鹿児島大学/愛媛大学 宇宙電波天文学特論 第4回 シンクロトロン放射 半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻 Mellinger ローレンツ力Lorentz Force ▶ 電子が磁場から受ける力 f=q E + q/c v×B ▶ ベクトルの特徴 ■ 空間座標変換について全て同じように変わる 空間座標変換=平行移動、回転 ずれてみても、回ってみても変わらない 空間反転=ベクトルによって2種類→擬ベクトル ■ 成分で分けて考えて、後で合成しても良い Mellinger 一様磁場中の電子の運動(1) ▶ 紙面に垂直な磁場(向こうからこちら) ■ ■ ■ 電子は上から下へ ローレンツ力は左へ f= q/c v×B 電子では、q<0に注意 ▶ |v|は一定 f⊥vなので仕事はされない →運動エネルギー一定 v →f は一定 ■ ▶ 円運動 B f= q/c v×B Mellinger 一様磁場中の電子の運動(2) ▶ 磁場と平行に運動 v×B =0 → f= 0 ▶ 等速直線運動 v B Mellinger 一様磁場中の電子の運動(3) ▶ 円運動+等速直線運動=螺旋運動 ■ 巨視的に見ると電子は磁力線に沿う 磁力線と電離ガスの凍り付き frozen in ■ 常に加速度運動している →電磁波を放射する Mellinger 円運動 ▶ 運動方程式 q=-e (素電荷) evB/c = mv2/r ■ ■ ■ ■ 解くと、r=mcv/(eB) T= 2p r/vで一周だからr= vT/(2p)= v/(2pn) n =1/T =v/(2p r) = eB/(2p mc) したがって、 n =eB/(2p mc) rg=v/(2png) とおく Mellinger 螺旋運動 ▶ ピッチ角:q ■ B Bと垂直面への投影速度vcycle=v sinq q ▶ 周波数と半径、 ng =eB sinq /(2p mc) rg =v sinq /(2png) Mellinger 1個の電子の電磁波放射 ▶ 加速度運動に伴う電磁波の放射 ▶ 双極子近似(双極子放射) dP/dW=d 2/(4pc3) sin2q ■ ■ ここで、d=q r, (静電モーメント) d を軸とする軸対称 Mellinger d どんな電磁波が来るか? ▶ 電子が1回転するたびに繰り返す ■ tg= 1/ng =2p mc/(eB sinq ) ▶ 円運動だから、加速度は半径方向 ■ 双極子放射は前後に ▶ でも、相対論的電子だと… ■ v/c≪1ではないので補正が必要 Mellinger d 特殊相対論のはじまり ▶ マックスウェル方程式 Maxwell equations div D=4pr, div B=0 rot E=-1/c ∂B/∂t, rot H=1/c ∂D/∂t+4p/c j ▶ 真空中で平面波解がある ■ 速度cで伝わる(この時点では光速とは無関係) いったい、どこから見た速度なのか? ▶ 種々の実験結果 ■ 測定者の運動によらず常にcで伝わる!? Mellinger ローレンツ変換 ▶ 長さと時間が伸縮すればcは一定に見える x' =g (x-vt), y'=y, z'=z t' =g (t-vx/c2) ■ ここで、 g =(1-(v/c)2)1/2 ローレンツ因子 Mellinger ▶ 伸縮:物質の性質ではない! Einsteinの着想 相対論的古典力学 ▶ ニュートンの運動方程式はどう変わる? ■ m→ g mと置き換えてやればよい ▶ なので、電子の回転運動も以下の式になる ▶ パルスの周期 t = 1/ns =2p g mc/(eB sinq ) Mellinger 相対論的速度合成(1) ▶ ローレンツ変換:逆変換 x =g (x'+bct'), y=y', z=z', ct =g (ct' +bx') ■ ここでb =vx/c, g =1/√1-b 2 ▶ 系Kに対して速度vで移動する系K' ▶ 系K'から見て等速度u'で移動する点P ▶ Pの運動を成分に分けると x' =u//' t', y'= u⊥' t', z'=0 z軸をuと垂直にとる。t=0でPは原点にいる。 ■ ローレンツ変換式に代入 Mellinger 相対論的速度合成(2) x =g (u//'+bc)t', y'=u'⊥t', z'=z, ct =g (c+bu//' )t' ▶ 上式からKでのPの運動uを記述すると ■ u//=x/t, u⊥=y/t となるはずだから u //=(u//'+bc)/(c+bu//' ), u⊥=u'⊥/(g (c+bu//' )) ▶ bとg を代入すると ■ u //=(u//'+v)/(1+ vu//' /c2), u⊥=(u' ⊥ √1-(v/c)2)/(1+vu//' )/c2) これが、相対論的速度合成則 Mellinger 相対論的速度合成(3) ▶ 速度u'=u=c の場合 ■ ■ u //=c cosq, u⊥=c sinq u //'=c cosq', u⊥'=c sinq' ▶ となるので、 cosq =(cosq'+b)/(1+b cosq') ▶ 真横はどっちに見えるか ■ ■ cosq'=p/2の場合、cosq =b したがって、sinq =√1-cos2q =1/g Mellinger 相対論的ビーミング(1) ▶ 相対論的電子の場合の補正は… ■ 真横のはずが、進行方向1/g に“圧縮”される Mellinger 非相対論的放射 相対論的放射 