地球気候変動論 第4回

不安定論(波の共鳴)
大気大循環
特に中緯度の高低気圧の発生
傾圧不安定とフェレル循環
人工衛星データの見方
流れの不安定論
担当:島田浩二 9号館501
[email protected]
大気大循環
• 海洋熱塩循環は赤道非対称であったが、
大気循環場は基本的に赤道対称
• 大きく分けて2種類の循環が存在
(①ハドレー循環、②フェレル循環)
①:本質的には、海洋熱塩循環と同じ
重いところで沈降し、軽いところで上昇する
いわゆる対流
②:流れの不安定によって起こるもの
渦度を復元力とする波について
f 
q
h
ポテンシャル渦度(渦位)
回転を感じるシステムでの渦度
今、層厚が一定であるとすれば、北に変位した場所では、マイナスの相対渦度(時計回りの二次流)、南に変位
している場所ではプラスの相対渦度(反時計の二次流)が発生する。
二次流によって、等渦位線(位相)は西に伝
播してゆく。これが、ロスビー波の西進のメカ
ニズムである。
• コリオリ力の変化が小さい場合(小スケー
ルの場合)には、相対渦度が効いてくる。
f 
v u
q
  
h
x y
y
x
流れの不安定
コーヒーにクリームを入れて混ぜるとき、
どのようにして混ぜているのだろうか?
そこにヒントがある。
不安定な流れの非線形発展
q
v u

x y
周囲の渦度に対して、
低渦度になるところには反時計回りの(正の)2次循環
高渦度になるところでは時計回りの(負の)2次循環
ができる。
q
v u

x y
2次循環が、渦度フロントの乱れを増幅するように作用
するとき、不安定が起こる。
上記の位相関係が長時間維持されることが必須となる。
すなわち、青のフロントと赤のフロントに現れる擾乱のス
ケールと位相速度がほぼ一致することが条件。
流れの不安定とは?
共振、共鳴と理解すればよい
応用編
• 波の位相速度(伝播速度)は、波の波長によって
異なる。
2
2
• 例えば、ロスビー波の場合、 c   2 k2
k
,l 
k l  F
x
• したがって、共振(共鳴)条件を満たす波は、ある
波長の波に限定されてしまう。
• 海岸線が直線的なら、最も成長速度が速い波長
の波動擾乱が現れる。
• しかし、海岸線が直線的ではなく、凹凸がある場
合で凹凸のスケールで共振(共鳴)が起こるのな
ら、凹凸のスケールの波が現れる。
y
不安定が起こりうる条件を満たす
最も単純な系*でメカニズムを探る
*系に波が2つ存在する
流氷研レーダー
黒⇒海、白⇒氷
【砕波型】
振幅の増大、減少を繰り返す。増大-減少のステージ変化は位相差がπの時に起こる。
沿岸域で活発な流体混合(マクロ的には、流れの安定化)
• 人工衛星画像を見たとき、上流側に砕波し、
細かく入り乱れているパターンがあれば、そ
れは、順圧不安定。
• 順圧不安定で、細かく入り乱れるパターンが
現れれば、位相関係が波を成長させる状態
と減衰させる状態が交互に起こっている。
• 同じ流れであっても、擾乱のスケールが異
なれば、違うパターンを呈する。
• もし、渦が沿岸から切り離され沖に輸送さ
れるのなら、そのようなことが起こっている
海域が外洋環境を決めるのに大事である
と言える。
基本流は同一であるが、
不安定波の波長を倍にすると・・・
【渦対型】
振幅が増大する位相関係が維持される
沿岸水の外洋への効果的な輸送
短い波長の
不安定波
(最大成長率)
【砕波型】
長い波長の
不安定波
地形規定のスケール
さて、この画像を見て、北極海
沿岸の流れは、このときどちら
方向であるかを答えよ。
沿岸水の
外洋への輸送
凹凸のある
海岸線
比較的直線的
ケルビン・ヘルムホルツ不安定
• 鉛直混合を考えるときに大事な現象
軽い
中間
重い
q0
q0
小
q0
大
小
小
大
小
q
v u

x y
宗谷暖流の場合と、渦度の大小パターンが同じ
ことが分かる。
⇒同じことが起こる。(物理は同じ)
さて、最後に傾圧不安定
(フェレル循環(ロスビー循環))
• 順圧不安定やKH不安定では、渦度のパ
ターンが重要であった。渦度の大小に起因
する波の共振(共鳴)が不安定であること
を述べた。
• 傾圧不安定も、同じメカニズムでおこる。
• どの波とどの波が共振(共鳴)するのかを
考えることが第一。
上空の空気の積み重なりを考える
暖かい空気
冷たい空気
南
北
地表面では、ほとんど同じ圧力
=上に乗っている空気の質量が同じ
上空では、どうなっているか?
この高度より上に乗っている
大気の質量を考える
質量は小
低圧
冷たい空気
質量は大
高圧
暖かい空気
南
北
地表面では、ほとんど同じ圧力
=上に乗っている空気の質量が同じ
地衡風(地衡流)
du
1
 fk  u   p   2u  gk
dt

1 p
u
f y
1 p
v
f x
北に向かうにつれて、圧力pは減少
p
0
y
u0
:西風
上空にゆけばゆくほど、
南北の圧力差は大きくなる
H
L
北
南
渦度はどうなっているか?
f 
f
q
~
h
h
北
南
f
h小
 q (大)
f
h大
 q (小)
q
f
h大
 q (小)
q
q
q
f
 q(大)
h小
簡単にしてみる
f 
f
q
~
h
h
北
f
h小
 q (大)
南
f
h大
 q (小)
q
f
h大
 q (小)
q
q
大
小
小
大
q
f
 q(大)
h小
渦度前線があるとして考える
北
南
f
h小
 q (大)
q
f
h大
 q (小)
q
f
h大
 q (小)
q
f
h小
 q (大)
q
上から見る
+
北
上層:q大
下層:q小
南
上層:q小
下層:q大
-
ー
+
q
f
 q(大)
h小
q
f
 q(小)
h大
q
f
 q(小)
h大
q
f
 q(大)
h小
• 波の伝播速度には、やはり波長依存性が
ある。上層と下層の波の速度がほぼ同じと
き、擾乱は成長する。
• つまり、あるスケールの波が卓越するはず。
• 大気の場合、中緯度域で4~5波になる。
(高低気圧の一組で5600km~7000km)
ロシア
日本
アメリカ
上から見る
南に向かうところは、
等密度面が高い
+
南
上層:q小
下層:q大
-
ー
+
北に向かうところは、
等密度面が低い
等密度面
高度
北
上層:q大
下層:q小
q
f
 q(大)
h小
q
f
 q(小)
h大
q
f
 q(小)
h大
q
f
 q(大)
h小
面白いことに気付く
フェレル循環は、
冷たいところで上昇、暖かいところで下降
する意味が分かった!
おしまい