スライド 1

証券アナリストの役割、義務
2008.11.4
(社)日本証券アナリスト協会 理事
土屋俊彦 CMA
1
目次
はじめに:(社)日本証券アナリスト協会の紹介
1.証券アナリストとは
2.証券アナリストの職業倫理
(参考資料:日本証券アナリスト協会パンフレット)
2
はじめに:
(社)日本証券アナリスト協会の紹介
「証券分析技術の向上、普及および証券分析業務に従事する者の育成を
図ることにより、証券価格の円滑な形成と証券投資の健全化に資し、もって
日本経済の発展に寄与することを目的とする」公益法人(社団法人)
(沿革)
1962年 証券、銀行、保険、信託など各界の協力の下、任意
団体(東京証券アナリスト協会)として発足
1963年 機関誌『証券アナリストジャーナル®』創刊
1969年 日本証券アナリスト協会に改称
1973年 社団法人に改組
1977年 証券アナリスト通信教育試験制度開始
(1次レベル・2次レベル)
1981年 第2次試験実施・検定会員(CMA®)誕生
2001年 国際公認投資アナリスト®(CIIA®)試験開始
2004年 基礎講座開始、検定会員候補者制度開始
2012年 50周年
3
(主要事業)
◆ 教育事業
証券アナリスト教育・試験制度(後述)、国際公認投資アナリスト®(CIIA®
)試験制度(世界31団体)、検定会員補(CCMA®)制度、証券アナリスト
基礎講座、数量分析入門教室
◆ 継続学習事業
大小セミナー・講演会(年間100回)、『証券アナリストジャーナル®』(毎月
発行部数25,000)、ホームページ
◆ 調査研究活動および情報提供
証券アナリストの倫理、グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)、企
業会計、企業ディスクロージャー(優良企業表彰)、会社説明会
(アナリスト向け・一般個人向け)
◆ 国際連携
ASAF、ACIIA、ICIA、CFA Institute
4
証券アナリスト教育・試験制度
(CMA®教育プログラム)
CMA=Chartered Member of SAAJ
・証券分析業務に必要な専門知識と分析力を身につ
けるため、通信教育講座による体系的な学習手
段を提供。
・講座修了後の試験により、証券アナリストとしての
専門水準を認定。
・講座・試験とも1次・2次の二つのレベルで構成。
・第2次試験に合格し、かつ3年以上の証券分析実
務を経験すれば、検定会員(CMA®)として入会で
きる。
5
累計受験者数
282,840名(08年10月15日)
総会員数
22,890名(08年10月15日)
うち 検定会員(CMA) 22,279(うちCIIA* 2,095)
* 国際公認投資アナリスト
一般会員(個人)
75
法人・賛助会員
536
(社)日本証券アナリスト協会検定会員数の推移
人
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
08/10
07
06
05
04
03
02
01
00
99
98
97
96
95
94
93
92
91
90
89
88
87
86
85
84
83
82
81/12
0
(出所)(社)日本証券アナリスト協会
6
業態別会員・2次試験合格者にみる
証券アナリストの多様性
検定会員の所属別構成比(%)
2次試験合格者の所属別構成比
(2007年3月末現在)
計
会
他
公
認
そ
の
士
問
資
投
究
研
査
調
顧
所
険
保
害
委
信
投
会
券
証
他
そ
の
問
資
投
究
研
調
査
顧
所
険
害
損
保
命
生
保
険
行
銀
行
託
銀
託
信
委
信
投
証
券
会
社
社
0.0
険
3.2
2.4
2.1
3.1 1.6 1.5 0.7
損
5.0
2.2
保
6.1
命
6.9
行
10.0
9.6
6.4
生
8.6
12.7
銀
15.0
行
16.5
28.0
銀
20.8
20.0
34.2
託
25.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
託
30.0
信
33.5
35.0
(2006年試験)
7
CMAと出身学部(国内4年制大学)
経営・商
3,161名
