海外主要国のブロードバンド競争の現状と規制動向 ◆ 日本と世界のブロードバンドの比較 ◆ 2003年11月11日 (株)情報通信総合研究所 シニア・リサーチャー 神野 新 1. 世界のブロードバンドの普及状況(全般的状況) ◆国連の機関である国際電気通信連合(ITU:ジュネーブ)は、2003年9月に「ITUインターネット・レポート 2003:ブロードバンドの誕生」と題する年次報告書を発表した。以下に記載するのは、同レポートから 引用した、世界のブロードバンドの普及に関する全般的状況である。(※詳細は次ページ以降を参照) ITUのインターネット・レポートより ◇2003年の初め時点で、世界の「ブロードバンド」加入者は約6,300万であり、これに対し、固定回線利用 者が11億3,000万、携帯電話利用者が11億6,000万であった。ブロードバンド加入者数は急速に増加 しており、2002年の増加率は72%であった。 ◇2000年以降、世界のブロードバンド加入数は5倍となったが、予想されていたように、普及率は1人当 たり国民総所得(GNI)と密接な相関関係を示している。(ただし、韓国は明らかに異なっている) ◇多くの様々な企業がブロードバンド分野に参入しているが、ITUの加盟国の過半数では、既存の固定 回線事業者が、市場の先発者ではない場合であっても、独占的事業者として台頭している。 ◇しかし、ブロードバンドが繁栄している国々の中には、韓国のHanaro Telecomや日本のYahoo ! BBの ように、既存事業者に対して真に競争的な挑戦をもたらす、財務的に余裕のある第2事業者が存在 している。 ◇ケーブルTV網が利用可能でない、または既存事業者が電話とケーブルTV網を交差所有(cross-own)して いる国では、一般的にブロードバンドの展開への対応に遅れを来している。 ◇ブロードバンドに対する需要の促進には、おそらく料金が最も重要な役割を担っている。成功を収め ているブロードバンド経済は、低料金であるという特徴が見られる。 1 2. ITUのインターネット・レポートより (1) ◇現在、世界のインターネット利用者は6億人を 超えているが、そのうちの10人に1人がブロー ドバンド回線で接続されている。 ◇過去3年間のブロードバンド利用者の年間伸び 率は3%程度であり、これは毎年2,000-3,000万 人の純増を意味する。 ◇しかし、世界の200以上の国々のうち、ブロー ドバンドが利用可能な国は82ヶ国だけである。 ◇ブロードバンドの世界的リーダーは韓国であ り、世界的標準を3年分先行している。韓国で は、クリティカル・マスは2000年という早期に 達成された。この年に韓国では月額料金が25 USドルを下回わり、急速な離陸が始まった。 ◇ブロードバンドの技術別の内訳に注目すると、 多くの国々でDSLが最も普及している。しか し、米国、カナダ、オランダなどの一部の国々 においては、ケーブルモデムがDSL以上の人気 を獲得している。 ◇それ以外の技術は、スウェーデン、米国などで 若干普及しているが、その中心は光ファイバー である。 2 2. ITUのインターネット・レポートより (2) ◇従来からの電気通信サービス(市内電話、専用 線)と比較して、ブロードバンド関連サービス の競争は相対的に進展している。 ◇しかし、DSL、ケーブルモデムについても、約 1/3の市場では独占が続いている。 ◇ブロードバンドに関しては、既存事業者が新規 参入事業者と並んで競争を行うことを認められ ている市場において、支配性を維持し続けると いう注目すべき傾向がある。 ◇2002年、OECDの加盟諸国において事業を行って いる既存事業者は、ブロードバンド・アクセス 市場の80%以上を支配しており、EUにおいては ブロードバンド市場の90%以上を占めている。 ◇DSLサービスの競争が相対的に進んでいる国々 (英国、フランス等)においても、競争事業者 は既存事業者のDSLサービスの再販売を行なう 形態に留まっている。 ◇設備ベースの競争に近いULLは、北欧諸国で一部 利用されているだけである。