ミクロ経済学 (11) 生産者余剰,競争の望ましさ 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013年6月24日 復習 消費者余剰は取引による消費者の利益 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 価格の下落によって消費者余剰は増える 元から買っている消費者は価格下落分だけ利益を得 る 新たな買い手は価格下落分よりも小さい消費者余剰 が発生する 2013/6/24 ミクロ経済学11 2 企業の儲けと生産 アルバイトをするとアルバイト代が貰えて嬉しい. しかし,疲れたり他の活動ができなくなる 企業は財を販売することによって収入を得る しかし,財を生産するには費用がかかる ここで考えている費用は既に学んだ機会費用の概念で 捉えたもの. 生産のために諦めたものの価値が機会費用 収入が費用を上回れば生産を行う 真央のアイスショーの費用が2000円とする. 収入が4000円出演する.1000円だと出演しない 2013/6/24 ミクロ経済学11 3 生産者余剰 収入から費用を差し引いた残りが企業の利益 この残り即ち余剰が生産者余剰 真央はアイスショーを一回するかしないかを考えている アイスショーの価格が収入になる アイスショーの価格が7000円ならば真央の余剰は 7000-2000=5000 (円) 5000円が真央の生産者余剰だ 真央の他に美姫,鈴木明子,高橋大輔,織田信成 各々の費用は違うときに販売の決定や余剰は? 2013/6/24 ミクロ経済学11 4 アイスショーの売り手と費用 売り手 2013/6/24 費用(円) 真央 2000 美姫 3000 鈴木明子 5000 高橋大輔 7000 織田信成 10000 ミクロ経済学11 5 アイスショーの費用のグラフ 費用(円) 10000 8000 明子の大輔の費用 美姫の 費用 織田の費用 費用 真央の 費用 5000 3000 2000 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 6 アイスショーのチケットは何枚売れる 各人の費用を小さい額から並べた 価格>費用→ 販売を増やす 価格<費用 → 販売を控える 価格が高ければ沢山販売できる 実際に売れる枚数 → 価格=費用 価格が7000円だったら何枚売れる? 売り手の費用から供給表を作る 2013/6/24 ミクロ経済学11 7 価格帯 9000から7000 費用 売り手の数 売り手 7000 4 真央,美姫,明子,大輔 7000からら5000 5000 3 真央,美姫,明子 5000から3000 3000 2 真央,美姫 3000から2000 2000 1 真央 0 いない 2000未満 2013/6/24 ミクロ経済学11 8 価格と販売量 費用(円) 10000 価格から販売量が分かる 供給曲線と同じ機能 3枚まで売るだろう 8000 7000 5000 価格は7000円 4枚目までは売らない 3000 2000 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 9 費用と供給量 費用(円) 10000 8000 7000 5000 明子の 費用曲線の枠線が供給曲線 美姫の 費用 真央,美姫,明子が供給 費用 真央の 費用 価格は7000円 3000 2000 供給量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 10 供給曲線(価格から数量へ) 価格 P 供給曲線 数量 Q 2013/6/24 ミクロ経済学11 11 供給曲線=費用曲線 最後の一個の費用が収入(価格)よりも下回る或いは 等しいときに販売する 費用を小さいほうから並べて価格と費用が一致して いる販売個数が市場での供給 価格=費用→販売量 これは供給曲線と同じ 価格に対して販売しようとする数量 この費用曲線は各数量から1単位増えたときに増加 する費用.