16.3%
経済・政経
7,688名
39.5%
法
3,762名
19.4%
その他文系など
1,930名
9.9%
理工系
2,900名
14.9%
19,441名
100.0%
計
8
CMAと専攻(国内大学修士以上)
経営・商
162
13.3%
経済・政経
140
11.5%
法
21
1.7%
その他文系
93
7.7%
799
65.8%
1,215
100.0%
理工系
計
9
1.1 証券アナリストとは
• 「証券分析業務」に携わる専門的職業人
=証券投資の分野において、高度の専門知識と分析技術を応用し、各種情報の
分析と投資価値の評価を行い、投資助言や投資管理サービスを提供するプロ
フェッショナル
• 「証券分析業務」
=証券投資に関する諸情報の分析と投資価値の評価に基づく①投資情
報の提供、②投資推奨、③投資管理
①投資情報の提供:投資意思決定の参考情報の提供
・・・リサーチ・アナリスト(セルサイド・アナリストとバイサイド・アナリスト)
②投資推奨:証券投資や資産配分・選択の助言
・・・投資顧問、リテール業務
③投資管理:ポートフォリオの管理・運用
・・・ファンド・マネジャー
•
投資の自己責任原則
10
1.2 証券アナリストのマクロ的役割
• 適正な証券価格の形成
⇒資金の効率的配分(資源の最適配分)
⇒経済発展に寄与
• 株式持ち合いの後退(投資態度の変化)
ファンダメンタル分析の重要性の認識
• 「貯蓄から投資へ」の流れ(間接金融から直接金融へ)
• 「フリー・フェア・グローバル」
(1996年11月 橋本首相「日本版金融ビッグバン」)
• 米国におけるアナリスト批判(2001年)
証券会社の調査部門と投資銀行部門の利益相反問題
⇒セルサイドアナリストのリポートの中立性・客観性
• サブプライムショック(米国モデルの転換?)
重要になる証券アナリストの役割
11
1.3 リスクの種類
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
信用リスク
価格変動リスク
金利リスク
為替リスク
流動性リスク
カウンターパーティ・リスク
オペレーショナル・リスク
経営(者)リスク
システム・リスク
イベント・リスク
12
1.4 証券アナリストの種類、所属業種
証券アナリスト
欧米では、「金融アナリスト」
「投資アナリスト」
・リサーチ・アナリスト(企業・産業調査)
・クレジット・アナリスト(企業の信用度)
・クオンツ・アナリスト(計量分析)
・ストラテジスト(投資戦略)
・ファンド・マネジャー(運用)
・エコノミスト(経済分析)
・インベストメント・バンカー(企業金融)
・コンサルタント(会計士)
・財務責任者
(参考)ファイナンシャルプランナー(FP)、
テクニカルアナリストとの違い
所属する業種(08年4月末現在)
( )内は法人・賛助会員に所属
する検定会員の数
・証券会社
(4,524)
・銀行・信金等 (3,651)
・信託銀行
(1,563)
・生命保険
(1,295)
・損害保険
(414)
・投信委託
(1,933)
・投資顧問
(708)
・調査研究所
(503)
<上記以外の検定会員7,412>
・コンサルティング会社
・格付機関
・会計士事務所
・年金基金
・事業会社(IR部門、財務部門)
13
1.5 投資意思決定過程における
証券アナリストの機能
(Ⅰ)投資データの分析・評価
マクロ経済分析
産業分析
企業分析
金融市場分析
(Ⅱ)投資方針の決定
(Ⅲ)ポートフォリオの構築・管理
経済・市場情勢のレビュー
投資家ごとのリスク・
リターンの決定
投資目的に沿ったポート
フォリオのタイプの選定
証券市場分析
ポートフォリオの構成
資産別・産業別・地域別配分
投資家ごとのポートフォ
リオの選択・構築、分析・
改訂
売買の執行
運用成果の測定・評価
証券分析
リサーチ・アナリスト
ポートフォリオ・マネジャー
(出所)証券アナリスト通信教育講座スタディガイド(2008年度版)より講師作成
14
1.6 セルサイドとバイサイド
(リサーチ・アナリスト)
• セルサイドアナリスト
証券会社等に所属して、投資家向けにレポート
を作成
• バイサイドアナリスト
運用会社等に所属して、自社の運用部門に情報を提供