(ただし、日本は ULLベースの競争事業者のシェアが2/3に達して いる、極めて例外的な国となっている) 3 2. ITUのインターネット・レポートより (3) 【解説-情報通信総合研究所】 日本が「月額料金」、「100Kbps当りの料金」、 「最高速度(26Mbps)」のいずれにおいても 世界トップであることが示されている。 この点について、「日本は世界で最も高速で、 かつ、最も低廉なブロードバンドが実現され ている国」とする報道が随所で行なわれた。 しかし、家計収入に占める割合は0.01%以下 と韓国の半分、米国の12分の1以下であり、日 本のBB料金が妥当な水準であるのかは検証が 必要と思われる。 4 3. 欧米主要国のブロードバンドの普及状況(2002年12月) 国 フランス ドイツ スウェーデン (注)FTのシェア 英 国 米 国 (注)DTのシェア (注)BTのシェア (ADSL) 既存のネットワークを利用した 事業者が提供する ADSL(注) 既存の大手キャリアの ADSL を 利用する顧客の割合 LLU もしくは自前回線による DSL 100 名あたりの DSL エンドユーザー 1,400,000 3,000,000 424,000 587,000 6,596,000 71% 85% 75% 50% N/A 10,500 195,000 5,000 2,250 380,000 2.39 3.98 4.79 1.00 2.42 283,000 57,000 154,000 783,000 11,300,000 0.48 0.05 1.74 1.32 4.14 0 70,000 142,500 6,750 1,928,000 1,693,500 3,322,000 725,500 1,379,000 20,204,000 (ケーブルモデム) ケーブルモデム加入数 100 名あたりのケーブルモデム加入数 その他のブロードバンド加入数 ブロードバンド加入数の合計 (注)この数字は、「既存の大手キャリアの小売BBサービス+その卸売BBサービスを再販売する競争事業者のサービス」の加入数の 合計である。 (出展)オフテル「インターネットアクセスの国際比較調査」(2003年6月)-ただし、上記の表の原典はOECD 5 4. 米国のブロードバンド回線数の推移 ◆米国の高速インターネット接続回線は、引続きケーブルモデム(グラフ中の「同軸ケーブル」)が優勢 米国の高速回線数推移 25,000,000 20,000,000 衛星/固定無線 15,000,000 その他固定網 光ファイバー ADSL 10,000,000 同軸ケーブル 5,000,000 0 99年12末 同軸ケーブル ADSL 光ファイバー その他固定網 衛星/固定無線 合 計 00年6末 00年12末 01年6末 01年12末 02年06末 02年12末 99年12末 1,411,977 369,792 312,204 609,909 50,404 00年6末 2,284,491 951,583 307,151 758,594 65,615 00年12末 3,582,874 1,977,101 376,203 1,021,291 112,405 01年6末 5,184,141 2,693,834 455,593 1,088,066 194,707 01年12末 7,059,598 3,947,808 494,199 1,078,597 212,610 02年06末 9,172,895 5,101,493 520,884 1,186,680 220,588 02年12末 11,369,087 6,471,716 548,471 1,216,208 276,067 2,754,286 4,367,434 7,069,874 9,616,341 12,792,812 16,202,540 19,881,549 *「高速回線」とは「少なくとも片方向が200kbpsを超える回線」 出典:FCC統計“High-Speed Services for Internet Access: Status as of December 31, 2002”2003.06公表より情総研が作成 6 5. 