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リスク・コミュニケーション
廃棄物処分工学分野
M1
藤本有華
1
背景
科学技術の発達による…
化学物質の多様化
化学物質の微量化
・広範囲に及ぶ影響評価
私たちの便利な生活を支えて
いる様々な化学物質
・長期的影響評価
・膨大なコストの削減
の必要性
一方で、化学物質による健康
被害を受ける可能性がある
リスク評価
の導入へ…2
リスクの定義
リスク =
被害の重大性
(ハザード)
×
被害者数や被害規模等、
事故一回あたりの
被害の大きさ
起こる確率
事故が一回起こる確率
(National Research Council より)
<例>
重大性
(被害者数)
確率
(事故回数)
飛行機事故
大
小
自動車事故
小
大
重大性と確率との積をとることにより、この二つの乗り物のリス
クを比較することができる。
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リスク管理
人間の健康や生態系へのリスクを減らすためのプロセス
問題の整理
取り組まなければならない問題を整理する
リスク分析
リスク評価より、それぞれの問題のリスクを
分析・比較
取り組む問題の選択
数多くの問題の中から取り組むべき
問題を選択する
問題解決への対策の実施
実施された対策の評価
対策結果を評価する
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リスクコミュニケーションの必要性
リスク管理
専門家や行政だけでなく、一般市民も含めた社会全体
でどのようにリスク削減を進めていくのかを決め、取り
組んでいかなければならない
リスクコミュニケーション
が不可欠
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以前のリスクコミュニケーション
専門家や行政等の
送り手
単なる情報の提供
住民等の
受け手
リスク評価
のデータ
現在のリスクコミュニケーションは、
情報の提供のみをさすのではない
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現在のリスク・コミュニケーション
利害関係者間で健康や環境のリスクに関する情報・意見
をある目的をもって交換すること
住民
相互の意思疎通
専門機関
・化学物質による環境リスクに
ついての正確な情報の共有
・リスク管理についての相互の
意見交換
行政
企業
(注意点)
リスクコミュニケーションとは、「リスクやリスク管理につ
いての相互の意思疎通」に関する取組み全体を意味し、
特定の手段や方法を指すものではない。
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リスク・コミュニケーションのメリット
・民主的な意思決定を支援する
・公益が確実に考慮される
・よりよい意思決定のために必要な理解を深める
・意思決定の基礎となる知見の改善につながる
・意思決定にかかる全時間と全費用の節約を可能にする
・リスク管理を担当する機関に対する信頼性を高める可能性が
ある
・より受け入れやすく、より容易に実行可能なリスク管理の意思
決定に導く
(米国大統領・議会諮問委員会より)
(注)・意見や認識の違いが必ずしも合意されるわけではない
・関係者の対立的な関係が解消されるとは限らない
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リスク・コミュニケーションの取り扱う問
題
環境問題 (発表はこの内容について)
ごみ処理施設周辺の問題
フロンガスによる地球温暖化の問題等
化学物質による環境影響
科学技術
原子力発電
遺伝子組み替え食品の是非
災害
災害前の予防策 災害警報
災害発生後の対策 避難警報
消費者生活用品
製品の警告・表示・
注意書きについて
の問題
医療、健康問題
医学的な専門知識
をいかにして患者や
その家族に伝えるか
(「リスクとつきあう」より)
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国内での取組み
以前
リスクデータを出すと、「数字が一人歩きする」、
「人々はゼロリスクを求める」という懸念から
リスクデータの公開には消極的だった
1999年 「特定化学物質の環境への排出量の把握及び
管理に関する法律(PRTR法)」の制定
2000年 環境基本計画の見直し
リスクコミュニケーションを促進させる
ための様々な取組みを始める
環境省
地方自治体
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PRTR法
ー目的ー
有害性のある化学物質の環境への排出量を把握すること
などにより、化学物質を取り扱う事業者の自主的な化学物質
