急性精神病状態 Acute psychotic State

急性精神病状態
~Acute Psychotic State~
急性精神病状態とは?
統合失調症の初発・急性憎悪、感情障害、器
質性精神障害、覚醒剤などの薬物によるもの、
など、原因はさまざま。
患者は極めて思路障害が強く、混乱、興奮、
時に自傷や他害の危険も。
統合失調症の症状
陽性症状(急性期)
精神運動の異常(興奮、昏迷)、異常体験(幻覚妄
想)
陰性症状・認知症状(慢性期)
意欲の欠如、感情鈍麻、思考障害、接触障害
ドーパミン過剰仮説
抗精神病薬の作用機序がドーパミン受容体
阻害作用にあること
統合失調症似の症状を発現する精神刺激薬
(覚醒剤)がシナプス間隙へのドーパミン放出
作用を有するドーパミン作動薬であること
が、この仮説を支持。
ドーパミン神経系の脳内分布
 中脳-皮質・辺縁系経路
情動や認知をはじめとする高次精神機能を調節
 黒質-線条体経路
錐体外路性の運動を調節
 隆起部-漏斗部-下垂体経路
プロラクチンの分泌を調節
抗精神病薬
従来型抗精神病薬
低力価群(クロルプロマジン、レボメプロマジン)
高力価群(ハロペリドール、ブロムペリドール)
新規(第2世代、非定型)
リスペリドン、オランザピン、クエチアピン
躁うつ病とは
躁状態とうつ状態を繰り返す
発症率1%
遺伝的な体質が発症に関与
神経伝達物質の異常が関与(モノア
ミン仮説)
①興奮の激しい急性期
ヒルナミン注(25mg)1-2アンプル
セレネース注(5mg)1-2アンプル
混筋注
ヒルナミン
一般名:マレイン酸レボメプロマジン
(フェノチアジン誘導体)
フェノチアジン系は基本的に低力価である
☆アドレナリンα1受容体
☆ドパミンD2受容体
☆ヒスタミンH1受容体
☆セロトニン5-HT2A受容体
☆ムスカリン受容体
に対する遮断作用
抗精神病作用
 幻覚・妄想・情動不
安定・強迫観念な
どの統合失調症症
状を改善。
 中脳腹側被蓋野-
辺縁系におけるド
パミンD2受容体の
遮断作用による。
鎮静作用
 ヒスタミンH1受容体遮
断による
 中枢ヒスタミン神経系
の細胞体は視床下部
の結節乳頭核(TM)に
存在し、神経線維を脳
のほとんどの部位に投
射し、覚せい、食欲抑
制、飲水、体温低下、
痙攣抑制、神経内分泌
促進などに働いている。
~副作用~
☆アドレナリンα1受容体遮断⇒起立性低血圧
頻脈、射精障害
☆ドパミンD2受容体遮断⇒悪性症候群、プロラ
クチン分泌増加
☆ヒスタミンH1受容体遮断⇒鎮静睡眠作用
☆ムスカリン受容体遮断⇒口渇、かすみ目、便
秘、尿閉、発汗減少
禁忌
(1)昏睡状態,循環虚脱状態にある患者[これら
の状態を悪化させるおそれがある。]
(2)バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神
経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神
経抑制剤の作用を延長し増強させる。]
(3)エピネフリンを投与中の患者
(4)フェノチアジン系化合物及びその類似化合
物に対し過敏症の患者
セレネース
一般名:ハロペリドール
(ブチロフェノン誘導体 )
フェノチアジン系よりも強い
☆D2-受容体への選択性が強い。
☆中枢神経系におけるドーパミン作動系、ノル
エピネフリン作動系などを抑制する。
錐体外路障害
 中脳黒質-線状体路
のドパミンD2受容体遮
断により、パーキンソン
病様症状、急性ジスト
ニア、アカシジアなどが
起こる。数ヶ月の長期
投与で遅発性のジスキ
ネジアが起こる。長期
のドパミンD2遮断により
過敏性が生じたため。
悪性症候群
 抗精神病薬などの投与
中や急激な中止によっ
て起こる
 体温中枢および錐体外
路系でのD2、α1、5
‐HT2受容体の強力な
遮断による
 発熱、脱水症状、錐体
外路症状、自律神経症
状、精神症状など
禁忌
(1)昏睡状態の患者〔昏睡状態が悪化するおそれがある.〕
(2)バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にあ
る患者〔中枢神経抑制作用が増強される〕
(3)重症の心不全患者〔心筋に対する障害作用や血圧降下が報告さ
れている〕
(4)パーキンソン病の患者〔錐体外路症状が悪化するおそれがある〕
(5)本剤の成分またはブチロフェノン系化合物に対し過敏症の患者
(6)エピネフリンを投与中の患者
(7)妊婦または妊娠している可能性のある婦人
(8)テルフェナジンまたはアステミゾールを投与中の患者〔QT延
長,心室性不整脈を起こすおそれがある〕
②興奮の治まらない
幻覚妄想状態
1.通常の処方
2.興奮が激しい場合の処方
1.通常の処方
・セレネース錠(3mg) 3~6錠
成分名・・・ハロペリドール
・アキネトン(1mg) 3錠
成分名・・・塩酸ビベリデン
ハロペリドール→抗精神病作用
塩酸ビベリデン→ハロペリドールの副作用抑制
ハロペリドール(既出)
・主にD2ブロッカーであり、その他の作用少ない
・ドーパミン系作用よりもアセチルコリン系作用が