米国のブロードバンド回線数の内訳 ◆光ファイバーの大半は企業向けであり、マス市場向けのFTTHは微小 15千回線 548千回線 米国の高速回線数 衛星/固定 無線 光ファイ 1.4% バー その他固定 2.8% 網 6.1% ADSL 32.6% 高速回線(住宅/小企業) その他固衛星/固定 光ファイ定網 無線 バー 1.2% 1.5% 0.1% ADSL 31.9% 2002年12末 17,357千回線 同軸ケー ブル 65.3% 2002年12末 19,882千回線 同軸ケーブ ◆ADSL市場においては引続きILECが圧倒的シェア →回線共用提供義務の廃止でさらに独占傾向が強まる可能性 ル 57.2% ADSL市場シェア ILEC以外 他ILEC 4.9% 8.8% 2002年12月末 6,472千回線 RBOC 86.3% 7 6. 欧州のDSLの競争状況 ◆ 欧州のDSLは2002年末時点で約1,000万。既存キャリアのDSLシェアが約95% →既存キャリアの卸売DSLを再販売する形での競争がメイン ◆ 同時期のケーブルモデムは383万→英国などケーブルモデムの方が多い国もある 欧州におけるDSL市場シェア 競争事業者 (ULL) 4.0% 競争事業者 (シェアド) 0.7% 既存キャリア 卸売 16.2% 2002年末 10,654千回線 既存キャリア 小売 79.1% *データに含まれるのは、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、 イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国の15カ国 出典:ECTA(欧州競争的電気通信事業者協会) 8 7. 主要国の Fiber-to-the-home(FTTH)の普及状況 ◆英国の規制機関オフテルの「インターネット・アクセスの国際比較調査」(2003年6月) によれば、欧州のFTTHのリーダーはスウェーデン。主要3カ国(英独仏)では、FTTHは ほとんど存在しない。 ◆その他に、米国コーニング社(光ファイバーのメーカー)のレポートによれば、欧州で はイタリアでもFTTHが相対的に発展している。(下記参照) コーニング社の推計によるFTTH先進国の加入数( 2002年9月末時点) “日本とスウェーデンがFTTH展開におい て世界をリードしている“ 80,000+(注) 80,000 “イタリアと米国がそれに次いでいる” 50,000 30,000+ by コーニング社パブコメ (下記の出典を参照) 米国 日本 スウェーデン イタリア (注)日本の実際の2002年9月末のFTTH加入数は114,608であった。最新値(2003年8月末)は608,045である。(総務省統計) (出典)コーニング社がFCCのUNEの3年毎の見直し命令手続きに提出したパブコメ(”An Overview of International Fiber to the Home Deployment 2002.10.16”) 9 8. ブロードバンド競争の構造 (1) 【モード内競争とモード間競争】 モード内競争 モード間競争 ① ほとんど存在しない競争形態(企業向けに少 数) ② 主要国では日本で最も発達している競争形態 ③ 主に欧州で発達している競争形態 ④ 米国で活発に展開されている競争形態 ⑤、⑥ 日本の光ファイバー以外、他国で 「その他のBB」はほとんど発達していない。 ADS L ケーブルモデム 既存事業者 (フル・ネットワーク) ② ④ ③ ◇ケーブルTV会社はISPにネット ワーク開放の義務はなし ⑥ ① ◇多くの国で地域独占 (モード内競争はなし) その他のブロードバンド フル設備 ベース LLU利用 リセラー (主にISP) ⑤ 光ファイバー 地上無線(Wi-Fiなど) 競争事業者 衛星通信 10 ほか 9. ブロードバンド競争の構造 (2) 【DSL提供におけるループのアンバンドリング】 ◇競争事業者がDSLサービスを提供する手段としては、前述のように、①フル設備ベース、②既存 事業者のアンバンドルされた銅線ループを利用(一部、自社設備)、③リセール(自社設備なし)、 の3つの形態が存在する。 ◇このうちの②は、銅線を丸ごと借りる「フルアンバンドル」と、銅線の高周波数部分のみを借りる 「回線共用(米国ではLine Sharing、欧州ではShared access)」の2形態に分類される。 (1) フルアンバンドル 既存事業者の市内交換局 競争事業者の顧客(音声も DSLも競争事業者が提供) ループ 市内交換機 M D F モデム 競争事業 者の設備 は競争事業者が既存事業者 からレンタルしている回線 11 競争事業 者の設備 競争事業 者の設備 音 声/データ 競争事業 者の設備 (2) 回線共用(ラインシェアリング、シェアドアクセス) ◇回線共用が最も利用されている国は日本である。日本では、2003年9月末時点で、NTT東西以外の 事業者の提供するDSL回線のシェアが63%(579万回線)に達しているが、その中心であるYahoo!BB (325万回線)、イーアクセスなどのサービスは、回線共用をベースとして提供されている。 ◇日本で例外的に回線共用が多用されている理由は、回線共用料金(競争事業者がNTTに支払う料金) が月額168円(NTT東日本)、176円(NTT西日本)と低廉な点などが指摘されているが、それだけで は説明出来ない部分も多い。 既存事業者の市内交換局 競争事業者のDSL顧客 (音声は既存事業者が提供) 市内交換機 音 声 スプリッター ループ M D F モデム/スプリッター 競争事業 者の設備 は競争事業者が既存事業者 からレンタルしている回線 (ただし、ループは高周波数 部分のみをレンタル) 12 競争事業 者の設備 競争事業 者の設備 データ 競争事業 者の設備 10. ブロードバンド規制の中心的課題-加入者回線のアンバンドリング ◇ブロードバンド・サービスの提供のためには、家庭や企業まで引き込まれた「加入者回線 (ループ)」を高度化する必要がある。 ◇しかし、電話の加入者回線は既存の地域電話会社がほぼ独占して保有している。 ◇これに対抗し得るのは、ケーブルTV、無線(携帯電話)、電力線などであるが、携帯電話は 3G(FOMAなど)でも速度的に不十分であり、また、電力線の通信利用は技術的な課題が多く 残されている。 ◇そのため、既存地域電話会社のADSLに対抗するためには、 ①既存地域電話会社の加入者回線(ループ)の借り受け(レンタル) ②ケーブルTV会社によるケーブルモデムの提供 ③電力会社などによる光ファイバー・サービスの提供 ④固定無線サービス(無線LANアクセス、等)の提供 などの方法がある。このうち、①を実現するための規制制度が「加入者回線の開放義務付け」 (欧米では、「ローカル・ループ・アンバンドル(LLU)」と呼ばれている)である。 ◇しかし、開放を義務付ける加入者回線の種類(銅線、光ファイバー)や、その料金水準などを 巡っては大きな議論がある。 ◇最近の欧米の規制状況を観察すると、「銅線については開放を義務付け」、「光ファイバーは 開放義務を免除」という方向性が主流になりつつある。 13 11. 欧米における加入者回線のアンバンドリング規制の実態 (1) 米国と欧州(EU)の加入者回線のアンバンドリング規則の概要 国 根拠となる現行法規 フルアンバンドル 銅線 ループ 回線共用 光ファイバー・ループ (FTTH ループ) E U 米 国 欧州委員会「ローカル・ループに対するアン FCC「UNE の 3 年毎の見直しに関する命 バンドルされたアクセスに関する規則」 令」(2003 年 10 月 2 日発効(※)) (2000 年 12 月 30 日発効) 引き続き、アンバンドル提供義務を課す。 アンバンドル提供義務を課す。 ・従来は課してきたアンバンドル提供義務 を廃止する(3 年間の移行期間を設定)。 ・ただし、命令発効以前に CLEC が獲得し アンバンドル提供義務を課す。 た回線共用ベースの顧客は、最終的な結 論が下されるまで保護される。 ・下記の場合を除き、従来は課してきたア ンバンドル提供義務を廃止する。 【アンバンドル義務が課されるケース】 既 アンバンドル提供義務を課さない。