• 独立系アナリスト
金融機関に所属しないで、調査レポートを金融機関等に
提供
• 売り手と買い手で市場(取引)が成立
15
1.7 証券分析のツール
•
•
•
•
•
•
経済学(マクロ・ミクロ)
現代ポートフォリオ理論
簿記・会計学・財務諸表分析
コーポレート・ファイナンス
数学・統計学
商品(株式・債券・不動産等)知識、市場知識
• 英語
• 法律(会社法・民法・金融商品取引法・税法、海外の法律)
16
1.8 証券アナリスト教育力リキュラム
の体系
経済(注1)
マクロ経済学
ミクロ経済学
金融経済分析と予測
財務分析(注2)
会計学
財務諸表分析
証券分析と
ポートフォリオ・
マネジメント
計量分析と統計学
ファンダメンタル分析
個別資産の分析・評価
ポートフォリオ・マネジメント
職業倫理・行為基準
(2次レベル)
(注1) 2次レベルでは「市場と経済の分析」
(注2) 2次レベルでは「コーポレート・ファイナンスと企業分析」
(出所)証券アナリスト通信教育講座スタディガイド(2008年度版)より講師作成
17
1.9 投資理論の歴史
1934
1938
1952
1958
1964
1973
1976
1979
1979
Graham & Dodd
Security Analysis
Williams
配当割引モデル
Markowitz
ポートフォリオ選択理論(平均分散モデル)
Modigiliani & Miller MM理論(コーポレート・ファイナンス
の基礎)
Sharpe
CAPM(Capital Asset Pricing Model)
Black & Scholes, Merton
オプション価格理論
Ross
APT(裁定価格理論)
Kahneman & Tversky 行動ファイナンス
Harrison & Kreps
リスク中立価格法(無裁定条件)
(赤字はノーベル賞受賞者)
18
1.10 総合的視野に立った分析
•
•
•
•
•
•
サブプライムローン問題の原因
実体経済分析の重要性
金融政策の重要性
計量分析の限界
理論と歴史研究
行動ファイナンス、物理経済学
19
2.1 証券アナリストの職業倫理
• 米国におけるアナリスト批判(2001年)・・・前述
証券会社の調査部門と投資銀行部門の利益相反問題
⇒セルサイドアナリストのリポートの中立性・客観性
• 知的専門的職業と信任義務
対等でない当事者間の契約
⇒業務内容の具体的特定は困難
⇒専門家を信頼し任せる
(医師、弁護士、公認会計士、取締役)
⇒忠実義務、注意義務
(自己の利益を図ってはならない)
20
2.2 信任義務
• 「証券アナリスト職業行為基準」(後述)の根幹
• 信任関係に基づき信頼を受けた者が、相手方
に対して真に忠実に、かつ職業的専門家とし
ての十分な注意をもって行動する義務
• 特に忠実義務と注意義務が重要
21
2.3 忠実義務
• 相手方の最善の利益実現のために行動。
• 相手方の利益を犠牲にした、自己や第三者
の利益追求は許されず。
• 顧客に投資推奨等を行う証券の実質的保有
(別名義、空売り、オプションを含む)を原則
禁止
22
2.4 注意義務
• その時々の状況の下で、専門家として尽くすべき注
意、技能、配慮および勤勉さをもって証券分析業務
を遂行。
• 投資管理業務は「プルーデント・インベスター・ルー
ル*」に従う。
*一般的に資産運用業界に受け入れられているポートフォリオ理論に
従って運用。
• リサーチアナリストは「合理的な根拠と適正な表示」
を順守。
23
2.5 「証券アナリスト職業行為基準」
1987年7月、日本証券アナリスト協会制定
法令*よりも広範囲、高度の義務を規定(8章)
*金融商品取引法(旧・証券取引法)など
原則として個人会員を対象
「証券分析業務」
証券投資に関する諸情報の分析と投資価値の評価とに基
づく、①投資情報の提供、②投資推奨、③投資管理
「投資情報」
投資の意思決定において参考に利用される情報
(すべてのコミュニケーション手段、投資価値を変動させる
すべての要因<ミクロ・マクロ> )
24
2.6 総則
• 誠実な職務励行、証券アナリストの社会的信用と地
位の向上の努力
• 証券分析に関する理論と実務の研鑽、専門能力の
維持・向上
