化学概論 第3回 GO⇒41⇒GO 1. を押してください 前回までの内容 • 光は波としての振る舞いが目立つが、粒子 (光子)としての性質もある。 • 電子は粒子として発見されたが、波としての 性質を示す。(物質波、ドブロイ波) • 水素原子スペクトルの説明のために、ボーア の水素原子モデルが考案された。 • ボーアモデルでは、電子は原子核の周りを一 定の軌道でまわっている。(粒子性のみ) • 電子の波動性を取り入れた考え方が必要。 水素原子スペクトルのうち可視部 のものはどれか ライマン系列 バルマー系列 パッシェン系列 ブラケット系列 87% 13% ト系 列 0% 列 列 ッ ケ ブ ラ パ ッ シ ェ ン 系 マ ー 系 ル バ イ マ ン 系 列 0% ラ 1. 2. 3. 4. ボーアの水素原子モデルは? 1. 電子は原子核の周囲 でぼんやりと存在する 2. 電子は原子核の周囲 を円軌道で運動 3. 電子の軌道は不確定 4. どれも正しくない 63% 23% 12% 不 ど れ も 正 は 道 軌 の 子 電 は 原 子 電 電 子 は 原 子 子 核 核 の の 周 周 囲 ... ... 確 定 し くな い 2% 波動方程式 波動:波の運動 電子の状態を波として考える (1)1次元の波動 Y t=0でのY tでのY Vt x x 軸方向に進む波。波の変位をYとする Yは時刻 t と座標 x の関数 波の形(変位の形状、パターン)を f とすると t=0 における変位は Y=f(x) このパターンが正の方向に速さVで進んでいく(進行波) YF=f(x-Vt) ・・・ ① (Fは前向きに進む波) 単純な場合 変位:調和振動(ばね、振り子の単振動) f(x):sin関数またはcos関数 2 f ( x) A sin ( x - xo ) x0 x0は初期位相 速度V A この振動がx方向に進行すると、①の関係から YF A sin いま、 x0=0として、n=Vより 2 ( x - Vt - x o ) (n:振動数、:波長) x YF ( x, t ) A sin 2 ( -nt ) ・・・ ② 波動関数 x YF ( x, t ) A sin 2 ( -nt ) ・・・ ② 波動関数 一般化する ②を t について2度微分し、また x について2度微分する Y x : t で偏微分 -2nA cos 2 ( -nt ) t 2Y x : t でもう一度偏微分 2 -(2n ) A sin 2 ( -nt ) 2 t Y 2 x : x で偏微分 A cos 2 ( -nt ) Y x 2Y 2 2 x : x でもう一度偏微分 ( ) A sin 2 ( n t ) x 2 Y :偏微分、微分する変数以外の変数は定数として取扱う x 2Y 2 ( 2 n ) Y 2 t 2Y 2 2 -( ) Y 2 x ( 2 )2 Y Y 2 x (2n ) 2 t 2 2 2Y 1 2Y 2 2 x V t 2 2 V=nより x YF ( x, t ) A sin 2 ( -nt ) 2Y 1 2Y 2 2 x V t 2 ・・・ ② :波動関数 ・・・③ :波動方程式 ③は②を解の一つとして含む線形偏微分方程式。 もっとも一般的な波動の表現 たとえば、 Y1とY2がともに③の解であるとき、これらの線形結合 a1Y1+a2Y2 もまた③の解となる (2)定常波 原子中の電子の運動:限られた空間内での運動 運動は定常状態で、空間内のそれぞれの 場所での電子の存在確率は時間によらず 一定 波動関数Yは時間に依存しない → 定常波 1次元の定常波 正の方向に進む波YFと逆方向に進む波YBを重ね合わせる x YF ( x, t ) A sin 2 ( -nt ) x YB ( x, t ) A sin 2 ( nt ) Y YF ( x, t ) YB ( x, t ) 2 A sin( 2x ) cos(2nt ) ( x) cos(2nt ) (x)=2Asin(2x/):振幅項、時間によらない cos(2nt):位相項、場所xによらない 節(常に振幅が0) 2A /2 3/2 x 腹(振幅が 0~|最大|に変化) 波Yの腹と節の位置は時間tに無関係 このような定常波は振幅項のみで表せば十分で、 (x)は波動方程式を満足する 2 ( x) 2 2 ( ) ( x) ・・・④ 定常波の波動方程式 2 x (3)波動性と粒子性 