化学概論

化学概論
第3回
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前回までの内容
• 光は波としての振る舞いが目立つが、粒子
(光子)としての性質もある。
• 電子は粒子として発見されたが、波としての
性質を示す。(物質波、ドブロイ波)
• 水素原子スペクトルの説明のために、ボーア
の水素原子モデルが考案された。
• ボーアモデルでは、電子は原子核の周りを一
定の軌道でまわっている。(粒子性のみ)
• 電子の波動性を取り入れた考え方が必要。
水素原子スペクトルのうち可視部
のものはどれか
ライマン系列
バルマー系列
パッシェン系列
ブラケット系列
87%
13%
ト系
列
0%
列
列
ッ
ケ
ブ
ラ
パ
ッ
シ
ェ
ン
系
マ
ー
系
ル
バ
イ
マ
ン
系
列
0%
ラ
1.
2.
3.
4.
ボーアの水素原子モデルは?
1. 電子は原子核の周囲
でぼんやりと存在する
2. 電子は原子核の周囲
を円軌道で運動
3. 電子の軌道は不確定
4. どれも正しくない
63%
23%
12%
不
ど
れ
も
正
は
道
軌
の
子
電
は
原
子
電
電
子
は
原
子
子
核
核
の
の
周
周
囲
...
...
確
定
し
くな
い
2%
波動方程式
波動:波の運動
電子の状態を波として考える
(1)1次元の波動
Y
t=0でのY
tでのY
Vt
x
x 軸方向に進む波。波の変位をYとする
Yは時刻 t と座標 x の関数
波の形(変位の形状、パターン)を f とすると
t=0 における変位は Y=f(x)
このパターンが正の方向に速さVで進んでいく(進行波)
YF=f(x-Vt) ・・・ ① (Fは前向きに進む波)
単純な場合
変位:調和振動(ばね、振り子の単振動)
f(x):sin関数またはcos関数
2
f ( x)  A sin
( x - xo )

x0
x0は初期位相
速度V
A

この振動がx方向に進行すると、①の関係から
YF  A sin
いま、 x0=0として、n=Vより
2

( x - Vt - x o )
(n:振動数、:波長)
x
YF ( x, t )  A sin 2 ( -nt )

・・・ ② 波動関数
x
YF ( x, t )  A sin 2 ( -nt )
・・・ ② 波動関数

一般化する
②を t について2度微分し、また x について2度微分する
Y
x
: t で偏微分
 -2nA cos 2 ( -nt )
t

 2Y
x
: t でもう一度偏微分
2
 -(2n ) A sin 2 ( -nt )
2
t

Y 2
x
: x で偏微分

A cos 2 ( -nt )
Y
x


 2Y
2 2
x
: x でもう一度偏微分

(
)
A
sin
2

(
n
t
)
x 2


Y
:偏微分、微分する変数以外の変数は定数として取扱う
x
 2Y
2

(
2
n
)
Y
2
t
 2Y
2 2
 -( ) Y
2
x

(
2
)2
 Y
 Y


2
x
(2n ) 2 t 2
2
 2Y
1  2Y
 2
2
x
V t 2
2
V=nより
x
YF ( x, t )  A sin 2 ( -nt )

 2Y
1  2Y
 2
2
x
V t 2
・・・ ② :波動関数
・・・③
:波動方程式
③は②を解の一つとして含む線形偏微分方程式。
もっとも一般的な波動の表現
たとえば、
Y1とY2がともに③の解であるとき、これらの線形結合
a1Y1+a2Y2
もまた③の解となる
(2)定常波
原子中の電子の運動:限られた空間内での運動
運動は定常状態で、空間内のそれぞれの
場所での電子の存在確率は時間によらず
一定
波動関数Yは時間に依存しない →
定常波
1次元の定常波
正の方向に進む波YFと逆方向に進む波YBを重ね合わせる
x
YF ( x, t )  A sin 2 ( -nt )

x
YB ( x, t )  A sin 2 (  nt )

Y  YF ( x, t )  YB ( x, t )
 2 A sin(
2x

) cos(2nt )
  ( x) cos(2nt )
(x)=2Asin(2x/):振幅項、時間によらない
cos(2nt):位相項、場所xによらない
節(常に振幅が0)
2A
/2

3/2
x
腹(振幅が
0~|最大|に変化)
波Yの腹と節の位置は時間tに無関係
このような定常波は振幅項のみで表せば十分で、
(x)は波動方程式を満足する
 2 ( x)
2 2

