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定航船社におけるM&A後の経営
資源の再配置に関する研究
海運ロジスティクス専攻
0755017 秦文良
指導教員:黒川 久幸
目次







研究背景
研究目的
定航船社のM&Aとその現状
経営資源の再配置の手段について
M&A事例から見た経営資源の再配置の
特徴
結論
今後の課題
世界コンテナ荷動き推移
120
100
80
百万TUE
約3000万
TEU
1億
TEU
60
40
20
0
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
東アジア中心航路のコンテナ荷動き
他地域
世界のコンテナ荷動き量が急増
研究背景
荷動きの増加に対応するた
め、船舶の大型化や新規
投入が必要。
コンテナターミナルの整備
には莫大な資金が必要。
経済のグローバル化
に伴い、全世界を対象
とする輸送サービスが
要求されるようになっ
た。
アライアンスを組み、M&Aにより経営規模を拡大する
定航海運における固定資産の
回転率
80%
70%以上
70%
固定資産/総資産
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
定航海運業
輸送用機器
電気機器
したがって、M&A後の船舶の
再配置が重要
A社
B社
M&A
C社
M&Aにより新たに得た船舶を既存の船舶を含めて、
世界の航路に適切に配船する必要がある。
研究目的

本研究では経営資源である船舶の配船に着
目し経営の視点から見たM&Aの狙い、また
その再配置の特徴を明らかにする。
★経営資源の再配置の手段に関する検討
★M&A事例から見た経営資源の再配置の特徴
定航船社のM&Aとその現状
年度
1991年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2002年
2003年
2005年
事例
ジャパンラインと山下新日本汽船の定航部
門が合併し、NLSを設立
日本郵船がNLSを吸収合併
CP ShipsがGastを買収
P&O Container Lines(英国)とRoyal
Nedlloyd(蘭)
Hanjin Shipping(韓国)がSenator Lines(独)を買
CP ShipsがLykes Linesを買収
CP ShipsがContship Containerlinesを買収
NOL(シンガポール)がAPL(米国)を買収
CP ShipsがIvaran Linesを買収
EvergreenがLloyd Triestino(伊)を買収
Hamburg sudがAliancaを買収
CP ShipsがANZDLを買収
CGMがANL(豪州)を買収
A.P.Moller-MaerskがSafmarineを買収
CSAV(チリ)がMontemarを買収
A.P.Moller-MaerskがSealand Service(米国)を
買収し、Maersk SeaLandを設立
CSAVがNorasia Line(スイス)を買収
CP ShipsがItalia di navigazioneを買収
Wanhai LineがTrans Pacific Linesを買収
Hamburg sud(独)がKien Hung(台湾)を買収
A.P.Moller-MaerskがP&O Nedlloydを買収
CMA CGMがDelmasを買収
TUI AGがCP Shipsを買収
金額
(百万ドル)
35
110
825
29
110
6
240
800
40
2800
600
2100
研究対象とする六つのM&A事例
年度
事例
P&O Container Lines(英国)とRoyal Nedlloyd(蘭)
1997年 が合併し、P&O Nedlloydを設立
NOL(シンガポール)がAPL(米国)を買収
A.P.Moller-MaerskがSealand Service(米国)を買
1999年
収し、Maersk SeaLandを設立
A.P.Moller-MaerskがP&O Nedlloydを買収
2005年 CMA CGMがDelmasを買収
TUI AGがCP Shipsを買収
注:表示を簡素化するため、後文に記号で各M&A事例を表す
記号*
P&O
APL
MS
MA
CMA
HA
目次







研究背景
研究目的
定航船社のM&Aとその現状
経営資源の再配置の手段について
M&A事例から見た経営資源の再配置の特
徴
結論
今後の課題
経営資源の再配置の手段について
定航海運における基本な関係式
M: 船腹量
式1
W: 積載能力
M W N
式2
式3
N
f 
T (P )
D
 