• 専門的見地からの適切な注意、公正かつ客観的な
判断
• 関係法令(金融商品取引法、金融商品販売法、民
法、著作権法等)、本協会定款、規則(日本証券業
協会等)、「職業行為基準」の遵守
• 法人会員・賛助会員による指導義務
25
2.7 投資情報の提供等
• 綿密な調査・分析に基づく合理的かつ十分な根拠(記録
の保持)
• 事実と意見の区別
• 重要な事実(内部情報のみならずマクロ情報を含む)の
正確な表示
• 投資成果を保証する表現の禁止(合理的な目標値は可)
金商法38条:断定的判断の提供による勧誘の禁止
39条:損失補てん等の禁止
26
(2.7 続き)
• 適合性の原則(金商法40条)
(顧客の財務状況、投資経験、投資目的、ニーズ等を
配慮した最適の投資)
金商法45条:プロ(特定専門家)とアマ(一般投資家)を区別
• 投資の基本的原則・手法の開示
(運用哲学・政策、運用手法、運用体制・手続き等)
• 投資対象の特徴の開示
• 剽窃・盗用の禁止(著作権法)
引用は可(区別、出所明示、従関係等の条件あり)
27
2.8 不実表示に係る禁止等
(法人会員・賛助会員にも適用)
• 証券分析業務の種類・内容・方法およびその他の重要な事
実の不実表示(虚偽、誇大等の発言、記載)の禁止
• 会員が有する資格の不実表示の禁止
• パフォーマンス(成果)の公正・正確・十分な表示
グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)の必須基準に
準拠すれば可
28
2.9 利益相反の防止および開示等
• 利益相反の開示の義務
日本証券業協会『アナリスト・レポートの取り扱い等に関する規則』
第6条「利益相反についての表示等」:協会員会社がレポート対象
会社の5%超株主、アナリストが株式保有などの場合。
• 証券の実質的保有(他人名義を含む)の原則禁止(客
観的公正性確保の合理的判断⇒事実開示すれば可)
• 会員の自己取引よりも顧客優先の義務(フロントラン
ニングの禁止)
• 顧客との取引の原則禁止
金商法41条の3(有価証券の売買等の禁止)、42条の2(禁止行為)
• 第三者(所属会社以外)からの報酬の開示の義務
工場見学会の旅費・滞在費負担
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2.10 未公開の重要な情報(内部情報)の
利用の禁止等
• 「未公開」(金商法166条)
法定の届出書、報告書等の公衆縦覧
二つ以上の日刊新聞に公開後12時間経過
取引所の適時開示情報システム上で公開
• 「重要な情報」
証券発行者(子会社も含む)に係る情報
金商法の列挙(法定事実、発生事実、決算予想値の変化、
投資判断に著しい影響を及ぼすと認められる情報)
業務執行決定機関の決定前も含む
• 「内部者」
発行会社の関係者(役員、職員、株主等)
伝達を受けた者(第一次受領者(金商法)のほか第二次以降も)
アナリストが所属する会社の役職員全員が第一次受領者になり得る
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(2.10 続き)
• 内部情報の利用禁止
当該会社の有価証券売買等(金商法)
証券分析業務への利用(レポート作成を含む)
• 伝達の禁止
第二次受領者以降も
違反を知り得れば立ち聞き者も利用禁止
• 情報公表の働き掛けの努力
発行者から直接入手した情報が公表可能な状況になっているとき
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2.11 その他の行為基準
• 公平の原則
(同一ではなく、フェアーであること)
• 自己取引による業務遂行阻害の回避
• 証券発行者等からの独立性、客観性
• 顧客情報の守秘
• 会員の称号の権威と信頼性の保持
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2.12 懲戒
・規律委員会および理事会の議決
・懲戒の方法
戒告
権利停止
除名
・弁明の機会
・公示
・委員長による注意
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