材・教習車
りに行きましょう。
Education :授業・教習
☆失敗の原因が自分じゃない
Experience :実車練習 など
→ 目標の“価値”は下がらない
→ 再チャレンジ!
禁煙外来初診人数
70
待ち時間↑
継続率↓
60
50
40
30
20
10
0
10月
11月
12月
1月
2月
3月
健康管理センターでの対策
禁煙方法は自己選択
(1) 禁煙外来受診(他院も可)
(2) 禁煙サポート薬局利用
(3) 「禁煙マラソン」参加
(4) 「リセット禁煙」
(5) その他認知行動療法
医師・保健師による禁煙指導
一つがだめでも
次がある!
禁煙外来初診人数
70
待ち時間↑
継続率↓
60
50
40
30
20
10
0
10月
11月
12月
1月
2月
3月
まとめ

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
敬愛会では禁煙外来へ紹介を行っていたが、
許容数を超えてしまったため、現時点では複
数の選択肢のうちの一つとしている。
受診者の現状や気持ちは“言葉通り”“文字
通り”とは限らないが、他の生活習慣病にも
同様にみられる。
「禁煙の価値」と「(各種)禁煙治療の価値」を
区別すると受診者を誘導しやすい(…かもし
れない。)
今後の課題

禁煙希望者のための受皿拡大
医師教育プログラム
すべての禁煙治療に保健適応を!

根本的な対策・地域ニーズへの対応
小中学校での防煙教育
小児の受動喫煙・能動喫煙対策
社会・企業での卒煙支援

禁煙外来誘導はドック以外でも応用可能?
小児科外来での親の禁煙指導
保険適応のない歯科での禁煙指導
夫にタバコをやめてもらいたい奥様への提案
最後に
下手な鉄砲、かず撃ちゃあたる。
上手い鉄砲、撃たなきゃ絶対あたらない!
 『メスに薬草、そして言葉』
・・・言葉は無限に使えます。
 Key wordsは3つのE(教育・経験・道具)
・・・だが環境(Environment)も大
切!
 大切なのは受診者へのAgape、
究極の秘訣はNever Give-up。