(
)  ( x)
・・・④ 定常波の波動方程式
2
x

(3)波動性と粒子性
波動方程式に、電子の粒子性(ドブロイの関係式)を取り込む
電子の全エネルギーE、ポテンシャルエネルギーU(x)、運動量p
p2
とすると
E
 U ( x)
2m
これと、ドブロイの式 =h/p を定常波の波動方程式④に代入
整理して
 2 Y ( x)
8 2 m
 - 2 E - U ( x)Y( x)
2
x
h
 h2  2

 U ( x)Y( x)  EY( x)
- 2
2
 8 m x

・・・⑤
1次元のシュレディンガー方程式(Schrödinger equation)
電子の運動を「粒子性」と「波動性」の二つ
の性質を考慮して表す基本方程式
3次元に拡張するには、変数と偏微分の項を付け加えて
 h2   2

2
2 
- 2  2  2  2   U ( x, y, z )Y ( x, y, z )  EY ( x, y, z )
y
z 
 8 m  x

これを整理した形にすると
h2   2
2
2 
H  - 2  2  2  2   U ( x, y, z ) :ハミルトニアン演算子
8 m  x y z 
とおいて
HY  EY
電子の置かれている場「ポテンシャルエネルギーU(x,y,z)」につ
いて、シュレディンガー方程式を解くと、電子の波動関数Y(x,y,z)
と電子のエネルギーEが得られる
(4)電子の波動関数Yの解釈(意味)
波動関数の2乗は電子の確率密度を与える(ボルンの解釈)
Y 2 ( x, y, z) または Y ( x, y, z ) は座標x,y,zに電子を見出す確率
2
空間の微少体積dxdydz(=dv)の中に電子を見出す確率は
Y ( x, y, z ) dxdydz
2
これを全空間にわたって積分すると、全空間で電子は必ずどこ
かに存在するので、電子1個の波動関数では1となるはず
 Y( x, y, z)
2
dxdydz   Y ( x, y, z ) dv  1
2
:規格化条件
この条件を満たす波動関数は「規格化」されているという
Y2が電子の存在確率を示すためには、上の積分が可能でな
ければならない
そのために、波動関数の性質として
有限性
・・・ 積分可能
連続性
・・・ 積分可能
1価性
・・・ ある位置ではひとつの値のみ持つ
が、求められる
1次元の電子の運動
(1次元の井戸型ポテンシャル)
U=∞
U=0
U=∞
幅aの井戸内に閉じ込められた電
子を考える
電子の受けるポテンシャルは
0  x  a : U ( x)  0
x  0, a  x : U ( x)  
0
a
1次元のシュレディンガー方程式より
 h2  2

 U ( x)Y( x)  EY( x)
- 2
2
 8 m x

ただし、U(x)=∞の領域には、電子が入ることができないので、
x  0, a  x : Y ( x)  0
0  x  a : U ( x)  0 であるので、この領域のシュレディンガー方程式は
h2  2
- 2
Y ( x)  EY ( x)
2
8 m x
この微分方程式の一般解は
Y ( x)  A sin kx  B cos kx
2
8

m
2
k  2 E
h
Y(x)はxの全領域で連続である必要があるため(連続性)
Y(0)=0、Y(a)=0 である必要がある ・・・境界条件
したがって
B0
n x
k
a
nx=1,2,3,… :量子数
これより、E(全エネルギー)はnxを用いて決めることができる
係数Aは、規格化条件
より決定され
 Y ( x)
2
dx  1
2
A
a
以上から、シュレディンガー方程式は完全に解けたことになって
0  x  a では
Y nx ( x) 
2  nx
sin 
a  a
nx2 h 2
Enx 
8m a2

x

nx=1,2,3,… :量子数
境界条件から導入された量子数:nx=1,2,3,…の、それぞれの値
に対して、ひとつの波動関数とひとつのエネルギーが対応する
1次元の電子の運動
(1次元の井戸型ポテンシャル)
U=∞
U=0
0
U=∞
a
nx=3
nx=2
nx=1
2  nx
Y nx ( x) 
sin 
a  a
nx2 h 2
Enx 
8m a2

x

nx=1,2,3,… :量子数
9h 2
E3 
8m a2
4h 2
E2 
8m a2
h2
E1 
8m a2
2次元の井戸型ポテンシャル
x方向の幅a、y方向の幅bの2次元の井戸を考える
b
0
y
U(x,y)=0
a
x
井戸の外では
U(x,y)=∞
シュレディンガー方程式は
0  x  a,0  y  b : U ( x, y)  0 より
 h2   2
 2 
- 2  2  2 Y ( x, y )  EY ( x, y )
y 
 8 m  x
簡単に解くために、「変数分離」の方法を用いる Yはx,yについての関数
Y ( x, y) Yx ( x)Y y ( y)
と表すと、x, yそれぞれの微分方程式は1次元の場合と同様になる
2  n x
sin 
a
 a