の管理の改善を促進し、化学物質による環境の保全上の支
障が生ずることを未然に防止すること
対象となる事業者は、年に一度一年間にどのような
物質をどれだけ環境中へ排出したか、あるいは廃
棄物として移動したかを国に届け出ることが義務化
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PRTRデータの流れ
対象事業者
年に一度データ
の届け出
集計結果の公表
都道府県を
通して届ける
届出の対象と
ならない事業所、
家庭、自動車など 国が推定
国
データ
の
集計
国民
個別事業所について
のデータの開示請求
開示
国内全体の化学物質の排出量を把握することができる
平成14年4月 第1回目の届け出
平成15年3月 第1回目の集計結果の公表
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わが国のリスクコミュニケーションの考え
方
地域住民・市民団体等
・窓口の決定
・情報収集とリスク評価
・リスクメッセージの作成
・情報伝達網の整備
・改善案の提示等
学者の協力
情報交換・討議
信頼関係の構築
行政
・情報収集とリスク評価
・基本方針の決定
・リスクメッセージの作成
・コミュニケーション効果の評価等
マスコミの影響
企業等
・情報収集とリスク評価
・基本方針の決定
・リスクメッセージの作成
・コミュニケーション効果の評価等
(リスクコミュニケーション事例等調査報告書より)
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環境省の取組み
リスクコミュニケーションを国内で促進する中心的存在と
して、様々な取り組みを行っている
「情報・教材」の整備
・市民や事業所に対しリスクコミュニケーションを広める
・化学物質のリスクについて理解してもらう
・リスクコミュニケーションに積極的に協力するよう促す
「リスクコミュニケーションの場」の提供
・環境リスクに関する情報や意見交換の場をつくる
「対話」の促進
・コミュニケーションを円滑に進めるための人材等の検討
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取り組み例
ー「情報・教材」の整備ー
・化学物質のデータベース作成
・住民向け冊子「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」の作成
・「自治体のための化学物質に関するリスクコミュニケーションマニュア
ル」
・「リスクコミュニケーション事例等調査報告書」
・ゲーム「つくろう!ぽんぽこ理想郷」等の作成
ー「場」の提供ー
・「化学物質と環境円卓会議」の開催
→(行政、産業、国民の代表による化学物質の環境リスク
に関する情報の共有及び相互理解を促進する場)
ー「対話」を促進させる人材の育成ー
・「化学物質アドバイザー」の育成
→(化学物質に関する知識とコミュニケーション能力を持ち、
「正確な情報の共有」と「対話の推進」を図るための人材)
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自治体の取組み
自治体の特徴
1、その地域の環境の状態に精通している
(環境情報の分析、提供役)
2、公共の利益を求める(公正性の確保)
3、地域の市民や事業者などとのつながりを持っている(調整役)
地域の環境リスク管理者としての役割
環境リスク全般に関するリスクコミュニケーションの促進
「情報の整備」、「対話の促進」、「場の提供」等
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自治体への期待
リスクコミュニケーションしたい相手
(%) 0
20
40
60
80
100
79.4
地方自治体(都道府県、市町村)
事業所を統括している企業(企業の本社)
53.8
近隣住民や自治会など
47
国(環境省、通商産業省、厚生省)
42.2
40.1
近隣の事業所
その他
2.6
無回答
1.8
総数N=1、248
(平成12年度環境庁 環境モニターアンケート よ
り)
地域の関係者は自治体に
リスクコミュニケーションを
実施することを求めている
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自治体の役割
平常時
コミュニケーションの場面
情報提供役
・地域の環境情報、リスクに関する情報など、
正確な情報の共有を促す
・中立的立場で情報を分かりやすく解説する(インタープリター)
政策推進役
・コミュニケーションの場の設定
・政策立案者としての積極的な意見や提案
司会役
(「リスクコミュニケーショ
ンマニュアル」より)
中立的立場から議論を整理し、
コミュニケーションを円滑に進行させる