f W
N: 隻数
f:
寄港頻度
T(P): 1航海時間
α:
積載率
D:
輸送需要
経営資源の再配置の手段について

経営資源の再配置が経済性とサービスに影響
式1
式2
式3
M W N
M: 船腹量
N
f 
T (P )
N: 隻数
D
 
f W
W: 積載能力
f:
寄港頻度
T(P): 1航海時間
α:
積載率
D:
輸送需要
経営資源の再配置の手段について
経営資源の再配置が経済性とサービスに与える影響
1航路あた
方策の種類 積載能力
船腹量
り寄航数
大型化
経済性の向上策
増加
減少
小型化
サービスの向上策
減少
増加
経済性
サービス
密度 積載率 寄港頻度 所要時間
△
▼
△
▼
▲
△
▼
▼
△
▼
△
▽
▼
△
注:表中の三角形は指標の増減を表し、△は増加、▽は減少を表す。なお、経済性及びサービス向上を白色
で、低下を黒色で表すで表す。
経営資源の再配置の手段について
経済性
サービス
密度
積載率
寄港頻度 所要時間
大型化
△
▼
減少
▼
△
▽
一
増加
▼
△
大型化による密度の経済性の向上及び寄港地数の減少による所要時間の短縮を図る
大型化
△
▼
二
増加
▼
△
船舶の大型化による密度の経済性の向上を図る
大型化
△
▼
増加
△
▼
▲
三
増加
▼
△
大型化による密度の経済性の向上及び寄港地の増加による積載率の向上を図る
増
制約条件 ウィークリーサービスを満たすため、追加で船舶を投入する必要
小型化
▼
△
減少
▼
△
▽
加
四
増加
▼
△
寄港地を限定し、高速・多頻度のサービスを提供する。
小型化
▼
△
五
増加
▼
△
隻数を増やし航路増設によって寄港頻度の向上を図る
制約条件 航路増設が必要
小型化
▼
△
増加
△
▼
▲
六
増加
▼
△
寄港地を増やして貨物を集荷し、これにより積載率の向上を図る
制約条件 寄港頻度の相殺により待ち時間は増減しないが一部の港間で航海時間の延長が必要
注:表中の三角形は指標の増減を表し、△は増加、▽は減少を表す。なお、経済性及びサービス向上を白色で、
低下を黒色で表す。
輸送需要
手段
積載能力
1航路当た
り寄港回数
船腹量
目次
研究背景
 研究目的
 定航船社のM&Aとその現状
 経営資源の再配置の手段について
 M&A事例から見た経営資源の再配置の特徴
・航路別から見た経営資源の再配置の特徴
・類型毎のM&Aの特徴
 結論
 今後の課題

国際輸送ハンドブック
航路別から見た経営資源の再配置
の特徴
データ項目
航路区分
北米
南米
検討項目
隻数(隻)
船腹量(TEU)
平均積載量(TEU)
平均建造年(年)
航路数(本)
一航路当たり寄航回数(回)
寄港地数(個)
隻数(隻)
船腹量(TEU)
平均積載量(TEU)
平均建造年(年)
航路数(本)
一航路当たり寄航回数(回)
寄港地数(個)
ML
M&A前
M&A後
57
245446
4306
8
1993
13
40
0
0
0
0
0
0
0
69
341717
5025
9
1996
10
36
29
96052
3430
2000
4
10
30
・・・
M&A前
M&A後
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
主要航路の再配置の特徴
北米航路
1.9
一
航
路
当
た
り
寄
港
回
数
の
比
0.7
0.8
0.9
1.7
PN
3.01
1.5
1.3
1.1
0.9 1.0
HA
1.34
0.7
0.5
積載能力の比
MS 1.1
CMA
1.2
2.46 1.03 ML
1.39
1.3
1.4
APL
2.63
1.5
主要航路の再配置の特徴
欧州航路
1.9
1.7
1.5
1.3
APL 1.1
1.15
0.7
0.8
0.9
一
航
路
当
た
り
寄
港
回
数
の
比
0.9 1.0
0.7
0.5
MS
ML
1.1
2.01
1.66
CMA
1.44 積載能力の比
HA
1.82
1.2
PN 1.3
1.81
1.4
1.5
航路別の再配置の特徴
平均積載量
40% 60% 80% 100%0% 20%
0% 20%
東南アジア
中東・西アジア
寄港回数
40% 60% 80% 100%
大型化
大型化
アフリカ
大型化
南米
大型化
新設
新設
新設
新設
欧州
大型化
北米
大型化
大型化
新設
小型化
新設
寄港回数減少
新設
増加
減少
不変
目次
研究背景
 研究目的
 定航船社のM&Aとその現状
 経営資源の再配置の手段について
 M&A事例から見た経営資源の再配置の特徴
・航路別から見た経営資源の再配置の特徴
・類型毎のM&Aの特徴
 結論
 今後の課題