優位=錐体外路症状でやすい(副作用)
アセチルコリン系作用を抑える必要がある
→そこで塩酸ビベリデン
塩酸ビベリデン
・抗コリン薬
・パーキンソン病治療薬の側面もある
・副作用 :視力障害、口渇、便秘、尿閉
塩酸ビベリデンの禁忌
・緑内障
抗コリン作用により眼圧上昇するため
・重症筋無力症
抗コリン作用により神経筋接合部でのアセチル
コリン伝達阻害が悪化するため
2.興奮が激しい場合の処方
・ウインタミン錠(25mg) 6錠
成分名・・・クロルプロマジン[静穏作用強い]
・ピレチア錠(25mg) 3錠
成分名・・・プロメタジン
クロルプロマジン→より強い抗精神病作用
プロメタジン→その副作用抑制
クロルプロマジン
・α1ブロッカー
非常に強い静穏作用
・D2ブロッカー
抗幻覚・妄想作用
・H1ブロッカー
鎮静作用強める
・抗コリン作用もあるが、弱い
クロルプロマジンの副作用
・α1ブロッカー
血圧降下
・D2ブロッカー
錐体外路症状→
抑えるために
プロメタジン
・H1ブロッカー
眠気
・抗コリン作用(弱い)
視力障害、口渇、尿閉、便秘
クロルプロマジンの禁忌
・昏睡状態
・・・H1遮断作用によりさらに中枢神経系が抑制され
てしまうので
・エピネフリン投与中の患者
・・・α1遮断作用により、エピネフリンによるα1、β2アド
レナリン作用性伝達のうちα1のみ阻害されてしまい
β2優位→血管拡張→血圧降下が起きる
= アドレナリン反転
プロメタジン
・抗コリン作用
・・・クロルプロマジンの錐体外路症状を抑える
・H1ブロッカー(抗ヒスタミン薬)
・・・鎮静効果、クロルプロマジンの作用増強
・ 副作用 が比較的軽い薬
(抗コリン作用→口渇、尿閉、便秘/
H1ブロッカー→眠気)
・パーキンソン病治療薬、制吐薬で使われることも
プロメタジンの禁忌
・昏睡状態・・・中枢神経抑制作用による
・緑内障・・・抗コリン作用により眼圧上昇するため
・前立腺肥大・・抗コリン作用により排尿困難が悪化
・フェノチアジン系化合物およびその類似の
化合物に対し過敏症の患者
・2歳未満の乳幼児
③抑鬱気分と緊張の強い
場合
1)トフラニール錠(3mg)6錠
ワイパックス錠(1mg)3錠
2)ルジオミール錠(25mg)1~2錠
デパス錠(1mg)1~2錠
③抑鬱気分と緊張の強い場合
1)トフラニール錠(3mg)6錠
成分名・・・塩酸イミプラミン
ワイパックス錠(1mg)3錠
成分名・・・ロラゼパム
2)ルジオミール錠(25mg)1~2錠
成分名・・・塩酸マプロチリン
デパス錠(1mg)1~2錠
成分名・・・エチゾラム
塩酸イミプラミン(トフラニール)
三環系抗うつ薬
<作用機序>
 遊離モノアミン(ノルアドレナリン、セロトニン)の神経
細胞内への再取り込み阻害
 神経シナプス部にモノアミン貯留
 慢性投与→受容体のdown regulation→ネガティブ
フィードバック解除→ノルアドレナリン、セロトニンの
代謝回転上昇
 効いてくるまで2~3週間
塩酸イミプラミン(トフラニール)
<作用>
うつ病患者に投与すると気分高揚感
α1ブロック作用→静穏作用
塩酸イミプラミン(トフラニール)
<副作用>
抗コリン作用→眼圧上昇、不整脈に至る頻
脈、尿閉
α1ブロック作用→起立性低血圧
<禁忌>
緑内障、心疾患、前立腺肥大
ロラゼパム(ワイパックス)
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬
<作用機序>
Cl- チャネルを構築するGABAA受容体α、γ
サブユニットであるBZD結合部位に薬物が
結合
→Cl-チャネルの開口頻度増加
→抑制作用増強
ロラゼパム(ワイパックス)
<作用>
抗不安作用
鎮静・催眠作用
筋緊張緩和作用
抗痙攣作用
ロラゼパム(ワイパックス)
<副作用>
軽い眠気、倦怠感、運動反射能力の低下、
食欲不振、吐き気、口や喉の渇き
<禁忌>
 重症筋無力症(筋弛緩作用による)
 緑内障(抗コリン作用による)
塩酸マプロチリン(ルジオミール)
四環系抗うつ薬
<作用>ノルアドレナリン取り込み阻害
慢性投与→受容体のDown Regulation→NA代謝回
転上昇
<副作用>
口の渇き、眠気、めまい、立ちくらみ、便秘
抗コリン作用→眼圧上昇 不整脈による頻脈 尿閉
塩酸マプロチリン(ルジオミール)
<禁忌>
 MAO阻害薬投与中
 痙攣性疾患
 心筋梗塞回復初期
 前立腺肥大
 緑内障
エチゾラム(デパス)
チエノジアゼピン系の抗不安薬
<作用機序>
Cl- チャネルを構築するGABAA受容体α、γ
サブユニットであるBZD結合部位に薬物が
結合
→Cl-チャネルの開口頻度増加
→抑制作用増強
エチゾラム(デパス)
<作用>
抗不安作用
抗痙攣作用
穏やかな鎮静・催眠作用
筋緊張緩和作用
エチゾラム(デパス)
<副作用>
眠気、ふらつき、倦怠感、脱力感など。
重大な副作用には
 横紋筋融解症
 悪性症候群
 間質性肺炎など
エチゾラム(デパス)
<相互作用>
併用で作用増強
 中枢神経抑制剤(barbiturate系など)
 MAO阻害剤
 アルコール
 フルボキサミン
<禁忌>
 緑内障
 重症筋無力症