(ただ 存の銅線に重複して光ファイバーを敷設 し、加盟国が自国の判断で課す事は禁止し し、銅線を撤去する場合には、その光フ ない) ァイバー上で、音声級サービスの提供が 可能な、64Kbps の伝送パスへのアクセス を提供しなければならない。 (※)本命令は提訴されており、命令の効力の差止めを裁判所が審議中である。 14 (2) 米国の加入者回線(ループ)のアンバンドリング提供の義務付けの見直し ◇米国の連邦規制機関のFCCは、2003年8月21日、市内音声競争/ブロードバンド競争に関連する 従来の規則を大幅に転換する新規則を発表した。 ◇新規則の中において、従来は既存の地域電話会社(ILEC:Incumbent Local Exchange Carrier) に課されていた、住宅向けの加入者回線(ループ)の開放義務の多くが緩和・撤廃された。 (a) 銅線ループ ◇ILECは、銅線ループについては、引き続きアンバンドリング提供の義務付けを負う。 ◇ただし、ここで意味するアンバンドリングは、スタンドアローン回線のフルアンバンドルの ことである。 (b) 住宅向けの光ファイバー・ループ(FTTHループ) ◇今回の命令では、FTTHループに関して、アンバンドリング義務が大幅に撤廃(緩和)された。 ■ 従来、FTTHループはアンバンドリングの対象とされてきた。 ■ しかし、今回の命令では、更地(Greenfield)に新規敷設(New build)する場合には、アンバ ンドリング義務は完全に撤廃された。 ■ また、既存の銅線に重複敷設(Overbuild)する場合も、銅線が引き続き残置される場合には、 FTTHループのアンバンドリング義務は撤廃された。 (ただし、銅線撤去の場合は、FTTHループ上での音声サービス提供が可能な、64Kbpsの伝送パスの 提供義務が課された) 15 【図解】 FTTHループのアンバンドリング義務 更地(Greenfield) 既存開発地(Brownfield) ILECの交換局 銅線を残置 重複敷設 新規敷設 アンバンドル義務なし アンバンドル義務なし (注) 銅線撤去 音声サービス用の64Kbps 伝送パスの提供義務あり はFTTHループ ILEC による FTTH ループ の敷設形態 光 フ ァ イ バ ー を 更 地 (Greenfield)で新規敷設する場 合。(いかなる既存のループも存 在しない場合) ILEC による FTTH ループのアンバンドリング義務 FTTH ループのアンバンドリング義務はなし。 ILEC が銅線を撤去する場合 ILEC が銅線を残置する場合 既存開発地(Brownfield)で、光 FTTH ループ上で、音声級サービ ファイバーを銅線に重複敷設する FTTH ループのアンバンドリング スの提供が可能な、64Kbps の伝 場合。 義務はなし。(銅線のアンバンド 送パスへのアクセスを提供しなけ リング義務は残る) ればならない。 16 (C) ライン・シェアリング(回線共用) ◇FCCは「ループの高周波数部分(HFPL)はアンバンドルすべきネットワーク要素ではない」 と判断して、ILECによるCLECへの回線共用の提供義務を、3年間の移行期間を経て廃止する 決定を行なった。 ◇ただし、今回の命令の「発効以前」と「発効以降の3年間(廃止までの移行期間)」に獲得 された回線共用ベースのDSL顧客(CLECの顧客)を区分して、前者のケースでは、ILECに 回線共用の提供の継続を義務付けた。 ◇既存顧客の保護は、2003年2月20日の規則採択時には盛り込まれておらず、CLECに配慮した 「祖父条項(Grandfather 条項)」と位置付けられている。しかし、このGrandfather条項は、 2004年に開始される本命令の見直しの結論が出るまでの措置となっている。 CLEC の回線共用顧客の区分 ILEC による回線共用の提供義務 CLEC のエンドユーザがサービスの解約を行わない限り、ILEC FCC の今回の命令が発効する以 はその CLEC が既存の回線共用ベースの顧客にサービス提供が 前からの回線共用顧客 継続可能とするために、引き続き HFPL へのアクセスを提供し なければならない。