使用データの例
クラスター分析
ML
航路区分
北米
南米
検討項目
M&A前
M&A後
隻数(隻)
船腹量(TEU)
平均積載量(TEU)
平均建造年(年)
航路数(本)
1航路当たり寄航回数(回)
寄港地数(個)
隻数(隻)
船腹量(TEU)
平均積載量(TEU)
平均建造年(年)
航路数(本)
1航路当たり寄航回数(回)
寄港地数(個)
57
245446
4306
1993
8
12.5
40
0
0
0
0
0
0
0
69
341717
5025
1996
9
10.3
36
29
96052
3430
2000
4
10.5
30
伸び率
21.05%
39.22%
16.70%
0.15%
12.50%
-17.60%
-10.00%
新設
新設
新設
新設
新設
新設
新設
分割数
11
12
10
9
10
6
6
23
23
23
23
23
23
23
分割数設定
-50%~
伸び率 -100% -99.99% ・・・
分割数
1
2 ・・・
-0.01%~
・・・ -9.99%
・・・
7
0.01%~
0% 9.99% ・・・
8
9 ・・・
・・・
・・・
300%~
∞
新設
22
23
類型毎のM&Aの特徴

クラスター分析
クラスター分析樹形図
B類型
A類型
APL
MS
CMA
HA
C類型
ML
PN
A類型のM&Aの特徴
【A類型】(APLとMS)
既存航路への経営
資源の集中と新規航
路の進出を図ってい
る。
A類型
APL MS
一 一
航路区分
北米
南米
欧州
六 一
アフリカ
新設 三
中東・西アジア 新設 新設
東南アジア
三 五
B類型のM&Aの特徴
【B類型】(CMA、HA、
航路区分
ML)
北米
新しい航路に輸送サー
ビスを展開し、グローバ 南米
ル・輸送サービスを提 欧州
供することに重点を置 アフリカ
いている。
CMA
一
一
三
新設
中東・西アジア 四
東南アジア 撤退
B類型
HA
四
新設
三
三
一
撤退
ML
一
新設
一
四
三
二
C類型のM&Aの特徴
【C類型】(PN)
既存航路における経
済性の強化を図り、
競合他社との競争に
勝ることを目指してい
る。
航路区分
北米
南米
欧州
アフリカ
中東・西アジア
東南アジア
C類型
PN
三
二
一
一
類型毎のM&Aの特徴
A類型
APL MS
一
一
B類型
C類型
航路区分
CMA HA ML PN
北米
一
四
一
三
南米
一 新設 新設 二
欧州
六
一
三
三
一
一
アフリカ
新設 三 新設 三
四
一
中東・西アジア 新設 新設 四
一
三
東南アジア
三
五 撤退 撤退 二
クラスター分析樹形図
B類型
A類型
APL
MS
CMA
HA
C類型
ML
PN
結論

航路別の再配置特徴
平均積載量
寄港回数
航路区分 大型化 小型化 増加 不変 減少
北米
○
○
欧州
○
南米
○
アフリカ
○
中東・西アジア ○
東南アジア
○
○
○
新設
○
○
○
結論
類型毎の再配置の特徴
【A類型】(APLとMS)
既存航路への経営資源の集中と新規航路の進
出を図っている。
【B類型】(CMA、HA、ML)
新しい航路に輸送サービスを展開し、グローバ
ル・輸送サービスを提供することに重点を置いて
いる。
【C類型】(PN)
既存航路における経済性の強化を図り、競合他
社との競争に勝ることを目指している。

今後の課題

M&Aによる経営資源の再配置が船社の
収益性に与える影響を検証する必要が
ある。
ご清聴ありがとうございました
ご清聴ありがとうございました
31
MaerskによるSeaLandの買収
北米、欧州航路の船社グループの船腹量推移
60
万 TE U
GRAND
MaerskSealand
MS
50
GRAND
TNWA
40
TNWA
30
Maersk
20
10
0
1998年
2000年
航路別の再配置の特徴
平均積載量
40% 60% 80% 100%0% 20%
0% 20%
東南アジア
中東・西アジア
寄港回数
40% 60% 80% 100%
大型化
大型化
アフリカ
大型化
南米
大型化
新設
新設
新設
新設
欧州
大型化
北米
大型化
大型化
新設
小型化
新設
寄港回数減少
新設
増加
減少
不変