すなわち限界費用と同じ 2013/6/24 ミクロ経済学11 12 生産者余剰 企業の収入から生産のための費用を差し引いた額が生 産者余剰 生産者余剰=収入ー費用 生産者余剰を英語で Producer Surplus と言う 生産者余剰を記号 PS で省略して表す 真央の生産者余剰を正確には個別生産者余剰という 市場全体の生産者余剰を総生産者余剰と呼ぶ 生産者余剰は個別生産者余剰と総生産者余剰の両方 の意味でしばしば使われる. どちらなのか自分で判断 2013/6/24 ミクロ経済学11 13 費用と生産者余剰 費用(円) 生産者余剰 10000 真央のPS=7000-2000=5000 美姫のPS=7000-3000=4000 明子のPS=7000-5000=2000 8000 7000 5000 価格7000円 供給曲線 3000 2000 供給量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 14 生産者余剰の計算 価格が7000円の時のPSの計算 真央の個別生産者余剰=7000-2000=5000 美姫の個別生産者余剰=7000-3000=4000 明子の個別生産者余剰=7000-5000=2000 総生産者余剰=5000+4000+2000=11000 個別を全て足し合わせると総生産者余剰になる グラフにおいて生産者余剰は供給曲線と価格線及 び縦軸の間の領域で表現できる 2013/6/24 ミクロ経済学11 15 供給曲線と収入/2 価格 供給曲線 7000 四角の面積=収入 数量 0 2013/6/24 3 ミクロ経済学11 16 供給曲線と費用 価格 供給曲線 7000 台形の面積=費用 数量 0 2013/6/24 3 ミクロ経済学11 17 生産者余剰=収入ー費用 収入 = 2013/6/24 - 費用 生産者余剰 ミクロ経済学11 18 供給曲線と生産者余剰 価格 供給曲線 生産者余剰 7000 数量 0 2013/6/24 3 ミクロ経済学11 19 価格の上昇の効果 時給が上がると嬉しい.生産者余剰でどう表現? アイスショーの価格が9000円に上昇した 真央のPS=9000-2000=7000 真央の生産者余剰は5000円から2000円分増加した 美姫のPS=9000-3000=6000 .PSは2000円分増加 明子のPS=9000-5000=4000.PSは2000円分増加 既存の売り手は価格上昇分だけ余剰が増加 新たに高橋大輔が販売する 高橋大輔のPS=9000-8000=1000 2013/6/24 ミクロ経済学11 20 価格上昇と生産者余剰 費用(円) 真央の生産者余剰の増加 美姫の生産者余剰の増加 明子の生産者余剰の増加 大輔の生産者余剰 新しい価格9000円 10000 9000 8000 7000 5000 元の価格7000円 供給曲線 3000 2000 新しい供給量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 21 価格上昇後の生産者余剰 費用(円) 真央のPS 美姫のPS 問い:総生産者余剰を求めよ 明子のPS 大輔のPS 10000 9000 8000 新しい価格9000円 5000 供給曲線 3000 2000 新しい供給量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 22 価格の上昇は既存と新規の生産者 への効果をもたらす 既に売っている人には均等に価格上昇分だけの利 益が増える 価格上昇によって新たな生産者が現れる 新たに発生した生産者余剰は価格上昇分よりは小 さい 2013/6/24 ミクロ経済学11 23 価格上昇,供給曲線,生産者余剰 価格 新価格 P’ 既存の売り手の生 新たな売り手の生産者 産者余剰の増加 余剰の増加 D 元価格P C A 供給曲線 E B 元の生産者余剰 数量 0 2013/6/24 Q ミクロ経済学11 Q’ 24 消費者余剰と生産者余剰 価格 供給曲線 消費者余剰 P 生産者余剰 需要曲線 数量 Q 2013/6/24 ミクロ経済学11 25 経済厚生 経済学では自由な競争は効率をもたらすと考える 価格制限は余剰や不足をもたらした.そのような事 態がないだけでなくある種の優れた点を持つ 経済厚生あるいは総余剰とは取引をしている全ての 主体の望ましさを表す 買い手と売り手がいた 総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和 政府がある場合はそれに政府税収をさらに加える 需要曲線と供給曲線の交わる点である完全競 争市場の均衡では総余剰が最大化される 2013/6/24 ミクロ経済学11 26 総余剰あるいは経済厚生 価格 総余剰 供給曲線 P 需要曲線 数量 Q 2013/6/24 ミクロ経済学11 27 市場経済の効率性 経済全体を考える総余剰はお金のやり取りは問題で はない 消費者余剰=買い手の価値-支払った金額 生産者余剰=受け取った金額-売り手の費用 