(「Grandfather 条項」) ◆回線共用の廃止までの 3 年間の移行期間は、ILEC は CLEC に FCC の今回の命令が発効して以 HFPL へのアクセスを提供しなければならない。 降に獲得した回線共用顧客 ◆3 年間の移行期間が終了した後は、もはや ILEC は CLEC に HFPL へのアクセス提供義務は負わない。 17 (3) 欧州委員会のローカル・ループ・アンバンドル規則(その1)-全体 ※以下の囲みは、EUの「ローカル・ループに対するアンバンドルされ たアクセスに関する規則」(2000年12月30日発効)の本文から抜粋 ローカル・ループ・アンバンドル(LLU)の義務付け Article 3(アンバンドルされたアクセスの提供) 1.通知された電気通信事業者は、自らのローカル・ループ及び関連設備へのアンバンドルされたアクセス について、2000年12月31日から参照オファー(契約約款)を発表し、それを更新しなければならない。 LLUの提供を義務付けられるのは誰か? Article 2(定義) (a)「通知された電気通信事業者」とは、自国の国家規制当局により、固定公衆電話ネットワークの提供 において、有意な市場力を有すると指定されてきた固定公衆電話ネットワークの事業者を意味する。 アンバンドル提供を義務付けられるローカル・ループとは銅線である Article 2(定義) (c)「ローカル・ループ」とは、加入者宅内のネットワーク着信点と、固定公衆電話ネットワークの主配 電盤(MDF)もしくは同等の設備を接続する、物理的な撚線の銅線ペア回線を意味する。 LLUに含まれるのはフルアンバンドルと回線共用(共用アクセス)である Article 2(定義) (d)「ローカル・ループへのアンバンドルされたアクセス」とは、ローカル・ループへの完全(フル)な アンバンドルされたアクセス、及び、ローカル・ループへの共用アクセスを意味する。 18 (3) 欧州委員会のローカル・ループ・アンバンドル規則(その2)-光ファイバー・ループ ◇前ページに記載した通り、EUはLLU規則の本文の中において、「ローカル・ループ」は銅線 を意味することを明記している。 ◇光ファイバー・ループのアンバンドリングについては、同規則の「前文」部分において、 以下のような記述が行なわれている。 ◇LLU規則の前文より◇ (5)主要なユーザに対する、高容量の光ファイバーによる新規ループの直接的な提供は、新規 投資に基づく競争的な条件下で発展する特殊な市場である。従って、本規則では銅線ロー カル・ループへのアクセスについて取り扱う。しかし、市内インフラストラクチャへの他 の種類のアクセスに関する国家的義務について、本規則はその権限を侵害することはない。 解 釈 ◇ 光ファイバー・ループは、新規投資により競争的に建設される、銅線とは異なる市場。 ◇ 従って、EUレベルでは光ファイバー・ループのアンバンドリングは義務付けない。 ◇ しかし、加盟国の国家規制当局が、独自に義務付けを行なうことは禁止しない。 19 【図解】 銅線ループのアンバンドリング義務付けの概念図(米国、EU) 米 国 E FCC U 欧州委員会 〇(義務付け:フルアンバン ドル、回線共用の両方) 【フルアンバンドル】 〇(義務付け) 【回線共用】 △(今後は義務付けない。 ただし、既存顧客は当面 保護) 加盟国 英 国 〇(同上) フランス 〇(同上) 既存の事業者(ILEC) 20 ドイツ 〇(同上) 【図解】 FTTHループのアンバンドリング義務付けの概念図(米国、EU) 米 国 E FCC U 欧州委員会 ×(義務付けない。ただし、 加盟国による義務付けは 禁止しない) △(義務付けない。ただし、重複敷設で 銅線撤去の場合のみ、一部の義務付 けあり) 加盟国 英 国 フランス ドイツ ×(義務付けなし) ×(義務付けなし) 〇(義務付け) 既存の事業者(ILEC) 21
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