ESH DATABANK オゾン層破壊問題の基礎知識 ESH DATABANK オゾン層とは? オゾンは酸素原子3個からなる化学作用の強 い気体です。オゾンは成層圏(10~50km)に 多く存在しており、このオゾンの多い層を一般 的にオゾン層といいます。成層圏オゾンは、太 陽からの有害な紫外線の多くを吸収し、地上 の生態系を保護しています。また成層圏オゾ ンは、成層圏の大気を暖める役割があり、地 球の気候の形成に大きく関わっています。 ESH DATABANK オゾンの生成・消滅 高度30kmより上空では紫外線により酸素分 子からオゾンが生成されています。一方オゾ ンは酸素原子と反応することにより消滅してい ます。上空のオゾンはこれらの生成・消滅の バランスを保ちながら存在しています。 ESH DATABANK オゾン層の破壊 現在、人造物質であるクロロフルオロカーボン (CFCs;フロンとも呼ばれています)等に起因 する塩素、臭素によるオゾン層破壊が熱帯地 域を除くほぼ地球全体で進行しています。そ のオゾン層破壊は、特に南極域の春季に発生 するオゾンホールに顕著に表れています。 ESH DATABANK オゾンホール 南極域上空では、冬から春にかけて南極上空を取り 巻く極夜渦(きょくやうず)と呼ばれる強い渦状の気流 が安定的に生じるため、冬期には極めて低温になり、 極域成層圏雲と呼ばれる雲が生じます。CFC等が分 解してできた塩素や臭素は、この雲の粒子表面での 反応で活性度の高い状態に変換されます。そして、 春(9~11月)になって日が当たるようになると、これ らが分解して塩素原子や臭素原子を生成し、オゾン の破壊反応が進行しやすくなり、オゾンの量が大きく 減少してしまいます。この減少の生じた領域がオゾン ホールと呼ばれています。 ESH DATABANK 月平均オゾン全量の南半球分布 ESH DATABANK オゾンホール 1985年に英国のファーマンらによって南極上空のオ ゾンホールについて報告されて以来、毎年9~11月 頃に南極上空でオゾンホールが観測されており、 2000年には、オゾンホールの面積、オゾン破壊量が 過去最大となりました。 オゾンホールの面積の経年変化 (気象庁 オゾン層観測報告2001 ) ESH DATABANK 日本上空のオゾン層の状況 日本上空のオゾン全量の経年変化 (注)上図には、季節変化、太陽活動等の影響が含まれている。札幌 においてオゾンの減少が大きくなる傾向がみられる。 ESH DATABANK オゾン層破壊の環境影響 オゾン層におけるオゾンの量が1%減少すると、地上 に降り注ぐ有害紫外線(UV-B)の量は1.5%増える とされています。 このUV-Bの増加により、皮膚がんや白内障の増加、 免疫抑制等の人の健康への影響のほか、動植物の 生育阻害等の生態系への影響が懸念されています。 例えば、オゾンの量が1%減少すると、皮膚がんの発 症は2%増加し、白内障の発症は0.6~0.8%増加 すると報告されています。 ESH DATABANK 有害紫外線の状況 国内のこれまでの観測結果では、1991年の 観測開始以来、UV-Bの観測値には明らか な増加の傾向はみられていません。なお、UV -Bの地上への到達量は、オゾン量のほか、 季節、天候(雲量)、大気混濁度などの影響を 受けます 。 ESH DATABANK CFC等の大気中の状況 CFC等の下層大気中濃度は北半球中緯度で は、1990年頃まで増加傾向にありましたが、 最近はほぼ横ばい、CFC-11の濃度は減少し てきているほか、大気中寿命の短い1,1,1-ト リクロロエタン(CH3CCI3)については、急速 に減少しています。 一方、HCFCやハロンについては、増加の傾 向が続いています。 ESH DATABANK 北半球中緯度(北海道:N)及び南半球(南極昭和基地:S)に おけるCFC等の下層大気中平均濃度の経年変化 ESH DATABANK オゾン層の今後の予測 国連環境計画(UNEP)の1998年の科学・環境影 響・技術経済アセスメントパネルの統合報告書では、 すべての締約国が1997年の改正モントリオール議 定書を遵守すれば、 (1)成層圏中の塩素・臭素の総量は2000年より前に ピークに達する。 (2)オゾン層破壊のピークは、2020年までに訪れる。 (3)成層圏中のオゾン層破壊物質濃度は、2050年 までに1980年以前のレベルに戻る。 (4)その他の気体(一酸化二窒素、メタン、水蒸気等) の将来の増加または減少及び気候変動がオゾン層 の回復に影響を及ぼす。と予測されています。 ESH DATABANK オゾンを破壊する成層圏の塩素と臭素の濃度予測 (1998年UNEP報告書) ESH DATABANK オゾン層破壊物質の使用と放出 オゾン層破壊物質は、分 子内に塩素又は臭素を 含む化学的に安定な物 質で、右の表に示すよう にいくつかの種類があり ます。 また、CFC、HCFCなど は、HFC、PFC、SF6と ともに、強力な温室効果 ガスでもあります。 ESH DATABANK オゾン層破壊物質などの用途(主なもの) ESH DATABANK オゾン層保護のために オゾン層保護対策は、条約等に基づき国際的 に協力して進められており、我が国でも、「特 定物質の規制等によるオゾン層の保護に関す る法律(オゾン層保護法)」に基づきCFC等の 生産規制等を行うとともに「フロン回収破壊 法」に基づき、CFC等の回収・破壊を実施して います。 ESH DATABANK 国際的な取組み 国際的に協調してオゾン層保護対策を推進するため、 「オゾン層の保護のためのウィーン条約」(1985年) 及びこの条約に基づく「オゾン層を破壊する物質に関 するモントリオール議定書」(1987年)が採択され、 一定の種類のCFC及びハロンの生産量等の段階的 な削減を行うことが合意されました。 その後、従来の予測を超えてオゾン層の破壊が進ん だため、1990、1992、1995、1997年及び1999年 にモントリオール議定書の改正等によって、CFC等 の生産全廃までの規制スケジュールを早めたり、新 たに規制物質を追加する等、規制が強化されてきま した。 ESH DATABANK 「オゾン層保護法」に基づく生産規制等 我が国では、1988年5月に世界に先駆けてオゾン層 保護法を制定しました。同法に基づき、モントリオー ル議定書で生産量等の規制の対象となっている物質 を「特定物質」と定め、 (1)議定書に定められたスケジュールに沿った特定 物質の製造数量等の規制 (2)特定物質の使用事業者による排出抑制・使用合 理化の努力 (3)オゾン層及び大気中の特定物質濃度の状況の観 測及び監視などが実施されています。 ESH DATABANK ESH DATABANK CFC等の回収・破壊の促進 我が国においては、オゾン層保護法に基づき、オゾン 層破壊物質の生産量及び消費量が削減されており、 現在、CFCをはじめ、主要なオゾン層破壊物質は、 生産が全廃されています。現在は、業務用冷凍空調 機器、カーエアコン等に冷媒として使用されているフ ロンが機器の廃棄に伴って大気中に放出されないよ うにすることが大きな課題となっています。 モントリオール議定書締約国会合においても、先進 国はCFCの回収の方針などを定めるCFC管理戦略 を国連環境計画のオゾン事務局に提出することが決 定され、我が国においても「国家CFC管理戦略」を条 定し、2001年7月末に提出しました。 ESH DATABANK フロン回収破壊法 オゾン層の破壊や地球温暖化を招くフロンを大気中にみ だりに放出することを禁止するとともに、機器の廃棄時に おける適正な回収及び破壊処理の実施等を義務づけた 「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保 等に関する法律(フロン回収破壊法)が平成13年6月15 日に成立し、同月22日に公布されました。 本法律の対象は、自動車の カーエアコンと業務用冷凍空 調機器に冷媒として使用され ているCFC、HCFC、HFCの 3種類のフロンです。 カーエアコンからのフロン回収 ESH DATABANK フロン回収破壊法で対象となる特定製品の定義 ESH DATABANK フロンの回収及び破壊のシステム ESH DATABANK 出典 環境省 気象庁
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