相対論的ビーミング(2) ▶ 頂角1/g の円錐内に強く放射する ■ ■ 電子が巡ってくる周波数でパルスが出る 円錐が特定方向を掃く時間Dt ▶ Dtを求める ■ 電子がDf=2/g回転する時間 (2/g)/(2pns) ■ パルスの到達時間差:距離短縮 rsDf ~v (2/g)/(2pns)= v/(pgns) rs=v/(2pns) Df Mellinger 相対論的ビーミング(3) Dt =(2/g)/(2pns)-(rsDf /c)~1/(2pnsg 3) ここで、1-v/c~ 1/(2g 2)を用いた(g ≫1) ▶ ここまでに求めた式を代入すると Dt ~(mc)/(eB sinq g 2) Mellinger 電子1個が出すパルス ▶ 時間T=1/nsごとに、幅Dtのパルスが来る Mellinger 時間変化とスペクトル(1) ▶ 任意の関数を三角波の重ね合わせで ▶ 時間変化をフーリエ変換するとスペクトル ^ fn= ∫ f(t) exp(2ipnt) dt , フーリエ変換 Mellinger 時間変化とスペクトル(2) ▶ 2つの三角波の重ね合わせ ■ ■ A1 sinf1t+ A2 sin f2t うなりを生じる時間変動 2つの輝線スペクトル Mellinger 時間t 周波数n フーリエ変換 ▶ 任意の関数を三角波の重ね合わせで ■ ■ そこそこ合っていればよい:近似 “自然な”関数でOKならいい f^n= ∫ f(t) exp(2ipnt) dt , フーリエ変換 ^ f(t)=∫ fn exp(-2ipnt) dn, 逆フーリエ変換 Mellinger フーリエ変換の例(1) ▶ 矩形波のスペクトル f^n= ∫ exp(2ipnt) dt= exp(2ipnt) /(2ipn)]-Dt/2+Dt/2 =(exp(ipnDt)-exp(-ipnDt))/(2ipn) =sin(pnDt)/(pn) Dt Mellinger Dn=1/Dt 時間t 0 周波数n フーリエ変換の例(2) ▶ 一定区間で定数のスペクトル f(t)= ∫ exp(-2ipnt) dn = exp(2ipnt)/(2ip t)]-Dn/2+Dn/2 =(exp(ipDnt)-exp(-ipDnt))/(2ip t) =sin(pDnt)/(p t) Dn=1/Dt Dt Mellinger 時間t 0 周波数n フーリエ変換の例(3) ▶ ガウス分布Gaussianのスペクトル f^n= ∫ exp(2ipnt) exp(-(t/s)2) dt = exp(-(pns)2) ∫ exp(-(t/s-ipns)2) dt = exp(-(pns)2) p 1/2s Mellinger Ds Dn=1/Ds 時間t 0 周波数n フーリエ変換前後の性質 ^ ▶ f(t)がゆっくり変わる関数だとfnは鋭い ■ ■ 幅が狭くなり、ピークが高くなる 遠くまで波打っていると急変がある ▶ f(t)が鋭い関数だとfn^はゆっくり変わる ■ ■ ^ 幅が広くなり、ピークが低くなる 不連続があると波打つ Mellinger 目で見るフーリエ変換 時間t 周波数n Mellinger 電子1個のスペクトル(1) ▶ 1/Dt 程度の周波数で減衰するスペクトル n c=3/(4p) (1/Dt ) =(3eg 2B sinq)/(4p mc) シンクロトロン臨界周波数 ▶ フーリエ変換を実行すると ∞ ∫n/nK Pn =(√3e3B sinq ) /(mc2)(n /nc) ■ ■ ここでK5/3(x)は変形ベッセル関数 peak位置は0.29n c c 5/3(x)dx Mellinger 電子1個のスペクトル(2) Pn =(√3e3B sinq ) /(mc2)(n ∞ ∫n/nK /nc) 5/3(x)dx ここでK5/3(x)は変形ベッセル関数 この式にはg が陽に含まれていない(nc中にあり) c ■ ■ Mellinger 高エネルギー電子の分布 ▶ エネルギー分布←→速度分布 ▶ ベキ乗分布(経験的に、近似的に…) N(E)dE = CE-p dE ■ p:ベキ指数 相対論的エネルギーはE=g mc2 なので N(g)dg = Cg -p dg Mellinger シンクロトロンのスペクトル(1) ▶ n/nc依存部分をF(n/nc)とまとめると Pn =(√3e3B sinq ) /(mc2) F(n/nc) ▶ したがって、 Pn,全電子=C ∫Pn g -p dg = C(B sinq ) ∫ F(n/nc) g -p dg ▶ x=n/ncと置くと、nc∝g 2だったので、 Pn,全電子∝n -(p-1)/2 ∫ F(x) x(p-3)/2 dx ▶ 積分範囲が0~∞としてよければ Pn,全電子∝n -(p-1)/2 Mellinger シンクロトロンのスペクトル(2) Pn,全電子∝n -(p-1)/2 ▶ シンクロトロン放射はベキ乗となる Pn,全電子∝n -bと書けば、 b = (p-1)/2 ■ スペクトルから電子のエネルギー分布がわかる ▶ 強さは、電子密度neとB sinqに比例する ■ 別の式と組み合わせればneとB sinqがわかる Mellinger 磁場が揃っていれば ▶ 電子の運動は揃っている ■ ■ 放射の偏波面が揃う 偏波した放射となる ▶ 偏波面⊥磁場 ■ 磁場の方向がわかる Mellinger
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