波動方程式に、電子の粒子性(ドブロイの関係式)を取り込む 電子の全エネルギーE、ポテンシャルエネルギーU(x)、運動量p p2 とすると E U ( x) 2m これと、ドブロイの式 =h/p を定常波の波動方程式④に代入 整理して 2 Y ( x) 8 2 m - 2 E - U ( x)Y( x) 2 x h h2 2 U ( x)Y( x) EY( x) - 2 2 8 m x ・・・⑤ 1次元のシュレディンガー方程式(Schrödinger equation) 電子の運動を「粒子性」と「波動性」の二つ の性質を考慮して表す基本方程式 3次元に拡張するには、変数と偏微分の項を付け加えて h2 2 2 2 - 2 2 2 2 U ( x, y, z )Y ( x, y, z ) EY ( x, y, z ) y z 8 m x これを整理した形にすると h2 2 2 2 H - 2 2 2 2 U ( x, y, z ) :ハミルトニアン演算子 8 m x y z とおいて HY EY 電子の置かれている場「ポテンシャルエネルギーU(x,y,z)」につ いて、シュレディンガー方程式を解くと、電子の波動関数Y(x,y,z) と電子のエネルギーEが得られる (4)電子の波動関数Yの解釈(意味) 波動関数の2乗は電子の確率密度を与える(ボルンの解釈) Y 2 ( x, y, z) または Y ( x, y, z ) は座標x,y,zに電子を見出す確率 2 空間の微少体積dxdydz(=dv)の中に電子を見出す確率は Y ( x, y, z ) dxdydz 2 これを全空間にわたって積分すると、全空間で電子は必ずどこ かに存在するので、電子1個の波動関数では1となるはず Y( x, y, z) 2 dxdydz Y ( x, y, z ) dv 1 2 :規格化条件 この条件を満たす波動関数は「規格化」されているという Y2が電子の存在確率を示すためには、上の積分が可能でな ければならない そのために、波動関数の性質として 有限性 ・・・ 積分可能 連続性 ・・・ 積分可能 1価性 ・・・ ある位置ではひとつの値のみ持つ が、求められる 1次元の電子の運動 (1次元の井戸型ポテンシャル) U=∞ U=0 U=∞ 幅aの井戸内に閉じ込められた電 子を考える 電子の受けるポテンシャルは 0 x a : U ( x) 0 x 0, a x : U ( x) 0 a 1次元のシュレディンガー方程式より h2 2 U ( x)Y( x) EY( x) - 2 2 8 m x ただし、U(x)=∞の領域には、電子が入ることができないので、 x 0, a x : Y ( x) 0 0 x a : U ( x) 0 であるので、この領域のシュレディンガー方程式は h2 2 - 2 Y ( x) EY ( x) 2 8 m x この微分方程式の一般解は Y ( x) A sin kx B cos kx 2 8 m 2 k 2 E h Y(x)はxの全領域で連続である必要があるため(連続性) Y(0)=0、Y(a)=0 である必要がある ・・・境界条件 したがって B0 n x k a nx=1,2,3,… :量子数 これより、E(全エネルギー)はnxを用いて決めることができる 係数Aは、規格化条件 より決定され Y ( x) 2 dx 1 2 A a 以上から、シュレディンガー方程式は完全に解けたことになって 0 x a では Y nx ( x) 2 nx sin a a nx2 h 2 Enx 8m a2 x nx=1,2,3,… :量子数 境界条件から導入された量子数:nx=1,2,3,…の、それぞれの値 に対して、ひとつの波動関数とひとつのエネルギーが対応する 1次元の電子の運動 (1次元の井戸型ポテンシャル) U=∞ U=0 0 U=∞ a nx=3 nx=2 nx=1 2 nx Y nx ( x) sin a a nx2 h 2 Enx 8m a2 x nx=1,2,3,… :量子数 9h 2 E3 8m a2 4h 2 E2 8m a2 h2 E1 8m a2 2次元の井戸型ポテンシャル x方向の幅a、y方向の幅bの2次元の井戸を考える b 0 y U(x,y)=0 a x 井戸の外では U(x,y)=∞ シュレディンガー方程式は 0 x a,0 y b : U ( x, y) 0 より h2 2 2 - 2 2 2 Y ( x, y ) EY ( x, y ) y 8 m x 簡単に解くために、「変数分離」の方法を用いる Yはx,yについての関数 Y ( x, y) Yx ( x)Y y ( y) と表すと、x, yそれぞれの微分方程式は1次元の場合と同様になる 2 n x sin a a x nx=1,2,3,… :x方向の量子数 2 n y Y y ,ny ( y ) sin y b b ny=1,2,3,… :y方向の量子数 Y x ,nx ( x) x, y両方の関数を合せると Y ( x, y) Yx ( x)Y y ( y) より 4 nx n y Y nx ,ny ( x, y) sin x sin y ab a b 2 2 n h nx y 2 2 8m a b 2 Enx ,ny nx、ny=1,2,3,… :量子数 2次元では2種類の量子数が現れる nx、nyが決まると ⇒ 波動関数Ynx,nyとエネルギーEnx,nyが決まる 特に、a=bの「正方形」の場合 Enx ,ny 2 h 2 nx2 n y h2 2 2 n n x y 8m a 2 a 2 8m a2 例えば、 (nx=1, ny=2) と (nx=2, ny=1) はいずれも E1, 2 5h 2 E2,1 8m a2 と、同じエネルギーをとるが、波動関数は異なる ⇒「縮退」しているという 外部からの影響などで系の対称性(上の例ではa=b)が崩れるとエ ネルギーが等しくならなくなり、「縮退が解ける」という。 2次元井戸中の波動関数 nx=1, ny=1 Y1,1 ( x, y) 2h 2 E1,1 8m a2 4 1 sin 2 a a 1 x sin y a 2次元井戸中の波動関数 nx=2, ny=1 nx=1, ny=2 Y1, 2 ( x, y) E1, 2 4 1 sin 2 a a 2 x sin y a Y 2,1 ( x, y) 5h 2 8m a2 5h 2 E2,1 8m a2 波動関数の形状は異なるが、エネル ギーが等しいので「縮退」している 4 2 sin 2 a a 1 x sin y a 二次元の波動関数と「縮退」 Y 2, 2 ( x, y) E2 , 2 4 2 2 sin x sin y 2 a a a 8h 2 8m a2 nx=2, ny=2 nx=2, ny=1 nx=1, ny=2 波動関数の形状は異なるが、エネル ギーが等しいので「縮退」している 4 1 Y1, 2 ( x, y) 2 sin a a 2 5h E1, 2 8m a2 2 x sin y a Y 2,1 ( x, y) 5h 2 E2,1 8m a2 Y1,1 ( x, y) nx=1, ny=1 4 2 1 sin x sin y 2 a a a 2h 2 E1,1 8m a2 4 1 sin 2 a a 1 x sin y a 二次元の波動関数と「縮退」 nx=3, ny=3 E3,3 E3, 2 13h 2 E2 , 3 2 8m a 「縮退」 nx=3, ny=2 nx=2, ny=3 10h 2 E3,1 E1,3 2 8m a 「縮退」 nx=3, ny=1 nx=1, ny=3 18h 2 8m a2 ここまでのキーワード 縮退: 2次元以上の空間での波動関数はポテン シャルの形状(対称性)から、複数の波動関 数が同じエネルギーを持つことがあり、これ を「縮退」という 今日のまとめ • 波の運動(波動)は波動関数で表される • 波動関数は波動方程式を満足する(らしい) • 波動方程式を(適当な条件下で)解くと、波動関数 が求められる(らしい) • 電子の波動性・粒子性をひとつの式として表したも のがシュレディンガー方程式 • 電子の受けるポテンシャルを用いて、シュレディンガ ー方程式を解くと、電子の波動関数、エネルギーが 求められる(らしい) • 電子の波動関数の2乗は電子の存在確率を表す • 等しいエネルギー状態に複数の波動関数が対応す ることを「縮退」という 出席確認、今日の講義はどうでしたか 1. 難しい (ちんぷんか んぷん) 2. なんか分かったような 気がする 3. よくわかった 0% 0% た っ か な ん か 分 難 し い ( ち か くわ よ ん ぷ よ ん か うな ... ん ぷ っ た ん ) 0%
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