平成21年度 医療科学B エビデンスと研究デザイン 1 本日の内容 • EBM(Evidence-based Medicine)の概念と 歴史的背景 • 「エビデンス」を何に求めるのか • エビデンスと研究デザイン • The Cochrane Libraryについて • 検索ツールの選び方 2 EBM(Evidence-based Medicine) の概念と歴史的背景 3 Evidence-based Medicine(EBM)とは 日々の診療で出てくる疑問を エビデンスの高い情報を使って解決し – 科学的根拠が明確な臨床研究の結果 • 主に文献情報 質・効果の高い医療を提供すること – 早く治る、死亡率が減る、患者さんの苦痛が少ない、 満足度が高い etc.. 4 EBMの要素 Evidence based medicineの実践は、個人の臨床的専門技能と患者の価値観とをもって、 最良の研究による根拠を統合すること意味する。 By Sackett DL 最良のエビデンス 統 合 臨床経験 患者の価値観 5 EBM • 1990年代に提唱され、北米やヨーロッパで推進さ れてきた – 最初の文献 Guyatt GH. Evidence-based medicine. ACP Journal Club. 1991; 114: A16. • 臨床研究の結果が日常の診療に十分に生かさ れない状況を改善する動き • 日本では1995年頃からEBMという言葉が広がっ てきた 6 EBMの背景 • 医療費の増加 – より効果的な診療を行う必要性 – 診療に役立つ情報収集の必要性 • 文献の検索と取捨選択を効率よく行うことが重要 • 「患者の権利」に対する意識変化 – 知る権利 ― 自分の体、病状、病気、可能な選択肢 – 治療方法を選択する権利 • 情報量の増加と通信技術の進歩 – 情報収集の迅速化 – 情報が増えたためより効率的な収集手段が必要となる – 情報の共有化 • EBMの国際的なプロジェクトが容易となる • コクランコラボレーションは世界中のエビデンスを収集 7 エビデンスを何に求めるか 8 エビデンスはどこにあるのか • 人を対象とした臨床研究の結果 – 通常の診療と同じ条件で検査や治療を行ったり、患者 の日常生活を追跡調査をする – 2つ以上のグループに分けて比較する • 主に学術論文の形で公表される – メタアナリシス、システマティックレビュー – ランダム化比較試験(RCT) – コホート研究 etc. 9 EBMでは • • 人を対象とした臨床研究がエビデンスの ソースとなる 以下の情報は使わない – – – – 病態生理学の理論 基礎実験の結果 動物実験の結果 人を対象とした実験室での研究結果 10 EBMの重要性 • 臨床で必要な情報を選ぶときの判断基準 が明確となった • EBMの手法で情報を得ていればとっくに有 効性が証明できていた治療法 →だれにも気づかれないまま何年も過ぎた • 有効性がないこと・かえって害があることが 証明できていた治療法 →そのことに気づかれず何十年も権威ある専門 家の間で推奨されていた 11 研究デザインとエビデンス 12 EBMに有効な研究デザイン 1.横断研究 観察研究 2.症例対照研究 3.コホート研究 4.比較臨床試験(CCT) 介入研究 5.ランダム化比較試験(RCT) 6.メタアナリシス・システマティックレビュー 二次研究 横断研究 罹患 あり サンプル なし 一時点の観察 14 症例対照研究 リ ス ク フ ァ ク タ ー へ の 暴 露 あり 疾患あり なし あり 研究の方向 疾患なし なし 時間軸 後ろ向き研究 15 コホート研究 罹患 暴露あり サンプル あり なし 研究の方向 あり 暴露なし なし 時間軸 前向き研究 16 4.比較臨床試験(CCT) • 対照群と介入群を比較した研究。 – 対照群:比較の元となる。治療をしない、プラ セボを飲む、従来の方法で処置がされている、 などのグループ – 介入群:対照群に比べて効果がどのくらいあ るか調べるための群で、新しい治療、薬、手術 が施されるグループ 17 比較臨床試験(CCT) ランダム化比較試験 (RCT) 治療あり(介入群) 治る 治らない サンプル 研究の方向 治る 治療なし(対照群) 治らない 時間軸 前向き研究 18 5.ランダム化比較試験(RCT) • 臨床研究の至適基準(gold standard) • 対照群と介入群を比較した研究。 • 「ランダム化」とは、患者を介入群に入 れるか対照群に入れるかをランダムに 割り付けるという意味。 19 システマティックレビュー・ メタアナリシス • システマティックレビュー – ある医学的介入のエビデンスを明らかにする ために、エビデンスの高い論文を網羅的に収 集し、精査・取捨選択し、要約したもの • メタアナリシス – 過去に独立して行われた複数の臨床研究の データを統合して、統計を行う手法 20 システマティックレビューと メタアナリシス ・データベース検索 ・雑誌ハンドサーチ 文献評価 RCT 1 RCT 2 RCT 3 RCT 4 内容を要約 システマティックレビュー 結果を統合 メタアナリシス 21 メタアナリシス 22 RCTとMeta-analysisの結果比較 RCT Meta-analysis Antman EM et al. JAMA. 1992; 268: 240-248. 