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(ファシリテーター)
自治体の取組み内容
ー情報提供役ー
・地域に合ったPRTRデータの整理
・地域住民の求めるデータの提供
・「化学物質によるリスクについて」等のパンフレットの作成
ー政策推進役ー
・住民からの問い合わせに対する窓口の設定
・地域でのリスク管理に関する話し合いの場の設定
・話し合いをする上での具体的な方法・手法の提案
ー司会役ー
・廃棄物処理施設建設時等、事業者と地域住民との間の
調整役
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「情報提供役」の取り組み例
住民向けパンフレット
「化学物質」について
もっと知っていただくために (神奈川県)
ー内容ー
・日常的場面での会話形式
(家族との談話、学校での先生とのやり取り)
・「化学物質」、「シックハウス症候群」、「食品
添加物」、「環境ホルモン」等が私たちの身の
回りの生活の中にあることを理解してもらい、
意識・知識を高めてもらうための冊子
ー配布方法ー
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/t
aikisuisitu/kagaku/prtr/mottositte.pdf
・インターネットよりダウンロード
・郵送による配布
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「政策推進役」の取り組み例
コミュニケーション手法の検討
(愛知県)
化学物質に係るコミュニケーション手法検討会の設置
ー内容ー
・化学物質に関する事業者と県民との間のコミュニケーションの進め
方や実施上の課題、行政の役割等についての検討。
・「化学物質に関するコミュニケーションのあり方について」という検討
結果の公表(平成13年12月)。 →希望者への無償配布
1趣旨
2化学物質に関するコミュニケーションの意義、課題等
3事業者における化学物質に関するコミュニケーションの進め方
4化学物質の排出量・移動量にかかる集計及び公表方法
5中小企業者に対する適切な支援措置
6まとめ
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「司会役」の取り組み例
事業者と住民の紛争における調整役
(兵庫県)
産業廃棄物処理施設紛争の調整役
加古川市での産業廃棄物中間処理施設建設計画に対する
地域住民の強い反対
兵庫県及び市、保健所が調整役となる
・事業者と協議し事業内容の見直しを進め、住民とこまめ
に連絡をとる
・県産業廃棄物審議会の判断に委ね、法手続きを進める
・住民と事業者との間で、環境保全協定を締結
・類似施設の見学会の実施
周辺住民の中には受け入れに前向きな姿勢を示すものも現れる
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廃棄物処理施設建設計画への導入
廃棄物処理施設建設計画
住民からの反対
・必要施設の不足
・施設運営コストの上昇
・資源消費の増加
住民合意を得るためのリスクコミュニケーションを行う必要がある
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住民合意での重要な点
不十分な情報公開
偏った情報の提供
住民の不安感が増し、
反対運動へつながる
ー実施すべき内容ー
(自治体のための化学物質に関するリスクコミュニケーションマニュアルより)
計画の早い段階からの情報提供が重要
・ ホームページや電子メールによる情報公開や質問・
意見の募集
・ 広報誌での周知や説明会の開催
・ 関係者の知識・関心に合わせたわかりやすい資料
の作成
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宮城県鶯沢町家電リサイクルプラント事例
1997年 M社より廃家電製品のリサイクルプラント立地提案
自治体・M社・住民間のリスクコ
ミュニケーションがスタート
住民の反対
リサイクル企業立地検討委員会の設置
住民の家電リサイクル等に対する理解を深めてもらうため
・町の公民館において「リサイクル」と「地球環境」についての勉強会を開催
・茨城県那珂町「廃家電品一貫処理リサイクルシステム開発実証プラント」
の視察を行う
住民の企業への不信感はぬぐえず
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宮城県鶯沢町家電リサイクルプラント事例
環境事業団よりコーディネーター(司会役)の導入
利害関係をもたない第三者を導入し、話し合いを円滑にする
ため
企業
対
住民
議論の内容が変化
環境をキーワードにした町づくりの中核としての
家電リサイクル事業はどうあるべきか
住民が理解を示し始める