x

nx=1,2,3,… :x方向の量子数
2  n y 
Y y ,ny ( y ) 
sin 
y 
b
 b 
ny=1,2,3,… :y方向の量子数
Y x ,nx ( x) 
x, y両方の関数を合せると Y ( x, y) Yx ( x)Y y ( y) より
4
 nx   n y 
Y nx ,ny ( x, y) 
sin 
x  sin 
y 
ab  a   b 
2
2


n
h  nx
y

 2
2
8m  a
b 
2
Enx ,ny
nx、ny=1,2,3,… :量子数
2次元では2種類の量子数が現れる
nx、nyが決まると ⇒ 波動関数Ynx,nyとエネルギーEnx,nyが決まる
特に、a=bの「正方形」の場合
Enx ,ny
2
h 2  nx2 n y 
h2
2
2



n

n
x
y
8m  a 2 a 2  8m a2


例えば、 (nx=1, ny=2) と (nx=2, ny=1) はいずれも
E1, 2
5h 2
 E2,1 
8m a2
と、同じエネルギーをとるが、波動関数は異なる
⇒「縮退」しているという
外部からの影響などで系の対称性(上の例ではa=b)が崩れるとエ
ネルギーが等しくならなくなり、「縮退が解ける」という。
2次元井戸中の波動関数
nx=1, ny=1
Y1,1 ( x, y) 
2h 2
E1,1 
8m a2
4
 1
sin

2
a
 a
  1 
x  sin  y 
  a 
2次元井戸中の波動関数
nx=2, ny=1
nx=1, ny=2
Y1, 2 ( x, y) 
E1, 2
4
 1
sin

2
a
 a
  2 
x  sin 
y
  a 
Y 2,1 ( x, y) 
5h 2

8m a2
5h 2
E2,1 
8m a2
波動関数の形状は異なるが、エネル
ギーが等しいので「縮退」している
4
 2
sin

2
a
 a
  1 
x  sin  y 
  a 
二次元の波動関数と「縮退」
Y 2, 2 ( x, y) 
E2 , 2 
4
 2   2 
sin
x  sin
y
2
a
 a   a 
8h 2
8m a2
nx=2, ny=2
nx=2, ny=1
nx=1, ny=2
波動関数の形状は異なるが、エネル
ギーが等しいので「縮退」している
4
 1
Y1, 2 ( x, y)  2 sin 
a
 a
2
5h
E1, 2 
8m a2
  2 
x  sin 
y
  a 
Y 2,1 ( x, y) 
5h 2
E2,1 
8m a2
Y1,1 ( x, y) 
nx=1, ny=1
4
 2   1 
sin 
x  sin  y 
2
a
 a   a 
2h 2
E1,1 
8m a2
4
 1
sin 
2
a
 a
  1 
x  sin  y 
  a 
二次元の波動関数と「縮退」
nx=3, ny=3
E3,3
E3, 2
13h 2

 E2 , 3
2
8m a
「縮退」
nx=3, ny=2
nx=2, ny=3
10h 2
E3,1 
 E1,3
2
8m a
「縮退」
nx=3, ny=1
nx=1, ny=3
18h 2

8m a2
ここまでのキーワード
縮退:
2次元以上の空間での波動関数はポテン
シャルの形状(対称性)から、複数の波動関
数が同じエネルギーを持つことがあり、これ
を「縮退」という
今日のまとめ
• 波の運動(波動)は波動関数で表される
• 波動関数は波動方程式を満足する(らしい)
• 波動方程式を(適当な条件下で)解くと、波動関数
が求められる(らしい)
• 電子の波動性・粒子性をひとつの式として表したも
のがシュレディンガー方程式
• 電子の受けるポテンシャルを用いて、シュレディンガ
ー方程式を解くと、電子の波動関数、エネルギーが
求められる(らしい)
• 電子の波動関数の2乗は電子の存在確率を表す
• 等しいエネルギー状態に複数の波動関数が対応す
ることを「縮退」という
出席確認、今日の講義はどうでしたか
1. 難しい (ちんぷんか
んぷん)
2. なんか分かったような
気がする
3. よくわかった
0%
0%
た
っ
か
な
ん
か
分
難
し
い
(
ち
か
くわ
よ
ん
ぷ
よ
ん
か
うな
...
ん
ぷ
っ
た
ん
)
0%