23 診療ガイドライン • 医療者と患者が適切な判断を下せるよう 支援する目的で、体系的な方法に則って 作成された、診療の指針となる文書 24 研究の種類とエビデンス 組織・細胞サンプルの実験 動物実験 レター・エディトリアル・ ショートペーパー 症例報告・症例集積 症例対照・横断研究 コホート研究 ランダム化比較試験 臨床に有効 メタアナリシス・ システマティックレビュー 診療ガイドライン 25 文献データベース 医中誌 The Cochrane Library RCT RCT RCT RCT RCT RCT RCT RCT システマティック レビュー システマティック レビュー システマティック レビュー 26 エビデンスを探すツール エビデンスデータベース – The Cochrane Library 文献データベース – 医中誌 → 絞込みで研究デザインを指定する – メタアナリシス、ランダム化比較試験、準ランダム化比較試験、比較研 究、診療ガイドライン 診療ガイドライン – MINDS – 診療ガイドライン情報(東邦大学医学メディアセンター) 27 The Cochrane Library 2009.6.2 杏林大学医学図書館 28 “Cochrane”って? Archibald Leman Cochrane, (1909 - 1988). 29 コクランの著書「効果と効率」より ヘルスケアに関して より十分に説明されて 決断したい人たちが, 入手可能なエビデンスに基づく 信頼できるレビューに アクセスできないでいる 30 コクランの提唱 すでにあるランダム化比較試験から ・よりよいものを選りすぐって ・質の悪いものは除いて ・それらをまとめて システマティックレビュー ・遅れなく ・必要な人に届ける ことが大切である 31 Cochrane共同計画 • 1992年発足 • 英国国民保健サービスの一環で始まった プロジェクト 32 Cochraneって? Archibald Leman Cochrane, CBE FRCP FFCM, (1909 - 1988). 33 Cochrane Libraryとは? • ランダム化比較試験(RCT)を収集 • システマティックレビューを作成 • データベースとして公開 34 35 共同レビューグループ CochraneReviewsの完成 36 Cochrane Libraryのユーザー •臨床家・・・治療 予防 •薬剤師・・・薬剤の効果 •統計学者・研究者・・・研究デザイン •政策立案者・行政・・・医療技術評価 37 疑問の種類 BackGround Question 調べればわかる疑問 ForeGround Question 調べた結果から決断(判断)する疑問 38 疑問の種類(日常) BackGround Question 吉祥寺に美味しいお店はある? ForeGround Question 吉祥寺にある美味しいお店の中で、 彼女(彼)と行くならどこ? (雰囲気・価格など条件がある) 39 疑問の種類(臨床) ForeGround Question 調べた結果から 決断(判断)する疑問 BackGround Question 調べればわかる 疑問 40 疑問の種類(臨床) ForeGround Question BackGround Question 治療法の決断や 行動を起こすために 必要な専門知識を 問う疑問 病態・薬効など 一般的知識を 問う疑問 41 情報源の選択 ForeGround Question より臨床的・具体的な疑問 例) Aさんの場合、 どの治療法が 適している? BackGround Question 基礎医学的な疑問 例)ベーチェット病って何? 一般的な診断法や 治療法は? 疑問を解決するために、何を情報源にするのか? 42 情報源の選びかた ForeGround Question? より臨床的・具体的な疑問。 例) Aさんの場合、どちらの治療法が 適しているか? Cochrane Library Dynamed、UpToDate BackGround Question? 基礎医学的な疑問。 例) ベーチェット病って何? 一般的な診断法・治療法は? 疾患概念や一般的な 診断・治療法など、教科書や 検索サイトで調べれば わかる知識 TIPS <疑問の定式化> 臨床上の疑問を”PICO”に当てはめると、 検索キーワードなどの設定がスムーズに P : 対象となる患者の特徴 I : 介入方法(治療・診断など) C : 比較対象(Placeboなど) 極めてレアな疾患、比較試験によるエビデンスの整備が 不十分な疾患の場合は、個別の症例研究を参照するか、 O : 患者の臨床的転帰 エキスパート・オピニオンに頼る、などの選択肢がある。 43 EBMツールを使って ForeGround Question 例)Aさんには①と②の治療法、 どちらが適しているか? 決断するためのエビデンスを探すツールを利用する CochraneLibraryで検索する EBMツールで検索する ① ①と決断! ② 44 CochraneLibraryの画面 新しいReview トピックごとに ブラウズ サーチボックス アルファベット順に ブラウズ可能 45 実際の検索(クイックサーチ) ① ② SEARCH BOXにキーワードを 入力してGOをクリック renal cell carcinoma (腎細胞癌) 46 CochraneLibraryの検索結果(1) Cochrane Reviewsは4件 その他のReviewやCrinical Trialsもある 47 CochraneLibraryの検索結果(2) Record をクリック 48 結果の見方 Review ・・・レビュー(完成形) Protocol ・・・プロトコル(作成途中) Comment ・・・コメント・批評を含むレビュー Withdrawn ・・・取り消されたレビューやプロトコル New Update ・・・最近の4半期に発表(更新) されたプロトコルやレビュー 49 Cochrane Reviews の例 背景 各項目が一目瞭然 クリックすればジャンプして 右フレームに表示 目的 成果、結論・・・ 方法 基準 50 CochraneLibraryを使ってみよう 学内のみ MyLibrary → 医学・保健学・看護学系 → Cochrane Library 医学図書館ホームページにあるのはこのアイコン 51
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