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宮城県鶯沢町家電リサイクルプラント事例
パートナーシップ部会の設置
鶯沢町の自然、歴史、工業、観光資源を見直し、住民、自治
体、M社が協力し合って豊かなまちづくりを目指す
・M社よりの提案
「パートナーシップによる環境共生がたの地域づくり」についての検討
(地球資源の見直しや先進的な環境保全の取組みなどについての議論)
・リサイクルシンポジウムの開催により、部会活動の紹介
住民の環境問題への取組み始まる
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宮城県鶯沢町家電リサイクルプラント事例
パートナーシップ型デモプログラムの提案
M社、三年間試験的にリサイクルプラントを稼動することを
提案
「このプログラムで、正の評価が得られない場合は、事業を
断念する」とM社は宣言する
2000年3月 デモプラント稼動
鶯沢町エコタウンプランが進められている
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リスク・コミュニケーションを阻害する要
因
送り手
リスクの
考え方
リスク評価
「重大性」×「確立」
データに基づいた
客観的値
受け手
リスク認知
「重大性認知」×「確立認
知」
個人個人の考え方による
主観的値
この違いがリスクコミュニケーションを困難にしている
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リスク認知への影響要素
破滅性
原子力発電所の事故など破滅的な結果を発生する、つまり、
「被害の重大性」が高いものに対してのリスク認知は大きい。
未知性
遅発性のリスクや科学的知見が十分ではないリスクについて
は実際よりも大きくリスクを認知する。
制御可能性・自発性
自動車リスクのように自分たちで制御可能なリスクについては
小さく認知される。
公平性
自分たちだけに発生するリスクの場合はリスクをより大きく認
知する。
リスク認知研究 で、より詳しく分析されている
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考察
ー化学物質に関するリスクコミュニケーションについてー
リスクコミュニケーション
への取組みはまだ始
まったばかり
(具体的な手段、方法に乏しい)
今後住民の意見を取り入
れながら具体的な手段や
方法を検討し、改善してい
くのが望ましい
ー廃棄物処理施設建設時への導入に関してー
廃棄物処理施設建設の際のリスクコミュニケーション
・
はまだうまく機能していないようだ
その原因として予想されるもの
信頼性に欠けている
情報の伝え方が適切ではない
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考察
信頼性の改善
行政に対する悪いイメージ
原因と予想
されるもの
改善策特に
なし
「リスクコミュニケーション」等の取組みに
ついて知らなかったこと
(人は未知のものに対して信頼をもたないため)
説得されることを恐れる
「リスクコミュニケーション」の取組みについて
広めることが必要
マスメディアを効果的に活用する
のが有効ではないだろうか
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考察
情報の適切な伝え方
「リスク管理」と「リスク認知」とのギャップ
「リスク認知心理学」の研究成果を生かし、偏ったイメージ
を与えない情報の提供に努める
・パンフレットの内容
・リスクコミュニケーションの場での情報提供法
・ファシリテーター
等
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参考資料
ー参考文献ー
・自治体のための化学物質に関するリスクコミュニケーションマニュアル
2002年版、(環境省)
・リスクコミュニケーションの必要性と課題、(石坂薫 田中勝)
・リスクとつきあう、(吉川肇子)
・環境リスク心理学、(中谷内一也)
・「化学物質」についてもっと知っていただくために(神奈川県)
・PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック(環境省)
・平成13年度リスクコミュニケーション事例等調査報告書(環境省)
ー参考HPー
・環境省ホームページ http://www.env.go.jp/
・ 「リスクコミュニケーション」(環境省、環境保健部)
http://www.env.go.jp/chemi/index.html
・宮城県鶯沢町ホームページ
http://www.town.uguisuzawa.miyagi.jp/index.htm
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