総余剰=消費者余剰+生産者余剰 =買い手の価値-支払った金額+受け取った金額- 売り手の費用 =買い手の価値-売り手の費用 経済全体では費用を上回る価値が創出されたかどう かが重要である 2013/6/24 ミクロ経済学11 28 効率と公平 総余剰が最大化された状態を効率的という 反対に非効率であれば経済主体の間で取引をすること によって余剰を増やす余地がある 言い換えればこれ以上取引をしても利益がもう生まれ ない状態が効率的な状態である 様々な価格は所得分配を変える 他に公平性(衡平性)を考える事もある 効率性はパイをどれだけ大きくするか 公平性はそのパイをどのように平等に分けられるか 公平性を評価する方が難しい 2013/6/24 ミクロ経済学11 29 均衡価格と取引量 費用(円) 10000 イチロー,ダル,遼が需要 真央,美姫,明子が供給 需要曲線 供給曲線 8000 均衡価格5000円 5000 均衡点 3000 2000 均衡取引量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 30 イチローCS=5000 ダルCS=3000 遼CS=0 真央PS=3000 美姫PS=2000 明子PS=0 均衡点の総余剰 費用(円) 10000 8000 5000 総余剰 =5000+3000+3000+2000 =13000 3000 2000 取引量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 31 均衡取引よりも過小 費用(円) 価格8000円,一枚 イチローCS=2000 真央PS=6000 ダル,遼は購入しない .美姫,明子は供給し ないとする 総余剰=8000 競争均衡の総余剰 よりも小さい 10000 8000 5000 3000 2000 取引量 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 32 均衡取引よりも過大 費用(円) マイナス 10000 8000 5000 4000 3000 2000 価格4000円,4枚 イチローCS=6000 ダルCS=4000 遼CS=1000 北島CS=0 真央PS=2000 美姫PS=1000 明子PS=-1000 大輔PS=-4000 総余剰=9000 枚数 1 2013/6/24 2 3 4 5 ミクロ経済学11 競争均衡の総余剰 33 よりも小さい 競争均衡の総余剰は最大化される 競争均衡の総余剰=13000 過小な生産の時の総余剰=8000 過大な生産の時の総余剰=9000 他の取引量でも競争均衡の総余剰を上回ることは できない 競争均衡は総余剰を最大化させるという 意味で望ましい性質を持っている 2013/6/24 ミクロ経済学11 34 総余剰あるいは経済厚生 価格 取引量を減らした時の総余剰 需要曲線 供給曲線 P1 価値が費用を上回る から生産を増やした 方が良い 価値 費用 数量 Q1 2013/6/24 ミクロ経済学11 35 総余剰あるいは経済厚生 価格 需要曲線 総余剰 マイナス部分 P2 P 供給曲線 価値 費用 Q2 2013/6/24 価値が費用を下 回るから生産 を減らした 方が良い ミクロ経済学11 数量 36 なぜ均衡点で総余剰は最大か? 需要曲線と供給曲線の交点では価値(支払意欲)と費 用が等しい これは総余剰を最大化させている.なぜか? 1. 均衡取引量よりも過小な生産では,価値が費用を上 回る.増産は総余剰を増やすことを意味 2. 均衡取引量よりも過大な生産では,価値が費用を下 回る.減産は総余剰を増やすことを意味 均衡点では生産量を増やしても減らしても総余剰は 増えない.よって総余剰は最大になっている 2013/6/24 ミクロ経済学11 37 余剰と経済厚生のまとめ 消費者余剰は取引による消費者の利益 生産者余剰は取引による生産者の利益 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間 価格の上昇によって生産者余剰は増える 元から売っている生産者は価格上昇分だけ利益を得 る 新たな売り手は価格上昇分よりも小さい生産者余剰 が発生する 総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和 均衡点では総余剰が最大化される 2013/6/24 ミクロ経済学11 38
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